わがまま温泉日記 松之山温泉 まつのやま
凌雲閣 鷹の湯

秘湯を
守る会
凌雲閣
http://www1.ocn.ne.jp/~rou/
住所 新潟県東頸城郡松之山町天水越 〒942-1435 Memo:一軒宿
一泊二食 \12,000
ビール大 \690
トイレ共同洋式有
電話 :02559-6-2100
営業期間 通年
泉質 鏡の湯@Na・Ca塩化物泉(含ホウ酸塩化土類食塩泉) 98度
旅行日 02/05/01
コメント

02/05/19
お見送りだって、ただ手を振って愛嬌ふりまくだけでは芸がない。
ここの女将さんは、1台、1台に声をかけ、観光案内をしてくれる。棚田に興味を抱いたワタシは、さっそく大厳寺高原までクルマを走らせた。
凌雲閣本館

 松之山の温泉街から山一つ南、斜面にたった一軒そびえているのが凌雲閣。真正面から見る木造3階建ての館の威容に圧倒されつも、内部は一体どうなっているのか、ワクワクさせる宿である。
 昭和13年築造と、年季の入った建物ながら、裏手にはエレベーターまで設置されている。古いものを大切にしつつ、新しいものを取り入れていく。このバランスたるや、さぞかし難しいだろうに、温故知新の精神が生かされているようで、ほかほかと何だか心が温まる。

内廊下 三階廊下は激しくきしむが、日中戦争以来、大勢の人々の重みを支え続けてきたうめき声かと思うと、愛おしさすら感じてしまう。中央部を歩けばきしみもそれほど目立たない。いたわってやらなくっちゃね。
 4畳半・8畳・6畳と三間続きのお部屋は広い。窓際の6畳にはカーペットが敷かれ、四人分の籐の椅子。もたれかかると、部屋の広さとあいまって、これがまぁ、何とも風雅。「和」中「洋」ありとでも言うのだろうか、何だかお食事みたいになってきた・・・。
風雅な洋式和室 雪の重さに耐えかねて、床は水平がとれてはいない。おかげで、冷蔵庫は傾いているし、木枠の窓もゆがんでいる。竹で編んだ欄間だって、ところどころで折れている。
 しかし、これらの造作一つ一つが時の重みを感じさせてくれるのだから文句は言えまい。新しさばかりを追い求めると、いつかは陳腐化してしまう。古くとも、しっくり心に染みるのは、確かな時を刻んできたから。
 雪で傷んだ瓦の補修が大変だとは仲居さんの弁。よ〜く手入れの行き届いた宿である。

夕食 お風呂と食事は新館でいただく。本館から新館への渡り廊下を60年の歳月を越え、くぐり抜けると鉄筋3階建てのモダンな空間。朝食はここでいただくのだが、バーカウンターが配膳台に化けているのはご愛敬。
 朝食後、陽光差し込むラウンジで、コーヒー片手に棚田を見やる。原田知世でもなく、もちろんモー娘でもなく、さしずめ、浴衣姿の「腰を掛けるオバサン」とでもいったところか・・・。
 大広間での夕食は、品数が多くて退屈しているひまがない。もちろん、春ならではの山菜づくしながら、刺身やお肉もちゃんとつく。一卓、一卓を巡っての、女将のあいさつだってちゃんとある。「お湯は熱くはなかったですか?」と、ずいぶん気に掛けているようだ。

男性用大浴場 浴室は清潔感にあふれてはいるものの、残念ながら味わいに欠ける。
 そんな浴室に、何とも独特の臭いが充満している。この正体は一体何だと、頭をひねることしきり。
 湯口では、熱〜い源泉と、その脇からぬる目のお湯が注がれている。ちょっと冷ました源泉を口に含もうと、上唇をお湯につけ、ヒシャクを傾け、鼻腔がお湯に最接近したその瞬間、ワタシは正真正銘、「時を駆ける少女」になった。
 木造校舎の床板に引く、あのコールタールの匂いなのだ。小学校の木造校舎が、思い出ぼろぼろ引き連れながら蘇る。


松之山温泉センター 鷹の湯
http://www.matsunoyama.net/higaeri/takanoyu.html
住所 新潟県東頸城郡松之山町大字湯本 〒942-1435 Memo:
入浴料 \400
電話 :02559-6-2221
営業期間 通年(10:00〜22:00 木曜休館)
泉質 鷹の湯@含ホウ酸塩化土類食塩泉(緩和高張性高温泉)
旅行日 02/05/02
コメント

02/05/12
ジオブレッシャー型温泉についての説明は、やませみさんの「温泉の科学」もご覧ください。松之山についての記述もあります。

02/05/19
R405
新潟の清里村からやって来たので、そのまま津南経由で秋山郷へ向かったところ小規模雪崩。
ワタシは雪の峠を歩いて越える。痛風のダンナ相手に、なぜだか、はしゃいでいるワタシ。

R405 松之山から津南への峠越え
スコップなんか勿論ないので、松之山まで、またバック。

 草津有馬と並び称され、わが国の三大薬湯の一つに数えられる松之山温泉は、その石油臭からして、薬湯の資格がある。なぜなら、石油は古来より薬としても用いられていたのだから。
松之山温泉の由来 しかも、その生い立ちすらも特異な温泉なのである。その名を「ジオプレッシャー型温泉」と言うんだそうな。
 フォッサマグナの東縁にあたるこの地、かつては海の底だった。そこにマリンスノーをはじめとする生物の遺骸が堆積し、石油生成の環境が整えられる。年月を経て地層が隆起・褶曲、しかも背斜といって、「の」の字に曲がる。ちょうど、上下二層は水を通さなかったものだから、その間に石油と化石海水が貯留した。そこに断層が走り、その裂目から「地圧」に押し出される形で温泉が噴き出している。ということは、いつかは涸れる・・・。
 大ざっぱなワタシの理解はこんなもの。詳しくは、リンク先を当たってみてね。とはいえ、2号井横の松之山ドーム説を論じる立看板の解説とは何だか違う。地質学の進歩とは、こんなに速いということか。

松之山温泉センター 鷹の湯 凌雲閣は「鏡の湯」、本家「鷹の湯」はどんなもんだか、温泉街に訪ねてみることにした。
 ほんとは一番風呂だったのに、お風呂の写真を撮ってるうちに先を越されて二番風呂。あ〜、悔しい。
 湯船に浸かりながら、一番風呂の地元の常連さんにうかがうと、かつては小さな湯小屋があって、ワタシの大好きなタダだったとのこと。ただし、熱くて、熱くて、並大抵では浸かれなかったそうだ。へっへっへっ、思わず頬をゆるませている。
 さて、「鏡の湯」との比較であるが、わが国では珍しい高張泉だけに、指先がまったくシワシワにならない。塩辛いのとコールタール臭も同じなれど、苦味が違う。「鷹の湯」の方がきついのである。マグネシウム分が多いのだろうか? それともホウ酸のせいなのか? もしも衰弱したならば、ワタシはゴキブリということになる。

女湯 温泉話で和んだところで聞いてみた。「石油臭くありませんか?」 すると、「硫黄臭い」とおっしゃるのである。さらに続けて「火傷なんかすぐ治る。でも庚申の湯は硫黄がきつすぎて気分が悪くなる」とまで。
 その庚申の湯って、石油試掘地点じゃない。しかも、火傷に効くのは北海道の豊富温泉ともおんなじだ。越の国辺りでは、石油臭を硫黄臭だというんだろうか? 一度、万座温泉にでも、ご招待しなくちゃならないね。
 それはさておき、この鷹の湯、湯船が大きくなった分、一部循環しているそうだ。にも関わらず飲泉可能ということは、「Bath to Bath」でまわしているに違いない。地元の常連さんからの伝聞だけに、耳にした以上は一言書き添えておく。

大厳寺高原の棚田(天水田) 帰り道、大厳寺高原まで棚田の見学に出かけた。なぜに段々畑にしないのかと不思議に思っていたのだが、雪解け水、すなわち天水を蓄えておくのに、これほど効率的なシステムが果たしてあろうか。川から水を引き揚げるとなると、それはそれは大変だよ〜。
 この町の棚田の風景、人が強固な意志をもって米を作ろうとしたものではなく、あくまで自然と折り合いをつけながら、何とか生きていこうとしている姿のように思えてならない。

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