わがまま温泉日記 蔦温泉 つた

秘湯を
守る会
蔦温泉旅館
http://www.thuta.co.jp/
住所 青森県上北郡十和田湖町大字奥瀬字蔦野湯1番地 〒034-0301 Memo:一軒宿
一泊二食 \15,000
ビール大 \750
電話 0176-74-2311
営業期間 通年
泉質 Na-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉 43.8度 pH7.24
(低張性中性高温泉)
旅行日 02/08/13
コメント

02/09/08
実は3度目の訪問。「泉響」に耳を傾けるには、やはり泊まりしかない。
R103

 十和田樹海と呼ばれるブナの原生林は、実にすがしい。快適ドライブルートを挙げろと言われりゃ、間違いなくワタシは一票投じるだろう。十和田湖はもう間近、バスロータリーまである蔦温泉の玄関は賑やかである。

 従業員が宿泊客と日帰り客を、次から次へと振り分ける。隙間なくずらりと並んだ玄関の靴。その昔、修学旅行で泊まった本郷の宿を思い出させる。花のお江戸は東京の、お宿は本郷と決まっていたのだが、今はもうない・・・。蝦夷っ子が江戸っ子気取りのひとときだった。
本館玄関 
玄関入ってすぐ右手、和室に机を並べる帳場がレトロで、そろばんパチパチ弾くがお似合い。しかし、そこは時代というもので、電脳ソロバンのキータッチ音。
 この帳場、なかなか作業が手際よい。秘湯のスタンプを押してもらうには、前日預けの、翌朝返しが原則なのだ。ところが、ここの帳場ときたら、お風呂に向かう途中に出したら、お風呂帰りに返してくれた。

 トチの木やブナ材をふんだんに用いた本館廊下をくぐりぬけ、新館へと案内される。照明をひかえた廊下が、高級感と安らぎを与えてくれる。なにやら峩々温泉の廊下に近い雰囲気がある。
新館2階のお部屋 
2階のお部屋は、すぐ目の前が蔦に絡みつかれた直径2mはあろうかという老木。この宿が「蔦」を冠にいただくばかりに、あえなく命脈、絶たれてしまった。人間様の都合とはいえ、ふと、考えさせられるものがある。
 ちなみに、この老木に巻きついているツル植物は3種類。カツラに、ウルシに、あとは忘れた。蔦温泉ゆかりの文人といえば大町桂月。なるほど、「桂」の文字が刻まれている。

夕食 12畳の和室にゆったりとした休処がつく、広くて小ぎれいなこの部屋で、
夕餉をいただく。仲居さんが熱いものは冷めないうちにと次から次へと運んでくれる。豊穣な香りもたらすマイタケの、土瓶蒸しがおいしかったな。マツタケばかりじゃないんだね。
 朝食は1階レストランにて、30分刻みで時間を区切っていただくシステム。

 かつて、長い階段を敬遠し、奥入瀬渓流めぐりの拠点、焼山に宿をとったことがある。
 今回はまず、その長い階段を風呂より先に確認する。お年寄りと酔っ払いにはちとキツイかも知れないが、甲子温泉と比べてみれば、この程度、どうってことない。最上階から眺めを楽しみ、囲炉裏端にて一休み。

久安の湯 ここは日帰り客にも親切である。何と、朝8時から夜7時まで日帰り客をとっている。夕食前のひとっ風呂、「泉響の湯」は大勢の入浴客で、いもの子状態。
 あと一つ、「
久安の湯」というのがあるのだが、女性専用時間帯は深夜0時から朝8時までと、決められている。ダンナによると、ガラガラだったんだそうな。草津温泉大滝乃湯の「合わせ湯」のように、こまめに時間帯を区切るとか、夕方以降は立ち寄りを取らないとか、少し工夫が必要だろう。
上がり湯 しかも、古式ゆかしく、カランがないため、
上り湯周りは、体を洗う人、シャンプーする人で、身体を斜めにもぐり込ませる隙もない。それはともかく、シャボンの匂い。この高さ12mもの湯気抜きを持つ大容積の浴場をして、許容量を上回るのだ。せっかくの秘湯が銭湯に化けてしまった・・・。

 大きな湯船にしては、けっこう熱く、湧水が絶えず適温となるようチョロチョロと注ぎ込まれる。そうそう、この温度管理が大切なのよ。お宿は「これがベスト」と思えるお湯を提供し、お客は文句も言わず、ありがたく、そのお湯を頂戴するという仕組み。うれしかったね。
手前が「久安の湯」、奥の背の高い建物が「泉響の湯」 無色透明・無味無臭、底から湧き出すこのお湯は、単純泉かと思いきや、「ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉」なる表示。重曹泉ほどすべすべもせず、食塩泉ほど塩辛くもない。泉源真上の湯船こそ、天の恵みと言うべきか。

 しかし、泰平の世とは長くは続かぬもので、ドボドボとあの酷い音。熱いといったって43度くらいのものなんだから、少しは我慢できないもんかね〜。
 湯船のへりでは、両手を組んで、7、8人もの若い娘たちが、木肌の床に寝そべって、おしゃべりしている。行儀が悪いと思っていたら、湯船から打ち寄せる波のように流れ出す、たっぷりしたお湯。津軽名物、寝湯だったのだ。

泉響の湯 このお湯を「
泉響颯颯(さっさつ)」と詠んだのが、幼少期を伊豆湯ヶ島で過ごした文人井上靖悪ガキの頃から、お湯に親しんできただけあって、さすが目のつけどころが違うよね。
 「泉の響きが風のように吹き渡る様」を確かめようと、深夜、一人で颯爽と、湯船にその身を滑らせる。誰もいないを幸いと、さっきの若い娘の真似をして、寝湯なるものを楽しんでみた。ポカポカとあったかい上、お湯の流れを身体に感じ、こりゃ、え〜わ。
 プク〜ンと、気泡が湯船の底から顔を出す音。ササ〜〜ッと、お湯が湯船のふちからあふれ出す音。あまりの心地よさに、ここは仙境、泉の響きは子守唄。危うくイビキをかくとこだった・・・。

蔦温泉前景 夜も明けて、
噴水を中央に配した池の周りのロータリー。泊まっていた始発のJRバスも、いつしか出発。あの樹海の中を、青森駅に向け走っているのか? R103沿いには名だたる秘湯・名湯が顔をそろえる。
 夕陽が人気の黄金崎「不老ふ死」温泉が青森のウェストコーストなら、酸ケ湯猿倉谷地・蔦と、連なるこちらはアイビーリーグ

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