狭い山道を、果てしなく車を走らせると、こぶとりじいさんが鬼さんの宴会を見たときのような光景が、突然、眼前に開けた。演歌が流れ、行商のライトバンからは魚売りの声が聞こえてくる。とんだ秘湯に来てしまったものだ。
露天は5種類のお湯が楽しめるが、女性専用時間帯が5時から6時までの1時間しかない、もっともキツイ「大湯」に入った。これが熱い。草津はテルメテルメの時間湯でも平気だったのに、これは何事だ、感覚が最近ちょっと変だ。入るとすぐ足がチリチリとしびれるように痛み、入っていられない。きっと、体の悪いところを教えてくれているのではないだろうか。
湯から上がって休んでいると、アブがうなりをあげて攻撃してくる。あわてて入る。しかし、足が痛くてまた飛び出す。アブが攻めてくる。また入るの繰り返し。いったい、何なんだ、これは・・・
部屋へ戻ると、ダンナは「アブが危ないから、熱湯にネットでも張ればよい」などと、つまらないことを、ビールを飲みながら上機嫌で言っている。どうやら、内湯で十分満足しているようだ。
扇風機と(なぜか)ウチワしか置いていない部屋は、狭くて景色も最低だ。すぐ目の前に向かいの建物の窓が見えるのだから。おまけに、自炊部で焼いているサンマの煙まで入ってくる。
それでも、もう一度入ってみたいと思わせるお湯だなァ〜。今年の夏にでもきっと、お湯の正体を確かめに立寄ることになるのだろうが、「大湯」の女性専用時間帯を、朝方にも設けてもらえたらと、切にお願いしてしまう。だって、体のまわりを布で覆って、あの熱い湯につかるなんて、殿方だって、想像するだにゾッとするでしょ?
|