わがまま温泉日記 | お風呂の科学 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■You're here. ▼源泉かけ流しと循環 ▼塩素投入条例 ▼泉源から湯船まで ▼温泉法 vs 公衆浴場法 |
〜当世レジオネラ考〜 |
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風呂ローグ ●在郷軍人病 なぜ「当世」なのかというと、実は15年近くも前にワタシは、とある本を読んでいて、ビル屋上から飛散してくる冷却水を異様に恐れていたからだ。 まさか、アレがコレだったとは・・・。 バートン=ルーチェ著 「推理する医学」西村書店 第21章バインヤードの雨の日 |
死者まで発生したレジオネラ菌騒動により、いわゆる「循環風呂」の危険性が声高に叫ばれている。いずれも管理の悪さが背景にあるようで、一概に「循環」だからダメ! と言うのも考えもの。 |
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▼レジオネラ属菌 ▼24時間循環風呂 ▼塩素消毒 ▼循環ろ過装置 ▼生物浄化方式 |
当世レジオネラ考 |
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レジオネラ属菌 ●なぜ、免疫力の弱った身体にダメージを与えるのだろう? 体内にバイオフィルム様の膜ができ、レジオネラ菌が寄生する宿主がたくさん潜んでいるからだろうか。 ●霊泉寺温泉の一件は「みしゅらん」掲示板の過去ログ、「温泉の科学」でおなじみのやませみさんの10/10付投稿をごらん下さい。 ●Thanks to Mr.Yamasemi 感染確率は喫煙と相関があるそうですから、そのせいかと思います。 |
レジオネラ属菌(わずらわしいので、以下、単にレジオネラと呼ぶ)による、感染発症形態は肺炎である。単なる風邪だと思い込み、抗生物質の投与が遅れて死に至るケースが多いというのが、いかにも悔しい。やはり、危険性だけは十分認識しておくべきだ。
過度に恐れる必要もないが、その危険性だけは認識しておいた方がよい。キーワードは次の三つにありそうだ。 ・免疫力 ・エアロゾル ・バイオフィルム |
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24時間循環風呂 ●CFUというのは「コロニー形成単位」の略。培養の結果、生じたコロニー(菌の集団)1つが菌1つに対応するものとして計数する。 |
次のデータは、東京都立衛生研究所による「浴槽水からのレジオネラ検出状況」から引用したもの。24時間風呂が軒並み高い検出率を示しているのが分かる。どうやら、換水が行われないところに大きな原因がありそうだ。
衛生管理の悪さを物語るデータでしかない。きっと、ご当人もゾッとなされたことだろう。 ●特養施設 検出率を比べてみると、98年が62.8%、99年が31.8%と半減している。日ごろのお手入れ次第で、レジオネラを封じ込めることは可能と読んだが、塩素系薬剤の大量投入によるものなら、ことの本質を見誤っていると言わざるを得ない。いわば、原因が分かっているにもかかわらず、対症療法をおこなっているようなもの。 ●公衆浴場・施設風呂等 試料数も213と多いので、データとしての価値は高いが、何とも残念なことに、検出率は40%にもなる。公衆浴場、いわゆる銭湯のデータを除いてみると、検出率はさらに高まることが容易に予想できる。なぜなら、銭湯では毎日換水が義務づけられているそうだから。 さて、その検出菌数であるが、水質基準が10CFU未満/100mLであるところ、2CFU〜420,000CFUと幅がある。これほど、違いが出るものならば、施設を選ぶ必要がありそうだ。日頃の手入れもできない施設なら、淘汰されても仕方がないね。 |
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塩素消毒 ●紫外線照射による殺菌と塩素消毒の併用も多くの施設でなされているようです。 |
ろ過器の付かない循環風呂など、あり得ない。ろ過器がレジオネラの巣になっているのだから、消毒だって欠かせない。消毒方法には次の通り、いくつかの形態があるのだが、経済性を追い求めるなら、おのずと方式は限られてくる。
・オゾン ・紫外線 ・銀イオン、銀・銅イオン ・光触媒 しかも、塩素薬剤以外の方式では、消毒効果に残留性がないため、当局では塩素薬剤による消毒を強く薦める。そこで、塩素が殺菌するかと思いきや、次亜塩素酸こそ、殺菌をつかさどる主成分。 塩素+水分→次亜塩素酸+次亜塩素酸イオン ところで、次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの殺菌力は100:1にもなるそうだ。右の表は、厚生労働省の「レジオネラ症の知識と浴場の衛生管理」と題するページから、「pHとHClOとの関係及び殺菌効果との関係」に関するデータを引用したもの。 HClO(%)の項目は次亜塩素酸の割合を表している。そこで、100:1の殺菌力と成分の構成比を組み合わせ、pHの異なる温泉における殺菌力を比べてみると、 ・pH6.0 のとき 100*96.9+1*(100-96.9)=9693.1 ・pH10.0 のとき 100*0.3+1*(100-0.3)=129.7 となり、実に、75倍もの違いが生じる。 pH値が高まるにつれ、次亜塩素酸の割合が低くなるため、殺菌作用が弱くなる。アルカリ性泉を循環利用している施設では、塩素投入量を75倍に増やすしかないとしたなら、次亜塩素酸イオン泉にでも浸かることになり、こりゃ大変だ・・・。 |
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循環ろ過装置 ●右の図は厚労省「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」よりいただいたもの。実物の写真や図面は竹村製作所のものがよく分かる。 ●「mg/L」という単位、水は1L=1000gなので「ppm」表示と同じことになる。 ●Thanks to Mr.Yamasemi 「浴槽水中の遊離残留塩素濃度を1日2時間以上0.2〜0.4mg/Lに保つこと」 ここが肝心なのに、一般には勘違いされているところでしょう。消毒剤の注入は、湯ではなく、浴槽や濾過装置を殺菌するためなのです。(ここが水道水での目的と決定的に異なる) 常にカルキ臭い湯に保つ必要は全然なくて、終業後の洗浄時間にすればよいのです。最近やっと理解されてきたようで、循環施設でもカルキ臭のないところが増えてきたように思います。 |
ところで、水道代や燃料代の節約になるという「循環風呂」とは、一体どのような構造をしているものやら興味津々。そこで、早速調べてみると、
このシステムにおいて、バイオフィルム生成の危険性の特に高い箇所が「集毛器」と「ろ過器」なんだそうである。特に、「生物浄化方式」をとる「ろ過器」では、微生物によって汚れたお湯の有機物を分解するので、レジオネラが寄生する宿主には、こと欠かないのだ。そこで、水流を逆転させて、ろ材の汚れを洗い流す「逆洗」という方法で、システムの洗浄をおこなう。ちなみに、メーカーの説明にはこうある。 「ろ過運転タイマーと逆洗タイマーを設定すると、後は自動的にろ過運転・逆洗運転を行います。逆洗運転は、あらかじめプログラムで設定した時間に、自動的に行 います。」 ![]() そこで、二酸化塩素を注入洗浄することで大丈夫と、アピールしている業者もあるが、「効果のほどは定かではない」というのがお上の見解。 |
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生物浄化方式 ●「水の科学エッセイ」という素敵なHPをご紹介します。興味を持ったら読んでみてね! |
わが家でも、「お上」というのは煙たがられる。つまりは、ワタシのことではあるが、お上の指示に従うだけでは、わが家のみならず、循環風呂にも未来はなさそう。
急速ろ過では、生物浄化もさすがにうまくは機能せず、塩素消毒が必須だという。「蛇口で0.1ppm以上の残留塩素」との基準を満たすために塩素注入がなされる緩速ろ過とは次元の異なるお話なのだ。 さてと、話を循環風呂にもどしてみると、滝のように流れ落ちるお湯はもちろん、緩速ろ過でないことは明らか。しかも、厚労省の水質基準からして、1時間に浴槽水1回転以上となっているので、急速ろ過以上の流量であることは、容易に想像できる。つまりは、生物浄化方式は、採ろうにも徒労に終わる基準じゃないの。流量が多すぎては、微生物だって、水溜りでのんびりお食事できないよ。 しかも、残留性の観点から、塩素注入を好ましいとしていることは、さっき、読んだところだよね。塩素消毒が大腸菌とレジオネラ菌だけに効くとは聞いたこともない。あらゆるものに普遍的に効くはずだ。ということは、有機物を分解してくれる微生物まで殺してしまう。つまりは「ろ過器」を壊していることにはならないだろうか? こうみてくると、生物浄化方式のデリケートな側面が浮かび上がってくる。塩素を注入したお湯で、果たして「ろ過器」はその能力を発揮しているのか? ひょっとして、デフレスパイラルのような負の連鎖に陥っているのではないかと、思わず考え込んでしまうのだ。 ×塩素注入あり→生物浄化不良→バイオフィルム生成あり→逆洗・消毒 ○塩素注入なし→生物浄化良好→バイオフィルム生成なし→滅菌器で消毒 といった、構図を思い描いてしまうのは、果たして、このワタシだけであろうか・・・。 どこのメーカーのチャートを見ても、塩素注入装置はない。あるのは、最終段階における紫外線あるいはオゾンによる滅菌器なのだ。そもそも、システムとして塩素注入は考えられてはいないのだから、その通りやってみたなら、どうだろう? たとえ、お上の基準に従ったとして、訴訟の際の免責事由にしかならない。あっ、それが大きいのか・・・。 温泉は二つとして同じ表情を示すものがないという。そこに、ジャパニーズ・スタンダードをもって、みな一律に、お上は網をかけていく。循環風呂から殺菌力もつ硫黄泉に至るまで、みな一律の基準が果たして妥当なものか。 結局のところ、残留塩素濃度は基準値に至らなくとも、レジオネラをはじめとする病原菌が健康に害を及ぼすほどでなければ許せるよ。いわば、All or Nothing のデジタル感覚ではなく、多い少ないのアナログ感覚で、天地の恵みと折り合いをつけていきたいものである。 |
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