塩釜温泉近くのビジターセンターを訪ねてみた。たいていのビジターセンターでは、ご当地の自然環境や動植物、また、関わりの深い文人墨客についての展示などがその中心。
しかし、塩原十一湯と呼ばれるほどの名だたる温泉地のことだけあって、ここでは温泉関連の展示も豊富で見応えがある。
いちばん感心したのが、立体地形図。ボタンを押すと、地形図上を赤いLEDの帯が点滅。ここまでならどうってことない。地層断面図なるボタンを押すと、グィーンと唸りをあげつつ、この立体模型の内部がせり上がってくるのだ。
面白がって、何度も昇降を繰り返していたら、すぐ横に小さなジッサマ。ジオラマの操作ボタンを、うらめしそうに見つめ続けてた。場所をゆずると、このジッサマ、あらぬボタンを押してみては小首をかしげる・・・。
塩原温泉群 |
温泉の湧き出すメカニズム |
大網・福渡
塩釜 |
塩原では最も古い、第三紀にできた地層に属する。温泉はこの地層中の岩の割れ目に沿って上昇する裂カ条泉と呼ばれる噴き出し方をしている。 |
畑下・門前
古町・中塩原
上塩原 |
地下深いところの基岩がおわんのような形をしていて、湖盆と呼ばれる。この上に積もった土砂による湖成層という地層から温泉が湧き出している。 |
新湯・元湯 |
大沼近くの富士山の火山活動によってできた火山性の温泉で、新湯では噴気が観察できる。元湯では炭酸ガスの発泡現象のために起こる間歇泉がある。 |
11もの源泉の泉質なんて、いちいち覚えちゃいられない。と思っていたら、3つの温泉群に分類解説してくれている。ありがたいね。
お湯が湧き出すメカニズムは、左のようにそれぞれ異なるようである。で、「塩の湯」はどこにあてはまるんだかね〜。
ビジターセンターにクルマを置いて、箒川沿いの遊歩道をぶらり散策。七つ岩吊橋では下を見るたび汗が引いていったのだが、階段を上ったり下ったりで汗びっしょり・・・。
これはもう、ひとっ風呂、浴びるに限る。ビジターセンター隣り、かんぽの宿に飛び込んでみた。汗を流すに、お湯を選ぶ余裕などない。
いろんな温泉地の外れあたりの高台で、「かんぽの宿」をよく見かける。「きれいで、安い」にウソはない。もひとつオマケに風情もない。
しかし、何より、設備がしっかりしている。このもったいないほどの設備に、十分に手入れが施されているのだから、気分を損ねることなど微塵もないのだ。だって、お湯を楽しむために、やって来たんじゃないんだもの・・・。
大浴場のとびらを開けてみたら、待っててくれたのは黄色いお湯。とたんに探究心がムクムクと、頭をもたげる。ゆっくり汗など流している場合じゃないのだ〜。
「黄色い食塩泉」のナゾ、いまだ解けてはいないどころか、糸口すらもつかめない。
浴槽は二つ。小さい方がジャグジー、大きい方が源泉となっている。窓側の湯船の縁を一部切り欠き、お湯をあふれ出させている。洗い場の方へは流れ出さないので、転倒の心配は少なくてすむ。
源泉掛け流しかとも思えるが、飲用不可との断り書きから、おそらく完全な型での掛け流しではないだろう。だって、食塩泉なら飲めるはずだよ・・・。
それにしても、バァチャンたち、源泉ではなく、何でジャグジーなんかな〜? 小さな湯船が好きなんではなく、きっと、温水マッサージが気持ちいいんだろう。
露天には「循環・ろ過しているのでお湯が透明」との表示があったり、ジャグジーではレジオネラ菌にまつわる記述があったりと、情報公開の流れに即し、きわめて良心的なのである。
また、風呂場前では、パティオのあるモダンな造りに目を奪われるが、驚くべきはその中身。
手すりとなるパイプだらけのトイレどころか、車椅子用トイレまであるのをはじめ、床面だってバリアフリーが徹底している。お年寄りや身体の不自由な人たちのことまで考慮に入れた親切設計が、従業員の応対にだって表れている。
設備ともども、何とも人に優しいのだ。エレベーターから降りてくる湯治のじいちゃん、ばぁちゃんたち・・・。なるほど、ここなら安心だよね。
さて、脱衣室で成分表をパチリと収め、湯上りの火照った身体を持て余す。興味をかきたてるとてもいいお湯。これがまた食塩泉のせいもあり、なかなか汗が引いてはくれない。
汗を洗い流しに来たら、また汗をかくことになり、あせったね〜。
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