マイライフ・アズ・ア・ドッグ 6



○月×日


36度7分。


「・・・・よかった・・・・」

「うんうん、心拍数呼吸音共に正常!!胸の音も綺麗なもんですし。食欲も戻ってるみたいだし、もう大丈夫
だと思いますよぉ?職場復帰も体力の回復次第ってとこですかねぇ」


身を竦ませる聴診器のヒヤリとした冷たさが胸から離れ、ホッと息を吐く。相も変わらずの愛想の良さを振りま
くトカノ忍医に促され、今度は口を開けて見せた。


「はい喉も異常なし・・・・、っと。ハハハハ、風呂場であなたが倒れたって駆け込んできた時のはたけさんの
慌てようったらそりゃーもうねぇ!!お見せしたかったですよー」

「よ、余計な事喋ってる暇あるんだったら早く帰ったら!?後がつかえてるんでしょ!!」

「ハイハイでは仰せの通りにー。でもまだ無理は禁物ですからねー」

あ・・・ッ、先生


シッシと手を振る上忍に追い立てられ、トカノ忍医は笑い声を残し風を巻く速さで部屋を後にしてしまった。
__これでは多忙の中往診に立ち寄ってくれた厚誼に、礼を述べる暇もない。忍らしからぬ非礼を咎めると、
上忍の膨れっ面は見る間に萎み項垂れた犬のそれになる。寝間着のボタンを閉めていた指が離れたと思っ
た刹那、今度は強く肩を抱かれた。


「・・・・せんせ、ごめんね」

え、ああ分かってくれたのならいいんですよ、今度トカノ先生にお会いしたら丁重にお礼を

「そうじゃなくて、せんせが高い熱出して辛い思いしたの・・・・オレの所為でしょ」


上忍の記憶の取り違えに腹を立て、腹いせに風呂場で冷水を浴び続けた私は当然の結果として40度近い
高熱を出してしまった。鍵をこじ開けた上忍に風呂から引きずり出され、その後熱にうなされ続けた数日間の
記憶はぼんやりと曖昧にしか残っていない。何度か見舞ってくれたトカノ忍医の打ち明け話で、その間上忍が
任務を悉く断り付きっきりで看病してくれたのだと知った。


・・・・もうその話は何度もしたじゃないですか。いいんです、誰にだって間違いはあるし私もバカなことをしまし
た。体調が悪いとどうしても思考がネガティブになりがちですけど、その所為で迷惑を掛けたのは私の方で
す。・・・・カカシさん、ずっと任務に出てないんでしょう?もう私は大丈夫ですから、どうか心配なさらず

「せんせ、オレね、バカだアホだ変態だってどんなにせんせから言われたって腹立たないよ、だってオレホント
にバカでアホで変態で迷惑掛けてばっかなんだもん。・・・・でもね、でも・・・・せんせに嫌われるのだけは我
慢できない・・・・耐えられない。・・・・お願いせんせ、頼むからオレのこと嫌いにならないで。ずっと傍にいて」

なんて顔してるんです、大袈裟ですよカカシさん。だから私はもう気にしてないって言ってるじゃないですか。こ
んなことよくあることです・・・・ツバキだって以前言ってましたよ、寝言でうっかり前のカノジョの名前呼んじゃっ
て、今の彼女に往復ビンタされたって。それでもツバキはその彼女と上手くやってるんですから


うぐ、と詰まる上忍の表情に、実は多少の快哉を覚えるのも事実だ。しかしとにかく過去は過去、巻き戻せな
い過ぎた時間。いい加減これ以上つつくのは止めておこうと珍しく鷹揚な気分で横になろうとしたその時、印
を組み掛けた指先に気付き大声を上げた。


ちょっとッッ!!何やってんです今印を切る必要性が何処のどの部分にあるっていうんですッッ!!

「せんせが何度許してくれてもオレは自分を許せません。武士なら腹を切ってお詫びする所ですがオレは忍な
ので変化して乳枕を」

だーかーらー!!誰が乳枕してくれって頼みましたッッ、もう結構ですよ呵々子さんも乳枕もッッ

「えーでもやっぱり気持ちいいし乳枕」

それはアンタがねッッ!!私は、けっ、こうっ、ですッッ

「そんなご丁寧に仰らなくてもー。それにせんせだって、実は好きでしょ?呵々子」

す、好きって・・・そりゃ嫌いじゃないですけど、とっても綺麗な方だし・・・でもこれまで変化してその挙げ句どう
なったか、まさか忘れたワケじゃないでしょ!?しおらしいこと言っといて、結局猥褻なことしたがるんじゃない
ですかアンタはッッ

「ホントこの前は凄かったよねぇ、せんせ泣きながらおねだりしてくれちゃって、アソコなんかもうぐっちゃぐっち
ゃの濡れ濡れでしかもすっごい熱くってネチャネチャやらしー音しちゃって・・・・、ああああハイハイハイッ
ッ!!オレが悪いんです全部ボクの所為ですッッ、だからそう拗ねないでよせんせ!!出てきて、ねッッ」


背を向けてくるまっていた布団をひっべがされ転げ出され、きつく睨み上げると上忍はタハと笑っている。その
八の字に下がった銀の眉に優男特有の愛嬌があるのは否定しないが、その実反省などこれっぽっちもしてい
ないのは今までの経験からしても明らかだ。


バカッッ、変態ッッ、お、お、女同士の身体であ、あ、あんなことするなんて、信じられませんよまったくッッ

「えーせんせ知らないの、今同性同士の恋愛が熱いんだよ?その証拠にイチャみてなんて大ベストセラー、重
版出来の売れ行きなんだから」

い、イチャ・・・・何・・・・?

「『イチャイチャ・火影様がみてる』、通称『イチャみて』。いくらせんせでも聞いたことあるでしょ?あれだけの大
ブームになったんだもん」

悪かったですね、知りませんよッッ!!

「マジぃ!?知らないのぉ!?全寮制のくの一養成学校で咲き乱れる美少女達の、秘密の恋の花園!!憧
れの先輩と姉妹の契りを結んだヒロインが素敵なお姉さま達と夜な夜な淫蕩なプライベート・レッスンを」

もうッッ!!そんな猥褻物に名前使うなんて、火影様への冒涜ですよッッ!?っていうかカカシさん、アナタま
さか七班の子達の前でそんな話してません・・・・よね・・・・?

「えーこの間サスケが物欲しそうな顔してたから貸して上げようかって聞いたけど」

なななな何言ってるんです、あの子達はまだアカデミーを出たばかりの子供ですよ!?じゅ、18禁小説なん
て、そ、そ、そんな・・・・ッッ!!

「まーそりゃオレだって腐っても上忍師ですから?幾ら何でも子供に危険物与えるようなマネはしませんよー。
それに甘美な毒を堪能できるのは、大人だけに許された特権でしょ?・・・・ね、せんせ、遠慮しないでオレの
乳枕使ってよ。柔らかくってふわふわで、そりゃもう極楽行き間違いなしよ?」

結構です!!極楽ならまだしも、秘密の花園に無理矢理連れてかれるのは真っ平ごめんですから!!

「なーんだ先生、分かってるなら話は早いよ。・・・・んじゃこっちおいで」

ひゃ!!


伸びてくる男の手をかわしたところで所詮寝台の上、直ぐに壁際に追いつめられ身動き出来なくなる。薄笑い
を浮かべる余裕の表情に、見え隠れするのはギラついた欲望の片鱗__それはまごうことなき、捕食者の顔
だ。これからお前を食ってやると微笑む、色違いの双眸。怜悧な刃に似た、美しい煌めき__何て憎らしい。
そして、何て怖ろしい。


バカッッ!!バカバカバカッッ!!さっきトカノ先生に言われたばかりでしょ、無理するなって!!

「ハハハ、無理なんかしなくったっていっくらだって気持ちよくなれるじゃない?今更聞かないでよそんなこと。
いいからさっさとパジャマを脱ぎな」

ヤダッッ!!どうしてアナタはいっつもそうなんです、もうちょっと待ってくれたっていいでしょう!?体調だって
あともう少しってところまで来てるのに!!

「あのさー、そんな問題じゃないでしょ。オレ達何日シてないと思ってんの?この前だって結局未遂だったし、
もうどーにも溜まり過ぎちゃって重くって袋なんか破裂しそうよ?嘘だと思うなら触ってみてよホラホラ」

ギャーー!!何触らせてんですかッッ!!だ、第一ちょっと精巣に精子が溜まったくらいで破裂なんかするわ
けないでしょ!?我慢できないなら御自分で抜いて来たらいいじゃないですか、それこそご自慢のイチャパラ
とか使って!!

「やーだね、オレが出すのはせんせの手か口かアソコん中って決めてるの。それ以外は勿体なくて絶ッッ対イ
ヤ。あ!!でも顔射を忘れたらダメだよねーアブナイアブナイ」

バカぁ!!もう知らないッッ!!アッチ行って!!

「ハイハーイ、そんな可愛い顔して言われたってちっともこわくなんかないんですよーだ」


両足を軽々と掴まれ、下半身から引き寄せられる。のし掛かる身体の重みで腰を肩を完全にホールドされ、
降ってくる唇を避けようにも自由が効かない。口内を好き放題貪られぐりぐりと起立した肉棒を身体の中心に
押しつけられ、布越しに伝わるその生々しい固さに息を飲んだ。


ン、ン・・・・ッッ、ああッッ!!お願い止めて、やだぁッッ!!

「嘘ばっかり。可愛い乳首こんなにおっ立てて何言ってんだか。どう見たって歓んでるでしょコレ」


はだけた胸を舌が這い先端を噛まれ、堪らず仰け反った。結果突き出すような恰好になったそれを歯と舌で
続けざまに嬲られ悲鳴が迸る。植え付けられた淫楽の記憶がいとも簡単に蘇り、脳髄から下半身を直結して
駆け抜ける。擦り付けられる股間の動きに、思わず同調し掛けている自分に気付き涙ながらに懇願した。


お願い、ホントに駄目ぇッッ!!お風呂だって、入って、ないのにッッ

「丁度いいじゃない、オレが舐めて綺麗にして上げるよ。体中どこもかしこも」

ああッッ、ああッッ!!


服越しの固い陰茎が離れたと思った瞬間、下着の中に潜り込んだ指が躊躇い無く秘唇を割り蠢き始める。そ
の淫猥な刺激に、既にしとどに潤んだ膣内も堪らず収縮を繰り返し与えられる快楽を追う。__口から漏れ出
る喘ぎを、もうどうにも抑えられない。私のなけなしの理性は、此処に来て完膚無きまでに粉々に破壊され消
し飛んでしまった。


は・・・・あッ、イ・・・イ、あ、あ、イイ・・・・ッッ!!

「すっごいせんせ、もうぐっちゃぐちゃ。何コレ」

ね・・・・、おく・・・・もっと、もっと奥・・・・

「せんせ、あんまりやらしいこと言うとオレもイッちゃいそうになるから・・・・ね、オレのも触って」

ああ・・・・ッッ、ああンッッ!!


いつの間にか寝間着も下着も全てはぎ取られた下半身に、上忍が今度こそ剥き出しにした自分の性器を擦り
つけてくる。怒張して濡れて光る一物に秘唇から淫核までを一気になぞられ、突き抜ける快楽に我を忘れは
したなく腰を揺らした。


ねぇ・・・・ッッ、やだ、これ欲しい・・・・ッッ、もう、挿れ、て・・・・ッッ

「だーめ、オレだってもうギリギリなんだから、そんなことしたらすぐイッちゃう」

やだぁぁッッ、欲しいのにぃ・・・・ッッ

「だってやらしすぎるせんせが悪いんでしょ、そんなに腰ふっちゃってどうすんの?ああ・・・・すっげぇ、このま
んま擦ってるだけでイキそうよ、オレ・・・・。ね、せんせ、先、触って」


互いの淫液にまみれててらてらと光る陰茎が、絶え間なく上下しながら秘唇を擦り上げている。荒い息を飲み
込み唇を噛んで上体を起こし、これ以上に無いほどパンパンに張った亀頭を両手で掴み滑りと共にしごいた。


「あ、あ、あッッ、せんせイイッッ!!すごい、イイ・・・・ッッ!!」


白い喉が仰け反り、太股を掴んでいる指に痛い程の力が込められる。お返しにと指の輪で括れを締め付け、
先端を指先で捏ね回し裂け目を指の腹で押し広げると、上忍は悲鳴混じりのあられもない喘ぎ声を上げた。


「あああッッ、イイよせんせ、すごくイイッッ!!ね、もう出すよ、イクよ、イクッッ!!」


浮き出た静脈がくねる太く長い陰茎が、ビクビクと熱く脈打っている。喜悦に顔を歪める男の姿はどこか嗜虐
心をそそり、激しく擦り付ける爆発寸前の性器から腰を退き腹這いになった。__頭上で上忍が息を飲む。構
わず脈打つ陰茎に唇を寄せ横咥えすると、それは仰け反る上忍の悲鳴に取って代わった。


「ああッッ、そんなことしたら出る、出ちゃうよせんせッッ!!イクッッ、駄目もう駄目、イク・・・・ッッ!!」


間近に迫った亀頭の小穴からビュルビュルと勢い良く白濁した液が噴き出した。震える陰茎を咥えたままそ
の飛沫を顔に浴び、吐精が終わるのを待つ。息を荒げて涙声の上忍に『せんせぇ』と呼ばれ顔を上げると、背
中が撓る程に強く抱き締められた。


「あああああ先生もう最ッッ高ーー!!・・・・じゃなくて!!ご、ごめんねせんせ、あんまりせんせがエロいし
やらしーし気持ちいいしもう途中から訳分かんなくなっちゃって・・・・ああああでもマジ凄かったよヤバイよ、背
骨溶けるかと思ったよッッ!!」

・・・・バカ・・・・自分ばっかり・・・・


ひとり興奮状態の上忍に背を向け、頬を膨らませティッシュを引き寄せる。数枚を引き抜こうとしたその手を上
忍の指に払われ顔を上げると、再び抱き寄せられ耳元で囁かれた。


「何してんの、勝手なことしちゃダメでしょ?オレがどこもかしこも綺麗にしてあげるって言ったじゃない」

知らない・・・・!!一人で暴走しといて、大きな顔しないで・・・・ッッ

「んーせんせ可愛い、怒ってんの?でもまさかこのオレがこのまんまで終わらせるワケないでしょ?メインディ
ッシュはこれからだよハハハ」

だ、だって、だって・・・・

「オレはせんせの忠実な飼い犬ですから?幾らでもご奉仕させて頂きますよー、もう結構って言われるまで」


いやお断りされてもストップ掛けられる自信無いんだけどねー。空恐ろしいセリフを涼しい顔で言ってのけなが
ら、上忍の指がゆっくりとまだ熱を持て余す身体を這い始める。その指先が生み出す細波のような快楽はいと
も簡単に不貞腐れた気持ちを彼方へ押し流し、約束された愉悦への熱い期待に成り代わる。


「ね、せんせ、今度は絶対呵々子でしようよ。『貝合わせ』って、してみたいでしょ?」

バカぁ・・・・変態ッッ、もう、とても里一の業師の言葉とは思えませんよ・・・・ッッ!!

「やだなぁ、だからこれから堪能して貰うんじゃない?オレが業師と呼ばれるその所以を」

あ、あ、ヤだ、そこヤだぁ・・・・!!

「ね、せんせ、このまんま舐めてあげるからオレのも舐めて、先の方。さっき棹咥えてくれたのすっごい気持ち
良かったから・・・・袋も、弄って」


バカバカバカ、変態、エロ親父。あらん限りの罵詈雑言を投げつけてやりたい気持ちは本物なのに、先走る身
体は闇雲に淫楽だけを追い求める。ね、オレのこと好き?したり顔の問い掛けに、答えてやらないのが私の
出来る限り精一杯の、そして唯一残された矜持だった。


「せんせ、オレの顔跨いで。早くオレのも咥えて」


分かっている、私は犬だ。本能の求めるまま、快楽に食らい付き貪るだけのただの動物だ。なら何も恥じ入る
事はない。__濡れそぼった性器に上忍の息が掛かる。内股をいやらしく指が這う。一度放出したにも関わ
らず怒張し固く起立した肉棒に唇を寄せると、内なるもう一人の私にパカン、と頭を叩かれた気がした。




バカバカバカバカッッ!!


私の、


大バカヤローーーッッ!!!



〈 続 〉



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