あるテレビ番組では、毎日のように「これが健康にいい食べ物、いいですね」
と司会者が会場やブラウン管の前の奥様方をのせまくる“健康ショー”が演じら
れている。毎号、癌が消滅し、生活習慣病を治してしまう食物や薬を“証明する”
雑誌が売れている。これらの番組や雑誌を熱心に見たり読んだりすれば、
皆、慢性疾患が治り、健康になってしまいそうだ。
健康にいい食事ついて語るには「健康とはどういうことか」から検討しな
ければならないが、ここでは、癌にならない、なりにくいということについ
て考える。
癌予防15ヶ条
1.食事:主に植物性の食物を選ぶ。 |
正常な細胞に発癌物質が入り込んでその細胞のDNAを変化させる。加え
て慢性的な炎症が起こったり、発癌促進物質の影響にさらされると、正常な
細胞は最終的に癌細胞となる。
我々がふだん食べている食品には、癌の発生にかかわるいろいろ
な発癌物質や発癌促進物質が含まれている。反対に発癌を抑えるいろいろな
発癌抑制物質も食品に含まれている。
東京農業大学応用生物科学部のW氏(公衆栄養学)は「癌が発生するに至るまで
は、二、三十年と長い経過が必要。癌の発症には、毎日の食事内容が非常に大きな部分
を占めている」と指摘する。
1997年に「癌予防15ヶ条」が米国癌研究財団及び癌研究基金(ロンドン)から発表された。
その概要は、表の通り。
この15ヶ条では、具体的な食品中の成分や食品が癌の予防に効果がある、
といった指摘はされてはいない。癌の予防に効果がある食事は、一言でいうと、
バランスのとれた食事を続ける、ということだ。
W氏は「ある特定の食品だけで発癌抑制物質を摂ろうとすると、未知の
悪い物質をたくさん摂ってしまう可能性がある。いろいろな抑制物質が複合し
て効いている可能性もある。だから多種類の食品を摂取することが重要。
癌予防15カ条では、野菜・果物を1日400〜800gとしているが、日本人では多過
ぎるので300〜500gが適当。厚生省では食事全体として1日30品目を推奨してい
るが、実行は難しいので、1週間に30品目でいいのでは」と述べている。
栄養士や料理研究家ではなくとも、話題が健康に向かうと「緑黄色野菜」とい
う言葉を使う。「緑黄色野菜」とは、漠然と緑や赤など色の濃い
野菜のことではないかと思ってはいるが、実は、厚生省は、通達によって、
「四訂日本食品標準成分表」(科学技術庁)に表されている「有色野菜」から
10種の野菜を加え7種の野菜を除いた野菜である、としている。
「有色野菜」とは、科学技術庁の定義によると、生の状態でカロチン含有量が
可食部100g当たり600μg以上のもの、である。
厚生省は、皮だけでなく果肉が緑や黄色、赤など色の濃い野菜は他の淡い色の野菜に比べ、
ビタミンやミネラルが含まれていること、日常の食生活で摂取する量や頻度を考慮して、
有色野菜に各種の野菜を加減した。これが「緑黄色野菜」である。
ちなみに、可食部100g当たりのカロチン量が特に多い緑黄色野菜は、しそ(葉)、パセリ、
にんじん、とうがらし(葉)、ほうれんそうなどである。