03/05/24
飯坂温泉には全部で九つの共同浴場があります。右数字は開湯年。
・鯖子湯 110
・波来湯 798
・仙気の湯 1618
・切湯 1624
・天王寺穴原温泉 1789
・大門の湯1962
・八幡の湯1962
・導専の湯1962
・十綱の湯1968
「サバコ」とはアイヌ語のようですが、意味不明。
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新高湯温泉からR13経由の帰り道、飯坂の温泉街まで下りてはきたが、もちろん鯖湖湯の場所なんてもの、調べちゃいない。温泉街の細道をクルマでぐるぐるかけずり回って、挙句の果てに、怒り狂うダンナの姿を横に見るのが、平面的に広がる温泉街での定番シーン。
が、今回はあっという間に鯖湖湯への看板を見つけちゃったんだね〜。というのも、大規模ホテルから遠ざかるよう、遠ざかるよう、道を選んでいったのさ。温泉街の中心部に大規模ホテルが建つ訳もないからね〜。
改装なった鯖湖湯は、まわりに建つ昔ながらの土蔵や湯治宿の中にあり、ひときわ目立つ。

何ともうれしい100円の入浴券をいそいそと、買って入ってみたもんだ。脱衣場は浴室との仕切りがないので広々として、高い天井のおかげでとても明るい。
熱い湯で評判の飯坂温泉、二三杯、掛け湯してみる。満足のいく熱さである。ゆっくり肩まで浸かり、湯口に向けて足を伸ばすと、あつ〜いお湯が染み込んでくる。
観光客のご婦人が、熱いだの、火傷するだの大騒ぎ。地元のバッ様、水道ホースで身近に水入れ、ご親切にも、鯖湖湯初心者入浴法など説いている。
それでも「熱い」「熱い」を連発するので、ほかの入浴客まで、「熱いのは最初だけ」「すぐに慣れるから」などと声援が飛ぶ。地元の人は「これが鯖湖湯」とばかりに平然として湯につかる。ワタシも過客ながら陶然として湯につかる。
どんどん水で薄まっていく温泉切なく、思わず「火傷なんかしないから」と声掛けながら、ふと壁を見る。「観光客のために42〜43℃に温度を保ってください」とある。それなら余りに普通じゃないの。ワタシは熱い湯求めてここへ来た。
バッ様の仕切りのおかげで45℃の熱い湯に浸かれたワタシはサバの読みすぎ?
「月日は百代の過客にして、行きかう年も又旅人なり」というのは、「奥の細道」冒頭の有名な一節。東京から東北経由、大垣までの長旅を成し遂げた松尾芭蕉も、旅の途上、この地で汗を流したという。
「その夜、飯塚にとまる。温泉があるので、お湯に入って宿をかりた・・・」 どうやら、芭蕉の中では「飯坂」ではなく「飯塚」であったらしい。きっと、フクスマ弁特有の鼻濁音のせいだろう。さらに続けて「お宿は怪しげ」なる文言。あまり、よいイメージは抱いてはいなかったのだと推測される。
しかも、鯖湖湯に浸かったとは、どこにも書いちゃいない。「波来湯」「仙気の湯」「切湯」と、いずれの共同浴場も可能性だけならありそうだ。
かつて、ホテル聚楽が温泉客をホテル内に囲い込み、温泉街もさびれたとか。モンローショーに、刺身の女体盛りまで付き合わされたワタシとしては、さもありなんと納得できる。
たとえ訪れたことのない人にとっても、歓楽温泉とのイメージが頭の中に刷り込まれていく。あんなにバンバン「聚楽よ〜」などとテレビCMを打つべきではなかったのだ・・・。
団体旅行全盛期の負の遺産を背負いながらも、観光客の戻りつつある飯坂温泉、明日をめざす。
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