バス停わきの吊り橋に、温川山荘の大きな看板。活字ではなく「書」であるところが、単なる秘湯の一軒宿とは異なる趣。
何分歩けば着くのやら。まさか20分なんてことにはなるまいね。と、吊り橋ゆらしてブラブラ歩く。新鳩の湯温泉の玉川に架かる吊り橋は、長くて揺れて怖かったっけ。でも、目指すお宿の青いトタン屋根は目の前だった。
そもそも、ワタシは熱いお湯が大好きなのだ。だから、「ぬる」なんとかと名のつく温泉、後回し。しかし、行かねばならないときもある。あ〜ぁ、ぬるい湯つかりに歩かされるとは・・・。
と、ぼやく間もなく、吊り橋渡って右へ折れると、すぐこの宿は姿を現す。
「新平家物語」の著者、吉川英治が自宅を出奔、この地で転機を迎えたという、ブナの木立に囲まれた静かな静かな宿である。
壁面こそタイル貼りながら、総ヒバ造りのお風呂は細工も込んで、ウキウキしながら、その造作を確かめてみる。沢渡温泉同様、放射状に延びた床板の造形美と、湯船の曲面に思わずため息つかせる男湯。残念ながら女湯は四角い造り。
窓を開け、陽光浴びたブナの葉のキラキラ輝く浅い緑を目で楽しむと、ひんやりとした高原大気が舞い込んでくる。なんだか清らかで、幸せな気分にひたりつつ、お湯にも浸かる。
色のついたお湯も面白いけど、やはり基本は楚々として澄む透明なお湯なのかな〜。白い湯花は光線が差し込んでいないと、見つけられないくらいに控え目なのだ。
お湯を一口飲んでみる。「こりゃ、塩化物・硫酸塩泉。ナトリウム系だね」と、泉質当てクイズにて一人遊び。
お肌触りはすべすべで、硫酸塩泉特有のキシむ感じは全くなかったのだが、これがこれが大当たり〜! ワタシはほんと、うれしくなったね。そもそも、泉質について調べてみようなんて思った動機は、まさしくココにあったのだから。
露天は混浴。しかも、アブ。めんどうくさくてお呼びじゃないわ。
風呂上がり、ロッジ風の広間で休みつつ、女将さんに聞いてみた。「熱いお湯ですね〜」 「いつもお客さんから『ぬるい、ぬるい』と言われるんですけど・・・」
実は熱い湯好きのこのワタシ、あまりの熱さに水で埋めてしまったのだ〜。温いのは川、のろいのはここの飼い犬、お湯の話ではない。おそらく、露天がぬるいのだろう。
大鰐へと向かう道すがら、養蜂場を見つけてしまった。急坂の田舎道を、バックオーライ!
中国産の蜂蜜は砂糖が入っているので、ありがた味がない。国内産に限るわけだが、都会で買うと少々お値段が張る。
肘折温泉でも山形産のトチを一ビン購入したが、今年はハチが少なくて、今後値上がりするんだそうな。ならば、もう一ビン、青森産のアカシア購入。お婆ちゃんのビン詰めだから、細かい食品表示などなく、およそ1kg2千円也。ほんと、ビッグサイズでビックリプライス。
これだから、温泉旅行はやめられないと、家計にうとい主婦の弁。大きなハチに恐れをなして、クルマのトランク開けられない。
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