信州高山温泉郷を、山田温泉から七味温泉に上っていく道路右手に、「五色の湯旅館」は建つ。松川渓谷に沿う秘湯の一軒宿なのである。
館内階段を2階分ほど下に降り、とびらを開くと谷に出る。歩道に沿って脱衣所があり、右に女性用露天、まっすぐさらに下ると男性用露天となっている。
脱衣所と、あえて言うのは他でもない。カゴはあっても目隠しがないのだ。脱衣室>脱衣小屋>脱衣所と定義するなら、その最低ランクに位置する。それでも、鷹の湯温泉の脱衣所や、赤湯温泉のドラム缶式脱衣小屋よりは広い。野天はそもそも、このレベル。上等、上等!
カゴの中には衣服が無造作に脱ぎ捨てられていた。どうやら、先客が一人いるらしい。ここからスッポンポンで露天まで歩くには、ちょっと勇気がいる。一応、念のためにバスタオルを巻いて、いざ、露天へレッツゴー!ゴー!
野趣にあふれる岩風呂は、足が全部かくれるほどの深さのうえに、熱いときている。しめしめ。バスタオルをベンチに放り投げ、はたと気づいた。ワタシ、一人なのだ〜!
「あの脱衣所の、カゴの服はだれのもの?」と、悩みながらつかっていると、女性用露天にダンナがやってきた。ワタシの脱いだ服を両手一杯かかえてね。なんと、あそこは、殿方用の脱衣所だったようである。よくよく見れば、ベンチの後ろに女性用脱衣所があった・・・。
熱〜いお湯をたんのうしたあと、男性用露天をのぞきに行った。川をはさんだ眼前に残雪いだいた小山が迫り、ダンナも心地よさそうに、まだやわらかい春の日差しを楽しんでいた。こちらは適温、容積が大きいからだろう。
ここのお湯、さまざまに色を変えるところから、五色温泉と呼ばれるらしい。宿の設備こそ、古くてキシミも目立つのだが、今度は泊まりで五色全部楽しみに来ようかな? と思わせるお湯である。
帰り際、宿の玄関先にて、お孫さんといっしょに遊ぶおじいちゃん。穏やかで、温かかったな。おじいちゃんが主だったとき、ここはホントに「ランプの宿」だったんだね。
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