[医療の基礎知識-2]

健康にいい食事とは

 あるテレビ番組では、毎日のように「これが健康にいい食べ物、いいですね」 と司会者が会場やブラウン管の前の奥様方をのせまくる“健康ショー”が演じら れている。毎号、癌が消滅し、生活習慣病を治してしまう食物や薬を“証明する” 雑誌が売れている。これらの番組や雑誌を熱心に見たり読んだりすれば、 皆、慢性疾患が治り、健康になってしまいそうだ。
 健康にいい食事ついて語るには「健康とはどういうことか」から検討しな ければならないが、ここでは、癌にならない、なりにくいということについ て考える。

 

癌予防15ヶ条

1.食事:主に植物性の食物を選ぶ。
2.体重:BMI(body mass index=肥満度を表す指数。体重sを身長mの2乗 で割った数値。22が健康に最適といわれる数値)を18.5〜25に維持し、 成人になって5s以上体重を増やさない。
3.運動:1日1時間の活発な歩行と、週最低1時間の激しい運動をする。
4.野菜・果物:多種類の野菜・果物を1日400〜800g食べる。
5.他の植物性食品:多種類の穀類、豆類、根菜類を1日600〜800g食べる。
6.アルコール飲料:勧められない。飲むならば、男性は1日2杯以下、 女性は1杯以下に控える。1杯はビール250ml、ワイン100ml、ウイスキー25mlに相当。
7.肉(牛・豚・羊):1日80g以下にする。魚肉や鶏肉の方が適当。
8.脂肪:動物性脂肪食品の摂取を控え、植物性脂肪を適度に摂取する。
9.食塩:成人は1日6g以下にする。
10.貯蔵:カビ毒汚染の可能性のある長期貯蔵の食品は食べない。
11.保存:腐敗しやすい食品は冷凍保存する。
12.添加物・残留物:適切な規制の下では問題ない。
13.料理:焦げた食品は食べない。
14.栄養補助食品:これらの項目に従えば、摂取は不要である。
15.たばこ:喫わない。

▽毎日の食事内容が癌の予防に大いに関係する

正常な細胞に発癌物質が入り込んでその細胞のDNAを変化させる。加え て慢性的な炎症が起こったり、発癌促進物質の影響にさらされると、正常な 細胞は最終的に癌細胞となる。
 我々がふだん食べている食品には、癌の発生にかかわるいろいろ な発癌物質や発癌促進物質が含まれている。反対に発癌を抑えるいろいろな 発癌抑制物質も食品に含まれている。
   東京農業大学応用生物科学部のW氏(公衆栄養学)は「癌が発生するに至るまで は、二、三十年と長い経過が必要。癌の発症には、毎日の食事内容が非常に大きな部分 を占めている」と指摘する。
 1997年に「癌予防15ヶ条」が米国癌研究財団及び癌研究基金(ロンドン)から発表された。 その概要は、表の通り。
 この15ヶ条では、具体的な食品中の成分や食品が癌の予防に効果がある、 といった指摘はされてはいない。癌の予防に効果がある食事は、一言でいうと、 バランスのとれた食事を続ける、ということだ。
   W氏は「ある特定の食品だけで発癌抑制物質を摂ろうとすると、未知の 悪い物質をたくさん摂ってしまう可能性がある。いろいろな抑制物質が複合し て効いている可能性もある。だから多種類の食品を摂取することが重要。 癌予防15カ条では、野菜・果物を1日400〜800gとしているが、日本人では多過 ぎるので300〜500gが適当。厚生省では食事全体として1日30品目を推奨してい るが、実行は難しいので、1週間に30品目でいいのでは」と述べている。


◇ことば◇

緑黄色野菜

  栄養士や料理研究家ではなくとも、話題が健康に向かうと「緑黄色野菜」とい う言葉を使う。「緑黄色野菜」とは、漠然と緑や赤など色の濃い 野菜のことではないかと思ってはいるが、実は、厚生省は、通達によって、 「四訂日本食品標準成分表」(科学技術庁)に表されている「有色野菜」から 10種の野菜を加え7種の野菜を除いた野菜である、としている。
 「有色野菜」とは、科学技術庁の定義によると、生の状態でカロチン含有量が 可食部100g当たり600μg以上のもの、である。
 厚生省は、皮だけでなく果肉が緑や黄色、赤など色の濃い野菜は他の淡い色の野菜に比べ、 ビタミンやミネラルが含まれていること、日常の食生活で摂取する量や頻度を考慮して、 有色野菜に各種の野菜を加減した。これが「緑黄色野菜」である。
  ちなみに、可食部100g当たりのカロチン量が特に多い緑黄色野菜は、しそ(葉)、パセリ、 にんじん、とうがらし(葉)、ほうれんそうなどである。

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