音色の使いこなし



【GS音源の音色名の秘密】

GS音源には、意味ありげな略語がついた音色名があります。これは、どういったことを意味しているのでしょうか。この音色名の秘密を探ってみましょう。ただ、はっきりとした説明がないものばかりなので、音から判断するしかなく、ここに書いたことは正確ではないかもしれません。また、機種名の略語と思われるものは除外しています。

Atk (Violin Atk、Viola Atk.、Cello Atk.、Zampona Atk)
SC-88Proに存在します。ややアタック音が強くなっているようです。Zampona Atkに関しては、アタック音のみという感じです。

Exp. (Flute Exp.、Soprano Exp.、AltoSax Exp.、Oboe Exp.)
88Proに存在します。ベロシティの値によって、音の性質が変わります。音の強さをいろいろ変えてキャピタルの音と比較してみてください。

d (Piano 1d)
88MAPと55MAPにある音色です。88ProMAPにはなく、European Pfという音色に変わっています。Piano 1よりも音が暗くなっているように思います。darkの略でしょうか。

F (Rotary Org.F)
88MAPと88ProMAPにあります。FはFastの略でしょう。ローターの高速回転を意味しているものと思われます。

ff (TC Clean ff、Brass ff)
TC Clean ffとTC FrontPick、Brass ffとBrass 1の音をそれぞれ聴き比べてみました。違うことは確かなのですが、それがどういう違いなのかが説明できません。フォルテッシモを表しているようにも思えますが、はっきりしないので調査中です。

Fall (Brass Fall、Trumpet Fall)
Brass Fallは88MAPと88ProMAPにあり、Trumpet Fallは88Proの音色です。これは、音がストンと落ちます。

Rip (F.Horn Rip)
88Proに存在します。音が駆け上がるように鳴ります。

sfz (Brass sfz、SynBrass sfz)
88Proに存在します。Brass sfzは、アタック後に音が弱まり、また強くなっていくという発音をします。SynBrass sfzのほうは、それほどはっきりしていませんが。

S (Rotary Org.S)
Rotary Org.Fというのがありましたので、こちらはSlowの略でしょう。

v (E.Piano 1v、E.Piano 2v)
55MAPのみに存在します。Exp.と同じく、ベロシティによって音が変わるようです。

w (Piano 1w、Piano 2w、Piano 3w、Honky-tonk w、Vibraphone w、Marimba w、Harpsi.w)
音の高さが変わると、自動的にパンポットも変わる音色です。Honky-tonk wは55MAPにしかありませんが、その他はどのマップにもあります。St.Stringsなど、wが付いていなくてもパンが動く音色もあるようです。

o (Harpsi.o、Nylon Gt.o、Organ o、Clav.o)
Organ o、Clav.oは88Proの音色で、あとはすべてのマップに存在します。oが何の略かは知りませんが、ノートオフ時に音の変化があります。

: (Violin :など多数)
唯一、マニュアルに説明があります。これはレガート対応音色という88Proから加わった機能です。あるノートを発音中に別のノートを発音させると、2つ目の音のアタック感がなくなり、なめらかに演奏されるというものです。

【トランペットの打ち込み】

GS音源で、力強い存在感のあるトランペットの音を出すのには、何かと苦労します。55MAPの音は、ベロシティを上げても目立たず、88MAP、88ProMAPの音も、メインで使うには頼りない音に思えます。たまに、CM-64配列のトランペットを使っているデータも見かけますが、あまりよい解決策とはいえないでしょう。そこで、私なりのやり方をここで紹介します。音色選び以外のことは、GS音源のトランペットに限らず、別の音色、別の音源でも参考になると思います。

・音色選び
55MAPを使用するのであれば、キャピタルのTrumpetを使うしかありません。音が弱いので、コーラスの値を上げて厚みを出し、ボリュームやベロシティをなるべく高い値で使って目立たせれば、それなりの音は出ます。ただ、このデータをXG音源で鳴らすと、非常にうるさい演奏になってしまいます。

88MAPや88ProMAPはどうでしょうか。個人的には、バンク25のWarm Tp.が最も使える音色だと思います。このWarm Tp.は、XG音源のTG300Bモードにも近い音が入っており、音量差もほとんどないので安心して使えます。ただ、SC-88の音色なので、GS汎用データにできないのが残念です。互換性を気にするのなら、GS音源で代理発音させる方法を使って、とりあえずSC-55mkIIではキャピタルのTrumpetが選ばれるようにするとよいでしょう。

・音色の加工とビブラート
NRPNで音を加工します。カットオフ周波数とレゾナンスは、それぞれ少し上げてもよいでしょう。重要なのはビブラートの設定です。ビブラートレイト、ビブラートデプス、ビブラートディレイのそれぞれを+10程度にします。これで発音させてみると、長音で非常に豊かな響きになるのが確認できると思います。特にWarm Tp.は、ほかの音色と比べて、心地よい音で鳴ります。数値は目安ですので、曲に応じて最適な値を見つけてください。

XG音源のXGモードのトランペットは、ビブラートデプスが+10では音が揺れすぎます。+2程度でもいいくらいです。これがTG300Bモードになると、GS音源と同じくらいの感度になります。

モジュレーションやピッチベンドでビブラートを表現するのも効果的です。この場合、NRPNでのビブラートは設定せず、ビブラートをかけたい所で、こつこつモジュレーションなどを入力することになります。こちらのやり方は、その場に応じてかかり具合を変えられることが利点ですが、非常に手間がかかります。もっと凝るのなら、モジュレーションとカットオフを連動させる方法もありますので、試してみてください。

・長音の演奏
長音に音量変化をつけましょう。出だしは大きく、そしてすぐに弱めて、だんだん大きくするという奏法がよく用いられます。こうすることによって、音の大きい部分が引き立ちます。データの入力は、ベロシティの値を大きくしておいて、エクスプレッションで調整します。

自然な音の減退を表現するのにも、やはりエクスプレッションを使用します。緩やかに下がっていき、後半は急激に下がるカーブが適当です。

・ブレス
トランペットは吹奏楽器なので、息継ぎが必要です。ブレスを意識した打ち込みは、演奏に説得力が出ます。直前のゲートタイムを短めにすると、雰囲気が出るでしょう。ブレス時に限らず、たまにゲートタイムを微妙に短くするのは、演奏に変化をつけるのに有効です。

【Saw系音色の打ち込み】

Saw Wave(Saw Ld)やPulse Sawなどの矩形波音色は、よく使う音色だと思います。ほかの音に埋もれにくい音なので、主役のメロディとしても、わき役のシーケンスフレーズとしても用いることができます。このように活躍できる場が多いのですが、プリセットの音をただ鳴らすだけでは飽きてしまいます。そこで、もっとこれらの音色を活用できるような方法を考えてみましょう。

・明るくする
カットオフ周波数の値を上げます。SC-55などの旧GS音源では効果がありませんが、SC-55mkII以降のGS音源であれば、+5くらいでも音が変わります。+10あたりの音もまた変化が見られますが、+20あたりからはそれほど変わりません。これはSaw Waveの場合であって、音色を変えると、変化の度合いや限界も変わってきます。

XG音源では、ベロシティの違いだけで音の明るさも顕著に変化するのですが、カットオフ周波数の値を上げていくと、ベロシティによる明るさの差がなくなっていきます。もちろん、全体として明るい音になっていきます。

・音にクセをつける
レゾナンスを上げます。上げれば上げるほど特徴のある音になります。メロディとして使う際に、ちょっと味つけする程度なら、控えめにしておいたほうが無難です。

・ビブラートをつける
ビブラートは、まずトランペットの打ち込みと同じような感じにしてみましょう。GS音源なら、ビブラートレイト、ビブラートデプス、ビブラートディレイを、それぞれ+10くらい、XG音源はビブラートデプスだけ+2、あとは+10程度です。それで気に入れば、そのままでもかまいませんが、もっとおもしろい音にもできそうですね。Saw系音色は、トランペットのように自然な響きを意識しなくてよいので、もう少し大胆にやってもかまわないのです。

たとえば、ビブラートディレイとビブラートデプスの数値をさらに上げると、しばらく鳴ってから急に音が激しく揺れ出すような音になります。結構わざとらしいのですが、あえてわざとらしさを表現したいのなら、この設定で使ってみてもいいでしょう。

ビブラートディレイのプラスの度合いを少し控えめにして、ビブラートレイトの値をさらに上げると、早い段階で小刻みに揺れる音になります。ただ、発音時にすぐ音が揺れるのは、聴いていてあまり気分がいいものではないので、揺れるまでにそこそこの時間は確保したほうがよいようです。

もちろん、ピッチベンドやモジュレーションでもビブラートは表現できます。

・EQで中〜高音域を持ち上げる
意外に効果があるのが、EQの設定です。よく使うと思われる中〜高音域のゲインを上げると、音にハリが出てきます。

・ピッチベンドで目立たせる
ノートオン直後やノートオフの直前でピッチベンドを変化させると、演奏に表情がつきます。ノートオン時では、少し低めの音にしてからもとの高さに戻すやり方と、高めにして戻すやり方があります。ノートオフの前では、音を少し低くしていくということもよくやります。

ノートオン時の音の高さの戻し方には、大きく分けて、「はじめは急激に戻し、だんだんゆるやかに戻す」というのと「ゆるやかに戻し、だんだん急激に戻す」というやり方があります。その場に応じて使い分けるのがよいでしょう。

【Rock Rhythmギターの使い方(SC-88)】

SC-88には、DistortionGtのバリエーション音色として、Rock RhythmとRock Rhythm2が用意されています。この音色は、ロックギターでミュート音やハーフミュート音を出すときに使用します。主に伴奏(バッキング)としてギターを演奏する際に出てくる奏法で、ギターパートの譜面では、ほかよりも低い音があったり、Muteと書いてある所などがそうです。通常のギター音色では、ゲートタイムを短くしたり、エクスプレッションで音を減退させて対処するのですが、この音色で、少しベロシティを抑えて演奏させると、もっとそれらしくなります。

少し抑えて、というのには理由があります。この音色は、ベロシティによって音の性質が変わるからです。Rock Rhythmでは99と100の間で、Rock Rhythm2では93と94の間で変化します。低いほうのベロシティにすると、かなりはっきりとしたミュート奏法になります。

いつもミュートで演奏するわけではないので、普通のエレキギターとRock Rhythm系のギターを、切り替えて使用したり、2パート使って分担させて演奏させるのがベストです。ただ、ベロシティによる変化を頭に入れて打ち込みをすれば、Rock Rhythm系音色だけでも十分に使えます(特にRock Rhythm2)。音が低い所だけをミュートにすればよいというわけでもなく、要所要所で意図的に使うのがポイントです。

Muted Gt.のバリエーションに、Muted Dis.Gtという音色があります。こちらはベロシティによる変化はありませんが、これもエレキギターのミュート奏法として使える音色です。

なお、EFXが使用できる音源であれば、歪み系のEFXをかけると、さらに効果的です。


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