山田牧場への登り道を右へ折れ、いまだモノトーンに沈む松川渓谷を下っていく。心もとなげに架かる細い橋を渡れば、4軒の宿がひっそりと肩を寄せ合うように川沿いに並ぶ。七味温泉である。
4階の客室はツインの洋間。フルサイズの応接セットがでんと控える。おまけに8畳の和室つき。意外なまでに応接セットが快適で、とうとう和室は荷物置き場にしかならなかった。応接セットサイズの部屋に泊まったこともあるというのに、もったいないことをしたものだ。
窓の下には露天風呂。かつてつながっていた男湯と女湯が不完全に仕切られている。それはともかく、女湯も丸見えじゃないのよ〜! しかも、お湯は透けてるし〜! 仲居さんにうかがうと、「仕切りに近寄れば見られませんよ」と、澄ました顔でのたまうのである。しかし、竹柵の仕切りと土台の岩の間には大きなすき間が・・・。
岩風呂の造りとなっている内湯はけっこう白いお湯。それにしても「七味」というからには、お湯が辛いんだろうか? 思わずなめてみたのだが、もちろんそんなことはない。7つの源泉を混ぜ合わせているところから「七味」というのだそうである。
「色の白い貸切露天風呂あります」との表示からすると、ブレンドの具合を変えているのだろう。露天と内湯でお湯の色が違うのもそのせいだろうが、だったら露天に白いお湯の方がお似合いなのにね。人気の高い「鶴の湯」しかり、「泡の湯」しかり・・・。
夕食は囲炉裏の切られたお食事処でいただく。十何畳もあろうかという板張りの部屋に、たったの二人きりじゃ、ちょっと寂しい。炭火であぶられるのは、イワナとシイタケ、小芋といった山の品々。刺し身もマスと桜肉。
マグロの赤身と間違えて、口に運んだ競馬好きのダンナときたら、「お馬さんを食っちゃったよ〜!」と大騒ぎ。明日は桜花賞だもんね・・・。さらに続けて桜肉のステーキが出されたときには、さすが観念したのか、おとなしく箸をつけていた。
長野の朝に納豆はつかない。代わりを務めるのが玉子。しかも今どき何ともめずらしい生玉子。ご飯にぶっかけ、もりもりいただく。
ダンナがお替りを差し出したとき、おひつの中はすでにして空。ワタシに向かって「朝っぱらから、お替りすんなよ!」ですって・・・。自分は3杯目のくせしてね。そっと出せよ〜!
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