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おばあちゃんの病気

  七十六歳のおばあちゃんが久しぶりで外来にやってきました。
 「かぜをひいちゃって」
 直感で「別の病気だな」とわかります。お話を伺ってみると、やはり風邪の症状ではありません。顔色は悪く、胸の音も弱々しく、肩で息をしています。以前に会ったときより、体が一回り小さくなっているように感じます。「健康」でないのは明らかです。
 「おばあちゃん、入院しなきゃ良くならないなあ」
 頑固なおばあちゃんがいとも簡単に入院を承諾してくれました。しかし、残念なことに状態は予想以上に悪くなっていました。
 「こわい、食べたくない」
 おばあちゃんは入院してからほとんど寝たきりになってしまいました。胸にもおなかにも水がたまっていました。おなかには野球の球ぐらいの大きさの固いしこりを触れます。原因は悪性腫瘍と、その転移に伴い胸とお腹に水がたまったに違いありません。
 家族へお話をしてみます。「病気はたぶん大腸癌だと思います。しかし、病気の進み具合とおばあちゃんの体力から、根本的な治療(手術)は無理です。今の状態で検査をすることも負担がかかりますし、たとえ診断がついても治療には変化はなく、役立ちません。あえて検査はせず、痛み、だるさを取り除く治療に専念しましょう」
 結局、おばあちゃんは二ヶ月間病気と闘って亡くなりました。もし半年、一年早く病院に来てくれたなら・・・。われわれには無力感と無念の気持ちが残りました。
 当院では毎年、約四十人のがん患者さんが診断されます。そのうち「治ってよかったね」と言ってあげられるのは半分。十五年間で診断された五百三十五人のがん患者さんのうち、現在島で生活しているのは二百三十八人。たとえがんと診断されても、治療することができ、五年も十年も生きていてほしい。そのためには早期に診断をして治療しなければなりません。
 「先生たすけて・・・」という時期ではすでに遅いことが多いのです。
 
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