【第13回・学科一般 問8】

 北半球における大きな湖付近の風について述べた次の文章の空欄(a)〜(c)に入れる語句の組み合わせ(1)〜(5)のうち、最も適当なものを一つ選べ。
 ただし、湖付近では気圧傾度は一定であるとする。

 湖の風上側の陸上で5m/s の西風が吹き、湖の中央では6m/s で、風上側の陸上と比べて(a) の風が吹いていた。また、湖の風下側の陸上では5m/s で、風上側の陸上と比べて(b) の風が吹いていた。このような湖の中央で風速が増加するのは、起伏のある陸上と平らな湖とで地表面との摩擦が違うためである。風速が異なると(c) も異なり、このため風向が変化する。

(a)

(b)

(c)

(1)

やや北より

やや北より

摩擦力

(2)

やや北より

ほぼ同じ風向

コリオリ力

(3)

ほぼ同じ風向

ほぼ同じ風向

摩擦力

(4)

やや南より

ほぼ同じ風向

コリオリ力

(5)

やや南より

やや南より

摩擦力

  

 

解説:

 北半球では地球の自転で発生するコリオリ力によって風は右へ曲げられます。地表面摩擦がない上空では気圧傾度力とコリオリ力の2力がつり合った状態となり、風は等圧線に平衡に吹きます。これを地衡風といいます。
 一方、地表面近くではこの2力にさらに摩擦力が加わり、3力がつり合った状態で風が吹きます。

 この問題を解くためにはこのような「気圧傾度力・コリオリ力・摩擦力の関係」をきちんと理解していなければなりません。よくわかっていないという方は、先に前回の問題解説「第13回・学科一般 問7 陸上と海上の風速比(2004.12.31 up)」を読んでください。

 

気圧傾度力・コリオリ力・摩擦力

 この問題における3力の関係を図示すると次のようになります。

(1) 湖の風上を吹く風

 この湖の風上(=陸上)で吹いていた西風は3力のつり合いの結果、等圧線に対して45゜の角度で吹いています。というより、約45゜の角度で吹くということが基礎知識としてわかっているので上のような図が描けるのです。

(2) 湖の中央を吹く風
 この風が湖(=水面上)に達すると、摩擦力は陸上のときよりも弱くなり、気圧傾度力・コリオリ力・摩擦力のつりあいが変わり、等圧線に対して30゜の角度で風が吹くことになります。つまり陸上を吹いていたときと比べて 45゜- 30゜= 15゜だけ南側へ、すなわちやや北よりの風として吹きます。

∴ (a) は 「やや北より」

(3) 湖の風下を吹く風
 湖の風下の陸上に達した風は、(1)と同じ理由により再び等圧線に対し45゜の角度で吹きます。つまり湖の風上とほぼ同じ方向に吹きます。

∴ (b) は 「ほぼ同じ風向」

 

  

コリオリ力と風向風速の関係

 コリオリ力は f V という式で表されます。 f はコリオリパラメーターといい、f = 2Ωsinφ という式で表され、その地点の緯度と地球自転の角速度によって決まる値で、その地点の緯度が定まれば定数と見なせます。ですからこの式が示している通り、コリオリ力自体が変化すれば風速 V も変化するし、逆に風速 V が変化するということはコリオリ力が変化し、結果的に風向も変わるということになります。摩擦力なのかコリオリ力なのか迷うところですが、このようにして考えていけば問題文の主旨と合致するのはコリオリ力となります。

∴ (c) は 「コリオリ力」

 

 

 答:(2)   

 

 

【類題】 第13回-問7   


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