チェックインは樹海ラインを下りてきたライダー達と一緒になった。
バイクで温泉めぐりを楽しむ若者たちには、いつも感心させられる。天気が良ければ風を切って颯爽と、コーナーをなめるように走っていくが、雨の一つも降ろうものなら、見ていて気の毒になるくらい辛酸なめる。
もっとすごいのが、一人でエッチラオッチラ峠を越える自転車。思わず抱きしめたくなってしまうねぇ。
しかも、温泉宿の玄関先で自転車見かけたこともない。きっと、野営なんだろうな。趣味なんだろうか、それとも、諭吉さんがお留守なんだろうか・・・。
踏込み半畳、6畳和室に4畳ばかりの広めの休み処がついた部屋から見ると、吊り橋は目の前。
部屋の良し悪し語るとき、休み処の広さというのは、けっこう大切なチェックポイント。よいお部屋には4人分の椅子が置いてあるはず。たとえば、松之山温泉「凌雲閣」みたいにね。
ここだって、4人分の椅子を置こうとすれば、置ける広さ。つまり、よいお部屋の条件の一つを満たしているのだ。このよいお部屋は古くて小汚い。その上、部屋全体が傾いている。

吊り橋を渡って洞窟岩風呂へ向かうカップル。ここは混浴、たいてい、女性がそのまま飛び出してくる。
5時からの女性専用時間帯を待ち、さっそく出掛けてはみるが、風邪でもひいたか寒いのである。今年は冷夏で、山中の涼しさが寒さに化けた。
寒さこらえて、大好きな乳白色のお湯に浸かってみたまではいい。寒さの倍増する温さ。水道ホースを投げ出して、湯口の木箱の横で、じっと上がるタイミングを計っていたが、上半身を湯から出した瞬間、また湯に引っ込み、タイミングをうかがう。

こりゃあ、たまらん、温まらん。吊り橋渡ってそそくさと、内湯「岩風呂」へと向かう。
まず、目に飛び込むのが巨岩。その脇の湯口にもちろん、にじり寄る。勢いよく飛び出す熱いお湯に満足、満足。
もっと威勢のいい音が後ろでするので、ふと見ると、水道バルブを全開とばかりに、一生懸命水で埋めてるオバさんがいる。オイオイ!
深い湯船からは、元気よく白い湯花が舞い上がる。鉛温泉が立ち湯なら、この岩風呂は中腰湯である。しかし、川上温泉にあるような浮き輪を要するほどでもない。
あと一つ、松川の流れを楽しむ露天があるが、こちらは混浴。しかも、女性専用時間帯なし。
やはり、露天はぬるかった。硫黄泉は湯上りサッパリ、夏向きなのだが、露天の温湯は冷夏にやられたワタシには酷。よほど長湯でもしない限りは温まらない。
広間での夕食。湯上りのビールをグイッといきたいところが、お腹冷え切り、体調よろしくはない。さすがに、おひつを空にすることはない。
硫黄泉は、食塩泉とは違って、保温性に劣るのである。布団に入り、ちょっと冷えたと思ったら、すかさず内風呂へ直行。これを何度、繰り返したろう。
おかげさまで、朝食は残さずペロリといただいた。
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