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TV ANIMATION SERIES PRINCESS TUTU 
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Um die Fernsehserie

Princess Tutu

(Zeichentrickfilm)


 妙にはまってしまったこの作品、ネットニュース用に記事を投稿していたのですが、せっかくなのでまとめて載せておく事にしました。 感想とか言うよりは、あらすじみたいなものなのですが。
 この作品も、舞台がヨーロッパ、それもドイツ風の街ということもあり、サブタイトルのサブタイトル等でドイツ語が使われています。 そのため、上の表記等も、「Kanon」にならってドイツ語で表記するようにしています。

1.AKT

2.AKT

3.AKT

4.AKT

5.AKT

6.AKT

AnimeTV特集

7.AKT

8.AKT

9.AKT

10.AKT

11.AKT

12.AKT

13.AKT


1.AKT


「プリンセスチュチュ」、第1幕「あひると王子さま」を観ました。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Der Nussknacker: Blumenwalzer〜」。
意味は「くるみ割り人形:花のワルツ」。
# 「ss」の所は、本当はエスツェット(「β」に似た文字)です。

一応、ネタばれ防止の改行を。

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…何か、妙にツボにはまってしまいました(^_^;
先週か先々週の、前番組(「魔法遊戯」)内で流れた番宣CMからして、充分
雰囲気が怪しかったので、ちょっと期待していたのですが、まぁ期待通り。

昔のおとぎ話のようなプロローグに始まり、ドイツ語のサブタイトル(の
サブタイトル。「Kapitel des Eies」=「卵の章」も。)に、やはりドイツを
思わせるヨーロッパ風の街並み、バレエ学校、寮生活、元気で可愛くてドジな
主人公と友人達、憧れの先輩と、そのただならない関係の友人。

寂しげな瞳の王子さま、妖しい男(魔法使い?)、猫先生、プリンセス、魔法、
そしてアヒル…。

どこまでが夢でどこからが現実なのか、リアルなのかファンタジーなのか、
境界があやふやな世界。

原案・キャラクターデザインに伊藤郁子さん、総監督に佐藤順一氏という、
「セーラームーン」や「魔法使いTai!」のスタッフ。
彼らが創り出す不思議な世界を彩る、クラシック・バレエ音楽と、
岡崎律子さんの歌。

キャラクターの名前も意味深です。
みゅうと=Mythe=神話。
ふぁきあ=Fakir=魔法使い。

公式ホームページによると、「構想10年」だそうですが(^_^;
いやぁ、こーゆー雰囲気の話は大好きです。特に猫先生が良い。

え゛、次回はアリクイですか?

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2.AKT


「プリンセスチュチュ」第二幕、「心のかけら」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Schwanensee: Seene finale〜」。
これは、「白鳥の湖:情景・終曲」とするのが良いみたいです。

「Seene」の二つ目の「e」には「`」が付いているようですが、これはドイツ語では
ないのでしょうか。
(確か、ドイツ語に「`」の付く文字は無かったような…多分)

例によって、ネタばれ防止の改行ついでに駄文を。

# 今度、うちのマンション(賃貸)に、
# ケーブルテレビが
# 入る事になりました。
# 加入料がいるみたいですが、
# 工事費は無料だそうで。
# それは良いのですが、
# 工事期間中のほぼ一週間、
# テレビ大阪、サンテレビ、
# KBS京都といった
# UHF局が入らなくなるとのこと。
#
# これは痛い。
# 何せ、今観ている番組の
# 約7割が、
# テレビ大阪とサンテレビに
# 集中してますので…(^_^;
#
# 工事期間中に
# 最終回になる番組が
# 無さそうなのが
# 幸いですが。
#
# でも、「チュチュ」は
# 小中氏脚本の第四幕が
# 観れない事に…(;_;)

さて、駄文はこのぐらいにしまして。

相変わらず、雰囲気ありまくりの岸田今日子さんによるナレーションで
始まります。

昔々に死んだ男が書いていた、話半ばで中断してしまった物語。
悪賢い大烏と、勇敢な王子さまの闘いの物語。
物語を飛び出した大烏を追って、自分も飛び出した王子さま。
大烏を封印するため、自らの心臓を取り出した王子さま。
禁断の技によって、かけらとなって飛び散った心臓。
かけらが飛び散った街は、その時から、現実と物語が混じり合った、
不思議な世界になりました。

その街に住む、あひるという名の少女。
少女は、赤いペンダントの光によって、プリンセスチュチュに
変身し、憧れの先輩・みゅうとを救いました。

…でも、あひるは、本当にアヒルだったのでした。
鳥のアヒルに戻ってしまった少女の前に現れた男・ドロッセンマイヤー。
彼は、あひるが、プリンセスチュチュとして、飛び散った王子さまの
「心のかけら」を集めるというのなら、今一度少女の姿にしてやろう、
と持ちかけます。

もう一度、みゅうとと、人間の少女として逢えるのならば。
ドロッセンマイヤーの申し出を受け入れたあひるは、少女の姿に
戻れました。
でも、アヒルは、普通服なんて着ません。
少女になったあひるは、当然、裸です。
どうしようか困っているあひるの前に、アヒルの制服を持った女が現れます。
妙な手回しオルガン(アコーデオンか?)を持ったこの女、
重要そうな役回りらしいのに、公式ホームページの
キャラクター紹介にも載っていない、謎の女です。
でも、とりあえずあひるの敵ではなさそう。

さて、学園に戻ってきたあひるは、屋外で読書をしているみゅうとを
見つけ、脚を怪我させてしまった事を、勇気を振り絞って謝ります。

そこに現れた一人の女生徒。
その娘はアリクイ。
そう、彼女は、アリクイのアリクイ美!(どど〜ん!ってな感じで)

アリクイ美は体がでかい。川澄舞@Kanonが貰ったオオアリクイのぬいぐるみより
でかい。

アリクイ美は舌が長い。話すたびに、その舌がちろちろと伸びる。
さらに、その舌でみゅうとの顔を舐めたりもする、おちゃめさん。

アリクイ美は手足が太い。しかも、毛が生えている(アリクイだから)。

アリクイ美は、みゅうとの恋人・るうに宣戦布告をするのです。
何故なら、アリクイ美はバレエがうまい。アリクイだけど。
特別クラスの五つの定員枠を賭けて、バレエ勝負です。

アリクイ美のバレエはパワフルです。細っこい体つきとはいえ、仮にも
男子のみゅうとを高々と投げ上げ、キャッチしてリフトするぐらい力強いです
(アリクイだから)。技術的にも完璧に近い(アリクイだけど)。

でも、少しも楽しそうじゃない…。
アリクイ美とみゅうとのパ・ド・ドゥを見るあひるは思います。
そのあひるを、パートナーに指名したるう。
るうのリードで、下手ながらも一生懸命に、そして楽しく踊るあひる。
その二人の演技に、皆から拍手が贈られます。

ちなみに、「パ・ド・ドゥ」とは、魔女っ子を目指すお魚ドドンパ娘…
ではなく、「二人の踊り」という意味だそうですが、同性同士で踊っても、
パ・ド・ドゥとは言わないそうです。
るうとあひるの演技は、正確にはパ・ド・ドゥではない、ということになります。
いや、ああ見えて、実はるうが男の子だ、なんて事は…嫌過ぎなのでやめときます(^_^;

とにかく、バレエは観る人を感動させてこそ素晴らしい。
拍手の差で、どちらが勝ったかは明らかでした。

しかし、みゅうとはその事にも無感動で無関心。
その態度に腹を立て、傷ついたアリクイ美は、みゅうとを罵倒します。
そのアリクイ美の心に囁きかける、もう一人のみゅうと。
それは、飛び散った王子さまの心のかけら。
王子さまが無くした、「悔しい」という心。

その心に捕らわれたアリクイ美を、あひるはプリンセスチュチュに変身して
救います。
るうに憧れていたアリクイ美。
るうのようになりたいと願っていたアリクイ美。
るうにその事を告げた時、「無理よ」と言われて傷ついたアリクイ美。
その全てを受け止め、そして楽しく踊る事を思い出させたチュチュ。
アリクイ美は、今度こそ、心から楽しく踊れました。

二人の踊りがやんだ時、心のかけらはアリクイ美から離れ、王子さま−
みゅうとの元に戻ったのでした。
駆けつけたふぁきあが見たもの…それは、ほんの少しだけ、心を取り戻した
みゅうとだったのです。

そして結果発表の日。
特別クラスのメンバーは今までどおり。
しかし、それを聞いても、アリクイ美は今までのように拗ねたりはしませんでした。
今なら、るうが言った「無理」の本当の意味が判るから。
るうのようにはなれない。なる必要もない。
アリクイ美は、自分のバレエを踊れば良いのだから。

で、あひるはと言えば。
拍手は貰ったものの、それはリードをしたるうの功績ということで、
見習いクラスに落とされてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし(^_^;

果たして、こんなあひるですが、幸せになれるでしょうか?
次回予告を見ると、何か無理そう(^_^;

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3.AKT


「プリンセスチュチュ」第三幕、「プリンセスの誓い」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Dornroschen:Panorama〜」。
意味は「いばら姫(またはねむり姫):パノラマ」。
二つ目の「o」には、ウムラウト「‥」が付きます。

一応、ネタばれ防止の改行を。

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お話は、いつものように始まります。

昔々、一人の男が死にました。
書きかけの物語から飛び出したのは、悪賢い大烏と、美しい王子さま。
大烏を封じるため、自分の心臓を取り出した王子さまは心を失い、
心臓はかけらとなって街中に飛び散りました。
そのかけらは、心に隙間を持つ人に入り込みました。
かけらに取り憑かれた人の中には、自分自身の物語を狂わせてしまう人もいたのです…。

さて、今日も今日とてあひるちゃん。
前回、見習いクラスに落とされてしまったため、基本の練習をしています。
本当にプリンセスチュチュになれたことが嬉しくて、ついつい口元も緩みがち。
傍には、励ましているんだか、からかっているんだかよくわからない親友二人。
(でも、りりえは、ドジなあひるの復活(?)に、明らかに嬉しそう(^_^;)

緩みっぱなしのあひるを見て、何かあったのと詰め寄るぴけとりりえ。
厳しい追求に、つい夢の話として語るあひる。
大烏と王子さまの物語の事を。

「どこかで聞いたような話ね」
友人が取り上げたのは、さっきまであひるの頭に乗っかっていた本。
本のタイトルは、「Prinz und Rabe」…「王子と烏」。
「書いた人はドロッセルマイヤー。常識よ」ぴけが言います。さらに。
「でも、それ書きかけなんだよね」「書いている途中で死んじゃったのよ」
…では、あひるが出会ったあの男はいったい?
怖い考えになってしまうあひる。去り際の友人達の顔も何か怖い。

一人練習場に残ったあひる。考えるのは、やはりみゅうとのこと。
そのあひるの目に入る、ピクニックに出掛けるみゅうととるうの姿。
流石のあひるも、ちょっと気分が落ち込みますが、みゅうとを探しに来た
ふぁきあの物の言いように、落ち込みモードもどこへやら。
気分転換を口実に、練習を抜け出します。

しかし、二人に会ったら、いったいどうする?
悩むあひるの前に現れた、謎の女・エデル。
それとなく、みゅうと達の事を相談してみますが、さっぱり要領を得ません。
エデルの答も、何か禅問答みたいで、よくわからない。
でも、自分のわけがわからない相談に、それでも真面目に答えてもらえたのが
嬉しいのか、それとも本当に何かわかったのか、笑顔で礼を言うあひる。

そしてやって来たのは街外れ。ピクニックには良いところ。
案の定、大きな木の陰で、バスケットを広げている二人を見つけたあひる。
みゅうとの膝枕で気持ち良さそうなるう。
「わたしのこと、好きって言って」「るうが好き」
それは、一見すると、恋人同士の甘いひと時に見えました。
(て言うか、みゅうと、その場所変わってくれ(^_^;)

でも、次のるうの行動は。
みゅうとが差し出した壜の飲み物を、全てこぼしてしまうるう。
そのくせ、水を汲んでくるよう、みゅうとに言うるう。
それは、恋人に対するお願いというには、あまりにも変。
訝しむあひるですが、みゅうとが自分の隠れている方にやってくるのを見て、
慌てて逃げ出します。

しかし、どこをどう間違えたのか、水を汲んできたみゅうとと正面衝突。
何故こんな事になったのか…きっと、るうと自分を置き換えて、
あらぬ妄想に耽っていたのが原因でしょう。

慌てたあひるは、とっ散らかってつい変な事を口走ります。
でも、みゅうとは心を無くした王子さま。
本当にるうが好きなのかどうかもわからない。
ただ、何をすればいいのか教えてくれるのは、るうとふぁきあだけなのだと。

と、木の葉で手を切ってしまったみゅうと。
あひるは、痛いという気持ちもわからないみゅうとを心配します。
「変な顔…」
心配しているあひるを、不思議そうに見るみゅうと。
るうもふぁきあも、そんなことは言わない、と。
そんなみゅうとの姿に、改めて彼を救う決意を新たにするあひる。

とりあえず、みゅうとが持っていた壜の水で傷を洗います。
でも、それはるうのために汲んできた水。またもとっ散らかるあひる。
とにかく、水を汲み直すため、壜を引っ掴んで駆け出しました。

おいしい水はどこで汲めばいいだろう?何せ、あのるうちゃんが飲むのだから。
色々考えつつ、ふと気がつくと、引っ掴んだ壜の先には、相変わらずその壜を持った
みゅうとがくっついていました。
(何て主体性のないやつだ)

慌てるあひるに、みゅうとは一軒のレストランを指さします。
丁度いい。レストランの水なら、きっと美味しいに違いない。
二人を迎えたのは、猫でもアリクイでも無く、割と普通の人間のおばさん。
名はえびね。レストランのオーナーシェフ。ちょっと眼が怖い。
水を貰いたいだけのあひるに、ひたすら食事をすすめます。ただでいいからと。

断りたいあひるですが、胸のペンダントが赤く光ったのが気になります。
あの人が、心のかけらを持っているのだろうか?
仕方なくテーブルにつくあひる。いつものように、言われるままに座るみゅうと。

そして運ばれてくる料理の数々。見た目はとっても美味しそう。
でも、味がしないし、何より全然温かくありません。むしろ冷たい。
ムニエル、シチューと、ひたすら続く冷たい料理。
結局、最後のデザートまで、一見温かそうな料理も、全てが冷たく変わってしまう。

次のコースを出すというえびねさんに、これ以上冷たい料理ばかりはたまらないと
思ったあひるは、とにかく心のかけらがあるかどうか確認しようと、厨房に向かいます。
そこで見たものは、包丁を研ぐえびねさんの姿。そして無気味に響くその言葉。
「あなたと、どちらが美味しいでしょうね?」
あひるの脳裏に浮かんだものは、料理され、盛りつけられたアヒルの姿の自分。

一気に怖い考えが暴走したあひる。急いでみゅうとを連れ出そうとしますが時既に遅し。
えびねさんに見つかり、あまつさえ、もう満腹とか言ってしまったものですから、
あひるは一人、レストランから放り出されてしまいます。

みゅうとを助けなければ。
その時、胸のペンダントが赤く光ります。それは、王子さまの心のかけらがある印。
プリンセスチュチュに変身したあひるは、えびねさんの心の隙間を見つけます。

庭先にある小さなお墓。その下に眠るのは、えびねさんの最愛の夫。
夫の作った美味しい料理と、自分の料理とを比べて、えびねさんはよく尋ねたのです。
「あなたと、どちらが美味しいでしょうね?」
そんな妻の戯れに、からかいながらも優しく答えてくれた夫は、今はもういません。
寂しい…えびねさんに取り憑いていた心のかけら。

あひるは、えびねさんの言葉を誤解していた事に気付きました。
そしてもう一つ、先刻偶然に見つけていた、大量の料理のレシピが誰の手による
ものだったのか、というのにも。

えびねさんは、決して独りではありませんでした。
夫の遺した料理のレシピ。それを使って、温かく美味しい料理を作ればいい。
そうすれば、えびねさんはまた夫と一緒に生きる事ができるのです。

その事に気付いたえびねさん。気付かせたのは、プリンセスチュチュ。
えびねさんは、もう寂しくはありません。
えびねさんの中に居場所を失った心のかけらは、プリンセスチュチュの
手によって、王子さまの中に戻っていきました。

全てが終わったところに、ふぁきあとるうが駆けつけます。
ふぁきあは、ずっとみゅうとを探し続けていたのです。
しかも馬で。さすがです(<何がだ)

一方のるうは、「みゅうとが『気持ち』と言った」というふぁきあの言葉が気にかかり、
一緒に探していたのでした。

二人に、プリンセスチュチュの事を話すみゅうと。
しかし、るうはその話を一笑にふします。
プリンセスチュチュは、お話の中の存在だと。
美貌と賢さと強さを授けられたのにもかかわらず、決して王子さまとは
結ばれない運命なのだと。
告白したその途端に、光の粒となって消え去るのだと。

その言葉は、物陰に隠れていたあひるの耳にも届きます。
プリンセスチュチュがお話の中の存在?
では、ここにこうして存在している自分は?アヒルの私はいったい何?
何が本当で、何がお話なのか?

そして響く、ドロッセルマイヤーの声。
物語は、いつも「めでたし、めでたし」とは限らない…。

何かやっぱり幸薄そうなあひるの、明日はどっちにあるのでしょうか?
以下、次回。

蛇足。
ところで、あひるが練習に使っていた「王子と烏」の本、あれは前回、
みゅうとが読んでいた本と同じもののようです。
自分自身の物語を読んで、みゅうとはいったい何を思っていたのでしょうか。
(きっと、何も考えてなかったんでしょうけど(^_^;)

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4.AKT


「プリンセスチュチュ」、第四幕「ジゼル」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Giselle〜」。
意味は…って、まんまですね(^_^;

とりあえず、ネタばれ防止の改行を。


























昔々、決して叶わない、悲しい恋のお話がありました。
しかし、そのお話を紡ぐべき男は、もうこの世にいません。
結末を迎えられない恋は、その想いを抱えたまま、この街を
彷徨い続けているのです…。

金冠学園のいつもの風景。特別クラスの授業中。
でも、伴奏の音楽を演奏してるのがペンギンなんですけど。
(指が無いのに、なんでピアノが弾けるんだ。新種の温泉ペンギンかおまえは。
 まぁ、いまさら気にすることでも無いですけどね(^_^;)

いつものごとく、見事なるうの演技に、見学しているあひる達も感嘆しきり。
いつか、あたしもあんなふうになれるのかな?
そんなことを思わず口に出してしまったあひる。
すかさず入る、ぴけとりりえの激しいツッコミ。

そう、プリンセスチュチュになれば、どんな踊りも踊れます。
でもそれは、本当のあひるではありません。
本当のあひるは、踊りは下手だし、見習いクラスだし。
その上、本当の本当のあひるは、実はただのアヒルだし。
練習なんかしても無駄なのかも…。珍しく思考が後向きなあひる。

その時、踊るるうの表情が、だんだん苦しげになっていきます。
それに気付いたあひる。
「危ない!」るうの足元がふらついたのに、思わず叫んでしまいます。
その声とどちらが先か、バランスを崩して倒れるるう。

その事を練習の邪魔をしたととられてしまい、あひるは猫先生に居残り練習を命じられま
す。
それでも、この練習で頑張れば、初級クラスに戻る事ができる。
「ちゃんと練習しないと、私と結婚してもらいますよ!」
炸裂する猫先生の必殺技!
この技をくらった女生徒は、普段の十倍頑張ることができる…かどうかは
ともかく、練習を始めるあひる。

と、窓の外にはみゅうと。そしてその腕をとるのはるう。
二人の姿を見たあひるの脳裏によぎる、るうの言葉。
プリンセスチュチュは、決して王子さまと結ばれない運命…。

でも、あたしは王子さまに心を取り戻してあげたいだけ。
一緒にとか、告白とか、そんなことは関係ない。
それはまるで、自分自身に言い聞かせるように…。

そんなあひるの耳に聞こえてきたのは、ピアノの伴奏曲。
弾いているのは、さっきのペンギン。
(だから、何でペンギンがピアノを弾けるんだって)

音楽を聴いてるうちに、何だか楽しくなってきたあひる。
様子を見に来たぴけとりりえも、楽しげに練習しているあひるの姿に
少し驚きます。
それでもツッコミ入れるのは忘れないぴけとりりえ。
(りりえ、あひるの首を捻るだけでなく、腕までキメてます(^_^;)
ノリがいい二人、あひるに付き合って一緒に楽しく練習です。

その様子を高みから見ていた猫先生。
横転ひねり一回転ジャンプで床に降り立つと、唐突に残念なお知らせ。
「残念ながら、私との結婚は取りやめです!」
…って、何が残念なのかと思えば。
きっと、「えー、先生と結婚できないなんて、残念ですぅ」とかいう
反応を期待していたのでしょう(^_^;

でもそれは、あひるに初級クラスへの復帰を認めるということ。
手放しで喜ぶぴけとりりえに抱きつかれて、あひるもすごく嬉しそう。
心なしか、猫先生の表情も優しげに見えます。
(気のせいかなぁ。何せ猫だし)

やがて夕暮れ時。
自室の窓から外を眺めるあひるの目に映ったのは、またもやみゅうとの姿。
外に出てみると、みゅうとは誰かと話をしている様子。
でも、みゅうとの前には誰もいません。
不審に思って駆け寄ろうとしたあひるに吹きつける、一陣の風。
思わず瞑ったその目を開いたとき、みゅうとの姿は消えていました。

あひるは知りませんでした。
みゅうとが、ずっと誰かに呼ばれていた事を。
誰かと話したい、寂しいという気持ちを理解していた事を。
そして、その事をふぁきあに悟られ、心など持つな、と言われていた事を。

慌てて駆け出したあひるは、学園から戻ってきたるうと鉢合わせします。
みゅうとのことを尋ねるあひるに、自分は見ていないと応えるるう。
それより、昼間、練習の邪魔をした(とるうは思っている)ことを問い詰めます。
るうの機嫌が悪そうなのは、昼間、みゅうとと二人でいるところをふぁきあに
邪魔された上、みゅうとに対する接し方について、彼と言い争いを
した事が尾を引いていたのかもしれません。

でも、みゅうとが心配なあひるはそれどころではありません。
謝るのもそこそこに、みゅうとを捜しに駆け出すあひる。
話の腰を折られたるうも、その後を追って走り出します。

しかし、意外と足が速いあひる。
立ち止まったところにようやく追いついたるうは、息が切れてしゃべるのも大変。
完璧に見えるるうにも、どうやら弱点はあったようです。

みゅうとを捜して、一緒に街を歩く二人。色んなことを話します。
「『みゅうと』って気安く呼ばないで」
「だって、みゅうとがそう呼んでいいって」
「それに、友達でもないのにわたしのこと『るうちゃん』だなんて」
「じゃあ、何て呼べば?」
「るう様」
「るう〜〜〜〜〜〜〜、さ、ま」
「何でそんなに間を空けるの」
「だって変だもん。それに可愛いし、こんなに一緒に歩いて話したんだから、
 もう友達だよ。だから、るうちゃんって呼ぶね」
…何か、もう完全にあひるのペースにはまっています。
どうでもいいけど、さっきから街に人気が全然無いんですが…。

やがて、辺りはすっかり暗くなり、霧まで立ちこめてきました。
その霧の中を、滑るように進む人の列。皆泣いています。それは葬列。
そして、その列に混じって歩いている、あれはみゅうと。
急いで追いかける二人ですが、葬列は行き止まりで消えてしまいました。

何がなんだかわからない二人の前に、またもや現れたエデルさん。
自分の名前を知っていたエデルを怪しむるう。
あひるがいくら、エデルさんは何でも知っている、怪しい人じゃないと言っても、
るうには納得できる筈もありません。
(そりゃそーだろう)

それはともかく、今目の前で起きたことを話すあひるに、エデルさんは語ります。
それは、お話のお話。
身も心も美しい、ある乙女の悲しい恋のお話。
乙女が恋した相手は、身分の違う高貴な人。決して結ばれることはありません。
絶望した乙女は、死んでしまったのです。
この世で結ばれないのなら、あの世で想いを遂げたい。
しかし、その想いは実ることなく、乙女は身代わりの男を連れて行ってしまいました。

この街にもそのお話と同じような乙女がいたのでした。
恋をして、絶望して、死んでしまった乙女。
そして今、身代わりの男を、みゅうとを、連れて行こうとしている。
お話と同じように。この、本当とお話が混じり合った街で。

その時、響きわたる鐘の音。現れる古びた屋敷。
庭にはみゅうと。その周りを囲むのは、白い乙女達の亡霊。
中でもひときわ美しい乙女が、みゅうとに白い花を差し出します。

それは、ジゼルのローズマリー。
それを受け取ってはいけない。連れて行かれてしまう。
事態を悟ったるうは、みゅうとを取り戻そうとしますが、乙女に阻まれます。
踊り続けるるうと乙女。
しかし、やがてるうは力尽き、立つ事もできなくなってしまいました。
再び差し出された花を、受け取ってはいけないと叫ぶるう。

その前にすっくと降り立った白い姿。それは、プリンセスチュチュ。
乙女に対抗して踊り続けるチュチュの力に、驚愕するるう。

チュチュは乙女に語りかけます。
自分も、同じなのだと。決して愛する人と結ばれない運命なのだと。
乙女は問います。同じ運命なのに、どうしてそんなに楽しそうに踊れるの?
チュチュは応えます。それは、悲しみにも負けない、たくさんの色々な気持ちを
持っているから。

乙女の悲しみはわからない。でも、今までどれだけ悲しんできたのかはわかる。
だから、もう悲しまなくてもいい。
その悲しみは、乙女の本当の気持ちではないのだから。

その言葉に、そしてチュチュが流してくれた涙の前に、乙女は消えていきます。
後に、一つの「心のかけら」を残して。
それは、「悲しい」という心。
決して進んで求めはしないけれど、それでも人には必要な心。
その心を取り戻したみゅうとの目に、涙が光ります。

また一つ、王子さまの心のかけらを取り戻したあひる。
しかし、それは寂しさや悲しみという、つらいものばかり。
果たして、それで王子さまは幸せになるのかな?
意地悪げに響く、ドロッセルマイヤーのその声は、あひるに届いているのでしょうか?

蛇足:
そー言えば、今回の脚本、小中氏かと思ってたら、横手さんでした。
「ニュータイプ」の嘘つき。
(いや、別に横手さんの脚本に文句があるわけでは無いのですが(^_^;)

蛇足その2:
るうが、乙女が白い花を差し出すのを見て「ジゼルのローズマリー!」と
叫びますが、バレエの「ジゼル」では、ローズマリーを使うのは、ジゼルではなく、
ウィリの女王ミルタのようです。
すると、あの乙女は、ジゼルではなく…?
(まぁ、あまり細かく考えるようなものでもないでしょうけど)

元ネタになっているバレエについて知っていると、倍楽しめる…かも(^_^;

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5.AKT


「プリンセスチュチュ」、第五幕「火祭りの夜に」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Bilder einer Ausstellung:Die Katakomben〜」。
意味は、「展覧会の絵:カタコンベ」。
「カタコンベ」とは地下墓所の事で、特にローマの初期キリスト教徒の共同墓地が
有名との事です。
曲のモチーフとなった絵は、カンテラを下げパリのカタコンベに案内される、
絵の作者ガルトマン自身を、髑髏の山が見つめている、というものだそうです。
この辺は、今回の地下迷宮の背景に生かされていますね。

では、例によってネタばれ防止の改行を。

# 公式ホームページによると、
# キッズステーションの
# 「Anime-TV」で、
# 「プリンセスチュチュ特集」が
# あるようです。
# 放映は、9/16の25:30〜。
# 再放送は、9/18の25:00〜。
# テレビ神奈川でも、
# 9/14の24:15〜。
# (あ、過ぎてしもた(^_^;)
# 佐藤総監督、
# 河本監督、
# そして、
# 加藤奈々絵さんが
# 出演されるとのこと。
#
# しかしこの公式ページ、
# なかなか
# コンテンツが
# 全部揃いません。
# 「Creator's Column」は
# 週一ぐらいで
# 更新されてる
# ようですが…

物語の始まりは、決まり文句から。

昔々、あるところに、幸せな王子さまがおりました。
辛い未来も過去も知らない、幸せな王子さま。
ある時、王子さまは暖かい温もりを手に入れました。
しかし、その温もりが照らしだしたのは、王子さまの安らぎだけでなく、
不幸も、辛さも、寂しさもでした…。

ここは金冠学園の図書館。
一人読書をしているのは、るう。
そこに現れたふぁきあは、るうが読んでいた本が「王子と烏」なのを見て、
るうに問います。
本の中にいた時のみゅうとに興味が出てきたのか、と。
ふぁきあは、るうがみゅうとに心を取り戻させているのではないか、と
疑っていたのです。
それに対してるうは、もしプリンセスチュチュが本当にいたとしたら?とかわします。
意味ありげに、含みを持たせて…。
そう、この二人は、みゅうとが何者なのかを知っていたのです。

さて、いつものように練習に励む生徒達。
ちょっと違うのは、今日は火祭りのある日だということ。
でも、あひるはアヒルだったので、火祭りの事を知りません。
案の定、ぴけとりりえにツッコミを入れられているうちに、いつの間にか
目の前には猫先生が。
ツッコミを入れていたはずの二人は逃げてます。

火祭りとは、昔の人の格好をして、焚き火を囲んで踊る金冠町のお祭りです。
そこで最も素晴らしい踊りを踊った男女に贈られるのは、金色の林檎。
金色の林檎を得た男女は、永遠に結ばれると言われています。

ま、それはそれとして、授業中に考え事をしていた罰として、あひるは
上級クラスのレッスン室の掃除を言いつけられます。
さもなければ、猫先生と結婚するか、火祭りで一緒に踊るかの三者択一。
あひるに選択の余地はありません。
しかし、爪研ぎ用の板まで用意して、激しくそれを掻きむしる猫先生、
今回は野生に帰りかけてます。

モップとバケツを抱えて、とぼとぼとレッスン室の掃除に来たあひる。
ところが、レッスン室には、王子さまの服装をしたみゅうとが。
その姿に、思わず見惚れてしまうあひる。

しかし、みゅうとはるうを待っていたのです。火祭りの踊りの練習ために。
少し落胆したあひるですが、次の瞬間にはそれは吹き飛びます。
みゅうとが、あひるの名前を呼んだから。
そして、あひるを踊りに誘ったから。
それは、みゅうとが心を取り戻したから?
みゅうとと踊りながら、あひるは嬉しさで一杯になります。

でも、踊るが終わると恥ずかしくて、そそくさと部屋をでてしまうあひる。
そして我に帰ります。自分は、るうの代わりなのだ…。
思わず出してしまったアヒル声。アヒルの姿に戻ってしまう!

慌てて身を隠したあひると入れ違いに、レッスン室に入っていくのはふぁきあ。
あひると踊るみゅうとの姿を見つけてやって来たのです。
あひるはアヒルの姿のまま、ドアの外から盗み聞き。

聞こえてくるのは、ふぁきあのいつものセリフ。
俺の命令以外は聞くな。るうの言う事もだ。
何だ、最近うろちょろしているあのアヒルみたいな女は。
火祭りには行くんじゃない。
その言い様に、やはりいつものように腹を立てるあひる。

しかしただ一つ、あひるには聞こえなかった、しかし決定的な言葉。
記憶を無くして彷徨っていたおまえに、みゅうとという名前を付けてやったのは俺だ。
俺が、おまえを救ってやったんだ。

そして、ふぁきあはみゅうとを連れて図書館に入っていきます。
慌てて追いかけようとしたあひるの前に、るうがやって来ます。
お姫さまのようなるうの姿にも、思わず見とれてしまうあひる。
とりあえず女の子の姿に戻って、るうに声を掛けます。
みゅうとは、必ずるうちゃんのところに行くから。
るうちゃんは本当のお姫さまみたいだし、二人はお似合いなんだから、きっと
金の林檎がもらえるよ。
あまりにもまっすぐなあひるの言葉。
それには、思わずるうの頬も染まってしまうぐらい。
そして、街では火祭りの準備が着々と整っていきました。

さて、図書館にやってきたあひる。
奥の部屋で、みゅうとを閉じ込めていたふぁきあを見つけます。
急いでみゅうとを助け出そうとするあひる。
せっかく心のかけらを取り戻したのに!

思わず口走ってしまったその言葉を、ふぁきあが聞き逃す筈もありません。
ふぁきあはあひるを問い詰めます。
みゅうとが物語の中の王子だという事を知っているのかと。
でも、ふぁきあは、あひるがそれをるうから聞いたのだと思っています。

二人がみゅうとの事を知っていた。
あひるは驚きますが、ふぁきあの言葉は続きます。

みゅうとに心なんて必要ない。
みゅうとの事を何も知らないくせに。
俺はみゅうとの事を何もかも知っている。
心など取り戻しても、俺がすぐ封印してやる。
暗闇に閉じ込めれば、やがて何も感じなくなる。

あまりな言葉に、あひるも抗います。
心が無くてもいいなんて、そんなわけない。
心が無くては、嬉しいことも、好きってことも判らないのに。
そんなの、間違ってる!

しかし、ふぁきあは動じません。
ふぁきあが立ち去った後、あひるは一人考えます。
確かに、みゅうとの事を何も知らない。自分は、余計な事をしているのかも…。

そんなあひるの耳に聞こえてきたのは、手回しオルガンの音。
庭にいたのは、神出鬼没の女・エデルさん。

炎は闇を照らし出す。しかし闇が無ければ炎は輝く事すらできない。
誰かのために輝きたいのなら、暗闇を恐れてはいけない。

やはり判りにくいエデルさんの言葉。
でもあひるは、自分流に解釈したようです。
判らない事を恐れていてはいけないのだと。

そのあひるの答をどう思ったのか、一点を指し示すエデルさん。
その先には、ガラスが割れた図書館の窓。

アヒルの姿で、その窓からみゅうとが閉じ込められた部屋に入り込んだあひる。
しかし、部屋の中にみゅうとの姿がありません。
代わりに、床から差し込むかすかな灯。床の下に、地下へと続く階段があったのです。
その先に広がるのは地下の迷宮。

そして、どこからか聞こえてくる少女の声。それはなぞなぞの言葉。
なぞなぞに答えながら、迷宮を進むあひる。
より暗い方へ。より闇が深い方へ。少女の声がする方に。

ほんの小さいものなのに、部屋一杯溢れ出す。私はだぁれ?
「くしゃみ?」
海を飲み込んだ白蛇。頭は真っ赤っか。私はだぁれ?
「赤い絵の具を付けた、白い筆?」
立っていればいるほど背が低くなる。私はだぁれ?
「は、はな、かなぁ…?」

あひるの答は全部外れ。でも、辿り着いた部屋は正解。
みゅうとがそこにいる。少女の声はそう言うと、その部屋の入り口を塞いでしまいます。

閉じ込められたあひるは、プリンセスチュチュに変身します。
その姿に驚いたような少女の声。
あなたは誰?素敵ね。私がずっと照らしてあげる。

その言葉に、なぞなぞの答が判ったチュチュ。
ほんの小さなものなのに、部屋一杯に溢れ出すのはランプの光。
海を飲み込む頭が赤い白蛇と、立っていればいるほど背が低くなるのはランプの芯。
「あなたはランプ!」

ご名答。
姿を現した少女は、ランプの精。それに、彼女に取りついている心のかけら。
一緒に踊ろうと言うチュチュの誘いを断り、チュチュの踊りを照らし出すランプの精。
その光はとても暖かいのに、どうしてみゅうとを返してくれない?何が欲しいの?

チュチュの問に少女が答えます。
自分は、誰かのために輝いていたかっただけ。他には何も要らない。
でも、自分はいつか必要では無くなってしまった。忘れられてしまった。
いや、始めから自分は必要ではなかったのだ。
喜んでもらえていると思っていたのは、自分の勝手な思い込みだった…。

少女の言葉は、そのままチュチュが、あひるが抱いている不安そのもの。
少女の言葉は続きます。
しかし、今は自分を必要としている人がいる。それは、暗闇を恐れるみゅうと。
たとえ閉じ込めても。ずっと自分が照らしてあげるから。

チュチュが応えます。
昔のことを忘れていないのなら、あなたの暖かい光に包まれて幸せだった人達の
ことを覚えているのなら、判る筈。
輝きを押し付けても喜んではもらえないということを。
あなたが必要でなくなったのは悲しいけど、それは仕方のないこと。
押し付けることはできないのだから。
みゅうとのことを思うなら、みゅうとに心のかけらを返して。
それがみゅうとの幸せ。私はそう信じている。

いつしかチュチュと踊っていた少女も応えます。
わたし、あなたをもっと照らしてあげたい…。
みゅうとの中に戻された心のかけら。それは、慈しみの心。

そして、街の広場。火祭りはとっくに終わっています。
帰ろうとしたるうの前に、みゅうとの姿。
文句を言い始めたるうの手を取り、踊りに誘うみゅうと。
そんなみゅうとに驚きながら、それでも楽しそうにるうは踊ります。

その二人の姿を見つめるあひる。その手にはランプ。

楽しそうに、そして少し照れくさそうに踊っていたるう。
でも、ふと見上げたみゅうとの表情に、るうの顔がこわばります。
みゅうとが、こんな優しそうな目をするなんて。
手を離して後退るるう。
差し出されたみゅうとの手を振り払い、るうは走り去ってしまいました。

思わぬ展開に驚くあひる。
一部始終を見つめていた、ふぁきあの冷たい視線。
そして響く、ドロッセルマイヤーの笑い声。
慈しみの心を取り戻した王子さまが照らし出したのは、あひるの不幸せ…。

嗚呼、プリンセスチュチュの、あひるの運命やいかに!?
そんな感じの急展開。次回予告も期待大といったところでしょうか。
プリマドンナといった感じの新キャラ、ふぁきあと踊るあひる、
苦しむみゅうとに、目に涙を一杯に溜めたあひるの泣き顔。
そして、アロハシャツを着て躍り狂う猫先生!(しかも団体!)
何なんでしょう(^_^;

蛇足:
今回の見どころは、やはりランプの精役の沢城みゆきさんの演技ではないでしょうか。
なぞなぞを出す時の悪戯っぽい響き。
みゅうとを返すのを拒む時の「いやよ」という声の冷たさ。
自分が必要とされていなかったと言う時の悲しみ。
「(昔のことを)忘れてなんかいないわ」と心外そうに言う感じ。
そして、最後にチュチュをずっと照らしてあげたいという言葉の暖かさ。
まさに、「お見事」と言う他無いような、素晴らしいものであったと思います。

前回に比べると、バレエの場面が物足りなかったと思われるのですが、その分、
役者さん達の演技が際立っていたような気がします。
猫先生の猫っぷりも、何かだんだんエスカレートしてきましたし(^_^;

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6.AKT


「プリンセスチュチュ」第六幕、「夢見るオーロラ」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Dornroschen:Prolog〜」。
意味は、「いばら姫(またはねむり姫):プロローグ」。
二つ目の「o」には、ウムラウト「‥」が付きます。
おそらく「眠れる森の美女」と言う方が通りが良いと思われるこの作品、
第三幕に続いての登場です。

いつものように、ネタばれ防止の改行を。

10

23


OP

ED














(^_^)

昔々、魔女の呪いで永遠に眠り続けるお姫さまがおりました。
ある時、一人の若者がお姫さまを眠りから覚まそうとしました。
その時、誰かが囁きます。
お姫さまを目覚めさせようなんて、何て残酷な事をするんだろう。
姫が望んでいるのは、目覚めの口づけではなく、このまま永遠に眠り続ける事
なのでしょうか…。

朝もやに包まれた金冠町。
夕べは眠れなかったあひる。みゅうとの微笑みが頭を離れないようです。
傍らでは、あのランプが、囁くように瞬いています。

窓からみゅうとの部屋を見てみると、窓辺にみゅうとの姿。
そして、もう一つの人影は、ふぁきあ。
何かを話し込んでいるような二人の姿に、思わず身を乗り出し過ぎたあひるは、
哀れ転落。

とっさにアヒルの姿に変わって難を逃れたものの、授業には遅刻です。
そのため、猫先生のお話も聞いていなかったので、質問されても答はとんちんかん。
でも、「猫先生とは結婚したいと思いません」等と本音を言うのはいけません。
猫先生、落ち込んでしまいました。

さて、今日の授業は課外学習というのでしょうか。
街にやってきた巡業バレエ団の練習を見学に行きます。
ふぁきあだけで、みゅうとが来ていない事を気にするあひるを、勘違いした
ぴけとりりえ。
二股疑惑をかけられて慌てたあひる。派手に蹴躓いて宙を飛び、着地したのは腕の中。

あひるを受け止めたのは、劇団の主演女優・パウラモニ。
その麗しい姿に、抱きとめられたあひるは思わず顔を赤くし(<女でもいいのか)、
ぴけとりりえの疑惑は三股に発展し(<おい)、
猫先生は恋の予感にアロハシャツで躍り狂う(<見境なし?)。

しかし、夫の登場で恋は終わりです。哀れ。
この夫、名前はパウロ。いい体つきをしたナイスガイ。顎割れてますけど。

それはどこかに置いといて、劇団の練習を見学です。
今回の演目は「眠れる森の美女」。

ちなみに、劇団の名前は「エレキ座」。団長は電気ウナギです。
電気ウナギですから、当然電源も担当してます。安定供給にはイマイチ不安が
ありますが、気付けにちょいと叩けば大丈夫。
電気ウナギが団長なんてちょっと変だし、金冠町に来る前からウナギだったのかは
疑問ですが、誰も、そんな「細かい事」は気にしていません。練習の方が大事です。

パウラモニの華麗な踊りに、生徒達は見とれるばかり。
しかし、パウラモニは、練習の途中で、突然生徒に踊ってもらおうと提案します。
指名されたのは、何故かあひる。驚いたあひるは、何とかその場を辞退しますが、
その時、舞台の袖に心のかけらの気配を感じます。
でもすぐに消えたので、気のせいだったのかも。
今日の見学はこれで終わり。明日は、通し稽古の見学です。

放課後。
街頭で宝石を売っているエデルさん。
あひるは、ふぁきあの事で愚痴を言ってます。
それを聞いていたエデルさん、あひるの言った「かわいそう」という言葉に
引っかかったのか、あひるに問います。
かわいそうなのは誰?みゅうと?るう?それともあひる?

自分の事はいいと言うあひる。
るうはみゅうとを幸せにできるけど、鳥の自分にできるのは、心を全て取り戻して
あげる事ぐらいだから。
そんなあひるに、エデルさんは一つの宝石を見せてくれます。

その宝石の名前は「夢」。
夢を見続ける人と、夢から目覚めた人と、どちらが幸せ?
また難しいエデルさんの問いかけ。
よくわからないあひるは、他の宝石の名前を聞きます。
他の宝石の名前は「希望」、「冒険」、「謎」、そして「作者の都合」。
変な名前…。
とにかく、あひるは、改めて心のかけらを取り戻してあげる事を頑張ると誓います。

その夜。
今までになく、演じる事に恐れを感じているパウラモニは、眠れない夜を過ごして
いました。
子供の頃に見た、素晴らしいオーロラ姫。
目覚めてもなお夢を見続けているような、そんな姿に憧れてオーロラ姫を演じ続けて
きたパウラモニ。
でも、どう頑張っても届かない。自分の限界を感じてしまった彼女。

そんな彼女に話しかける夫。
話題は、あひる。二人とも、あひるに何か感じるものがあったようです。
きっと素敵な夢を追いかけている。そして多分恋をしている。
それは、昔のパウラモニと同じ。

夢はいつか覚める。覚めなくてはいけない。
そう言うパウラモニに対して、意外な事を言うパウロ。
叶わない夢はある。でも、夢は一つじゃない。

自分を理解してくれ、自分に合った演目まで用意してくれていた夫。
彼と話しているうちに、だんだん役に対する恐れが消えていったパウラモニは、
最後の、そして最高のオーロラ姫を精一杯演じる事を誓います。
そんな様子を、物陰からじっと見つめていた心のかけらは、諦めたように、
静かに身を引いていきました。

そして翌日。今日はみゅうとも来ています。
通し稽古の途中で、どうしてもとあひるを指名したパウラモニ。
しかも役はオーロラ姫。
どうでもいいですけど、猫先生、今日は正装です。人妻でもいいみたいです。

それはともかく、今度はパ・ド・ドゥです。相手は、ふぁきあ。
何故かみゅうとを推するうを抑えて、自分が名乗り出たのです。
ふぁきあは、るうがプリンセスチュチュではないかと疑っているようです。

踊りつつ、みゅうとに近づかないように、あひるに警告するふぁきあ。
そのいつもの言いように反発しつつも、あひるは踊りとなると体が動いてしまう
ようです。
ウナギ団長の目利きゲージも反応してます。(<何だそれは)

下手ながらも、自分なりに踊りを踊るあひる。
その姿を見たパウラモニは、何かが吹っ切れたよう。その表情からは、もう恐れは
全く無くなっていました。

その様子を、遠く劇場の入り口から見ていた心のかけらに気付いたあひる。
気付かれたかけらが逃げます。
適当に口実をつけてその場を離れたあひる。プリンセスチュチュに変身して
かけらを追います。

逃げる心のかけら。追うプリンセスチュチュ。
屋根の上で、ついに追い詰められた心のかけら。
「窮鼠猫を噛む」の言葉の通り、追い詰められ怯えきった心のかけらは、
その手に真っ赤な剣を握り締め、プリンセスチュチュに斬り掛かります。

その剣が振り降ろされるより早く懐に飛び込んだプリンセスチュチュ。
剣を握る手を受け止めたチュチュの手の中で、心のかけらは光の粒となり、
そしてみゅうとの中へ。

異変は、その時でした。
みゅうとが、突然立ち上がり、苦しげな叫び声を上げたのです。
心のかけらがまた戻った事に気付いたるう。
苦しむみゅうとを劇場から連れ出すふぁきあ。
その口から漏れた、憎々しげな言葉。「プリンセスチュチュめ!」

その言葉、そして何より、苦しむみゅうとの姿にあひるは驚きました。
アヒルの姿に戻ってしまっても、とにかく後を追います。

人気の無い所まで来たふぁきあは、怯えるみゅうとをなだめます。
その様子を、物陰から心配そうに見ているあひる。
その耳に聞こえてきた、みゅうとの言葉。
「プリンセスチュチュが、怖いんだ…」

あひるにとって、それはあまりにも意外な、そして聞きたくなかった言葉。
ショックを受け、その場を逃げ出してしまいました。

水辺に落ちて少女の姿に戻ったあひる。
ずぶ濡れのまま、あひるは泣きます。
あたしはただ、みゅうとに笑ってほしかっただけなのに。
あたし、間違ってたの?
あたし、みゅうとに酷い事をしていたの?
誰にともなく問いかけながら、あひるは泣き続けます。

そして、物語は進んでいくのさ。誰にとっても、もっとも望ましくない方向へ。
どこからか物語を見ているドロッセルマイヤーの声。
まるで、彼だけがそうなる事を望んでいるかのように、その声は楽しげに響くのでした
…。

さて、全13話(予定)の物語も、次回は早くも折り返し地点。
心のかけらを取り戻してそれで終わり、とは流石に思ってはいませんでしたが、
こーゆー展開になってくるとは。
良い意味で、つくづく期待を裏切ってくれる作品であります。
次回は、いよいよ「彼女」が登場するようで、これもまた非常に楽しみ。

蛇足:
何と、宝石売りだったエデルさん。
売っていた宝石の名前、あれはやっぱり「物語の構成要素」なんでしょうね。
「物語を輝かせるもの」だから、「宝石」なんでしょうか。
「作者の都合」はどうか知りませんが(^_^;

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AnimeTV内特集


先日、テレビ神奈川とキッズステーションで放映されました、「AnimeTV」内の
プリンセスチュチュの特集コーナーについてです。
# 録画しておいたものをやっと観ました(^_^;

出演されたのは、佐藤順一総監督(以下(佐))、河本昇悟監督(以下(河))、
そしてあひる役の加藤奈々絵さん(以下(加))。
番組のレポータの中原麻衣さんの司会で、御三方にインタビュー形式で
「チュチュ」に関する話を聞く、というものです。

○インタビュー概要
(作品を始めるにあたって)
・明るく可愛いだけじゃなく、ちょっと怖かったり、ハラハラドキドキするような
 ムードがある作品を目指した。(佐)

(バレエについて)
・バレエについては、約二年前に「チュチュ」の企画の話を聞くまで何も知らな
 かったので、いざ作画作業に入ろうとしても、何を描いていいのかも判らなかった。
 全てがゼロから学ぶ事の繰り返し。勢いで行くしかなかったところもあり、今更
 ながら、「ああした方が良かった」というところが一話やるごとにどんどん増えて
 いっている。(河)

(OPのバレエは綺麗だが?)
・OPのチュチュのバレエは、ミノリバレエ団(注:原文まま)の先生が、「決め
 ポーズなんてどうだろう」と軽い気持ちでやってくれたポーズが生かされている。
 (河)
・そう、「これだ」と思ってそのまま最後の踊るところのコンテに引き写している。
 あそこは、本当はもう少し長いのを音楽に合わせて縮めているが、基本的には
 その先生の踊りを使わせていただいた。(佐)

(あひるを演じる上で気をつけている事)
・あひるの時はあまり考え過ぎないで、素直に演じたいと思うが、そこが難しい。
 チュチュの時は、包み込むような優しさが出てきて、相手の気持ちを癒すように
 言葉を掛けたりするのが難しい。(加)
・地に足をつけた、あまり作らずに普段の感じを残してほしい。漫画っぽい絵に
 引っ張られずに、そんな時にもそれなりの気持ちがあるという事を自分なりに
 見抜いて演技をして欲しい、というような事を最初にお願いした。(佐)

(演出で気をつけている事)
・それぞれのキャラがみんな成長していくのだが、演出によってそれが後退したように
 見えないように気をつけている。(佐)
・良い事だけじゃなくて、本人が人には話したくないような、心の奥底に秘めたものを
 暴かれていくようなところがある。それでへこたれるか、ステップアップするかで
 各キャラが揺れてくると思う。(河)

(変身シーンでこだわった事)
・変身シーンは、今回はアヒルなので、一回卵の中に入って孵る、みたいな変身に
 しようと思った。それも、パイロット・フィルムで河本さんがやっていたので、
 それをいただいた。(佐)

(ファンに向けて一言)
・何回も観ると、その都度発見があるように作っているつもりなので、じっくり
 楽しんでほしい。(佐)
・音楽的に力が入っている。クラシック、特にバレエ音楽を中心に、一味も二味も
 変わった感じがすると思うので、その辺を楽しみにしてくれると嬉しい。(河)
・みんなの奥にある気持ちがどんどん出てきて、結構どろどろしたり(笑)、きゅんと
 したりするところがあると思うので、そういうところを観てほしい。(加)

○リリース情報
 岡崎律子さんが歌うOP・EDテーマのCDが、10月23日に(いよいよ!)キングレコード
から発売されるようです。
 インタビューのバックに、この歌が(おそらく)フルコーラスで流れていたのですが、
それが気になって話に集中できませんでした(^_^;

○感想
 話に合わせて、本編やOPの映像が流れていたのですが、本編映像はほとんどが第一話
からのもので、何かすごく懐かしいと言うか、また観たくなってしまいました。猫先生
(スタッフ内では一番人気らしいです)の初登場シーンや、「花のワルツ!」も久々に
観れて良かった(^_^)
 あと、加藤奈々絵さんって、地声もあんな感じなんですね〜。確かに、あひるのあの
声は、作ろうと思ってもなかなか作れるものじゃないと思いますが。

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7.AKT

「プリンセスチュチュ」第七幕、「からす姫」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜An der schonen blauen Dnau〜」。
意味は、「美しき青きドナウ」。
「schonen」の「o」には、ウムラウト「‥」が付きます。

例によってネタばれ防止の改行を。

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昔々、一人の子供がおりました。
子供にとって、この世は不思議な事ばかり。
一つの謎が解ければ二つの謎が、
二つの謎が解ければ四つの謎が、
四つの謎が解ければ数えきれない謎が、生まれます。
…いつしか、子供は、謎に飲み込まれてしまいました…。

あひるは、悪夢を見ていました。
嫌がり、怯えるみゅうとに、無理矢理心のかけらを戻すプリンセスチュチュの夢。
夢から覚めても、あの怯えたみゅうとの姿は頭から消えません。
泣き伏すあひる。ぴけとりりえが起しに来てくれて、なんとか登校します。

学園は、一週間も姿を見せない、みゅうととふぁきあの噂でもちきりでした。
生徒の中に、チワワ男が混じってたりしますけど、まぁ「細かいこと」です。

登校はしたものの、あひるは落ち込んだまま。
猫先生が、先日のエレキ座見学レポートの講評をしています。
素晴らしい出来のるうのレポートに比較して、あひるのは実に簡潔。
「良かったです。おわり」
このままでは、再び見習いクラスに落ちるか、さもなくば猫先生と結婚か。
落ち込んでいるあひるは、「見習いクラス」に反応して「いいです」などと答えて
しまったものですから、猫先生、驚いてしまいます。
もっと驚いたのは、ぴけとりりえ。
何とかその場を誤魔化して、あひるを教室から連れ出しました。
だから、猫先生のアブない言葉は聞こえてないでしょう。
「私と結婚するつもりなら、放課後ピザ屋で待ってます…」
先生、青少年保護条例って知ってますか?

何とか危機を脱した3人ですが、あひるはもうどん底の状態です。
何もかも、もうどうしたらいいのか判らなくなったというあひるに、ぴけと
りりえは、なぜなぜ橋に行くことを勧めます。

なぜなぜ橋とは、街の北の小川にかかっている、古い橋のことです。
その橋に立って心の迷いを話すと、「声」が尋ねてくるというのです。
「なぜ?」「どうして?」と。
その問いかけに答えているうちに、人は、心の整理がつくそうなのです。
「でも、問いかけに答えられないと」
「川に飲み込まれちゃうんだって〜」
思いっきり怖く話すぴけとりりえに、あひるは怯えます。
友達がいのある二人ですが、こんな時でも、あひるで遊ぶことは忘れないようです。

とにかく、怯えながらもあひるはなぜなぜ橋にやって来ました。
しかし、そこには先客が居たのです。
橋に立って、じっと川面を見つめていたのは、るうでした。
みゅうとのことで、なぜなぜ橋の伝説に頼ろうとしたみたいですが、やめてしまい
ました。

あひると入れ替わりに立ち去ろうとするるうに、あひるは尋ねます。
みゅうとに心が無いことを知ってるんでしょ?
るうは少し驚いて、それでもきっぱり答えます。
「もちろん」
やっぱり、心があった方が良い?
「関係ないわ。わたしは、みゅうとだけを見続けてきた。心があろうとなかろうと、
 彼を愛している事に変わりはない。これからも、ずっと。まだまだ愛し足りないわ」
そう言い切ったるうは、今度こそ立ち去っていきました。

その言葉を聞いて、あひるは、もうなぜなぜ橋に確かめることが無くなってしまい
ました。
ふぁきあも、そしてるうも、心は必要ないと言う。
みゅうとは苦しんでいる。
もう、プリンセスチュチュなんか、意味が無い。
やめてしまっても…。

それを見て驚いたのは、ドロッセルマイヤーです。
慌て、狼狽し、物語を捨てようとする現実に怒ります。
そして、彼は不思議な時の抜け穴をくぐり、直接、あひるのもとに向かいました。

死んだはずの男が目の前に現れて怯えるあひる。
そのあひるに、プリンセスチュチュをやめることを思いとどまるよう、ドロッセル
マイヤーは説得しますが、あひるは聞き入れません。
それもそのはず、ドロッセルマイヤーの言うことは、説得というより、「作者の
都合」にしか聞こえないことばかりなのですから。

ついに、あひるは、ペンダントを小川に投げ捨て、アヒルの姿に戻って駆け去って
しまいました。
それを見たドロッセルマイヤーも、抜け穴の向こうに戻ります。
誰に対してなのか、「後は頼む」という言葉を残して。

アヒルの姿に戻ったあひるは、未練なのか、別れを告げに来たのか、金冠学園の
近くの小川にいました。
そこにやってきたエデルさんが言います。

鳥の世界と女の子の世界をつなぐ宝石。
せっかくつながったのに、閉ざしてしまうの?

その手にあるのは、あの赤いペンダントと、あひるの制服。
それを見たあひるは、少し迷ったものの、やはり立ち去ってしまいます。

小川を進むあひるを、突然、大波が襲いました。
前を見ると、そこには小川を覆う巨大な渦が。
そして、今まさにその渦に飲み込まれようとしているみゅうとの姿があったのです。

そう、姿を消していた一週間、みゅうとはふぁきあとともに、この川べりの小屋に
隠れていたのです。
心を忘れさせるため、ふぁきあはみゅうとを小屋に軟禁していました。
しかし、みゅうとは、どうしても忘れることができなかったのです。

そして、ふぁきあが出かけて一人の時、プリンセスチュチュのことを考えて小川の
岸にいた所に、「声」が問いかけてきたのです。
プリンセスチュチュのことを、そしてみゅうと自身のことを。
その問いかけに答えようにも、みゅうとはわからないことが多過ぎました。
そんなみゅうとに、「声」は興味を抱いたように、彼を川の中に招き寄せたのでした。

ちょうどその現場にあひるは行き会ったのでした。
深い水の底へと沈んでいくみゅうとを、あひるは必死に追いかけます。
でも悲しいかな、小さなアヒルの身では、とても追いつくことができません。
もう一度だけ、プリンセスチュチュに!

そのあひるの願いに応えるように、赤いペンダントがエデルさんの手から川の中へ、
そしてあひるのもとへ。
プリンセスチュチュに変身したあひるは、その力でみゅうとを助けます。

チュチュに対しても、「声」は問い掛けます。
なぜ、みゅうとに心を戻すのか、と。
それは、みゅうとに嬉しい気持ちや好きって気持ちを取り戻して欲しかったから。
でも、こんなにみゅうとが苦しむなんて、思ってもみなかった。

泣き崩れるチュチュに、みゅうとが話し掛けます。
泣かないで。一緒に戻るから。
その優しい言葉に、チュチュは、みゅうとを岸に戻すと、もう二度と現れないと
言って去ろうとしました。

そのチュチュを、みゅうとが引き止めたのです。
チュチュに会えない時の気持ち、それは寂しい、悲しいという気持ち。
心が戻るのはつらいこともあるけれど、それでも構わない。
チュチュといると、胸の中に小さな灯がともるのがわかるから。
チュチュがいないと、その灯が消えてしまうようで、それが怖い。
だから、僕に心を戻して欲しい。

そして、「声」が現れました。
それはやはり、心のかけら。「知りたい」という気持ち。
でも、その心は、最も知りたかった答−自分が誰か、という事を、今知りました。
心のかけらは、満足したようにプリンセスチュチュの手の中に戻ります。

しかし、その様子をじっと見つめていた人影がありました。
その姿は、るう。その背後には、そのるうをさらに見つめる、黒い烏が一羽。
チュチュとみゅうとを見つめるるうの瞳に、妖しい炎にも似た光が揺らめきます。

チュチュが、心のかけらをみゅうとに戻そうとした正にその時。
黒い疾風が二人を襲います。
その風が止んだ時、二人の前に舞うように降り立った、黒い姿。
漆黒のドレスを身に纏ったその少女は、プリンセスクレールと名乗りました。

その手には、いつの間にかみゅうとの心のかけらがあります。
かけらを返してというチュチュの言葉を拒絶すると、クレールは挑むように
言い放ちます。
「あなたには、何もあげない。あなたには、何もさせない」

そして不敵な微笑みを浮かべると、その手から黒い風を放ちます。
その風の中、クレールも、心のかけらも、そしてみゅうとも、消えてしまいました。
後に残されたのは、チュチュただ一人。
しかし、消える寸前に、クレールの表情が一瞬苦しげに歪んだのを、チュチュは
気付いていたでしょうか?

小屋から姿を消したみゅうとを、ふぁきあは探し回っていました。
やがて、いつの間にか小屋の中に倒れていたみゅうとを見つけました。
その傍らに落ちていた黒い羽根。
それを見たふぁきあは、まるでこれあるを予期していたように呟くのでした。
「そうか、とうとう、現れた、ということか…」

そして、金冠学園の寮では、自室で昏々と眠る、るうの姿がありました。
その姿をどこからか見ているのは、ドロッセルマイヤー。
新しい災いの種の出現、深まる謎。苦難と悲劇の待ち受ける道を選んだあひるに、
惜しみない拍手を贈ろう。
彼の乾いた拍手の音が、いつまでも響いていました…。

さて、その頃の猫先生は。
街の「ピザ屋」(か?)で、「何か」を楽しげに待っていましたとさ。(<おいおい)

さて、今回の話で、「プリティサミー」を連想した貴方。
ご安心ください。私もです(^_^;

見どころは、やっぱり、るうちゃんでしょう。
今まで、みゅうととのことは、「お嬢さまのお遊びか気まぐれ」ぐらい
なんじゃないかと思ってたんですが、申し訳ないです。
「まだまだ愛し足りない」というセリフ、ぐっと来ました。
一度ぐらい、言われてみたいセリフです。

そして、プリンセスクレール。正体は(多分)バレバレですが。
サティの曲に乗り、びしっとポーズを決めるその登場シーン、漆黒のチュチュ、
「あなたには何もあげない」という挑戦的なセリフ。決まり過ぎです。
「クレール」は、おそらく「clair」。フランス語で「光」を意味する言葉。
闇を象徴するような烏、そして漆黒の衣装をまとった彼女に、何故こんな
名前が付いているのか、不思議であります。

あと、アイキャッチが猫先生に変わりました。曲は、やっぱり「結婚行進曲」。
それも、猫先生直々の鼻唄です。
最後にあんなオチを持ってくるまで、単なるアイキャッチかと思ってましたが、
でもこれ、今回の話に関連してますけど、次からもこのままなんでしょうか。

蛇足:
衛星第2放送で、「華麗なるパ・ド・ドゥ」なる番組が放映されてました。
色々なバレエ作品から、パ・ド・ドゥの場面だけを集めたもので、まさに華麗。
あれをアニメで、しかも週一のTVシリーズでまともに動かすのは、確かに大変
難しいだろう、と思ったものです。
「プリンセスチュチュ」に関係ある作品としては、「白鳥の湖」、「くるみ割
り人形」、「ロメオとジュリエット」(これは次の第八幕)、それに「眠りの
森の美女」がありました。
作中と同じ場面というわけではありませんが、「白鳥の湖」の「黒鳥のパ・ド・
ドゥ」での黒鳥役の人の格好が、今回のプリンセスクレールとそっくりだった
り(衣装のデザインや、頭に羽飾りがピンと立ってるところも)して、面白かっ
たです。
でも、もっと面白かったのは、「海賊」という作品。パ・ド・ドゥと言いつつ、
何故か男女ともソロの場面があったのですが、その男性のソロの場面が、
「くるくる車を売ったった〜売ったった〜売ったった〜くるくるくるくる…」の
CMに使われているのと全く同じ。俳優の衣装、舞台、カメラワークから映像の
へたれ具合までそのまんまでしたので、多分同じ映像ソースなんでしょう。
「華麗なるパ・ド・ドゥ」が、急に関西系お笑い番組になったようで、大笑い
してしまいました(^_^; このCMって、ローカルなんですかねぇ。

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8.AKT

「プリンセスチュチュ」第八幕、「戦士の泉」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Fantasie Ouverture zu "Romeo und Juliet"〜」。
意味は、「『ロメオとジュリエット』のための幻想序曲」といったところでしょうか。
「Ouverture」の二つ目の「u」には、ウムラウト「‥」が付きます。

例によってネタばれ防止の改行を。

# 既にあちこちで
# 噂になっていますが、
# (て言うか、確定情報?)
# 「プリンセスチュチュ」の
# 13話以降の
# 放映が決まったようです。
#
# 13話で完結する予定を
# 無理に引き延ばしたんじゃ
# ないかとか、
# 現在のクオリティが
# 維持できるのかとか、
# 不安はありますが、
# とりあえず歓迎したいところ。
#
# しかし、15分枠に
# なるのはともかく、
# この「動画大陸」って
# 枠の名前は何(^_^;
#
# あと、カップリングの
# 「奇鋼仙女ロウラン」と
# いう作品も怪しさ大爆発だし。
# http://www.starchild.co.jp/special/rouran/top.html

昔、一人の戦士がおりました。
戦士は、親友を守るために、その親友の命を奪ってしまいました。
昔、一本の剣がありました。
平和のために戦い続けたその剣は、平和を守るためには自分を使う者を
殺すしかないと気付き、主人の命を奪ってしまいました。
そうするしかなかった戦士と剣は、本当にそうすべきだったのか、
未だに判らないまま、彷徨っているのです…。

あひるは、消えたみゅうとを捜し続けていました。
しかし、街中を捜しても、みゅうとは見つかりません。
それもそのはず、みゅうとはふぁきあによって、寮の自室に戻されていたのです。
人目のある場所の方が安全だという、ふぁきあの判断です。

チュチュが心を戻してくれようとしたところに、クレールが現れ、心のかけらを
奪われた、と話すみゅうとに、ふぁきあは、安心して眠るように言います。
と、窓にコツンと、石か何かが当たる音が。
ふぁきあがそっと外を見てみると、そこにはあひるがいました。
みゅうとが戻っているかどうか確かめに来たのですが、ふぁきあがカーテンを
閉め切っているため、それも叶わず、すごすごと部屋に引き返します。

その頃、目覚めたるうは、部屋に心のかけら−「知りたい」という気持ちが
いる事に驚きます。
どうして僕を連れてきたの?
どうして黒い羽根をまとっていたの?
どちらが本当の君なの?
心のかけらが尋ねても、るうは何も覚えていません。
君は誰?
「わたしは…誰…?」
混乱したるうは、心のかけらを小箱に閉じ込め、引き出しに放り込んで
しまいます。

一方、部屋に戻る途中、一部始終をずっと見ていたらしいぴけとりりえに
捕まってしまったあひる。
この際、一気に告白してしまえと迫る二人。
「逆ロメオとジュリエット?」
「片想いってところが激しく違うけど(はぁと)」
「当たって砕けろー!」
「砕けて散れー!」
…もはや、後押ししてるんだか、単にけしかけてるんだか判りません(^_^;

学園の中庭で、みゅうとが来るのを待ち伏せ(?)している三人。
でも、告白したら消えてしまうという運命を聞いてしまったあひるには、
とてもそんな事はできません。
「意気地無しー!」
りりえに思いっきり突き飛ばされたあひる。
その前に、みゅうとが現れます。
嬉しさのあまり、思わずみゅうとに抱きついてしまうあひる。
茂みから見守っている(出歯亀ともいう)ぴけとりりえも大喜びな展開
ですが、我に返ったあひるは真っ赤になってみゅうとから離れます。

無事かどうか心配していた、と言うあひるに、怪訝そうな顔をするみゅうと。
みゅうとが消えた事を知っているのは、あひるではなくプリンセスチュチュの
はずだからです。
あひるがチュチュの事を何か知っているのでは、と気付いたみゅうとは、
あひるに近づきます。
そこに割り込んだふぁきあ。
みゅうとを先に行かせたふぁきあは、これ以上みゅうとに近付いたら、
ただではおかない、とあひるに告げると、去っていきました。
そのあまりの迫力に、さすがのあひるも足が震え、へたり込んでしまいました。

そのまま、午前の授業をさぼってしまったあひるの前に、エデルさんが現れます。
悩むあひるに、「勇気」という名の、二つ一組になった宝石を見せるエデルさん。
それを見て、あひるは、みゅうとに自分の正体をうちあけて、一緒にふぁきあに
対抗すればいいのでは、と思い付きます。

早速アヒルの姿になったあひるは、みゅうとを呼び出す手紙をロッカーに
入れに行きます。
何とか手紙を入れることができたものの、人が来たため慌ててロッカーの
一つに隠れたあひる。
ロッカー室に入ってきたのは、イグアナ。
そー言えば、以前、「イグアナの娘」とかいうタイトルのドラマがありましたが、
こちらは男子生徒です。
(でもイグアナ)

イグアナがアヒルを食べるかどうかは不明ですが、何となくピンチなあひる。
彼女を救ったのは、何とふぁきあでした。
あひるが隠れたのは、ふぁきあのロッカーだったのです。
あひるを見つけたふぁきあは、イグアナ男に見つからないよう、アヒルのあひるを
さりげなく懐にしまうと、裏庭に連れていってくれた上に、パンを食べさせて
くれたのです。
その、いつもとあまりにも違う優しい表情のふぁきあに、戸惑うあひる。
しかし、「ただではおかない」と言われた時の恐怖感が蘇り、やはりふぁきあは
悪い奴に違いない、と思いなおすあひるでした。

一方、手紙を読んだみゅうとは、あひるがプリンセスチュチュの事を知っている
かもしれない、と、あひるに会いに行こうとします。
ふぁきあがいくら行くなと言っても、手を上げられても、みゅうとは意志を
変えません。

もう、言葉だけではみゅうとを止められない。
そう覚ったふぁきあは、一人、地下迷宮に向かいます。
そこにある墓所の石棺の一つに、一振りの剣が納められていました。
それは、かつて、王子の心臓を砕いた、王子自身の剣。

王子の心臓を砕き、
邪悪な大烏を滅ぼせしこの剣に、
再び力を与えたまえ!

ふぁきあは、その剣を街の泉にかざし、刃を握り締めます。
そして、手の間から滴った血で染まった泉の水を剣に吸わせると、真っ直ぐに
構えました。
すると、刃を覆っていた錆や汚れが剥がれ落ち、剣は輝きを取り戻したのです。

やがて、約束の時刻になりました。
やってきたみゅうとに、自分がプリンセスチュチュであることを何とか言おうと
するあひるですが、言葉がなかなか出てきません。
そんなあひるに、みゅうとは、プリンセスチュチュの事を教えて欲しいと言います。

その様子を、じっと見ていたるう。
るうは、心のかけらを持って、みゅうとを捜しているうちに、あひるに会いに行く
みゅうとを見かけて、その後をついてきたのでした。
近付く二人を見つめるその瞳に、またも妖しく炎が揺らめきます。

そして、再びわき起こった黒い風が、渦となってあひるを突き飛ばしました。
現れたプリンセスクレール。
あなたは私のもの。
クレールが、妖しくみゅうとに迫ります。

その背後から、プリンセスチュチュとなったあひるが、心のかけらを返して
くれるように言いますが、クレールは聞き入れません。
それどころか、プリンセスチュチュこそがみゅうとを苦しめる存在、自分なら
ずっとみゅうとを愛してあげると誘惑します。

その間を割くように現れた、新たな影。
マントで全身を覆い、仮面を着けたその人物は、剣をかざすと、プリンセス
クレールに斬り掛かります。
その剣が王子の剣だと気付いたクレールも、仮面の人物に踊りかかります。

空中で交差する二つの影。
一瞬の交錯は、だが、わずかに仮面の男が勝りました。
剣先がクレールの脇腹を掠め、そこから黒い小箱がこぼれ落ちます。
小箱は瞬間、烏に姿を変えると空中に散り、クレールもまた、黒い風の中に
姿を消しました。

しかし、仮面の男も無傷ではありませんでした。
仮面にひびが入り、割れて半面が落ちます。
その下から現れた顔は、ふぁきあ。
ふぁきあは、剣を構えると、その先をみゅうとに向けました。
「俺が、もう一度、お前の心臓を砕いてやるからな」
恐ろしいその言葉を、驚くほど優しい口調で口にするふぁきあ。

その剣の前に、プリンセスチュチュが立ちはだかりました。
扇をかざしてふぁきあの剣を防ぎます。
「プリンセスチュチュ、お前さえいなければ!」
チュチュに斬り掛かったふぁきあに、みゅうとが制止の叫びをあげます。
一瞬、動きが止まったふぁきあの隙を突き、チュチュが剣を弾き飛ばしました。

地面に転がった剣を、みゅうとが拾い上げ、ふぁきあに問います。
「これで心臓を突けば、ふぁきあは満足するの?」
「そうだ。そうすれば、元のおまえに戻れる!」
その言葉を聞き、自らの胸に剣先を向けるみゅうと。
チュチュはそれを必死に止めようとしますが、ふぁきあに押さえ込まれ、
みゅうとに近付くことができません。
なおも胸を突こうとするみゅうとに、チュチュは懸命に呼びかけます。

一度だけ見た、みゅうとの笑顔。
心を取り戻したら、きっと、もっと色んな表情ができるはず。
それこそが、本当のみゅうとなのだと。

でも、自分は、苦しみから救ってあげることはできない。
自分にできるのは、心を取り戻してあげることだけ。

そう言って詫び、涙をこぼすチュチュを見て、みゅうとはとうとう剣を
手放します。
それを見たふぁきあは、諦めたようにチュチュを放すと、去っていきました。
後に残ったのは、チュチュとみゅうと、そして心のかけら。
チュチュは、その「知りたい」という気持ちを、みゅうとに戻します。

心が戻ったみゅうとは、チュチュを見つめて言います。
「チュチュ、君が僕のことをどう思っているのか、知りたい」と。
チュチュの手を取り、その甲に口づけするみゅうと。
しかし、チュチュは、いやあひるは、その手を振り払うと、逃げるように
去ってしまいました。

あひるは気付いてしまいました。
みゅうとが見つめているのは、綺麗なドレスを纏ったプリンセスチュチュ
なのだと。
普通の女の子の自分でも、ましてや鳥のアヒルの自分でもないのだという
事に。

王子の剣が突き刺したのは、王子の心臓? それとも、誰かさんの心?
全ての成り行きを見つめていたドロッセルマイヤーが、どこかで愉快そうに
笑っていました…。

と、いうわけで、「ふぁきあはやっぱり良い人だった」説が勢力を増しそうな
今回のお話でありました。
チュチュと本当の自分とのギャップに気付いてしまったあひるも、今後
どうなってしまうのか、目が放せません。
次回では、何かプリンセスクレールの変身シーンもありそうで、その意味でも
目が放せませんが(^_^;

蛇足:
今回、猫先生は出番がありませんでした(終了後の「次回をお楽しみに」
あるいはスポンサークレジットの背景を除く)。
あひるが授業をさぼったので、授業風景が出なかったせいなんでしょうけど、
もしかして、前回からずっと「誰か」を「待って」いるのでしょうか(^_^;

蛇足その2:
チュチュがふぁきあの剣を防ぐのに使った扇ですが、先日の「華麗なるパ・
ド・ドゥ」の中でも、どの作品かは忘れましたが、似たような扇を使っていた
記憶があります。
何となく「ジュ○アナ」を連想してしまうような扇ですが、バレエでも
そういう小道具がちゃんとあるようです。

蛇足その3:
アイキャッチ、結局元に戻ってしまいました。前回の猫先生バージョンも、
あれはあれで使えると思うんですが、残念です。

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9.AKT

「プリンセスチュチュ」第九幕、「黒い靴」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Bilder einer Ausstellung:Alten Schloss〜」。
意味は、「展覧会の絵:古城」。
「Schloss」の「ss」は、実際には「エスツェット(「β」に似た文字)」です。
# でもこれ、「Altes Schloss」が正しいような気がする…。

例によってネタばれ防止の改行を。

# 店頭の
# 情報に
# よりますと、
# 「プリンセスチュチュ」
# DVDの
# Vol.1が、
# 12月25日
# 発売
# 予定の
# ようです。
# 初回版には、
# バレエ
# 音楽の
# CDが
# 付く
# との事。
# 思わず
# 予約
# しちまい
# ました
# ですよ(^_^;

昔々、たいそう踊りの好きな女の子がおりました。
女の子は、一度履いたら、永遠に踊り続けなくてはならないという、
赤い靴を履いてしまいました。
女の子は、夜も昼もずっと踊り続けて、
…おっと、これは違うお話でした。
でも、全く違うわけではないのかもしれません…。

どっちなんですか岸田さん(^_^;
ま、それはともかく。

みゅうとの瞳に映っているのは、本当の自分ではなく、プリンセスチュチュ
なのだと気付いてしまったあひる。
自分の知らない自分が何をしたのか、全く覚えていないるう。
そのるうを見つめる影。
悩める少女達を抱いて、金冠町の夜は更けていきます。

でも、一晩眠っても、変わらないものもある…。
いつものように小鳥達に朝ごはんをあげたあひるは、いつもと変わらない空を
見上げて思います。

一方で変わっていくものも。
みゅうとは、プリンセスチュチュに対する気持ちが何か判らず、るうが好きと
いう事にも疑問を抱き始めます。
変わっていくみゅうとを見て、るうは、それがプリンセスチュチュが原因で
ある事に苛立ちます。
多くの生徒達が見ている前で、みゅうとと喧嘩まがいの言い争いをしてしまう
るう。
生徒達の後ろで、そのるうを見つめている眼鏡の少女がいました。

そして、ふぁきあもまた悩んでいました。
みゅうとに拒絶されてしまった今、自分に出来ることは、運命を受け入れる
ことしかないのか、と。
そして自分は、その事に恐れを抱いているのではないのか、と。

しかし、悩みに縁が無さそうな人達も。
るうとみゅうとの言い争いを見ていたぴけとりりえ。
やはりと言いましょうか、あひるに告白のリベンジをするように迫ります。
「みゅうとさまとるうちゃんが破局の今こそ、ちゃぁ〜んす」
「告白のし直しよ!」
燃えるりりえ。けしかけるぴけ。
るうとみゅうとが破局と聞いて、気が気でないあひる。
告白だって、できるはずがありません。
「意気地無しー!」
またもや激しくりりえに突き飛ばされたあひる。
廊下をゴロゴロ転がって、猫先生に衝突します。
そのあひるを見て、ため息をつく猫先生。
「そんなことでは、もう私と結婚してもらうしか!」
その時、廊下の遥か先から、あひる以上に激しく転がってきた白い影。
それは、やぎ子先生。山羊です。誰が何と言おうと山羊。
猫先生、やぎ子先生の熱い視線に、冷や汗だらだらです。

やぎ子先生の熱い視線は、授業中も猫先生に突き刺さります。
初級クラスの授業が終わり、次は上級クラスの個別レッスンです。
背中に突き刺さる熱い視線に焦りながら、初級クラスの生徒達に、早く退室
するよう促す猫先生。
「もたもたしてると、私と結婚してもらいますよ!」
しかし、そこに見たものは。
「やぎ子先生がもたもたしてまぁす」
「これはもぉ結婚するしか」
…猫先生、人生最大のピンチ、かも。

そこに、あひる達と入れ替わりに現れたるうとみゅうと。
二人のレッスンを見て、ぴけとりりえも「破局」説は撤回したよう。
彼女達の感嘆の声を聞きながら、あひるは、自分のみゅうとに対する気持ちに
気付きながらも、それを伝えることは出来ないことに悩みます。
そして、みゅうとと踊るるうも、そのみゅうとの瞳に映っているのが、自分で
はなく、プリンセスチュチュであることに、激しい苛立ちを感じていました。

その頃、ふぁきあは、とある古本屋を訪れていました。
そこで読むのは、あの「王子と烏」の物語。
「運命を受け入れる者に幸いあれ。運命に逆らう者に栄光あれ」
そう歌うように唱えながらふぁきあの前に現れたエデルさん。
お話は続いている。お話は生きている。
そう言ってエデルさんがめくった頁に描かれた、切り裂かれた騎士。
「これが俺の運命だというのか?」
驚愕するふぁきあに、エデルさんが言います。
「かわいそうなのは、るう? みゅうと? あひる? それとも…」
ふぁきあが本から顔を上げた時、エデルさんの姿は消えていました。
奥の暗がりで、操り人形のように、糸で吊られて…。

レッスンの後、練習場にはるうとあひるの姿がありました。
あひるは、るうにプリンセスチュチュについて尋ねるつもりでしたが、
正面きって聞けるわけもなく、また、「いつもの」るうの口振りに安心した
せいもあり、結局他愛もないおしゃべりになってしまいます。

しかし、るうにとっては、そんなおしゃべりをしたのはあひるが初めて。
「友達だもん。」
屈託の無いあひるに、るうも何だかんだ言って付き合ってます。
と、窓の外から練習場を覗いている女の子に気付いたあひる。
「あの子も友達?」
あひるがそうるうに尋ねた時には、女の子は既にいなくなっていました。

やがて放課後。
あひるは、罰で居残りで窓拭きです。
あひるを誘いたげな様子のるうでしたが、仕方なく一人で帰ることに。
気になるのは、「友達」であるあひるの屈託の無い笑顔。
そして、学園からずっと、後をつけるように、あるいはつき従うように
頭上を舞う烏の群れ。

そこに聞こえてきたのは、猫先生とやぎ子先生の痴話喧嘩(?)。
「あなたが私を必要としていても、私はあなたが必要ではないのです!」
猫先生の必死の言葉に、はっと胸を突かれたるう。
自分にはみゅうとが必要。
でも、みゅうとが必要としているのは、プリンセスチュチュ。
その考えに取りつかれたるうに、声が囁きます。

このお話の主人公は、プリンセスチュチュ?それともプリンセスクレール?
お話に、王子に、プリンセスは二人も要らない。

それは、ドロッセルマイヤーの声でした。
そうとは知らないるうの中に、プリンセスチュチュに対する怒りが
わき上がってきました。

プリンセスチュチュがみゅうとを変えていく。
このままでは、みゅうとは私から離れていく。
そんなこと、許さない。

そして、るうも変わっていきます。
烏が変化した黒い靴を履き、黒い羽根が身体を包み、プリンセスクレールへと。

一方、ふぁきあもまた、猫先生とやぎ子先生の痴話喧嘩(?)に行き会いました。
「私はあなたと結婚したくないのです。私は、自分の意志を変えるつもりは
 ありません!」
猫先生の決定的な言葉に、はっと胸を突かれたふぁきあ。
自分自身の意志?
結局は、自分がどうしたいのかという問題に突き当たったようです。

その頃、あひるは、練習場を覗いていたあの少女と一緒にいました。
罰で居残りの窓拭きの最中に、偶然見掛けたのです。

少女の名はまれん。美術科で絵の勉強をしています。
彼女の描いている絵は、るうの絵ばかりでした。
以前は色々なものの絵が描けたのに、今は何故かるうの絵しか描けなくなって
しまったのです。
他のものを描こうとすると、苦しくなってしまうのだと。

そのまれんに対して、あひるの胸のペンダントが、赤く輝きました。
それは、王子さまの心のかけらがある印。
あひるは、プリンセスチュチュに変身すると、まれんの手を取ります。

その心は、本当のまれんの心ではない、偽りの心だと。
私が取り出してあげる。そうすれば、もとのまれんちゃんに戻れる。

そのチュチュの言葉に安心したまれんは、チュチュに身体を預けます。
気を失ったまれんから離れた心のかけら。
それは、「一途に想う気持ち」でした。

そこにまたもや現れたプリンセスクレール。
クレールは、心のかけらをみゅうとに返させまいと、拘束してしまいます。
しかし、その場にみゅうとが駆けつけた事で、状況は一変します。

みゅうとが自分に向ける眼。
それを見るや、苦しげにうずくまってしまうクレール。
クレールは、自分が必要とされていないことに、そして自分が誰なのか判らずに
苦しんでいたのです。
そして、心のかけらの拘束も解けてしまいます。

チュチュは、心のかけらをみゅうとに返すと、苦しそうなクレールに声を
掛けます。
どうして苦しんでいるの?私で力になれること?

チュチュがクレールに近付こうとした時、窓を突き破って現れるふぁきあ。
ふぁきあは、クレールに向かって叫びます。
消え去れ、醜い烏め、と。

その言葉を聞いたクレールの表情が変わります。
そう、私は烏。
私こそが本当のプリマドンナ。プリンセスクレール!
欲しいものは、力づくでも奪い取ればいい!
その言葉を残し、クレールは、姿を消してしまいました。
そして、街の空を烏の群れが覆い、不吉な鳴き声を響かせていました…。

ついに、プリンセスクレールである自分を受け入れてしまったるうちゃん。
せっかく育ち始めたあひるとの友情の行方は?
「一途に想う気持ち」を返されたみゅうとは、ますますチュチュ一筋に
なってしまうのか?
その時、あひるはどうするのか?
自分を取り戻したふぁきあは?
運命を受け入れる者と運命に逆らう者とは、果たして誰の事なのか?
エデルさんは、本当に操り人形なのか?
やぎ子先生はあれで本当に諦めたのか?(^_^;

なかなか先の読めない展開で、またもや、次回が待ち遠しいお話でありました。

蛇足:
 今回のゲストキャラ・“めがねっ娘”まれんちゃん。
名前の綴りは“Malen”でしたが、“malen”はドイツ語で「絵を描く」と
いう意味の動詞。そのまんまのネーミングですね(^_^;
(読みは、正確には「まーれん」ですが)
 めがねっ娘、ショートヘアと、私的には「そのスジのハートを直撃」な
キャラでしたが、ちょっと出番が少なく、何より話の本筋への絡み方が薄
かったのが残念。

蛇足その2:
 今回の見どころ(?)、るうちゃんがプリンセスクレールへと変身するシーン。
るうちゃん、流石です、凄いです(何がだ)。
ある意味、かなりえろえろです。あひるよりめりはりのある体なだけに、
はっきり見せたりはしませんが、それがかえってヤバい雰囲気です。
 今回の脚本は小中氏でしたが、第四幕と同様に、あひるとの掛け合いも良い
雰囲気でした。ただ、やぎ子先生、まれんちゃんと、ちょっと色々な要素を
入れ込み過ぎたのか、一つ一つの要素が薄かったように思われるのが残念でした。

蛇足その3:
 普段、「私と結婚してもらいますよ」ばかり言ってる猫先生ですが、
決して「誰でも良い」わけではなかったようです。
しかし、やぎ子先生を断ったのは、本当に食べ物の趣味が合わなかったから
なのか、それともマジで生徒が良いのか(^_^;
そう言えば、やぎ子先生はキャストがテロップにありませんでしたが、
本当の山羊の鳴き声を使っていたんでしょうか。

蛇足その4:
 回を追うごとに数を増してくる烏達。今回は、ついに街の上空を覆うかの
勢いでしたが、どうもああいうのを見ますと、ヒッチコックの「鳥」とか、
「オーメン」とかの怖い映画を連想してしまいます。烏の群れの動きが、
また妙にリアルっぽくてなおさら。
 いや、そういうのも好きなんですけどね(^_^;

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10.AKT

「プリンセスチュチュ」第十幕、「シンデレラ」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Aschenbrodel: Walzer-Coda〜」。
意味は、「灰かぶり姫:ワルツ−コーダ」。
最初の「o」には、ウムラウト「‥」が付きます。

例によってネタばれ防止の改行を。

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19
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16
15
14
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11
10
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8
7
6
5
4
3
2
1
0

昔々、一人の娘がおりました。
娘はみすぼらしい服を着て、灰かぶり姫と呼ばれていましたが、
魔法で美しいお姫さまになり、王子と踊ります。
そして十二時の鐘とともに、娘はガラスの靴を残して、
元の灰かぶり姫に戻りました。
王子は、わざわざ娘を探し出し、妻に娶りましたが、
…でも、王子はその娘を、本当に愛したのでしょうか…。

岸田さん、そんな身も蓋もないこと言わないで(^_^;
さて、お話は、前回の続きから始まります。

プリンセスクレールが去った後の美術室。
ふぁきあは、次にプリンセスチュチュに矛先を向けました。
何故、クレールを倒さないのかと。
チュチュは、クレールが苦しんでいたからと言いますが、
ふぁきあは、心を戻すだけではみゅうとを守れない、
(その邪魔をする)俺を殺すことができるのか、と迫ります。
そして、怯むチュチュに、手にしたガラスの破片を突きつけ、
俺にはできると言い切るのです。
みゅうとは、そのふぁきあを押し止め、チュチュを去らせます。
しかしみゅうとは、ふぁきあが震えていることに気が付くのでした。

一方、あひるは、いつの間にかアヒルの姿に戻ってしまっていました。
水に浮かんでも女の子になれません。
それもそのはず、赤いペンダントが無くなっていたのです。
ふぁきあにガラスを突きつけられた時、ペンダントの紐が傷つき、
切れてしまっていたのでした。

必死にペンダントを探すあひるの姿を、ドロッセルマイヤーが
意地悪そうに見つめています。
さてさて、アヒルのままで何ができるのかな?

結局ペンダントは見つからず、あひるは探し疲れて、学園の中庭で
眠り込んでしまいました。
翌朝、あひるが目覚めると、そこにいたのはふぁきあでした。
そして、その手にはあのペンダントが握られていたのです。
ふぁきあが、ペンダントを拾い、チュチュが取り返しに来るのを
待ち構えているのでした。
あひるは、何とかペンダントを取り返そうとしますが、流石に
あっさりとは手放してくれません。
ふぁきあは、そんなあひるの姿を、以前と同じように優しい表情で
見ています。
「お前は罪が無くていいな」
やがて、そんな意味深な言葉を残して、ふぁきあは授業に行って
しまいました。

あひるは、練習場を覗いてみますが、ペンダントはふぁきあが身に
着けている為、取り返すことは難しそうです。
その上、「美味しそうなアヒルの匂いがします!」などと物騒な
事を言うワニ子さんまでいるので、練習場に入る事もできません。

授業では、今、みゅうとが踊っています。
以前にも増して美しいその姿に、あひるは思わず見とれてしまいます。
それは、やはり心を取り戻しているからでしょうか。
猫先生も、技術より感情が出るようになった、と誉めています。

しかし猫先生、その理由を「恋をしているから」と見抜いたのは流石ですが、
だからって、
「みゅうとさんの為に、放課後、恋の特別授業をしましょう」
などと言うのは、どうかと思いますが。
しかも、教室で本当に「授業」をしてますし。
それを真面目に受けるみゅうともみゅうとですけど。
その手の「特別授業」と言えば、やはり保健室とか、生徒指導室とかが…
いや、そういう問題ではありませんでした(^_^;

さて、何とかペンダントを取り返す機会を伺うあひる。
小さいアヒルの身体を利用して、ふぁきあの部屋に入り込んだまでは
良かったのですが、ふぁきあがペンダントを文字通り「肌身離さず」
シャワー室にまで持ち歩いているため、どうしてもチャンスがありません。

シャワー室から出てきたふぁきあを見て、あひるは驚きます。
ふぁきあの身体には、肩から腹部にかけて、大きな裂け目のように
見える痣があったのです。
そして、ふぁきあが呟いた言葉にも。
「みゅうと、お前は判ってない…心を取り戻す事が何を意味するのか…」

あひるがその言葉の意味を考える間もなく、一羽の烏がやって来ます。
烏がもたらしたのは、漆黒のカード。
それは、みゅうととクレールとの結婚式の招待状でした。
時刻は今宵12時。場所は教会。そして立会人はふぁきあ。

「俺など敵ではないと言うのか!」
その不敵な文面に、激昂するふぁきあ。驚くあひる。
そして、同じように届けられた招待状を見たみゅうとの顔には、
今までになく固い決意の表情が浮かんでいました。

夜。
ふぁきあは、とある骨董品店を訪れます。
当然、あひるも後をつけ、店に忍び込みます。
ふぁきあが会いに来たのは、店の主人・カロン。
ふぁきあは、カロンに、「ローエングリンの剣」を渡して貰うために
やって来たのでした。
そこであひるは、驚くべき話を聞くのです。

カロンが、両親を失ったふぁきあを引き取って育てた事。
ふぁきあの身体の痣は、物語の中で王子を最後まで守った騎士の生まれ変わりで
ある印だという事。
それが、カロンの一族に伝わる言い伝えである事。
そして、プリンセスチュチュの登場や、大烏の復活も、その言い伝えの通りで
ある事。
心臓と、記憶を無くした王子を助け、「伝説の人」を意味する「ミュートス」
から、「みゅうと」という名を与えた事。
何事にも無反応なみゅうとが、弱いものを守るためにだけは、自分の身を
かえりみなかった事。
そんなみゅうとが心配なあまり、ふぁきあがみゅうとに「俺の言う事だけ聞け」
と言い続けてきた事。

しかし、カロンは、ふぁきあに剣を渡しません。
ふぁきあが恐れているのは、王子が心を取り戻した時の、ふぁきあ自身の
運命なのではないのか。
物語の騎士のように、大烏に引き裂かれるという運命を。
みゅうとを役立たず呼ばわりし続けたのも、
みゅうとが好きな踊りだけしていられるように金冠学園に入れたのも、
全ては、その運命から逃れようとした故ではないのか。
今のふぁきあには、みゅうとを守る事など出来ない。手を引けと。

そのカロンの言葉に、ふぁきあはたまらず店を飛び出してしまいます。
後を追ったあひる。
あの話を聞いたあひるには、もう、何が間違っていて、何が正しいのか、
よくわからなくなっていました。

ふぁきあは、みゅうとのことをものすごく、もしかしたら自分以上に、
想っているのかもしれない。

そう感じたあひるは、一人涙を流すふぁきあに近付きます。
そのあひるを見て、自分の為に泣いてくれていると思ったふぁきあは、
あひるを優しく抱き締めます。
やがて、ペンダントをあひるの方に放ると、ふぁきあは立ち去って
行きました。

とにかく、12時まであと僅か。
ペンダントで少女の姿に戻ったあひるは、急いでカロンの店に戻ります。
先刻、ふぁきあとカロンが言い合いをしている時に、ペンダントが赤く
光ったのを、あひるは見逃していなかったのです。
案の定、カロンの側には、心のかけらがいました。
プリンセスチュチュに変身したあひる。
物語の中の存在の筈のチュチュが、目の前に現れた事に驚くカロン。

カロンは、後悔し続けていました。
ふぁきあに言い伝えを話してしまった事を。
ふぁきあを傷つけてしまった事を。
そして、後悔するような事しかできない自分自身を。

そんなカロンに、チュチュは、ふぁきあを信じる事はできると言います。
ふぁきあが信じて選んだ道なら、どんな結果になっても後悔はしないと。
だから、ふぁきあを信じてあげてくれと。

そんなチュチュの言葉に、迷いから解き放たれたカロンから、心のかけらが
離れます。それは、悔いる心。
礼を言うカロンに軽くお辞儀をして、チュチュは去っていきました。

ふぁきあが再びやって来ました。
物語の運命を変えてみせるという、強い決意を持って。
そのふぁきあに、カロンは、「ローエングリンの剣」を渡します。
後悔しないように。
そして、カロンは、ふぁきあを強く抱き締めて言いました。
「息子よ」と。

やがて、12時が迫ってきました。
教会の前で、チュチュはみゅうとと合流し、心のかけらを返します。
逃げてはいけない気がするから。
ここに来た理由を、みゅうとはそう答えました。

その時、響くクレールの声。
今宵、王子は私のものになる。
チュチュ、あなたにも立ち会って貰うわ。生贄としてね!

姿を現したクレールは、チュチュを茨の檻に閉じ込めると、結婚式を
始めました。
チュチュの命を盾に、みゅうとに踊りを強いるクレール。

何故僕を自分のものにしようとするのか。
問うみゅうとに、クレールは言います。
それが運命だからだと。
運命を変える事は、誰にも出来ないと。

そこに飛び込んできたふぁきあ。
剣をかざして、クレールに斬り掛かります。
みゅうとを盾にしようとするクレール。
しかし、チュチュの叫びに、一瞬はっと我にかえります。
「何をそんなに苦しんでいるの?」
そのみゅうとの問い掛けに、そして自分を見つめるみゅうとの瞳に、
たじろいだかのように、クレールは黒い風の中に消えてしまいました。

またもクレールが消えた後。
ここで決着をつけるか、と挑むようなふぁきあに対し、チュチュは、
闘いたくないと言って立ち去って行くのでした。

ふぁきあ達より先に戻ろうと、必死に寮の塀を乗り越えたあひる。
しかし、ようやく乗り越えたところに、ふぁきあとみゅうとが戻って
来ました。しかも、普通に門を開けて。あひる、大ボケです。
茂みに身を隠したあひるですが、あっさりふぁきあに見つかってしまいます。
何とか誤魔化して逃げようとするあひる。
しかし、ふぁきあは、その胸にあのペンダントがある事に気付いたのです。
気付かれたあひるは、ダッシュで女子寮に逃げ込み、後には呆然とした
ふぁきあが取り残されました。
「プリンセスチュチュ…?」

とうとう正体がばれてしまったようだねぇ。どうする、プリンセスチュチュ?
そして、ドロッセルマイヤーは、いつものように、事態の展開をただ楽しんで
いるようでした…。

と、いうわけで、何か良い雰囲気になってしまったあひるとふぁきあ。
(あひるはアヒルでしたけど)
この調子では、某所で囁かれていた、あひる×ふぁきあというカップルも、
あながち希望的観測では終わらないかもしれません。
次回は、いよいよ心のかけらの大本命(?)、「愛する気持ち」が出てくる
ようで。果たして、取り憑かれているのは誰なのか、楽しみです。

蛇足:
 今回の動物ゲストキャラのワニ子ちゃん。
公式ホームページのトップ絵に昔っからいた割には、出番が少なくて
かわいそうでした。ありくい美ちゃんもそうでしたが、あんな外見でも
声は可愛らしいというのが良い感じなのですが。

蛇足その2:
 動物キャラと言えば、今回はほとんどアヒルだったあひるちゃん。
劇中の動物キャラの中では、最も擬人化されているあひるですが、何故か、
お尻の穴が、「これでもか」と言わんばかりに描かれてます。
いくらアヒルとは言え、仮にもヒロインがこんな事でいいのでしょうか(^_^;

蛇足その3:
 始めの方でドロッセルマイヤーが出てきた時に、何か歯車らしきものを
修理しているような感じでしたが、そこに一瞬映り込んだのは、やはりと
言いましょうか、エデルさんでした。しかも、背中には四角い穴が。
このまま、ドロおやじの操り人形で終わってしまうのは惜しい気がしますので、
何かしらの逆転劇を期待したいところですが…。

蛇足その4:
 劇中で度々出てきた、からくり時計の人形。
踊る王子さまとお姫さま、騎士、鳥(烏?)という取り合わせが、メインの
4人に対応しているのでは、という推測は、以前からあちこちで見られましたが、
るうちゃんが鳥、騎士がふぁきあ、王子がみゅうととなれば、やはりお姫さまは
あひる?なんでしょうか。
 でも、「シンデレラのガラスの靴」が「ペンダント」だとすれば、それを
拾い、あひるに返したふぁきあこそが、あひるの王子さまという事になる…
の、で、しょうかねぇ…?

蛇足その5:
 たまたま観ていた今日の競馬の菊花賞。
「ローエングリン」とか「シンデレラボーイ」とかいう名前の馬がいて、
笑ってしまいました(^_^)
他のレースには「グランパドドゥ」なんてのもいたし、馬主さんの趣味が
垣間見えて面白いです。「チュチュ」を観ているわけではないでしょうけど、
何か関係ありそうな名前があると、楽しいです。

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11.AKT

「プリンセスチュチュ」第十一幕、「ラ・シルフィード」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜La Sylphide〜」。
意味は…そのまんまですね。
どんな話か調べてみましたが…やっぱり悲劇なのね(;_;) 岸田今日子さんの
語りを参照のこと、です。

例によってネタばれ防止の改行を。

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昔々、自由の翼を持つ娘がおりました。
娘を愛する男は思いました。
あの翼を縛ってしまえたら、そうすれば片時も離れずに済むのにと。
けれども、男が娘の翼を魔法のショールでくるむと、たちまち翼は落ち、
娘は死んでしまいました。
男は、知らなかったのです。娘の翼は、命の源だった事を…。

「ようやく役者は揃った」
ドロッセルマイヤーが言います。
愛する心の無い王子、
死を恐れる騎士、
覚悟の無い悪役、
そして、愛を告げられないプリンセス。
「だが、まだ足りないものがある。今度は、人の心などに興味を持つんじゃないよ」
そう言って、エデルさんを送り出すドロッセルマイヤー。

雨に煙る金冠町。
とある大きな橋で、エデルさんが宝石売りをしています。
そこに、一つの宝石を引き取ってほしい、という女性。
(でも、手は毛むくじゃらで、鋭い爪が。くまか?狼?)
その宝石の名前は「愛」。
私にはその宝石を持つ資格が無い、という女性の言葉に、宝石を受け取るエデルさん
なのでした。

さて、プリンセスチュチュの正体を知ったふぁきあと、知られたあひる。
チュチュが誰であろうと、恐れず、大烏からみゅうとを守ると決意を固めるふぁきあ。
一方、バレてしまった事を気に病むあひる。

そんなあひるを、ぴけとりりえが放っとく筈もありません。
朝からため息ばかりのあひるを、みゅうとにふられたためだと思っている二人。
またもや告白のリベンジをするようにあひるに迫ります。
相手の気持ちを知るのにも、プレゼントを贈るのが良い、と勧める二人。
と、そこに通り掛かったみゅうととふぁきあ。慌てる三人。

プレゼントで相手の気持ちが判るの?
みゅうとの直接的な質問に、とっ散らかっている三人はあたふたしてまともな答が
できません。
と、そこにどこからともなく現れた猫先生。
恋と愛とに違いが判らない、と言うみゅうとに対し、猫先生、今度は愛の特別授業を
しましょう、と言います。
いや、だからみゅうと君、そこで素直に猫先生についていくんじゃないって。

まあ変な二人は置いといて。
話の間中、そして猫先生がみゅうとを連れて行った後も、あひるを鋭い目で睨んで
いたふぁきあ。
やはり正体はバレていました。
練習場に呼び出されたあひるは、ついに自分がプリンセスチュチュである事を
認めてしまいます。
王子の心臓を砕こうとする理由を尋ねるあひるに対し、そんなことはもうどうでも
よくて、ただみゅうとを守るだけだ、と言うふぁきあ。
それならば一緒に力を合わせて、と言い掛けたあひるを遮って、ふぁきあは
立ち去ってしまいます。
俺は、お前を信用していない、と言い残して。

そして、るうはと言えば。
みゅうとと腕を組んで街を歩きながらも、悩んでいました。
プリンセスクレールの記憶を消して、るうのままでいたかったのに、と。
このままでは、みゅうとは自分からますます離れていってしまう。

ふと見ると、街頭でエデルさんが宝石を売っています。
並べられた綺麗な宝石の中で、みゅうとの目にとまったのは、あの「愛」という
名の宝石。
「気に入ったのなら差し上げましょう。でも、取り扱いにはご注意を」
意味深な言葉を投げかけて、二人を見送るエデルさん。

さて、貰った宝石を眺めるみゅうとに、るうが尋ねます。
「それ、私にくれるんでしょう?」
しかし、みゅうとの答は「ごめん、これは…」。
その途端、るうの顔からは笑みが消えました。そして、瞳に浮かぶ妖しい輝き。
次にるうが浮かべた笑みは、先程までの明るいものとは違っていました。
その笑みのまま、るうは、宝石を一晩預からせてほしいと言います。
もっと綺麗にしてあげるから、と。
そして、愛する人をつなぎ止めておけるように、と…。

その夜、るうの部屋にいたのはクレールでした。
クレールは、宝石に黒い烏の羽根を仕込んでいます。
あなたを誰にも渡しはしない。
その激しい言葉とは裏腹に、クレールの頬には涙が伝っていました。

同じ寮の屋根の下で、そんなことが行なわれているとは露知らず。
あひるはふぁきあのことを考えていました。
ふぁきあは、何でも一人でやっていて、決して本当の顔を見せない。
でも、アヒルの姿の自分に見せたあの顔。あれが、きっと本当のふぁきあなんだ。
そう思うと、ふぁきあに正体がバレたことも、かえってほっとする事に気付くのでした。

翌日。
るうは、みゅうとに宝石を返します。
綺麗な鎖を付けて首飾りになった宝石は、確かに美しく輝いていました。
その輝きに、すなおに感嘆の声をあげるみゅうと。そして、ほくそ笑むようなるう。
「これを贈れば、愛する人の心をつなぎ止めておけるわ。いつまでも…」

やがて放課後。
いつものように、居残りで遅くなったあひるが寮に帰って来ました。
その時、急いで出かけていくみゅうとの姿が。
その後をふぁきあが、そしてみゅうとが出て行くのを見掛けたあひるも、みゅうとを
探しに街に出ます。

あひるが広場に来ると、そこでは、またエデルさんが宝石を売っていました。
久し振り、と挨拶するあひる。
エデルさんにみゅうとを見なかったか尋ねると、彼は贈り物を渡す相手を探して
いる、と答えます。
その言葉に、ついつい、自分にプレゼントが贈られることを想像してしまうあひる。
でも、それは自分ではなく、プリンセスチュチュ。でも…。
はっと「あっちの世界」から戻ってきたあひるは、エデルさんにお礼を言うと、
駆け去っていきます。
そのあひるに、何か言いたそうなエデルさんなのでした。

みゅうとは、プリンセスチュチュと会った場所にいるかもしれない。
そう思ったあひるは、心当たりを廻ります。
お客さんがいっぱいの、えびねさんのレストラン。
もう「声」はしないなぜなぜ橋。
「ジゼルの館」に向かう道にも、初めてクレールと相対した用水路の畔にも、
みゅうとはいません。

そして、街の外縁の森までやって来たあひるは、そこにある古びた石造りの舞台で
みゅうとを見つけました。
ずっとプリンセスチュチュを待っているみゅうとに、やはり自分を抑えきれないあひる。
みゅうとの目の届かないところまで戻ると、プリンセスチュチュに変身します。
しかしあひるは、頭上を横切った烏には気付きませんでした。

みゅうとの前に現れるプリンセスチュチュ。
みゅうとは、チュチュに宝石をプレゼントします。
その時、宝石の中から、心のかけらが現れました。それは、「愛する気持ち」。
もう迷わなくていい、というチュチュの言葉に、心のかけらは安堵します。
「良かった…。だって、その中は暗くて、恐ろしい烏が…」
心のかけらは、その言葉半ばにして、チュチュの手の中に戻りました。
チュチュが心のかけらをみゅうとに戻そうとした瞬間。
宝石の中から、黒い蔓が迸るように現れ、チュチュを縛ったのです。
さらに、どこからともなく飛来した黒い羽根がみゅうとの胸に突き刺さり、
心のかけらが戻るのを邪魔しました。

そして、プリンセスクレールが現れました。
「愛する心ですって?
 プリンセスチュチュを始末するつもりが、いいものを見つけたわ。
 それと、あなたの正体もね」
そのクレールの言葉に驚くチュチュ。
みゅうとに近付こうとするクレール。

そこに、さらに立ちはだかったのはふぁきあです。
クレールに斬り掛かるふぁきあ。黒い羽根を矢継ぎ早に繰り出すクレール。
互角と見えた攻防も、クレールが足元を崩してよろけた所に、ふぁきあが一気に
間合いを詰めます。
しかし、倒れながらもクレールが放った羽根が、烏に姿を変えてふぁきあに
襲いかかりました。
それを見たふぁきあの顔を、恐怖の色が覆います。
襲いかかってくる烏を見た途端、あの大烏に引き裂かれた騎士の姿が浮かび、
恐怖に捕らわれてしまったのです。

体制を立て直したクレールは、みゅうとに近付きます。
クレールは、身動きの取れないチュチュを横目にして、黒い羽根に胸を突き刺されて
苦しむみゅうとに、おもむろに口づけをしました。
と同時に、戻りかけの心のかけらを掴むと、一気に引き抜いたのです。
光を失い、虚ろになっていくみゅうとの瞳。
チュチュの悲痛な叫びの中、みゅうとを連れて、クレールは消えていきました…。

おやおや、敵に正体がばれ、王子も奪われてしまったね。なんて愉快…いや、大変だ。
ドロッセルマイヤー一人が、本当に愉快そうに笑っていました…。

さて、早いもので、「卵の章」もあと2回。
怒濤の展開を見せる本編に、さらなる悲劇を予感させるような予告。
「雛の章」が続くとはいえ、いったんはなにかしらの結末が用意されている筈の本章。
今はただ、その物語の行方を見守りたいと思います。

とは言え、やっぱ、このままではるうちゃんがかわいそう。
あれだけ一途にみゅうとを愛しているのに(何で愛しているのかは謎ですが(^_^;)、
なりたくもないクレールになっちゃうわ、肝心のみゅうとは他の女に熱をあげてるわで、
報われないことこの上ない。
やはり、「お話」はハッピー・エンドがいいですが、でも、「おとぎ話」ってやつは、
悲劇で終わるものも多いですよねぇ…。

蛇足:
 23日に発売された、岡崎律子さんが歌う「Morning Grace」、買いました。
で、やっぱり只今無限ループ中です(^_^;
特に、エンディングテーマの「私の愛は小さいけれど」。
毎週TVで聴いている一番だけだと、普通の可愛い恋の歌っぽいんですけど、
三番まで行くと、なんか物凄く情熱的なラブ・ソングになってます。
情熱的な詞と、どちらかと言うと可愛らしい感じの曲に、岡崎律子さんの
透きとおるような歌声が合わさると、何かもう凄いです(^_^;

蛇足その2:
 「動画大陸」の番宣CMが流れ始めましたが、「チュチュ」の方の映像は、
今の「卵の章」からのものばかりで、「雛の章」がどんなものになるのか
さっぱり判りません。他のメディアにも情報がほとんど出ていないみたい
ですし、ほんと、どうなるんでしょうねぇ。
 一方の「ロウラン」の方は、美少女+ロボット+オカルト+etc.と、
これまたえらく「濃そう」な作品のようで。朝の7時半から(サンテレビの場合)
観て大丈夫かどうかがちょっと心配です(^_^;

蛇足その3:
 ドロおやじの操り人形で終わってしまうのは惜しい、とか言っていた
エデルさんですが、やっぱりいったん回収されたのは、人間の心に興味を持った、
すなわち自意識を持ち始めたから、って事のようでした。
今回も、あひるに何か言いたそうな素振りを見せたりして、まだまだ復活の
可能性を見せていますし、期待したいところです。

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12.AKT

「プリンセスチュチュ」第十二幕、「闇の宴」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Scheherazade〜」。
今回も、そのまんまの意味ですね。ドロッセルマイヤーに「お話」を聞かせる
クレールは、さしずめ「千夜一夜物語」のシェラザード姫という所でしょうか?
でも、あのドロおやじが、シャーリアール王のように改心するかは疑問ですが。

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昔々、美しい一人の奴隷がおりました。
彼を縛るものは重い鎖ではなく、お姫さまの愛情でした。
日毎夜毎、お姫さまは奴隷に愛を囁き、奴隷はそれに応えます。
縛られた身体。縛られた気持ち。
動けないでいるのは、奴隷とお姫さま、本当はどちらなのでしょう…。

クレールとの闘いで傷ついたふぁきあ。
気が付くと、自室のベッドに横たわっていました。
プリンセスチュチュに助けられた事を思い出して苦々しそうですが、
そのチュチュが、隣のベッドでうたた寝しているのを見て驚きます。
ふぁきあの呼びかけで目を覚ましたチュチュ。
「何でチュチュのまんまなんだ?」
「だって、男子寮に入るのに、ふだんの格好じゃまずいかなーって」
おいおい、そーゆー問題じゃないだろー、と、心の中でツッコミ入れてる
のが判るようなふぁきあの表情。
とにかく、チュチュとは協力しない、とあくまでつっけんどんな態度を
取るふぁきあに対し、みゅうとを探すことくらいは協力してもいいでしょ、
とチュチュ。

そのみゅうとは、いずことも知れない場所で、黒い羽根が敷き詰められた
中に横たわっていました。
みゅうとに寄り添うクレールが囁きます。
「私だけを愛してるって言って」
「僕はクレールだけを愛してる」
「本当に?」
「本当に」
「まさか…どのくらい?」
「……」
クレールの囁きに、ただただ機械的に答えるだけのみゅうと。
その瞳は、輝きを失い、虚ろなままです。

愛する心のかけらを無理矢理引き抜いたため、他の心まで閉ざしてしまった。
人形に戻ってしまった。
それでも構わない、と思うクレール。
他の誰かを愛するぐらいなら、誰も愛さない方がいい。

そして、こうなってしまったのも、全てあの邪魔者の所為。
邪魔者は、早めに退場してもらわなければ。
一人の王子に、姫君は二人も要らないわ。
「そうでしょ?へル・ドロッセルマイヤー?」
いきなり呼び掛けられ、驚くドロッセルマイヤー。
クレールは、ドロッセルマイヤーの存在に気が付いていたのです。
どうでもいいけどるうちゃん、そんな奴、敬称を付けて呼ぶ事はないと思う。

最高のお話を聞かせてあげる、と言うクレールの言葉に飛びつくドロッセルマイヤー。
最高のお話の、最高の結末には、最高の舞台が必要だ。
そう言われてドロッセルマイヤーが用意した舞台は、200年もの間、誰も訪れた事が
無いという湖でした。

一方、みゅうとを探すあひるとふぁきあ。
街中を探し回って、とうとう夜が明けてしまいました。
もしかしたら、今頃レッスン室で一人で踊っているかも、と言うあひる。
ダメもとで、とふぁきあも行ってみる事にします。

日曜日の学園は静かです。
その静けさの中、レッスン室から聞こえてきた音楽。
もしや、と思って二人がレッスン室を覗いてみますと、そこにはバレエを踊る人影一つ。
猫先生です。(やっぱりとお思いでしょうが)

日曜日の秘密練習を見られて、慌てるあまり野生に帰りかける猫先生。
覗いていたのがあひるだと知ると、案の定いつものセリフ。
「私のたゆまぬ努力の邪魔をした罰として、ソッコー結婚してもらいますよ!」
ラス前という事で、猫先生にもいつにも増して焦りが見えるようです(^_^;
とにかく「ごめんなさい」して逃げ出すあひる。

今度は、学園の林の中にある四阿(?)にやって来た二人。
そこにも人影がありました。みゅうとです。
喜んで駆け寄ろうとするあひるを止めるふぁきあ。みゅうとの様子が変なのです。

おもむろに、「王子と烏」の話を始めるみゅうと。
大烏に一太刀も浴びせる事ができずに、その爪で切り裂かれた騎士のことを、
嘲りを込めた口調でこきおろします。
「王子を守るなんて口先ばかりの役立たず」と。
そのため、王子は、お話から飛び出した大烏を独りで追いかけなければならず、
そして大烏を封じるため、自分で自分の心臓を取り出したのだ、と。

そして現れるもう一つの人影。るうです。
るうは、プリンセスチュチュの事を語ります。
チュチュは、「王子と烏」の中では、ほんの数行しか触れられていない、
お話の登場人物達でさえ誰もやりたがらない、みじめな存在なのだと。
王子に振り向いてもらえるはずも無い、お話の単なる賑やかし、と。

その、あまりにも以前と異なる態度のるうに戸惑うあひるとふぁきあ。
二人の前で、みゅうとが黒い烏に姿を変えました。
「そろそろ気付いてもらえたかしら?プリンセスチュチュ?」
るうがプリンセスクレールだった。
その事実に愕然とするあひる。そしてふぁきあ。
るうは、二人の目の前でプリンセスクレールへと姿を変えると、
いつの間に持ち出したのか、王子の剣をその手に携え、消えてしまいました。
早く王子を助けにいらっしゃい、と嘲笑うように言い残して。

呆然とする二人の耳に、手回しオルガンの音が聞こえてきました。
エデルさんです。
「水は火に。火は闇に。闇はしじまに、惹かれるもの」
そう謎めいた言葉を呟き、二人を導くエデルさん。
エデルさんは、二人を地下への隠された入り口に連れて行きました。

「これが命令だから」
自分の事を「人形」だと言い、「人形」は命令に従うだけだ、と言うエデルさん。
誰の命令だ、というふぁきあの問には、笑って答えません。

しかし、そんなエデルさんに、抱きついてお礼を言うあひる。
そのあひるの頬に手を当てて、呟くエデルさん。
「暖かいのね…。それに、柔らかい…。さあ、行きなさい」
振り切るように言うエデルさんに、笑顔で答えるあひる。
「行ってきます」

地下への入り口をくぐる二人を見送るエデルさん。
彼女を見ているドロッセルマイヤーが、釘をさすように言います。
お前は、私の代わりにお話に輝きを添えるだけの存在。
身の程を知らないと、危険だよ。

地下を進むあひるとふぁきあ。何時、誰が作ったのか、古びた通路が続いています。
切り立った崖、穴の開いた床、急に低くなる天井と、危険な場所にも事欠きません。
崖から落ちかけ、穴にははまり、低くなった天井には頭をぶつける。
絵に描いたようなあひるのドジ振りに、ふぁきあは、自分の抱いていたチュチュに
対するイメージが、ガラガラと崩れていくのを感じているようでした。

やがて、通路は、自然の洞窟のようになってきました。
何か言いたそうなあひるに、言い掛けたことはちゃんと言え、と怒るふぁきあ。
言われて、あひるもぽつぽつと話します。
ふぁきあの事を、騎士としてだめだとか思わない、ということ。
みゅうとの事を、初めはただ綺麗だとしか思ってなかったこと。
でも、その寂しそうな目を見て、この人のために何かしてあげたいと思うように
なったこと。
でも、今は…。
話しているうちにも、二人は奥へ進んでいきます。

と、突然襲いかかる烏の群れ。
ふぁきあが剣を振るって防ぎますが、数が多くて間に合いません。
あひるも襲われ、大きな穴の淵から足を踏み外してしまいました。
穴に落ちるあひるを庇って、自分も落ちてしまうふぁきあ。
それを見た烏達は、引き上げていきます。

穴の底には、水が溜まっていました。
そのおかげで、二人とも怪我は無かったようです。
しかし、穴の壁にはぬるぬるした苔がびっしり。とても登れそうにありません。

と、壁の水面付近に横穴らしきものを見つけたあひる。
水は、その先まで続いているようです。
もしかしたら、水の中から先に進めるかもしれない。
そう思いついたあひるですが、それを確かめるには、アヒルの姿にならないと
いけません。

ふぁきあなら…。
決心したあひるは、胸のペンダントをふぁきあに手渡します。
訳がわからず、とりあえずペンダントを受け取るふぁきあ。
その途端、あひるはアヒルの姿に戻り、水の中へと潜って行ってしまいました。

後に残されたのは、呆然とするふぁきあ。
あまりのことにへたり込んでしまいますが、更に、今のアヒルが、いつか独りで
泣いている所に現れたアヒルだと気付き、もう半ばパニック状態。
戻ってきたアヒルのあひるに対して、思わず「きたねーぞ!」などと
怒鳴りつけてしまいます。

いきなり怒鳴られたあひるも怒り心頭。
ふぁきあの手からペンダントを奪い返すと、少女の姿に戻って怒鳴り返します。
当然、あひるは一糸纏わぬあられもない姿。
ますます赤くなるふぁきあを見て、自分の姿に気付いたあひるも真っ赤。
水に飛び込んで身体を隠すあひる。
「見た?」
「見ねーよ…て言うか、どうだったんだよ!それを先に言うのが…」
「だってふぁきあが!」
「立つなー!!」
まぁ、漫才はともかく。

あひるの推測通り、水中の横穴を通って、また奥の通路に出ることができました。
水から上がった所で、あひるにみゅうとの事を話してあげるふぁきあ。
昔、「王子と烏」のお話を読んであげた時、みゅうとが一番興味を持ったのが、
ほんの少ししか書かれていないプリンセスチュチュの事だったこと。
特に、プリンセスチュチュが光の粒となって消えてしまうくだりを何度も
聞きたがったこと。
心を取り戻したいと思うようになったのも、きっと返してくれるのがチュチュ
だったからだと。
いつも、小さくて弱いものを守るためなら、自分の事などかえりみなかったこと。
心を失っても、その事だけは忘れなかった…。
「あいつは、そういう奴なんだ」
どこか嬉しそうにそう言うふぁきあを見て、あひるも嬉しそうです。
何か元気になった二人。更に先を急ぎます。

やがて、二人は開けた場所に出ました。
そこは、地下に広がる湖でした。
湖の真ん中には小さな島のような場所があり、みゅうとはそこに横たわっていました。
そして、二人の前に現れるプリンセスクレール。

クレールは、プリンセスチュチュに変身したあひるに、手にした小箱を示して言います。
王子の愛する心、人を、世界を全て愛する心はここにある。
想いの丈を囁いて、もし、王子の心があなたを選ぶのなら、王子も心も返してあげる。
さあ、語ってあげたらどう?あなたの想いを。
しかし、愛を告白すれば、光の粒となって消えてしまう運命のチュチュ。

さあ、最高のお話を聞かせておくれ。命をも省みず語っておくれ。
クライマックスを迎えた「お話」に、ますます愉快そうなドロッセルマイヤーで
ありました…。

さて、いよいよ次回は「卵の章」の終幕。
そのサブタイトルも、実にトリを飾るに相応しく「白鳥の湖」。
しかしこの話、本当に続きがあるような終わり方ができるんでしょーか。
どうしても「全話完結」してしまいそうな気がしてしょうがありません。
まあ、次回の放映を楽しみに待つといたしましょう。

蛇足:
 以前は、あひるがふぁきあの事を知るお話がありましたが、今回は、ふぁきあが
あひるの事を知るお話でした。第一話の最悪な出会いから考えますと、よくもここ
まで来たもんだ、と思います。と同時に、それが全然不自然でも強引でもなく、
ごく自然に二人の関係の変化を描いてきた事にも驚かされます。何せ、僅か
1クールのお話の事ですから。ここまでシリーズ構成が綿密にされている以上、
次の「卵の章」最終幕、それに続く「雛の章」も、期待に違わないものである、と
期待したいところです。
 しかし、あひるは既に「最もお尻(の穴)を見せたヒロイン(ただし鳥)」と
いう称号が確定していそうですが、更に加えて、「最も『脱いだパンツ』を見せた
ヒロイン」という称号も付きそうです(^_^;

蛇足その2:
 今回は、ラス前としての盛り上がりもさることながら、何か「えろてぃっく」な
感じも増量されていたような。
 始めのクレールが横たわるみゅうとに囁く場面は、クレールの服の背中が大きく
開いている事もあり、まるで裸で抱き合っているように見えますし、中盤であひる
達にるうが正体を明かす場面で偽みゅうとと踊る踊りも何か官能的。あひるはもろ
に裸を晒してますし、最後にはどちらが王子の愛を掴むかという「オンナの闘い」。
やはり、「千夜一夜物語」に触発されてるんでしょうか(^_^;

蛇足その3:
 頭で、クレール=シェラザード姫か、と書きましたが、岸田さんの語りは、
ゾベイダ王妃と金の奴隷の事のようです。これは、もろに、クレールとみゅうとの
関係を連想させます。すると、シェラザード姫はチュチュ=あひるでしょうか?
 確かに、今まで「お話」を語ってきたのはあひるですが、それでは、最後は、
あひると改心したドロおやじとが幸せに暮らす、という、ある意味救いようの無い
結末に…ならんとは思いますが(^_^;
 だいたい、それではクレールもみゅうとも死んでしまいますし(;_;)

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13.AKT

「プリンセスチュチュ」第十三幕、「白鳥の湖」についてです。
サブタイトルのサブタイトルは、「〜Schwanensee〜」。
意味はそのまま、「白鳥の湖」ですね。

それでは、例によってネタばれ防止の改行を。

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昔々、美しい白鳥に恋をした王子がおりました。
ところが王子は、黒鳥の卑劣な罠に落ち、愛する白鳥を裏切ってしまいました。
黒鳥に愛を誓ってしまった王子。
それでも白鳥は、我が身を捨てて、愛する王子を守ろうとします。
今こそ、その愛の深さが試されるのです。

「どうしてこんな風に争わなければいけないの?」
チュチュがクレールに問います。
「あなたのせいよ」
それに対する、クレールの冷たい答。
チュチュが、王子に心を戻したから、お話が動きだしたのだと。
騎士はいずれ二つに引き裂かれ、王子は闘いに戻らなければならない。
誰も望んでいなかったのに。

「確かに以前はな」
ふぁきあがそれに応えます。
今は、みゅうと自身が心を取り戻したがっているし、自分も同じ気持ちだと。
今や、それを望んでいないのは、クレールだけだと。
「残念だったな」

そう言い放つふぁきあを見て、クレールは心のかけらを取り出しました。
そして、それを砕いてしまうと言うのです。しかも、みゅうとの手で。
クレールが命じるまま、立ち上がって剣を構えるみゅうと。
そして、何のためらいも無く、心のかけらに向かって剣を振り降ろしました。
「やめて!」「やめなさい!」
同時に叫んだチュチュとクレール。
そのどちらの声に応えたのか、みゅうとは寸前で刃を止めました。

クレールは再びチュチュに想いを告げるように迫ります。
チュチュには選択肢がないのだから、さっさと消えてしまいなさいと。
その言葉に、チュチュは覚悟を決めました。
そして、笑顔すら浮かべて、クレールに頼みます。
自分が消えた後、みゅうとにはもう酷い事をしないでほしい、と。
わずかに驚きの表情を浮かべながらも、クレールは余裕で言います。
「これまで以上に愛してあげるわ」と。

その言葉を聞いて、進み出るチュチュ。
「何、意味ねーことやってる。お前バカか」
そのチュチュを止めたのは、やはりふぁきあです。
チュチュがいなくなったら、誰がみゅうとに心を戻してやれるのだ、と。
「プリンセスチュチュの運命を、笑って受け入れられるような奴は、
 お前ぐらいしかいない。だから、消えちゃだめだ」

そして、剣を構えて進み出るふぁきあ。
それを見たクレールは、瞬く間に湖を凍りつかせ、烏の騎士達を呼び込みました。
ふぁきあは、凍りついた湖をクレールに向かって突進します。運命を変える為に。

その前に立ちふさがる烏の騎士達。氷上で繰り広げられる激しい闘い。
チュチュは、烏の騎士に動きを抑えられて、ただ見守る事しかできません。
次々と襲いかかる烏騎士達を、ふぁきあは見事な身のこなしで撃破していきます。

しかし、第2波の襲撃まで全て撃退して、クレールまであと少しと迫った時。
突然、凍りついていた湖の氷が消滅し、ただの水面に変わってしまったのです。
たまらず、水中に沈むふぁきあ。
次の瞬間、水面から巨大な水の柱が噴き上がり、その中から、ふぁきあが投げ出され
ました。
空中高く放り上げられ、自由の利かないふぁきあに向かって、烏達が一斉に襲い
かかります。
鋭い刃のように姿を変えた烏達が、ふぁきあの身体を貫き、そのまま湖の中へ再び
叩き込みました。

思わず悲鳴を上げるチュチュ。
その目の前で、水面に赤い血が広がっていきます。
何度も何度も、ふぁきあの名を呼ぶチュチュ。
勝ち誇るクレール。

しかし、まだ終わっていませんでした。
みゅうとの眼前に、必死のふぁきあが這い上がってきたのです。
ふぁきあは、勝ち誇るクレールには構わず、みゅうとに向かって剣を振り上げました。
だが、その剣は、みゅうとの持つ王子の剣を砕いたのです。

これでもう、心のかけらを砕く事はできない。
「プリンセスチュチュ…おまえは…みゅうとの…未来…」
そう呟くと、ふぁきあは、力尽きたように、三度湖の中へ没していきました。

チュチュは、立ち上がりました。
決して、あきらめないと。絶対に、みゅうとを守ると。
そして湖の上に立つと、みゅうとに向かって想いを告げ始めました。
でも、それは言葉によってではなく、踊りによってでした。
踊りによって、自分の想いを伝える事が出来るはず。
その決意を胸に、精一杯の想いを込めて踊るのです。

それを見たクレールも、対抗して踊ります。
そしてチュチュに対しても、冷たい言葉を投げかけます。
「所詮あなたは、チュチュの力を借りているだけの、
 見せ掛けだけのプリンセスなのよ、あひる」

その言葉に、チュチュの踊りが揺らぎます。
本当の自分はドジなただの女の子で、そしてただのアヒルだということが判って
いるから。
脳裏をよぎるのは、そんな自分を思い出させるような光景。

ぴけの厳しいツッコミの言葉。
りりえのいつもの毒舌。
さらに、猫先生の必殺のセリフ。
「どうしてこんな簡単な事もできないんですか!わざとじゃないでしょうね。
 私と結婚したいからって、わざと失敗するのは許しませんよ!」

自信を失いかけたチュチュに対して、見事に踊り続けるクレール。
そのクレールに、心のかけらが近付きます。
「私こそがあなたのプリンセス!」
「君が、僕のプリンセス…?」
そして、心のかけらはクレールの手を取りました。

その姿を見て、完全に自信をなくしてしまったチュチュ。
しかしその時、ふぁきあの最後の言葉が蘇ります。
その言葉に力を得て、チュチュは再び踊り始めます。

今までと違うその踊りに、不審を抱くクレール。
と、そこに一瞬、チュチュと一緒に踊るみゅうとの姿が浮かびます。
そう、チュチュは、一人でパ・ド・ドゥを踊っていたのです。
まるで、そこに共に踊るみゅうとがいるかのように。

「本当のわたしはただのアヒル。でもあなたがいれば、わたしは、変わる!」
一人ではできないリフトの姿勢も、驚異的なジャンプ力で見事に表現するチュチュ。
その後支える者がいなくて無様に落下してしまおうと、
一人では無理な姿勢が続いて脚に震えが来ようと、
チュチュは踊り続けます。
ただ一つ、「あなたにここにいて欲しい」という想いを込めて。

そして、その想いは伝わりました。
みゅうとが立ち上がったのです。
その瞳には光が、口元には優しい微笑みが戻っていました。
「僕は、ここにいるよ。プリンセスチュチュ」
その言葉に、思わず駆け寄り抱きつくチュチュ。
クレールと居た心のかけらも、みゅうとのもとに戻ってきました。

ついに自分の負けを悟ったクレールは、一人闇の中へと消えて行き、
湖も島も消え去りました。それらは全て幻だったのです。
地底から脱出しようとするチュチュとみゅうとですが、深い闇の中で行くべき方向を
見失います。

「こちらへ」
そこに聞こえてきた声。そして遠くに見える仄かな灯。
二人は、その灯を目指して進みます。
やがて、灯は大きな焚き火の炎となり、二人は、街の噴水の広場に出ました。

焚き火の前には、ふぁきあが横たえられていました。
急いで駆け寄ると、ふぁきあは命を取り留めていました。

安堵するチュチュ達の前、焚き火の炎の中に人影が浮かびました。
それは、エデルさんでした。
焚き火は、エデルさんの身体を燃やしていたものだったのです。
エデルさんが、瀕死のふぁきあを救い、その身体を燃やして、チュチュ達を導いて
くれたのです。

「ただの人形が、心をもつ人間の真似事をしてみただけ。後悔はしてないわ。
 だから泣かないで」
そう言って、優しくチュチュに微笑むエデルさん。
涙が止まらないチュチュに、エデルさんは最後の願いを言って、消えていきました。
「王子さまとパ・ド・ドゥを踊って見せて」と。
最高の笑顔を残して。
チュチュは、涙を拭い、そしてその最後の願いに応えました。

こうしてお姫さまの深い愛が、悪い魔法にうち勝ったのです。
王子は愛する心を取り戻し、二人はお互いの想いを込めて、
いつまでも、いつまでも踊り続けるのでした。
この幸せが、永遠に続く事を願って…。

「何て素晴らしい愛だ」
その光景を、運命を変えたあひる達を、ドロッセルマイヤーが賞讃していました。
「だが、それもまた、決められた運命だったのかもしれないよ。
 だって、お話は、まだまだ、終わっていないんだからねぇ」
そして、楽しげに笑いながら、いずこかへ消えていったのでした。

これにて、「プリンセスチュチュ」〜卵の章〜、完結であります。
とは言え、「王子が心を取り戻した時、『王子と烏』のお話が動きだす」わけですから、
これから「真の戦い」(笑)が始まるのかもしれません。
次回からの「雛の章」が、果たしてどのようなお話を見せてくれるのか、ドロおやじ
ならずとも楽しみなところであります。

蛇足:
 さて、どうやって次の章につなげつつ話の区切りをつけるのか楽しみにしていた
今回ですが、終わってみれば、確かにこれしかないような話ではなかったか、と
思います。
 クレールとの闘いに一応の決着をつけ、それも今までになくクオリティが高い
バレエ対決によって区切りに相応しい見せ場を用意し、しかしクレールもドロッセル
マイヤーもまだまだ何かやりそうで、さらに「王子と烏」の物語自体がこれから
動きだすという、見事な構成だったと思います。

 ただ、あと少しでも尺が長ければ、と残念に思った点も。
クレールが退いた後、湖が消えた時、みゅうとが「とにかく脱出しよう」と言い、
チュチュも「はい」とあっさり言ってしまいます。ここで、
「おまえら、ちょっと待たんかい!」
とツッコミ入れた人は多いのではないでしょうか(^_^;

ふぁきあの事を忘れたかのような(と言うか完全に忘れているとしか思えない)
この場面は、今までの話からすると、無茶苦茶不自然でした。
まぁこの時点で、ふぁきあは既にエデルさんに助けられているはずで(どうやって
かは謎)、消えた湖の跡にいないのは判るのですが、それを確認してから行くとか、
あるいは地下が崩れてその暇もなく脱出するとか、そういう場面があっても良い筈
なのですが。
好意的に解釈すれば、そのわずかな場面を入れる余地も無いほど尺がいっぱいだった、
という事なのかもしれませんが、やっぱり引っ掛かります。

蛇足その2:
 かなりシリアスな展開となった今回ですが、それでも、細かいギャグが混じるのは
良いですね。
特に、ぴけ・りりえ・猫先生が、あひるの回想とは言えちゃんと出てきたのが
良かったです。
しかし、次回以降も、金冠町はまだ「お話と本当が混じり合った」ままなのでしょうか。
だとすると、心のかけらも、まだまだ残っているわけなんでしょうね。

蛇足その3:
 ふぁきあに襲いかかった烏騎士の群れ。
攻撃の最後の方で、「3人」の騎士が次々と画面に入ってきて「縦に並ぶように」
迫って来ましたが、これって、やっぱりアレなんでしょうか…
「じぇっとすとりーむあたっく」?(^_^;

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