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人生の指南役

死を迎える時刻(とき)

睫毛反射。対光反射:直接反射、間接反射。胸を開いて聴診。

橈骨動脈、頸動脈を触れながら聴診するんだよ。
ゆっくりと時間をかけて。
もう一度同じ所見を確認する。
2-3分かけて、診察をする。
心電図がその間flatなのを確認して、看護師に電源を切ってもらう。
お別れの時間を告げる。

家族もその瞬間(とき)は覚悟している。
でも頭で理解していても気持の整理がついているわけではない。
まだ死というものを受け入れることができないんだ。
時間をかけることにより、それが現実であることをゆっくりと理解してもらうんだよ。

ECGも電気的な散発的にpikeが出ることがある。もちろんpulseless。
でも一回でもspikeが出ることは、もちろんまだ「生きて」証である。
Breathlessでも最期に大きな息をすることがある。CO2が溜まるためにこれを排出するための延髄反射。Kussmaul大呼吸。臨床ではDMの代謝性ケトアシドーシスのときにもあるけどね。

あまり多くのことばはいらない。家族の大切な時間を尊重して。
僕の患者さんは膵臓がんや胆管がんの患者さんばかりだから、「よくがんばったよね。褒めてあげて下さい。」と言って部屋を離れるようにしている。

あるとき3年目の研修医がECGのmonitorがflatになった瞬間に「ご臨終です」と言っちゃた。
死亡確認も10秒でしちゃうし。あわてて、ECGの電源を止めたけど、その間脈も出なかったし、呼吸もしなかったからよかったけど、そのあとみっちり説教したよ。

若い医師にはありがちなんだけど、「死」というものが日常の出来事になってしまっている。
普通の方にとって「死」は非日常で受け入れがたい厳粛な出来事なんだ。
我々にとって決してそれに慣れてしまってはいけない。

死を迎える時刻(とき)