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極小未熟児の搬送

 利尻島国保中央病院の今年の正月は、極小未熟児の誕生で慌ただしく明けました。
一月二日早朝に七ヶ月の妊婦さんが腹痛を訴え、救急車で搬送されると連絡が入りました。その後、すぐに破水、出産してしまったと連絡。スタッフに緊張が走ります。
 さっそく札幌医大の産婦人科の医師と連絡をとり、救急処置の指示を仰ぎました。
 お母さんはまず問題ないでしょう。しかし、七ヶ月の未熟児は自分で息をして生きてゆける限界の月齢です。「もしも」の場合を想定して搬入の準備をしました。
 何せ七ヶ月の赤ちゃんはまだ体の機能も成熟しておらず、呼吸もできないかもしれません。呼吸を補助するために、挿管の準備をし、そして保育器の保温の準備をしました。利尻島国保中央病院では緊急時は当直医だけではなく、他の医師二人に召集をかけてチーム医療をします。
 救急車が搬入されました。赤ちゃんはお母さんのおなかの上に抱かれていました。両手の中にすっぽりと入る1140gの極小未熟児です。
 お母さんとはまだへその緒で結ばれています。呼吸は弱く、酸素不足のために血色は良くありません。すぐにのどに管を入れ、酸素を送りました。体温は35度です。体温を上げるために背中に湯たんぽを入れ、さらにタオルケットの上からドライヤーで暖めます。それでもお尻に入れた体温計はなかなか上がりません。
 状態が落ち着いたところですぐに搬送です。時間がありませんが、昼間ですし、一時間待てば定期船が出ます。海も荒れていません。迷わず市立稚内病院の小児科の先生へ搬送のお願いの電話を入れました。先生からの指示を仰ぎ、搬送の準備です。重症患者です。医師と看護婦が同乗して搬送しました。
 三ヶ月たって、その子は無事島へ帰ってきました。五ヶ月たった現在、体重は5000gを越し、ふっくらした赤ちゃんになりました。
 利尻島の人口が一人増えました。この子はきっと強い星を持っているのでしょう。
 
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