[[[ サロマンブルーを目指して・・・ ]]]
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夢はきっとかなう


スタートラインを越えたのは、スタートの合図から2分近く経過してからだった。焦ることなく、周りの流れに合わせてスタートラインを横切った。いつもなら、苦難の道へ踏み出す事を意味する、このラインを超える瞬間は、躊躇いがあるのだが、今年は違った。このラインはスタートではなく、単なる通過点に過ぎない。900km地点を通過したに過ぎないのだ。ここまで来たら、出来るか出来ないかなんて考える必要はない。やるか、やらないか、どちらかだ。ここまで来たら、やるしかない・・・

  
  

コースは、スタート会場周辺を1周して4kmほどで戻ってくる。ここで妻と母の声援を一度受けた。『頑張れー、でも無理すんなぁ~』に思わず苦笑。。。ここから紋別方面に進み、湧別川を渡って折り返す。ここで仲間の位置を確認できる。すれ違いざまにお互い声を掛け合ったり、ハイタッチしたり、笑顔を交わし合う。折り返すと再びスタート会場周辺へと戻る。ここで2度目の声援。何と言われたかは覚えていないが、折り返しや声援を受けられるポイントが増えたというのは、好都合だった。

 
湧別川を渡る                    湧別川を渡ったあとの折り返し

 
湧別の町(スタート会場周辺)に戻る                

この先は畑の中の農道をひたすら進む。さえぎる物がなにもないので、空がとても広く見えるエリアだ。10km地点の通過は55分13秒。スタートまでのロスを差し引くと53分程度で走った事になる。1km5分30秒を目安にしていたので少し早い。気温はスタート時は非常に寒く、レインコートを羽織って走りだしたが、2kmほどで汗ばんできたので脱いだ。今回の服装は、上はノースリーブのユニフォームにアームカバーと手袋。下はひざ上丈のスパッツにランパンの重ね履き。さらにSkinsのゲーターを履き、サンバイザーを被った。曇りが予想されたので、サングラスは付けなかった。スタートした時、寒く感じていた気温も身体が暖まってくると、全く気にならず、むしろ走るには快適な気象条件だった。
 
  
  大空と大地の中で・・・

そんな条件の良さが影響してか、ペースは想定よりも早めになった。このレースに関して言えば、完走さえすれば、タイムは関係ない!と言い切ってもよいのだが、サブ10でサロマンブルー!!などと言う邪心も心の片隅にあった。そんな邪心から、ペースを抑えようと言う気持ちにはならず、また気象条件にも恵まれていたので、行けるところまで、このペースで刻もうと言う意気込みが湧いていた。この時、心の中にいたのは、過去9回のレースの中で唯一快走したと言ってもよい2007年の自分だった。(この年は9時間23分17秒で完走。サブ10を達成したのは、この1回きり)

10kmを過ぎて、農道から湖畔沿いのロードへとコースが移ると、尿意を催してきた。これまでのコースならば15km付近・竜宮台の折り返しで、行きつけのトイレへ駆け込むのだが、コースが変更されていたので、そのトイレは20km地点以降となる。そこまでは持ちそうにないので、15km付近に現れた大きな駐車場に隣接する広めの公衆トイレへ駆け込んだ。トイレ待ちは少なく、わずか2分でコース復帰する事ができた。ここで済ませておけば順調なら、ゴールまでSTOPする必要はない。

 
農道から左カーブして湖畔沿いのコースへ  湖畔沿いのコース

20km地点は竜宮台の折り返し前にやってきた。通過タイムは1時間49分20秒。トイレのロスを抱えながらも55分を軽く切っていた。このまま10kmにつき5分づつ貯金を作っていければ70km以降ペースが落ちてもサブ10は達成できる。そんな青写真を描きつつ、竜宮台の折り返し地点にやってきた。

 
竜宮台折り返しへ向かう             竜宮台折り返し地点

勇壮な太鼓の音が鳴り響く竜宮台は、前半戦では数少ないHOT SPOTだ。太鼓の振動に心が揺さぶられる。さらに折り返し地点があるので再び仲間たちの様子をうかがう事が出来る。私の前に2人、後ろに6人、その存在を確認できた。次に会うのは80km以降のワッカ原生花園なので、順位の変動が無い限りは、しばしのお別れとなる。

  
  
竜宮太鼓が鳴り響く!!

その後も順調に距離を踏んでいた。30km地点通過が2時間43分56秒。この10kmも55分を切るタイムで通過できた。これと言ったトラブルは起きてはいなかった。空腹感が漂い始めていたが、30km地点にはスペシャルエイドがあるので、これを受取りペットボトルの中からパワージェル2本とハチミツを取り出し、背中のポケットにしまい込んだ。ペットボトルに下げておいたタグには『サロマンブルーまで70km』の文字。ここは通算930km地点。残り70kmとなった。スペシャルエイドを通過して、ハチミツの封を切り吸い込んだ。心地良い甘さが口の中に拡がった。ペースも、エネルギー補給のタイミングも、全てが上手く言っているように思えた。

 
点々と連なるランナーの列              青空が出てきてサロマらしい雰囲気に

30km地点を通過して、農道を左折すると、黄色いTシャツを着た、見慣れたランナーに追いついた。地元漁師の住吉さんだ。もう何年も前にサロマンブルーになっている名物ランナーで、私にとってはあこがれの存在。勇気を出して話しかけてみた。

私:『住吉さんですよね。いつもご自宅のエイドでお世話になっています』
住吉さん:『あー大量旗のところね。でも今年は子供が野球だから出してないかもよ(笑)』
私:『今回完走するとサロマンブルーになるんです。』
住吉さん:『そっか、じゃ来年は青いゼッケンだなぁ。随分とお金使ったなぁ(笑)』


サロマには、多くの名物ランナーがいる。皆、とても魅力的で、憧れの存在だ。世間一般的には知られていないだろうが、この大会を愛し、通い続けているランナーにとってはスターそのものなのだ。なかでも住吉さんの存在感は、自分の中ではとても大きく、遠くから見ているだけで、気分が高まる。そんな方と会話を出来たのがとても嬉しかった。住吉さんとの短い会話を終え、先行すると、コースはオホーツク国道へと移った。


オホーツク国道

日差しの強さを感じ始めたのはこのあたりだっただろうか?手袋が鬱陶しくなり外した。さらにアームカバーも外した。ふと空を見上げると雲らしきものが見当たらなくなり、青空が広がっていた。寒いくらいの気温で、曇りがちで、ベストの条件だった筈が一変して気温が上がり始めた。それでもサロマに青はよく似合う。この青空が現れてこそのサロマンブルーだ。プラスにとらえるように心がけた。時刻は午前8時30分頃。。。

それまで平坦だったコースも国道へ出ると、緩やかな高低差を繰り返すようになる。このリズムの変化が好きだ。脇をすり抜けて走る車からの応援や、小さな町で贈られる声援にひとつひとつ丁寧に応えて走ると、とても気分が良い。ひとつひとつ小さなコミュニケーションを取りながら走れるのはウルトラマラソンならではの醍醐味だと思う。最近、音楽を聴きながら走るランナーが多いが、個人的には凄く勿体ない気がする。

40km地点を通過。通過タイムは3時間41分35秒。10km55分ペースが崩れた。高低差の影響もあったと思うが、エイドでのロスが増えたのが大きな原因だと思う。気温が上がった事で給水量が増え、また日差しの強さから被り水も必要になってきた。1つのエイドでのロスがこれまでの数十秒から数分単位に延びた。こうなると10km55分のペースを維持するには、1km5分そこそこで走らなければならなくなってくる。

  
  月見ガ浜道路

40kmを過ぎると一度国道を離れて月見ガ浜道路に入る。景色がとても良い場所だ。空の青さが湖面に映り込み、文字通りのサロマンブルーを映しだしている。42.195km地点には三度目の応援隊登場。ひと休みしたい気分もあったが、まだ記録へのこだわりを持っていたので、挨拶だけで素通りした。通過タイムは3時間54分12秒。上出来だった。しかし、このポイントを境にレースが違った方向へ動き出した。

 
42.195kmポイント                   応援ポイントに指定されているので賑やか♪

 

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写真協力:M.fukuda
※レース中の写真は本人が撮影したのではなく、M.fukudaさんの写真を使わせて頂いています。