こけしで有名な土湯の賑やかな温泉街を通り抜け、川沿いに細道を走る。ほどなく川上温泉の枝垂桜が、散りたいところをぐっとガマンのお出迎え。玄関こそ決して広くはないものの、廊下、階段などはゆったりとした造りになっている。
3本の源泉からはそれぞれ温度の異なる単純泉が、それこそあり余るほどに湧き出している。何でも、冬場は屋根の雪を解かすだけにとどまらず、お客のクルマに降り積もった雪まで解かしてくれているそうだ。道路の除雪もお手のもの。
青森ヒバ造り、小ぶりの「あすなろ風呂」では、93度のお湯を水で埋めて温度調整。蛇口の開閉はお客様次第ということなので、翌朝、水になっていたり、熱湯になっていたりと、苦労が絶えないのだそうである。
まずは、部屋からもっとも近い「半天岩窟露天風呂」なるものに向かう。入口でワタシは左、ダンナは右へと分かれる。脱衣室にて服を脱ぎ捨て、勢いよく太陽のもとに飛び出した。
おっとっと! 魚ならぬ、ジーンズ姿の変質者がカメラ片手にうろついているではないか! 脱衣室だけ別、中は一緒だったのか・・・。一瞬ひるんだのだが、よくよく見ると夫じゃないの。もちろん、そのままお湯を楽しむ。日帰りは取っていないのだから、誰も入ってきやしないだろう。
「岩窟」というくらいだから、岩に囲まれ、歩くたびに足裏に石が刺さるかと思っていたら、これが木枠のカクカクした湯船。岩窟の一番奥からは93度の熱いお湯がドボドボ流れ込む。T字型の湯船の端っこからは、ジャバジャバお湯が流れ出す。
いったい、どれだけのお湯を捨てれば気がすむのだろうと、呆れ返りながら露天をあとに。入口の時間割には、「男性専用時間帯」とあった。トホホ・・・。
赤湯まで砂利道を走ったので、シャンプーもしたかった。部屋で一服したあとで、さっそく内湯へと向かう。18:00まで女性専用時間帯であることは、今度はシッカリ確認済。赤いのれんには「万人風呂」とある。「千人風呂」なら酸ケ湯やら須川やらで、大きなお風呂を楽しんだことがある。それにしても、「万人風呂」とはホラの吹きすぎではないのか? それとも「万人向けの風呂」なのか?
浴室の扉を開くと、そこはプールだった。たて10m,横4m,深さ1mの大きさ。洗い場には子供用の浮き輪が2つ立てかけてある。やはり、プールなのだ!
しかし、単なるプールと違うところは、57度のお湯が高い位置にあるパイプからドゥドゥと注ぎ込み、40m3もの容積の浴槽を満たしている点。タイル貼りの情緒も何もないお風呂だが、そのスケールと熱いお湯は感動もの。 何でも、風呂掃除のために、水曜午後から木曜午前までは営業できないのだそうだ。こうなると、大きすぎるのも考えもの。
浴槽では、誰もいないのをよいことに、思わず泳いでしまったが、立ってみると胸までの深さ。なるほど、浮き輪が要るはずだ。
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