秘湯探訪も若葉マークの頃、駅前の旅行代理店のおばさんに強く勧められて訪ねた宿である。 ひなびた温泉街の中、ひときわ高くそびえ立ち、堂々たる威容を誇る高層建築。それがここ斎藤ホテルであった。最上階の部屋は、いま思えばぜいたくなくらいの広さ。ツインのベッドルーム奥には和室までついている。でも、この造り、なんか変でしょ? 座敷に寝ころがったまま、窓の外を見やったところで、空しか見えない・・・。しかし下界を見下ろせば、あちらこちらで桜の花が今を盛りと春爛漫。 温泉療養施設とでもいうのだろうか、リハビリの設備が十分過ぎるくらいに整っている。トレーニングマシンで遊んでみたり、温泉プールで水遊びをしてみたり、けっこう健康的に楽しんだのではあるが、肝心のお湯の記憶は、はなはだ薄い。 そういえば、せっかく散歩に出掛けたものの、共同浴場にも入らずじまい。みやげ物屋で豆やら朝鮮人参やらを買い込んで、意気揚揚と宿へとご帰還。若葉マークとは、まったく呑気なものである。
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