20/04/2001 Ver.0.02
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ガミラス(ガルマン・ガミラス)
0.地球移住戦争までの歴史的経緯
ガミラス人は地球暦の21世紀にはすでに波動物理学の成果として波動エンジンを実用化し、姉妹星のイスカンダル人とともにサンザー太陽系外へと乗り出していた。そして、大マゼラン星雲内で数々の異文明と遭遇していた。ある異星文明とは友好関係を築くことが出来、ある異星文明とは相容れないこともあった。前者の場合は問題は無かったが、後者の場合、イスカンダル星人とガミラス星人では対応が異なっていた。イスカンダル人はあくまで平和的に交流を進めようとしたのに対して、ガミラス人は武力に訴えてしまったのである。この時点から、イスカンダルとガミラスは同じサンザー太陽系の姉妹星でありながら、異なる歴史を歩むこととなった。
ガミラスとの交流を受け入れない異星文明は武力によって服従させることを選択したガミラスは、戦闘の機会も増え、次第に軍事国家へと変化していく。地球暦の21世紀後半には、政治と文化の中心的存在であり、軍事に対しては拒否権のみを有していた皇帝が軍の統帥権を掌握し、総統という地位を兼任し軍政をひくに至って、ガミラスは完全な軍事国家となるのである。そして全てが軍事最優先にシフトしていくのである。
また、この頃、ガミラスの軍事技術史に残る発見があった。それはガミラシウムによる高出力レーザの開発であった。ガミラスの艦艇の主砲はレーザが使用されているのだが、レーザ発振を得るための媒質として、ガミラス星の地下深くに豊富に存在することが確認されたガミラシウムが非常によい特性を持っていることが発見されたのである。固体のままで使用すれば、高出力の連続発振レーザとなり、蒸気化すれば、超高出力のパルスレーザとなった。特に波動エンジンから得られる大電力により放電励起した場合、十分な破壊力を持ち、艦載砲として有効であることが発見されたのである。ガミラシウムレーザ砲の採用により、ガミラスの艦艇は一新され、軍事艦艇に適した左旋波の波動エンジンの採用とあいまって、非常に強力な宇宙艦隊を有することとなったのである。
軍用に適した左旋波の波動エンジンをガミラスは採用していたが、波動エンジン開発の初期には右旋波のエンジンも研究されていた。しかしながら、右旋波は軍用には不適であるとして波動エンジン開発プログラムの初期に放棄された。そのため、右旋波と左旋波のハイブリッドが研究されることも無く、左旋波エンジンの特性改善に研究は集中することとなった。
この波動エンジンの開発過程においてガミラスは、タキオン波動を圧縮したときにエネルギー密度が時空臨界点を超えると生じる衝撃波を兵器として利用できることを発見し、兵器化していた。しかしながら、衝撃波砲はガミラシウムレーザに比べて構造が複雑になること、またより多くのエンジン出力を必要とすることからガミラシウムレーザを主要兵装として採用し、衝撃波砲はごく一部でのみ採用されたに過ぎなかった。もしもガミラスが左右両旋波のハイブリッド波動エンジンを採用していたら、ヤマトの衝撃波砲に匹敵する強力な主砲を得られ、宇宙史は変わっていたかもしれない。
軍事国家ガミラスは新しく接触した異星文明に対し、彼らがガミラスに対して友好的かどうかに関わらず、ガミラスへの隷属か服従かを迫るようになる。イスカンダル人は時として、ガミラスの侵略の対象となった星を助け、ともにガミラスと戦うこともあったが、ガミラスの軍事力は圧倒的であり、異星文明は次々とガミラスに支配されるか、もしくはこの宇宙からその存在を消されてしまうこととなった。サンザー太陽系の外では戦火を交えることもあったガミラスとイスカンダルであったが、同じ太陽系の姉妹星でともに文明を育んできた相手として、ガミラス人にはイスカンダル人に対して特別の思いがあり、異星文明における戦闘以外ではガミラスは決してイスカンダルと戦火を交えることは無かったのである。しかしながらこの頃からイスカンダルとガミラスの国交はほとんどなくなってしまう。
やがて、イスカンダルは他星系への進出をやめ、サンザー太陽系内に留まるようになる。いくら友好的に異星との交流を育んでも、ガミラスが侵略してしまえば交流も何もあったものではなかったし、ガミラスと同じサンザーの文明と言うだけで、交流を拒絶されることも増えてきたからである。一方ガミラスは、大小両マゼラン星雲でいくつかの異星文明との全面戦争を戦っていた。
そんな中、長くて数千年、短ければ100年足らずでガミラス帝星とイスカンダル星(だけでなくサンザー太陽系)の生命体の生存可能な環境としての寿命が尽きることが明らかになる。イスカンダル人は星とともに静かに運命を甘受することを選択し、ガミラス人は新しい星への移住を選択する。ガミラスはその科学力を挙げて侵略した勢力圏内の殖民星の移住適合性を調査する。しかし、どの星の環境も、ガミラス人が長期にわたって生活するには不適合であった。(たとえば、
[1]大気の組成にガミラス人の遺伝子に突然変異を誘起する成分が微量に含まれており、短期滞在には問題が無くとも数世代がたつと先天的異常の確率が急増する、[2]大気の層が薄く、宇宙放射線が強すぎて、遺伝子に悪影響を及ぼす、等々)
ガミラスはこれまでの勢力圏外に移住先を求めざるを得なかった。それも出来る限り早く。ガミラス母星の環境は日増しに悪化の度合いがひどくなっていった。地球暦の22世紀初めには大気が完全に酸性化し、雨は希硫酸、海は王水、大地は強アルカリ性、となり、防護服なしでは内殻に出歩けないような危機的状況に陥ったのである。デスラーの父である総統デスマルクはついに大小マゼラン星雲以外の島宇宙への移住もやむを得ないと考え、アンドロメダや銀河への探査を開始する。優先事項は[1]環境がガミラス人へ適応していること、[2]例え文明が存在してもガミラスと比べて低レベルにあり、簡単に隷属もしくは絶滅させられること、[3]ある一定以上のレベルの文明の影響下に近い将来入る恐れのないこと、であった。もはやガミラスには残された時間は余り無かったのである。また、大小マゼラン星雲でのいくつかの全面戦争をかかえており、新たな戦線を遠く離れた島宇宙に開く余裕も無く、時間と言う敵以外を相手にする余裕などなくなっていたのであった。そのため、出来る限り戦闘を避け、速やかに移住を開始しなければならなかったのである。(とはいうものの、それでもまだ100年以上の余裕はあると思われていた。)
そんな中、銀河という島宇宙のオリオン腕にある恒星系の惑星のひとつが移住可能であるとの報告がもたらされる。大気組成はガミラス人にとって放射性同位体の含有率が著しく低いこと以外は問題なく、宇宙放射線、太陽光の成分など全てにおいてガミラス人の要求を満たしていた。この星には既に人類が存在していたが未だ恒星系の外への航行能力は無く、ガミラスから見れば、このような未開の文明など簡単に抹殺できると思われた。また、この惑星、すなわち地球、の大気改造が可能であり、大気改造後にはガミラス人類の移住が可能である、との報告を受けた総統デスマルクにより地球大気改造用の放射性戦略兵器の開発が命じられ、地球移住計画が始動する。時に地球暦2138年のことであった。
1.地球移住戦争時 -帝星壊滅戦争−(地球名 ガミラス戦争)
3年の準備期間(太陽系の詳細な調査と大気改造用の放射性戦略兵器として遊星爆弾を選定するまでに3年の時間が必要だったのである。[遊星爆弾の実用化にはさらに数十年の期間がかかっているが…])を経て、地球暦2141年にガミラスは冥王星に地球攻略のための前線基地を構築する。地球はガミラスの基地が完成するまでこの動きを察知できなかった。やがて、ガミラスは地球政府に対して、隷属か絶滅かを要求するが、地球政府は回答を拒否。ガミラスによる侵略戦争が開始される。この時点でガミラスは16個程度の空母機動部隊(本来は8個機動部隊と8個の予備という編成[重空母軌道艦隊を除く]であったが、戦線の拡大により既に再編用の予備も前線に投入されていたため、総数16個もの機動部隊が投入されていたのである。)を保有していたが、これを地球戦線に投入することは無かった。地球艦隊相手ではその必要も無かったし、また、マゼラン星雲の各戦線でこれらの機動部隊の打撃力が必要とされており、銀河系に派遣する余裕など無かったのである。
この当時、ガミラスは大きく分けて、
という3種類の艦隊編成を採用していたが地球戦線には、「ガミラス人類の移住」という目的からすると驚くほどの弱小戦力しか派遣されなかった。地球艦隊が脆弱であったことと、他方面での戦闘が激しく戦力の抽出がままならなかったこともあって、主力艦隊からわずかな数の主力艦艇と護衛空母が派遣され、数個水雷戦隊とともに地球攻略艦隊が編成されたのであった。地球攻略線においては、
全通甲板を持ち大気圏内での航空機運用能力を持つ艦隊型空母が必要となる大気圏内での艦隊戦および航空爆撃は行わないという作戦方針がとられ、無重力化での航空機運用能力しかない護衛空母だけが配備された。もし、大気圏下での空爆能力を持つ艦隊型空母もしくは軌道上からの砲撃の可能な戦艦を地球戦に集中投入していれば、地球人に地下に篭る時間的余裕など与えずに、短期間のうちに抹殺できていたかもしれなかったが、各戦線での艦隊戦力の中核を成す艦隊型空母や戦艦の地球方面への派遣が不可能であった以上、それは仕方のないことであった。また、ガミラス人に適した放射性の大気組成に地球の大気を改造するには10年以上が必要であり、また、放射性の大気中では地球の生物は生存できず、大気改造の過程で遅かれ早かれ地球人類は死滅すると予測されたのも、地球攻略戦に大戦力、特に空母機動部隊、が投入されなかった理由の一つであった。
ヤマトが地球を旅立ってからしばらくは、ガミラスではヤマトの航海の目的を掴めなかったため、冥王星艦隊壊滅後もしばらくの間は対ヤマト、対地球戦に艦隊戦力は投入されなかった。その間、デスラー機雷やアルファ星におけるガス状生命体などによる余り積極的とはいえない攻撃が行われただけであった。ガミラス側からしてみれば、マゼラン星雲への銀河からの侵略に備えた防御兵器網にヤマトが勝手に入り込んで来たので、ヤマトが苦しむ様子を楽しんでみていた、というのが実情であったであろう。しかしながら、さまざまな情報収集活動の結果、ヤマトは地球から脱出したのではなく、ガミラス伴星のイスカンダルへ放射能除去装置を受け取りに行くために航海を続けていることが判明し、この時点で、ヤマトがガミラスの地球移住計画の重大な障害となることが認識される。そしてガミラス軍令部は太陽系方面作戦司令長官として、ドメル将軍の派遣を決定する。ここに至ってついに大艦隊が対地球戦に投入されることとなったのである。
しかしながらドメルはヤマトとの数度の手合わせの後、大艦隊でヤマトに決戦を挑んでもヤマトに決戦をかわされる恐れが多分にあることを実感していた。そのため、最後の決戦ではヤマトがガミラス艦隊を探知して撤退しないように、七色星団の暗黒星雲を主決戦場に選び、味方艦隊の構成を悟られることの無いようにするため瞬間物質移送器を使用したのである。
瞬間物質移送器により攻撃機を目標艦の至近にワープアウトさせるという斬新な戦法は、ヤマトには敗れはしたが、非常に魅力的なものとガミラス軍令部では認識され、後にガミラス宇宙艦隊の基本戦術となるのである。(この瞬間物質移送器を使用した戦術と艦隊ドクトリンについては別稿に詳しく述べたのでそちらを参照していただきたい。)
ガミラスの艦艇および兵器
この時代のガミラス軍は主として以下のような艦艇・兵器により構成されていた。
艦隊編成
[1]空母機動部隊
ガミラス軍の空母は2隻で1個航空戦隊を構成していた。1航空艦隊には原則として2個航空戦隊が配備されていた。主力艦艇(巡洋艦以上のクラス)は戦艦2隻ないしは巡洋艦4隻で1個戦隊を構成し、1航空艦隊には1個戦隊が配備されていた。水雷戦隊は1隻の巡洋艦と2個駆逐隊(1個駆逐隊は4隻の駆逐艦により編成されていた)の計9隻で編成されており、1航空艦隊には防空および対潜戦力として4個水雷戦隊が配備されていた。従って、通常、1個航空艦隊は 空母4、戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦24ないしは、空母4、巡洋艦8、駆逐艦24という編成であった。(これにさらにタキオンタンカー、弾薬航空燃料運搬船、工作艦などの補給艦艇も配備されていた。) 大小マゼラン星雲の幾つかの戦区では敵艦隊も空母機動部隊を投入しており、航空戦が展開されていた。そのため、それらの戦区に展開する機動部隊には水雷戦隊のうち半数の2水雷戦隊の換わりに最新鋭の防空巡洋艦と防空駆逐艦からなる2個防空戦隊が配備され、また戦艦も防空能力の高い新型が配備されていた。
戦闘空母は2隻一組で、専属の防空戦隊(2戦隊)と共に独立重航空艦隊を構成し、作戦内容に応じて、各航空艦隊に臨時編入されていた。これらの独立重航空艦隊はガミラスが劣勢になっている激戦区に投入されていたことから、ガミラス軍の将兵の間では「火消し艦隊」や「お助け艦隊」と呼ばれていた。この時代、ガミラス宇宙軍は重航空艦隊を3艦隊保有していたがローテーション予備の戦闘空母は配備されていなかった。小マゼラン星雲の造船所で2隻の戦闘空母が建造中(ガミラス帝星壊滅時点で1隻は95%の完成、もう一隻は30%の完成度)であった。30%の完成度の艦体は解体放棄されたが、95%完成していた戦闘空母は白色彗星戦争時は一旦建造を中止していたがその後、デスラー砲搭載と各種改装が施され、対暗黒星団戦争時にはデスラー座乗の艦隊旗艦として使用されることになる。
なお、原則として、各航空艦隊は実際には同数の予備航空戦隊を有しており、3ヶ月から6ヶ月周期でローテーションを組んでいた。これは、航空戦力には戦闘による損失の補充等、再編成と訓練を欠かすことが出来ないためであったが、戦線が拡大し、戦闘が激しくなるにつれ、このローテーションは有名無実化し、実際には、後方配備可能な時に可能な航空戦隊を休ませる、というその場しのぎの対応になっていった。しかし、砲撃力を重視した主力艦隊(空間打撃部隊)を保有しつつも、航空機戦力に重点をおいた白色彗星帝国に勝るとも劣らない機動部隊編成と運用がなされていたことは特筆に値する。このバランスの取れた艦隊編成も瞬間物質移送器の登場によるドクトリンの変化に伴って一気に随伴護衛の極端に少ない特殊な編成へと変化してしまうのであるが、それについてはガルマン・ガミラスの時代の節で後述する。
[2]主力艦隊
ガミラス宇宙艦隊は各戦線での空母とその艦載機が戦艦を超越した攻撃力を有していることを認識し、空母の集中運用を可能にするため空母機動艦隊を編成する。しかし、航空機優勢を認識してもなお、戦艦中心の主力艦隊を編成し活用していたのは、航空戦力の消耗の激しさと、空母の脆弱性を正確に認識していたためであった。大編成の敵艦隊には空母機動部隊の打撃力だけでは不足であり、やはり戦艦を基幹とした主力艦隊と水雷戦隊は不可欠であった。また、惑星軌道上からの敵惑星への軌道砲撃は艦載機の航空爆撃による爆弾投射量を遥かに上回る打撃力を有しており、上陸作戦時には主力艦隊は欠く事のできない戦力であった。もちろん、上陸後のピンポイントの攻撃には艦載機による精密爆撃が適していたので、空母機動部隊も不可欠ではあったのだが。
1作戦方面は通常5個程度の主力艦隊が展開していた。通常、1個主力艦隊は、戦艦戦隊が2ないし3個戦隊(4-6隻)、巡洋艦戦隊が1ないし2個戦隊(4-8隻)、水雷戦隊が4から6戦隊(巡洋艦4-6隻と駆逐艦32-48隻)、護衛空母戦隊が1個戦隊(高速空母2隻と防空駆逐艦4隻)、補給艦艇(タキオンタンカー、弾薬運搬船、工作艦、等) により構成されていた。
[3]水雷戦隊
ガミラス宇宙艦隊でもっとも多用されたのが水雷戦隊であった。本来は、敵艦隊に肉薄し砲雷撃戦を挑んで、敵艦艇を漸減させるのが目的であったが、高速力であることや、数が多かったことなどから、本来の水雷という任務に加えて、艦隊防空、哨戒、船団護衛、対潜攻撃などあらゆる任務に駆り出されていた。デストロイヤータイプの駆逐艦がガミラス建艦史上最高の出来といわれるほどの(攻撃力、防御力、速度、航続距離、そして生産性と整備製のよさ)バランスのよさを誇っていたこともあって、大量に建造され、各地に派遣されていた。ガミラスは本来、デストロイヤータイプに代表される軽快な機動の可能な中小型の多数の艦艇で敵艦隊を包囲し、集中砲火を浴びせるという戦術(車掛かりとも呼ばれていた)を主要戦術としていたため、水雷戦隊は宇宙艦隊の主役の座にあったのである。しかし、戦線の拡大とともに、さまざまなタイプの敵艦隊を相手にしなければならなくなり、相手の艦種に応じた戦術を取ることを要求されるようになった。そのために、主力艦隊や空母機動部隊が編成されたのである。しかしながら、それでもなお、ガミラスの主力は水雷戦隊であり、デストロイヤータイプだったのである。結局、ガルマン・ガミラス時代にもデストロイヤータイプの生産は続けられていたし、水雷戦隊も編成されつづけていたのである。ガルマン・ガミラス時代においても総統親衛艦隊は最精鋭の水雷戦隊が努めていた事からも、ガミラスの基本戦術における水雷戦隊の重要さをうかがい知る事が出来る。
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