[現代政治]-----その底流を探り、常識を整理する-----

地方自治を担う人民と地方政府(1)

自治と分権

owl  ゴミの収集・処理、水道の建設、教育、健康管理、消費者行政など、市民にとって暮らしに関係 の深い行政は、国の役人がいちいち計画し、実施するよりは、地域に任せた方がきめ細かい配慮が 出来るので好ましいだろう。「地方自治」は、私たちの生活を支える身近な政治である。
  地方自治とは、固い表現では、国の一定の地域において、住民によって構成される団体が、その 地域の公共の仕事を住民の負担と責任において、自主的に決め、行うということである。このよう な権限をもつ団体、具体的には「市町村」や「都道府県」を、法律では「地方公共団体」(普通は 地方自治体とか、単に自治体という)とよんでいる。

◇ことば◇

地方政府

 政府には、全国民に責任を負う「中央政府」と、一定の地域の市民に責任を負う「地方政府」の 2種類の政府がある、という考え方がある。この考え方によれば、中央政府は、国民の信託により 成立しているが、地方政府もまたその地域の住民の信託によって成立しているので、この2つの政 府はお互いに独立し、対等な関係にある。中央政府と地方政府の関係は「政府間関係」というわけ だ。
 これまで地方自治は、国家から相対的に独立した統治活動であると説明されていても、政府と自 治体は上下関係にあるとみられ、実態もそうであった。地方政府という考え方は「地方分権」の推 進、地方制度改革を推進する場合の有力な論拠となっている。

  地方自治の考え方は、欧米から移入された。イギリスでは、古くから地方行政はすべて 地方住民の自主的な決定に任せるという慣行があり、フランスやドイツでは、地域では市民社会の 発達に伴って、絶対主義的国家の支配に対抗して自治が成立した。
   日本では明治憲法の下で、府県・郡・市町村という地方制度が整備されるが、府県は、中央政府 が地方を支配する行政機関に過ぎなかった。知事は、内務省の高級官僚で、内務大臣によって任命 され、府県庁の幹部も内務省の役人だった。
   第二次大戦後、民主主義を徹底するために、憲法に1章が設けられて、地方自治の考え方が強く 打ち出された。任命制だった知事や市町村長は、住民の公選になり、憲法と同時に成立した「地方 自治法」は、知事や市町村長を解職する権利や議会を解散する権利を住民に与えた。
   こうした歴史からすると、地方自治という仕組みには、自分たちの問題は自分たちの責任におい て処理するという「人民自治」の側面と、国家の権限を分割・分散させるという「地方分権」の側 面があるといえる。cameleon

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