情報センター通信第12号
2001年2月25日発行



市民の手による新しい環境チェック
本谷 勲 (環境問題の語り部)

町田の環境の盲点
「どせうの会」という名前をご覧になって読者のみなさんは、どのようなイメージをお持ちになるでしょうか。30代以下の方の多くは、なんのことか意味がお分かりにならないかもしれません。50代以上の方の中には、泥鰌を喰う同好会と理解されるむきがいらっしゃるかもしれません。
「どぜう」と書いて「どじょう」と読みます。「どじょう」とはここでは「土壌」のつもりです。「土壌の会」を気取って「どぜうの会」としたのです。町田の土壌の健康状態から町田の環境を診断しようというユニークな会なのです。
地域の環境を健全な状態に置くことは、自治体に固有な責任でしょう。町田市は航空機騒音に対してはかなり熱心です。大気汚染に関しても一定の理解を持っているようです。しかし、土壌の健康状態に対してはたいへんに不熱心です。過去に廃棄物を野積みにして水田をダメにしたという実績(?)をもっているからでしょうか。
大気の汚染は風があれば吹き消されます。水の汚染は雨が降れば洗い流されます。これに対して土壌が汚染されると、雨によって洗い流されるモノもありますが、重金属やダイオキシンのように土壌に強く結びついて永く汚染し続けるモノもあります。このように汚染に対して土壌は、大気や水と若干異なる性格がありますから、地域の環境要素として無視できません。

何故、土壌なのか
農業地域であれば土壌は作物の基盤としてストレートに重大なかかわりを持ちます。都会でもグラウンドや運動場では、乾けば土壌に結びついた汚染物質が埃に混じって子どもたちの体内に飛び込んでくることが考えられますから、自治体は当然のこととして地域の土壌の状態を把握している責任があると言えるでしょう。しかし、実際はさきの町田市のように無関心な自治体が少なくありません。それは世論の反映でもありましょう。
みなさんは「土壌」あるいは「土」という言葉を聞いてどんなイメージをお持ちになる

でしょうか。一瞬、戸惑われるにちがいありません。「あなたにとって土壌とはなんですか」と聴かれたら、戸惑いは一層はっきりするでしょう。
「そんなこと急に言われても考えたこともない」とおっしゃることでしょう。家庭菜園をなさっているような方は別として、私たちは土壌あるいは土から遠ざかっています。
自治体が不熱心であるとすれば、有志のものが地域の土壌を調査して、世論を喚起し自治体に腰を上げさせる必要があります。そんな三輪啓さん(大気汚染測定町田ネット事務局長)の意見に応じて、それまで町田市リサイクル文化センターの排水の水質の調査をしていた卯月慎一さん(情報センター)が呼び掛けをし、10名足らずの老若男女が集まりました。2000年3月のことでした。
前例がないのでどのような調べ方をすればいいのか分りませんでした。道具も卯月さんが持っている簡易電導度計と簡易ph計があるだけでした。参考書を探しましたが私たちの目的にかなうものはありませんでした。
手始めに土壌とはなにかを勉強しました。土壌学と言うのは、北ヨーロッパから由来しています。そこは大地の基盤は岩石で、この岩石が永い年月をかけた風化作用によって崩壊し、土壌の母材を作ったとされています。ところがここ町田をはじめ、日本の大部分の地域では地表に降り積もった火山灰が母材なのだそうです。つまり、ヨーロッパでは大地の下の方の岩石が土壌の材料であるのに、日本の多くの地域では、よその地域の火山の噴火物が材料というわけです。いずれにしても母材はその後の微細な植物や動物の生活作用によって、鉱物質の母材に生きたあるいは死骸の有機物が加わります。そうなったものが土壌なのです。町田あたりの赤土は富士箱根や赤城などの火山灰に由来しています。赤土層の上部の黒ボクと呼ばれる黒土は土壌化がよく進んだものです。

改善しながらの調査
2000年の夏は、おもにリサイクル文化センターを中心に法学と距離を考慮して、土壌試料の採取地点を選び、500グラムから1キログラム程度の土壌を採取しました。これを専門の分析センターに依頼すると、何があるかという分析だけで(どれだけあるかは問わないで)、1サンプルにつき2万円かかります。全部のサンプルを分析するお金はとても無いので、分析センターに依頼する候補を選ぶことにしました。
風乾した土壌の一定量を一定量の清浄水にまぜ、コーヒー用のフィルターでこして、濾液の電導度とphを計りました。しかし、有効な判断に結びつくような傾向は出ませんでした。
秋になって偶然のことから井戸水を調査することになりました。小山田の周辺にはまだかなりの井戸があって、生活に使われています。浅井戸は少なく6〜70メートルから100メートル級の深井戸が多いようです。20件近く調べた井戸水などの電導度とphの結果(下表参照)から面白そうな傾向が見られるので、目下、井戸の数を増やそうとしているところです。
井戸水というのは雨がもとです。雨は地中にしみ込む間に土壌のいろいろな物質を溶かし出していきます。ですから、井戸水は土壌の汚染と無縁ではありません。
これからはパックテストや簡単な滴定分析などを加えて、土壌そのものや井戸水の健康状態を探っていこうとしています。土壌の小さな動物(ミミズよりずっと小さい)の調査も試みたいと思っています。もし、よかったら一緒に調査や検討の話合いにお出でになりませんか。

方角 pH 電導度 臭い 井戸の深さ・仕様
1 北北西 7.1 69 やわらかで甘い やや硫黄臭 60〜70m
2 7.4 200 やや硬い 鉄・硫黄臭 70m
3 7.2 198 やや硬い 鉄・硫黄臭 72〜73m
4 7.2 185 やわらかい 鉄分 50m
5 7.1 193 やわらかい なし 深さ不明・掘り抜き
6 7.1 186 やわらかい 鉄分 深さ不明・掘り抜き
7 6.9 200 やわらかい 鉄分 100m・掘り抜き
8 北北東 7.1 163 不味い・やわらかい 硫黄臭 深さ不明・掘り抜き
9 7.7 198 やわらかい やや硫黄臭 20m・掘り抜き
10 7.1 168 鉄分強い 数百年・掘り抜き
11 6.8 149 口に少し残る なし 浅井戸 3〜4m

調査日 2000年11月26日(上の表は、調査の一部分です)

編集部註:
@町田市リサイクル文化センター
廃棄物の焼却施設並びに付帯施設と最終処分場からなる施設で、現在1から4号機の焼却炉があり、ダイオキシン対策として2〜4号機にはバグフィルターが設置されています。又、同対策の一環として各炉毎に活性炭の吹き込みを行っています。
ApH
pH7が中性、これ以上ならアルカリ性、これ以下だと酸性となります。レモンはpH3です。
B電気伝導度(単位:μs/cm)
液体の性質を示すものには、色・臭い・透明度・濁り・pHと並んで、電気の通り易さが目安となります。
清らかな地下水で、〜100程度。日の出町の谷戸沢広域処分場の地下水汚染では、電気伝導度が10,000以上となりました。

※尚、調査地点の方角は焼却炉煙突からのものです。各地点の距離は200〜500メートルです。


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