わがまま温泉日記 稲子湯 いなごゆ

稲子湯
住所 長野県南佐久郡小海町大字稲子1343 〒384-1104 Memo:
入浴料 \600
電話 0267-93-2262
営業期間 通年
泉質 単純二酸化炭素・硫黄冷鉱泉(硫化水素型) 7.6度 pH4.9 44.0L/分
旅行日 02/09/23
コメント 麦草峠から下ってくる道、はや紅葉

 稲子とは、まさしく「稲の子」だけあって、稲とは切っても切れない関係にある虫。すなわち、イナゴのことなんだけど、このお湯に何故、この名がついたか分からない。
 とはいえ、近年、田んぼでイナゴを見かけることもないという。近代西洋文明にのっとった農薬散布による駆除で、完膚なきまでに駆逐してしまったのだ。かつては「稲の子」と、半ばあきらめ顔をして、自然と折り合いをつけながら付き合ってきた日本人の知恵、どこに消え失せてしまったのやら・・・。

稲子湯 標高1,500mの高所に位置するこの宿は、「北八つ」登山の基地なんだとか。八ヶ岳から下山した山男たち、玄関先で重そうなリュックを下ろして上がり込む。その後を、温泉グッズを携えたワタシがトコトコ続いて入る。
 玄関先には登山靴がずらりと並ぶ。リュックは外に置いたまま。山男たちの汗臭〜い重いリュックなど、誰も持っていこうとはしないのだろう。

 ひと汗流すヤマメならぬ山女でもいるかな〜と、風呂場をのぞくと誰もいない。またもや、お湯を独り占め。
女湯 かなり熱いお湯ではあるが、決して水で埋めたりしない! 湯船の八分目くらいしか、お湯がないのが不満だが、断じて水を足したりしない!
 しかし、よくよく考えてみる。先ほど述べた「水」の正体、ここでは源泉そのまま、7.6度の冷鉱泉。沸かし湯を源泉で埋める仕組みとなっているのだ。となると、埋めれば埋めるほど源泉に近づくはずだが、源泉を入れる赤いバルブをひねる気になれないのが、不思議なところ。習慣とはいえ、げに恐ろしきものである。

赤いバルブをひねると源泉投入 パスカルの穴も見える 隣の男湯とは積み上げられた岩で仕切られ、その岩肌を冷鉱泉が伝い落ち、硫黄分でもこびりついたか、真っ白に染め上げている。なるほど、炭酸泉だけあって、飲んでみると、シュワッとさわやか、サイダーなのだ。もう一杯! 当たり前のことだけど、お代わり自由がうれしいね・・・。
 正直なところ、はっきり体感できるまで、炭酸が含まれているとは思わなかった。肘折温泉カルデラ館で飲んだ炭酸泉より濃いような気がする。それもそのはず、成分表を見ると、1,094mg/kgの二酸化炭素を含むというのだ。含有成分が1,000mg/kgあれば温泉と認められるそうだから、炭酸成分だけでこの数値をクリアするとは恐れ入る。まごうことなき、バリバリの炭酸泉なのだ。
 ところが、沸かし湯に浸かってみると、これぞ炭酸泉と呼べるほどの浴感はない。加熱によって、気の抜けたサイダーになってしまったようである。

野の草花を失敬 冷鉱泉の悩みの種は、お湯を沸かす燃料費。経済性を追い求めるなら、ぬる目に沸かして濾過循環方式をとるところ、ここでは熱めに沸かして、源泉で埋め、パスカルの穴から大気圧にて自然排湯。何とも良心的だね〜。

 クルマには、剪定バサミと古新聞を積んできた。帰り道、ススキをはじめ、野の草花を摘んでみた。草むらからは飛び出すイナゴ。
 ススキだってイネ科植物なんだから、顔を出してはくれないかと願ったけれど、そうは問屋がおろさない。でも、東京のお花屋さんで買おうとすると、千円は下らないので得意顔。

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