01/04/2001 Written by Shiz
無断転載を禁ず


七色星団海戦でのドメル艦隊編成の背景とガミラス(ガルマン・ガミラス)の艦隊ドクトリンについて

瞬間物質移送器が開発されてからは、空母は敵の艦載機の行動範囲外から自軍艦載機を転送し、敵が攻撃を仕掛ける前に殲滅するため反撃は一切受けず、護衛艦は不要、という「アウトレンジ戦法」がガミラス宇宙艦隊の基本ドクトリンとなった。戦闘空母は、あくまでも、抵抗力を失った残存艦に止めを刺すためと、想定外の遭遇戦が生じたときのために配備されることとなった。

瞬間物質移送器のデビューとなったPart1の七色星団の決戦では、空母が各戦線から抽出されていたことを考えると、この時までは空母にはちゃんと護衛艦が随伴して、機動部隊が編成されていたと考えられる。

瞬間物質移送器を活用したドメルの特殊な戦法では、ヤマトからの反撃など想定していなかったゆえに、随伴護衛は不要と考えたというのが後世の歴史家の一般的な解釈であるが、私は本当はドメルはヤマトに対して最大の備えが必要であることを悟っていて、護衛を付けたかっただが、それが出来なかったのだと考える立場をとりたい。以下にその理由を述べる。

各戦線での戦闘は激しく、対ヤマト戦に割ける艦艇がほとんどなかったと思われる。というのも、ドメルが太陽系方面作戦司令長官として太陽系戦線に赴任するまでは、冥王星配備戦力を除いて、大戦力は配備されておらず、ヤマトに対しては戦力の逐次投入がなされていたようで、「地球ごときの艦1隻に大戦力は必要ない」、というおごりだけではなく、実際に割ける戦力がなかったのだと考えるのが妥当であろう。

地球への移住の重要性と、数々の防衛網を潜り抜けてこの移住計画の重大な脅威となりつつあるヤマトをガミラス司令部もようやく認識し、大戦力とともにドメルを太陽系方面軍司令官として派遣した、次元断層での遭遇戦で「大戦力を投入しても、ヤマトに逃げられる」とドメルは考えたがゆえに、あえてバラン星で始末をつけようとしたのであろう。

しかし、ドメルはバラン星で失敗した際に逮捕拘禁されて一旦官位を剥奪され、その際にドメル配下の艦隊は他戦線に転属となっていたと考えられる。そして、軍事法廷でデスラーの(多分に政治的な)配慮により復活したドメルは、これらの艦隊を各戦線に引き渡すことでひきかえにようやくのことで七色星団戦に必要な各戦線の「虎の子の空母」を抽出したのが実情であろう。本星での裁判で明らかなように将軍たちの大半は大失態を犯したドメルに対し反感を持っていたため、デスラーの総統命令でようやく、ドメルに非協力的な各戦線の司令官から最低限必要な戦力の抽出が出来たのだと思われる。

だからこそ、各戦線から空母を1隻ずつしか抽出できなかったのだろうし、最新鋭艦のドメラーズIIIも召し上げとなったのであろう。本来なら最新鋭のこの艦に瞬間物質移送器を装備すると考えるのが自然である。ドメラーズIIの火力は自爆だけ、艦隊で見ても、戦闘空母1隻のみしか砲撃力を持たないという編成はあまりにもアンバランスであり、常軌を逸している。やはり、「これだけしか用意しなかった」のではなく、「これだけしか用意できなかった」のであろう。

自分の思う通りの艦隊編成に必要十分な艦艇が用意できないと言う条件下でドメルが到達した結論、それが瞬間物質移送器を最大限利用するという作戦だったのかもしれない。(このあたりは卵と鶏の関係で、戦法と艦隊編成のどちらが先かは断言しかねるが…)それゆえに、ドメルも悲壮な覚悟で出撃せざるを得なかったのであろう。

こんな背景で行われた七色星団戦であったが、結局、ガミラスの大敗北に終わる。この敗戦の原因は、あくまで密集隊形のままヤマトに不用意に接近したミスに帰着された。(密集隊形での接近がミスであり敗北の原因であるという分析それ自身は正しいといえる。)しかし、そこから得られた戦訓が、「敵との距離さえあけていれば問題はない」という考えで、護衛が必要だと言う結論には至らなかった。これはその後の艦隊編成(ヤマトIIIのガルマンガミラスなど)から見て取れる。

そのため、ガミラスは瞬間物質移送器の移送距離(射程)を伸ばすことで、機動部隊の防御力が向上すると考え、より一層のアウトレンジに走ってしまった。(いつの世も自分たちのドクトリンを否定する考えをとるのは難しいのもである) 結局、空母が裸でいる事の危険性は、「アウトレンジ」の考えのために忘れられてしまったのである。

また、ガルマンガミラス時代に開発された甲板上からの転送技術は、これが各空母に装備されれば、密集隊形をとる必要がなくなるので、七色星団での戦訓から開発された技術であることは容易に想像がつくであろう。

ただし、瞬間物質移送器の射程だけを延ばしても、艦載機が帰還できなかったら意味がないわけで、艦載機の航続距離も伸ばす努力がされていたはずである。なにより「艦隊の目」、索敵機が長大な航続距離と隠蔽能力(敵に発見されにくい)と通信能力を持っていないといけないわけであるが、劇中ではガミラス軍のこういう機体は描写されていなかった。しかし、おそらくは描写が無かっただけで、そういう機体は開発され配備されていたはずである。

[大体、シリーズのどの作品でも敵側がまともに索敵機を飛ばしているシーンはほとんど(or全く?)なかった。まぁ、これは、話の進行の都合上なのであろう…]

最後に、瞬間物質移送器を使ったアウトレンジ戦法は 「さらば」や「Part2」では「デスラー戦法」と呼ばれ、そのそち「ガミラス戦法」に呼称が改められたようであるが、わたしは、歴戦の勇士ドメル将軍に敬意を表してあえて、「ドメル戦法」と呼びたいが、読者諸氏はどのように思われるであろうか?