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「告知」

 時代の趨勢である情報公開、医療においての極論は「告知」ということになるでしょう。
 ただ日本人にはまだこれを受け入れられるだけの心理的土壌がないように思えます。外国では心の支えとなる宗教と精神科医などによる精神心理カウンセラーが「告知」後の患者の心のケアをサポートしています。しかし、日本では患者さんのメンタルケアはまだ十分とはいえないように思います。
 「告知」はデリケートな行為だけに、特に治療が難しい患者さんに対しては性格や状況を考慮し、家族にも相談しなければ決められないと思います。決して一般論として行なえるものではありません。むろん患者さんに「告知」をするだけなら、決して難しいことではありません。むしろ大変なのは「告知」の後に家に帰ってからでしょう。病状が進んで、体力が落ちてきて精神的にも滅入っているときにそれを支えるのはやはり家族。たとえその時入院中であっても医師や看護婦の役割は限界があります。その状況まで考えあわせると「告知」は決して安易にできる選択ではありません。
 最近我々が断腸の想いで「告知」をした2名の患者さんが相次いで亡くなられました。お二人ともご家族と十分相談した上でご本人に病名と残された猶予期間を告げましたが、気丈にそして平静に受けとめて下さりました。「ある程度は覚悟していました。告知されてよかった。残された日々を有意義に過ごしたい」と。そしてそのご家族もその重さをしっかりと受けとめてくれました。しかし笑顔の裏にはどれだけの苦悩が隠されていたかは想像に難くありません。その後、ご家族で旅行に行かれたようで、お二人とも自分の運命を前向きに考えられる方で我々もほっとしました。それと同時に何も治療してあげられない無力さを感じていました。お二人の訃報は間接的に知ることになりましたが、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 
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