「機関委任事務」は、都道府県では、都市計画、農地転用、旅券の交付、調理師の免許など、市町村では、戸籍、外国人登録、火葬の許可、保存樹林の指定など561項目に及んでおり、都道府県の仕事のうちの約8割、市町村の仕事の約4割が国の機関委任事務であるといわれていた。
「機関委任事務」は、原則として知事は担当の大臣の、市町村長は知事および担当の大臣の監督を受けた。担当の大臣(および知事)は、法令違反や怠慢があると認めた場合は、訴訟手続きを通じて、その仕事を代行することができた。従来は、地方議会には調査権もないとされたが、91年からは一部の機関委任事務を除き、地方議会にも調査権が認められた。
また、「機関委任事務」は、各省庁の縦割り行政の一因になっているとも指摘された。
95年に制定された「地方分権推進法」の重要な課題は、機関委任事務の廃止であり、99年「地方分権一括法」が成立した。
地方分権推進委員会の構想
地方分権推進委員会の構想では、自治体が担う事務は2つに整理される。機関委任事務は、原則として「自治事務」(自治体が法令の枠内で自主的に判断して執行する)とし、残りを「法定受託事務」(自治体が法令によって引き受ける。国の強い関与が認められる)とする。役割が終わった事務は廃止され、自治体が行うのが不適切なものは国に戻される。
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自治事務:自治体がした方がいい仕事。公民館、図書館、独自のサービス、計画、規制。都市計画、農地転用、道路、河川管理、義務教育、生活保護、消防、掃除など。
- 法定受託事務:本来は国の役割といえるが、国民の便利さと事務の効率から自治体がした方がいいもの。国勢調査、旅券の交付、外国人登録、国政選挙、国庫金の配分、国家補償など。