その2 プレゼント暴力







■供養■


「…ただいまぁ」
「おかえりぃ」
望と普賢の声に、太乙の声が応える。玄関まで出てこないのは仕事中なのか、ナタクの面倒を見ているのだろう。

「太乙、僕、ナタク帰してくるよ」
居間をのぞくと、小さな薄桃色の毛布にくるまってナタクは眠っていた。普賢と太乙が何か言葉を交わしている。
少し離れたところでその光景を眺めながら、望は幼い頃のことを思い出していた。


この頃ナタクがこの家に預けられる度に愛用している薄桃色の毛布は、小さい頃の普賢のお気に入りで、随分長いあいだ大切に使っていた。
白い小花が散る模様が普賢はとても好きで、よく毛布の上に座りこんでその花や花びらを数えては嬉しそうに望にその数を教えてくれたりした。

あの頃、毛布にくるまって昼寝している普賢がとても可愛らしくて、その寝顔を飽きもせず眺めているのが大好きだった。時にはどきどきしながら、そのまるい頬をそっとつついてみたりしたことも思い出す。
その普賢が、そっとナタクを抱え上げてひどく優しげに望に笑いかける。
「……望ちゃん、僕が帰ってくるまでにお寺の準備しておいてね」
「あ…ああ…うん……」
ぼんやりとしていた間隙を衝かれて、望はしどろもどろになりながら応えた。


大荷物を抱えて玉虚寺の本堂を通り抜けて中庭に出ると、そこにはもう護摩壇の準備ができていて、祖父と赤精子がのんびりと茶をすすっていた。
「おう、帰ったのか」
赤精子がにっと笑って望の手荷物を一瞥する。
「今年はスゲェなぁ…」
半ば呆れたような声で、それでも望を労わるように荷物と望を出迎える。
「普賢はどうした?」
「…すぐ来るよ」
櫓に組んだ木材の上に、崩れないように慎重にプレゼントを積み上げながら、望は上の空で赤精子に答えている。
毎年恒例になった、プレゼントの供養はいつも望を憂鬱にさせる。思いを込めて贈物をされたところで、自分がその思いに応えることなど万にひとつもありえないのに、それが解っているのか解らないのか、思いの丈をぶつけられるのが辛かったし、こんな資源の無駄がまかり通っているのも嫌だった。
誰か他の人に贈られたなら、物として本分を全うすることもできたかもしれないのに、自分に贈られたばかりにこんな風に燃やされてしまう。
かと言って、そんな恋心が一杯に詰まったモノを身につけたり使ったりする気にはなれなかったし、ありていに言ってしまえば迷惑以外のなにものでもない贈物の数々を燃え尽きるまで見送ることがせめてもの手向けだと思うしかない。


「燃えないモノは分別したか?」
「……普賢がしてくれた…」
大切な恋人がいることは絶対に秘密で、だから余計に周囲が要らぬ期待をしてしまうのだと解ってはいるのだけれど。

「…ただいまぁ」
のんびりとした声が本堂の方から響いてくる。普賢が戻ってきたのだ。
「望ちゃん、準備できた?」
「……ん…」
ふたりが並んで護摩壇の前に座ると、祖父の読経が始まる。
燃え崩れていくプレゼントの山と、空に昇っていく灰色の煙をぼんやりと眺めながら、望と普賢は同時にそっと、大きくひとつ息を吐いた。







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