[現代政治]-----その底流を探り、常識を整理する-----

地方自治を担う人民と地方政府(2)

議会と首長のチェック・アンド・バランス

owl  日本の地方自治体は、議院が内閣を選ぶ「議院内閣制」の中央政府とは違い、 米国などの大統領制と同様な「首長制」をとっている。
大統領にあたるのは、知事や市町村長などの首長で、首長は、議会で決められたことを実行する 「執行機関」である。一方、地方自治体の議会は、自治体の施策の方針を決める「議決機関」である。
 首長と議会の議員は、それぞれ別々に住民の「直接選挙」によって選ばれている。 したがって、首長も議会も住民の政治的代表というわけである。
 これらの首長と議会は、対等の立場でチェックし合い、バランスを保っている。 こうした仕組みを「二元代表制」民主主義ともよぶ。もし、首長と議会が対立した場合、 次のようにして調整している。
◇ことば◇

百条委員会

 1990年前後、政財界を揺るがしたリクルート事件。その発端となったのは、 川崎市前助役によるリクルートコスモス社の未公開株取得疑惑であった。 1988年、川崎市議会は「百条委員会」を設けてこの疑惑を追求した。
 百条委員会とは、自治体の運営について問題が起こった場合、地方議会が、 調査権を行使するために、議決により設けることができる特別委員会である。 地方自治法100条に基づくので「百条委員会」とよばれている。汚職などの 疑惑のほか、議案や事務の執行状況が調査対象となる。
 議会は、関係者を呼んで証言や記録を求めることができる。理由がなく呼 ばれても出頭しなかったり、証言を拒否したり、記録を提出しなかった場合や、 ウソの証言をした場合には、罰金や禁固などの罰則がある。
 百条委員会は、議会が執行部をチェックする最強の手段であるが、政争に 利用されるケースも少なくない。

  第一に、議会は首長を「不信任」し、一方首長は議会を「解散」することができる。
  1. 不信任議決をするには、在職議員の3分の2以上が出席し、出席議員の4分の3以上の 賛成が必要である。
  2. 逆に首長は、不信任の通知を受けた日から10日以内に議会を解散できる。
  3. 解散後、初の議会で不信任議決をするのは、過半数の同意が必要である。
   第二に、首長は、議会の議決や選挙に異議がある場合、再議あるいは再選挙を求めることができる。 米国大統領が、議会に対してもっている「拒否権」と同じ仕組みである。
   たとえば、議会の条例の制定や改廃、予算に関する議決に異議がある場合、 10日以内に再議を求めることができる。再議の結果、出席議員の3分の2以上 の多数で同じ議決がなされた場合は、その案件が確定する。
   第三に、首長は、事務の停滞を防ぐために、議会の権限に属することであっても、 首長が議会に代わって行うことができる。これを「専決処分」という。専決処分の 事務を終えたら、首長は次の議会で承認を得なければならない。cameleon

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