寄稿 Contribution
主は水辺に立った −トリエント典礼について−
増田 洋
6. トリエント・ミサをささげる場合
カトリック新聞 2007(平成19)年7月15日号 1面には、「公会議前のミサと今日のミサ」(ヴァチカン6月28日CNS)と題して、よく知られている現在のミサの「式次第」の順を追いながら、相違点を9項目にまとめて箇条書きにした記事があります。トリエント・ミサの写真も掲載されていますが、「公会議前のミサでは、司祭は会衆に背を向けて司式する」というキャプションは、ちょっと気になります。両方のミサ典礼書を見比べて記述する範囲では、ここに書かれた通りですが、実際にトリエント・ミサをささげるには、この他、事前に、いくつか詰めておかなければならない点があるので列挙してみます。
@ 典礼暦が異なるので、ミサ典礼書で固有文を調べておく。
A 福音の前の聖書朗読は特別な場合を除き、書簡一つだけで、一般信徒ではなく、通常は司式司祭が朗読する。
B 現在の答唱詩編とアレルヤ唱(または詠唱)に相当する昇階誦およびアレルヤ誦(または詠誦)は、歌ミサの場合は聖歌隊がグレゴリオ聖歌で歌うが、通常は司祭が唱える。
C トリエント・ミサでは、会衆は司祭の祈りに全て答える必要はない。小声で唱えられる司祭の祈りに答えるのは侍者の役割であって、それが会衆に聞こえなくてもよいし、会衆がそれについてゆく必要はない。歌ミサの場合だけ、その一部を司祭が歌い、聖歌隊と会衆が歌で答えるが、その場合も、小声で唱えられる侍者との応答は残る。
D トリエント・ミサにおいては、このように侍者の果たす役割が大きい。侍者は、勉強すれば一般の男子信徒でできるので、信徒側で準備しておく必要がある。
E ミサ中、侍者は特に用事のないときは、原則としてひざまづいている。用事で祭壇中央を通るときは片膝をついて挨拶する。ミサ典礼書等、祭壇に置かれたものを左右に移動する場合は、脇から祭壇に昇り、持ち上げて祭壇を斜めに降り、中央で片膝をついて、斜めに昇って運び、置いた後は脇から祭壇を降りる。
F 祭壇は正面奥の壁につける。聖櫃を祭壇中央に置く。聖櫃の左右に三本づつ燭台を置き、ミサ中はこれに火を灯す。燭代の間には花を生けた花瓶を置く。
G 祭壇に立てかける祈り文の書かれた3枚の額を用意する、向かって左はヨハネ福音の序、中央はミサ典文(現在の第一奉献文)、右はフドウ酒をカリスに注ぐときや、手を清めるときの祈りが書かれたもの。(ブドウ酒と水や、手を洗う水の奉仕は現在とは向きが反対なので、祭壇に向かって右側からとなる)
H 祭器類は現在のように露出はさせず、コルポラーレはブルサに収め、カリスはカリス・ベールで覆う。ブルサとカリス・ベールは祭服と同じ生地で作られたものを用いる。
I 公会議後のミサでは、見えるように明るく、聞こえるように大きな声でということが叫ばれるが、トリエント・ミサにおいては、それは最重要課題ではない。むしろ、控え目で、祭壇に注目したり、声を出して答えたりすることよりも、祈りに集中することが求められる。
J 当日の固有文が記載された会衆用のテキストは必ずしも準備する必要はない。ミサ中、どのように祈るかは個人の裁量に任される。
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