「日本一の銭湯」との、馬曲のおっちゃんのフレーズが耳に残って2年が過ぎた。
やはり気になり、平賀(ひらか)の町を訪れた。隊長のワタシと、隊長以上にわがままな隊員1名、都合2名の心もとない探検隊である。
わが温泉探検車には、NEWSの文字が刻まれた300円のカーナビしかついてないので、駅前交番にて場所を尋ねる。原住民は親切であった。
おそらく、新屋なる地名を頼りに探していたら、一日かかっても見つからなかったこと間違いない。
56ヶ所もの泉源を有する平賀の町には、温泉銭湯だって多くあり、スタンプラリーを開催している。どこを掘ってもお湯が湧くんだろうけど、深度1000mも掘るのはね・・・。
青森県の自噴率が低いのは、こんな事情があってのことなんだろう。
その銭湯の外観は、あまりにも普通すぎる。人家はともかく、向かいは田んぼ。
「カエルも一緒に入るんか?」 隊員は何やら不満そう。しかし、せっかく来た以上、「もう帰る」とは言わせない。
脱衣室と浴室の仕切りは全面ガラス戸。服を脱ぎつつ、あとの行動を頭の中で組み立てる。左から2番目のカランで頭だけ流そうか・・・。続いて、湯船右奥でお風呂をいただこうか・・・。
ところが、どっこいなのである。浴室に入ったとたん、石油臭にクラクラッ! さらに続いて、おおっ! 硫黄臭もありか〜! こいつは生半可なお湯ではないぞ。匂いからして横綱級。しかも、このお湯、毎分300Lと豊富な湯量を誇る上、泉温42度と完璧なのだ。ワタシのほっぺが緩んでいるのが分かるでしょ?
カランは硫黄のせいで真っ黒。こんなの珍しくも何ともないが、こと、銭湯となると、やはり異例中の異例の事態。この手のカランはお湯チョロチョロが多いのだが、これがまた、勢いよく出るんだな〜。これぞ、銭湯の真骨頂。
原住民は寝湯が大好きである。銭湯においてすら、その風習を確認することができ、探検隊にとっては大いなる収穫。
湯船の中では、白い湯花が狂喜乱舞。少し疲れた湯の花は、底で茶色味がかってお留守番。
両手、両足さすってみると、「つる・すべ・ぬる」をはるかに超えた異次元世界。お肌の1mmばかり上に無重力ゾーンが誕生している。
もはや手の平は、ワタシの言うことなど聞いてはくれない。無重力ゾーンに沿って、滑らかに、しなやかに、お肌の上を滑っていくのだ。何ともいえない浮遊感。真夏にふさわしい怪奇現象、ゾ〜ッ。
まことに不思議な体験だった。この無重力ゾーン、一度、味わっておいても、決して損にはならないぞ〜ん!
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