
中央政府のトップは、内閣総理大臣(首相)だが、実際のところ首相の権限は、あまり大きくない。
政策の決定には、閣議の全会一致が必要であり、各省庁に権限が及ぶのは各大臣であって、
首相は各省庁を直接、指揮・監督することはできないからだ。

一方、知事や市町村長は、住民から直接選ばれているので、非常に大きな権限をもっている。
自治体の首長の権限には、大きく分けて次のような二つの性格がある。
第一に、自治体の長は、住民の意思に基づく自治体の執行機関としての性格がある。首長は、
自治体の事務を行い、外部に対しては自治体を代表する。
たとえば首長は、規則の制定権、予算の編成権、議案の提出権、地方税・手数料の徴収権などをもつ。
◇ことば◇
相乗り首長
60年代半ばから全国に広がった革新自治体は、75年の統一地方選挙を頂点として、生活レベルの上昇、
福祉政策の普及、低成長化、財政赤字の増大、冷戦の終結などを背景として退潮し、首長は保守・中道
から「保革相乗り」へと変化した。
相乗り現象は、投票の意欲をそぎ、議会と首長の相互チェックを無意味にする。93年10月の神戸市長
選挙では、共産党を含む9党相乗りの笹山幸俊市長が再選されたが、投票率はわずか20.4%。阪神大震災
の被害増大の一因として開発優先の市政、その根本には知事・議会の緊張感の欠如があると指摘された。
95年の統一地方選挙では、東京で青島幸男、大阪で横山ノックが相乗りの官僚出身候補に圧勝し
「無党派層の反乱」と注目され、投票率も前回並か微増であった。これは例外で、投票率は知事選で
13都道府県中4道県が過去最低を記録し、43道府県の議会選挙では、3府県以外は過去最低という無惨
な状況だった。
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地方自治体には、首長から相対的に独立した権限をもつ教育委員会、監査委員、公安委員会などの
委員会・委員が設けられている。地方自治体は、首長とこれらの委員会から成り立つ「多元的執行機関
」である。ただし、首長は、行政を総合的に行うために、これらの委員会との間の連絡・調整を行う。
首長は、これらの委員を、議会の同意を得て任命する権限をもつ。
また、自治体には、首長の仕事を助ける機関として、副知事・助役、会計を担当する出納長・収入役
がある。首長は、これらの任免権をもつが、任命には議会の同意が必要である。
第二に、自治体の長は、国の代理機関としての性格がある。自治体の長は、国が本来行うべき事務を
委任されて、それを執行している。この事務は「機関委任事務」といい、国の指揮・監督を受けている。
被選挙権があるのは、都道府県知事は満30歳以上、市町村長は満25歳以上で、住民でなくても立候補
できる。任期は4年である。