リバーブは、音に残響や余韻、広がりを与えるエフェクトです。GS音源のリバーブは、以下のようなパラメータがあります。
パラメータ | 説明 |
---|---|
REVERB MACRO | リバーブの種類と、その他のパラメータを一度に設定 |
REVERB CHARACTER | リバーブの種類だけを設定 |
REVERB PRE-LPF | ローパスフィルタにより、高い周波数成分を減退 |
REVERB LEVEL | リバーブ音の大きさ |
REVERB TIME | リバーブ音の持続時間 |
REVERB DELAY FEEDBACK | ディレイのくり返しの度合い |
REVERB PRE-DELAY TIME[88] | リバーブ音が出るまでの遅延時間(SC-88) |
REVERB MACROは、すべてのパラメータを一度に設定するので、それから微調整したいパラメータの値を変更するだけで済みます。CHARACTER以下のパラメータをすべて設定するのであれば、REVERB MACROを用いる必要はありません。ただ、混乱を招かないためにも、REVERB MACROで設定をして、CHARACTERは触らず、必要であれば、それ以外のパラメータを設定するというやり方がよいでしょう。
REVERB MACROとREVERB CHARACTERそれぞれでリバーブの種類を選べるのではなく、リバーブの種類を決定するのは、CHARACTERのみのようです。たとえば、Room1のREVERB MACROを選んで、CHARACTERを3にすると、リバーブの種類がRoom1からHall1に変更されます。音源の液晶画面でリバーブの種類を確認すると、Reverbの表示はRoom1ですが、Characterが3になっているので、実際はHall1なのです。
リバーブの種類は、Room1、Room2、Room3、Hall1、Hall2、Plate、Delay、Panning Delayがあり、それぞれ0〜7に対応しています。初期値は4のHall2です。
REVERB DELAY FEEDBACKは、リバーブの種類がディレイ系の時のみに使用し、REVERB PRE-DELAY TIMEは、SC-88以上の命令になります。以下は設定例ですが、もちろん値は一例です。また、再設定する必要がないと思ったパラメータは、書かなくてかまいません。
NOTE K# ST GT VEL * Reverb Room3 Tr.Excl 8 0 2 ← [41 10 42 12 cs 40 01 30 ve ss F7] * Rev Pre-LPF 3 Tr.Excl 8 0 3 ← [41 10 42 12 cs 40 01 32 ve ss F7] * Rev Level 65 Tr.Excl 8 0 65 ← [41 10 42 12 cs 40 01 33 ve ss F7] * Rev Time 35 Tr.Excl 8 0 35 ← [41 10 42 12 cs 40 01 34 ve ss F7]
コーラスは、音に厚みを与えるエフェクトです。GS音源には、以下のようなパラメータが用意されています。
パラメータ | 説明 |
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CHORUS MACRO | コーラスの種類と、その他のパラメータを一度に設定 |
CHORUS PRE-LPF | ローパスフィルタにより、高い周波数成分を減退 |
CHORUS LEVEL | コーラス音の大きさ |
CHORUS FEEDBACK | コーラス音を再びコーラスへ入力するレベル |
CHORUS DELAY | コーラス効果の遅延時間 |
CHORUS RATE | コーラス音のうねりの速度 |
CHORUS DEPTH | コーラス音のうねりの深さ |
CHORUS SEND LEVEL TO REVERB | コーラス音をリバーブへ入力するレベル |
CHORUS SEND LEVEL TO DELAY[88] | コーラス音をディレイへ入力するレベル(SC-88) |
コーラスの種類は、Chorus1、Chorus2、Chorus3、Chorus4、Feedback Chorus、Flanger、Chort Delay、Short Delay(FB)があり、それぞれ0〜7に対応しています。初期値は2のChorus3です。
コーラスにはCHARACTERというパラメータがありませんので、CHORUS MACROで種類を選び、それから必要なパラメータを設定するというやり方になります。ただし以下の例では、説明のために、ほとんどのパラメータを再設定しています。
NOTE K# ST GT VEL * Chorus Chorus2 Tr.Excl 8 0 1 ← [41 10 42 12 cs 40 01 38 ve ss F7] * Cho Pre-LPF 6 Tr.Excl 8 0 6 ← [41 10 42 12 cs 40 01 39 ve ss F7] * Cho Level 65 Tr.Excl 8 0 65 ← [41 10 42 12 cs 40 01 3A ve ss F7] * Cho Feedback 35 Tr.Excl 8 0 35 ← [41 10 42 12 cs 40 01 3B ve ss F7] * Cho Delay 90 Tr.Excl 8 0 90 ← [41 10 42 12 cs 40 01 3C ve ss F7] * Cho Rate 5 Tr.Excl 8 0 5 ← [41 10 42 12 cs 40 01 3D ve ss F7] * Cho Depth 25 Tr.Excl 8 0 25 ← [41 10 42 12 cs 40 01 3E ve ss F7] * Cho→Rev 30 Tr.Excl 8 0 30 ← [41 10 42 12 cs 40 01 3F ve ss F7]
特にCHORUS FEEDBACK、CHORUS RATE、CHORUS DEPTHが、コーラス効果に大きく影響します。自然な音の厚みを求めるのなら、あまり極端に値を大きくしないほうがよいでしょう。逆にいえば、これらのパラメータによって特殊な音にもできるわけです。
SC-88以上のGS音源には、リバーブとコーラス以外に、ディレイも用意されています。リバーブやコーラスだけでディレイの効果が得られる方法もありますが、本来のリバーブやコーラスの機能が使えなくなってしまいますし、細かい設定が行えません。ここで紹介するのは、SC-88以上の音源に備わっているディレイです。
ディレイは、音の広がりを出すのに非常に有効です。極端な話、リバーブを全くかけず、ディレイのみを使っても、まるでリバーブがかかっているかのように音に広がりが出ます。
最も簡単にディレイを使うには、CC#94に適当な値をセットするだけです。しかし、それだけでは音が左右に飛びません。せっかくなので少し凝ってみましょう。まず、どんなパラメータがあるのか見ていきます。
パラメータ | 説明 |
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DELAY MACRO | ディレイの種類 |
DELAY PRE-LPF | ローパスフィルタの設定 |
DELAY TIME CENTER | 中央の音の遅延時間 |
DELAY TIME RATIO LEFT | DELAY TIME CENTERに対する左の音の遅延時間の比率 |
DELAY TIME RATIO RIGHT | DELAY TIME CENTERに対する右の音の遅延時間の比率 |
DELAY LEVEL CENTER | 中央のディレイ音の大きさ |
DELAY LEVEL LEFT | 左のディレイ音の大きさ |
DELAY LEVEL RIGHT | 右のディレイ音の大きさ |
DELAY LEVEL | 中央、左、右の、ディレイ音全体の大きさ |
DELAY FEEDBACK | ディレイのくり返しの度合い |
DELAY SEND LEVEL TO REVERB | ディレイ音をリバーブへ送る量 |
コーラスの設定と同じように、まずディレイの種類を決めます。種類を決めた時点で、ほかのパラメータが適切な値に変わります。ここから微調整するかたちで、各パラメータを再設定します。
ディレイの種類は、Delay1、Delay2、Delay3、Delay4、Pan Delay1、Pan Delay2、Pan Delay3、Pan Delay4、Delay to Reverb、Pan Repeatがあり、それぞれ0〜9に対応しています。初期値は0のDelay1です。
以下の例は、左右にもディレイ音を飛ばして、フィードバック(ディレイのくり返し)も少々かけています。Pan Delay系を使っても同じような効果が出せますが、ここでは説明のためにすべてのパラメータを設定しています。
NOTE K# ST GT VEL * Delay Delay4 Tr.Excl 8 0 3 ← [41 10 42 12 cs 40 01 50 ve ss F7] * Dly Pre-LPF 4 Tr.Excl 8 0 4 ← [41 10 42 12 cs 40 01 51 ve ss F7] * Dly Time C 200m Tr.Excl 8 0 90 ← [41 10 42 12 cs 40 01 52 ve ss F7] * Dly TRatioL 100% Tr.Excl 8 0 24 ← [41 10 42 12 cs 40 01 53 ve ss F7] * Dly TRatioR 200% Tr.Excl 8 0 48 ← [41 10 42 12 cs 40 01 54 ve ss F7] * Dly Level C 70 Tr.Excl 8 0 70 ← [41 10 42 12 cs 40 01 55 ve ss F7] * Dly Level L 100 Tr.Excl 8 0 100 ← [41 10 42 12 cs 40 01 56 ve ss F7] * Dly Level R 90 Tr.Excl 8 0 90 ← [41 10 42 12 cs 40 01 57 ve ss F7] * Dly Level 80 Tr.Excl 8 0 80 ← [41 10 42 12 cs 40 01 58 ve ss F7] * Dly Fback +20 Tr.Excl 8 0 20 ← [41 10 42 12 cs 40 01 59 ve ss F7] * Dly→Rev 35 Tr.Excl 8 0 35 ← [41 10 42 12 cs 40 01 5A ve ss F7]
ディレイはパラメータが多く、ディレイの遅延時間の変換も面倒です。本体から操作できる機種であれば、ボタンでいろいろ変更してみて、気に入った値を見つけたら、そのデータを送信して設定するのがよいでしょう。
SC-88Proを使った、本体での設定方法は、ALLランプを点灯させた状態でPARTボタンの両方を押して、SC-55MAPとSC-88MAPのボタンでディレイのパラメータを選びます。INSTRUMENTボタンで値を増減させ、INSTRUMENTボタンの両方を押せば、そのデータを送信できます。
EQは、音の周波数成分レベルを増減して、音質を変えるエフェクトです。GSでは、SC-88以上の音源に備わっています。変化させる周波数を設定して、ゲインを上げ下げするという使い方をします
パラメータ | 説明 |
---|---|
EQ LOW FREQ | 低音域の周波数(200Hz or 400Hz) |
EQ LOW GAIN | 低音域(-12〜+12dB) |
EQ HIGH FREQ | 高音域(3kHz or 6kHz) |
EQ HIGH GAIN | 高音域(-12〜+12dB) |
SC-88のEQは、低音域が200Hzか400Hz、高音域が3kHzか6kHzの、それぞれ2通りの周波数からしか選べません。
実際の設定例を挙げておきます。EQは頻繁に調整する可能性が高いため、値はVELに書いたほうがよいでしょう。音源からエクスクルーシブデータを取り込む方法を使うのなら、その限りではありませんが。
NOTE K# ST GT VEL * EQ Low Freq 200Hz Tr.Excl 8 0 0 ← [41 10 42 12 cs 40 02 00 ve ss F7] * EQ Low Gain +4 Tr.Excl 8 0 68 ← [41 10 42 12 cs 40 02 01 ve ss F7] * EQ High Freq 3kHz Tr.Excl 8 0 0 ← [41 10 42 12 cs 40 02 02 ve ss F7] * EQ High Gain +5 Tr.Excl 8 0 69 ← [41 10 42 12 cs 40 02 03 ve ss F7]
低音域の周波数の値は、200Hzが0で400Hzが1、高音域では3kHzが0で6kHzが1、ゲインは64を基準として、プラスしたりマイナスしたりします。ただし、ゲインをエクスクルーシブデータに直接書き込むのであれば、16進数の34〜4Cの範囲になります。
基本的には、ゲインを上げることが多いです。特にロック系では、低音域と高音域の両方を上げることによって、バスドラム、ベース、シンバル類を強調させ、パワフルなサウンドにします。ただし、ほどほどにしないと耳障りになってしまいますので注意しましょう。
EQは、メロディやスネアドラムの音にハリを出すのにも有効です。ところが、SC-88のEQは、周波数が細かく設定できないので、なかなか思うようにいきません。とりあえず高音域を、中音域寄りの3kHzに設定して、ゲインを上げてみると、それなりの効果はあります。しかし、それより高い周波数の音も同時に増強されるので、ハイハットなども目立つようになってしまうのが難点です。
EFXのエクスクルーシブデータは、本体のボタンでEFXのパラメータの値を設定した後、EFX VALUEの両ボタンを同時に押すことによって送信できます。レコンポーザで、あらかじめSHIFT+]キーを押してMIDI IN EXCLUSIVE INPUTにしておけば、そのデータを受信することができます。
ここでは、その機能を使わないでEFXの設定をする方法を書きます。例として、パート5とパート6に、OD1/OD2のエフェクトを使うことにします。
まずパート5のEFXをオンにするため、トラックエクスクルーシブを使います。以下のように入力します。VELの値が1でオン、0でオフです。
NOTE K# ST GT VEL * Part 5 EFX ON Tr.Excl 8 0 1 ← [41 10 42 12 cs 40 45 22 ve ss F7]
csの次にある40 45 22という部分がEFXのスイッチを制御するパラメータとなり、45はパート5を意味しています。パート1〜9では41〜49になるのですが、パート10では40で、パート11〜16が4A〜4Fなので注意してください。
パート6も同じように設定します。45を46にするだけです。
NOTE K# ST GT VEL * Part 6 EFX ON Tr.Excl 8 0 1 ← [41 10 42 12 cs 40 46 22 ve ss F7]
次に、エフェクトのタイプをOD1/OD2にします。
NOTE K# ST GT VEL * Type OD1/OD2 Tr.Excl 8 0 0 ← [41 10 42 12 cs 40 03 00 11 03 ss F7]
40 03 00というのが、エフェクトのタイプを決めるということを意味するパラメータです。次の11 03はOD1/OD2を意味します。SC-88ProのマニュアルのP.86を見ていただくと、OD1/OD2の項には[11H,03H]と書いてあります。この11 03をgt veにして、GTとVELの位置に値を書いてもよいのですが、その場合は10進数に変換する必要があります。
これで、とりあえずパート5と6にエフェクトがかかります。この場合、それぞれのパートのパンポットをL63とR63にしないと、しっかりかからないと思いますが。
エフェクトのパラメータを設定したい時は、そのエフェクトの解説のページを見て、パラメータに割り当てられている番号を確認します。[1]とか[2]などと書いてあり、20種類あります。P.196を開くと、EFX PARAMETER 1〜20というのが見つかりますので、左の数字をトラックエクスクルーシブとして書き込みます。
ここでは、OD1/OD2のLevelを100にしてみます。Levelのパラメータ番号は20なので、EFX PARAMETER 20の値を100にすればよいわけです。EFX PARAMETER 20は40 03 16で、値の100は16進数で64なので、
NOTE K# ST GT VEL * EFX Level 100 Tr.Excl 8 0 100 ← [41 10 42 12 cs 40 03 16 ve ss F7]
と書きます。
「88Pro用データなら、EFXを使っているだろう」という期待が聴く側にはありますので(おいおい(^^;)、以上の方法で、気の済むまでいじってみてください。88Proの場合、普通に音を鳴らすだけで満足しがちですが、インサーションエフェクトを有効に使うことによって、真価が発揮されるのです。
SC-88ProのEFXには、モノラルエフェクトとステレオエフェクトの2種類があります。区別の仕方は、マニュアルの図を見て、出力側までL/Rが独立してつながっているものがステレオで、途中で1つにまとめられているのがモノラルです。ここでは、エフェクトをかけたパートのパンポットや、システムエフェクトについての注意点を挙げます。
EFXパラメータの中に、「+」や「#」が付いたものがあります。これらのパラメータは、コントロールチェンジやピッチベンドなどに割り当てることが可能です。こうすることにより、演奏中に値を連続的に変えることが容易になります。
まず、使用するパラメータの解説をします。1や2というのは、それぞれ「+」「#」の付いたパラメータを指しています。
では、OverdriveのEFXのDrive値をコントロールチェンジで制御するというのを例に、設定方法を書きます。SC-88Proのマニュアルなら、P.93に載っています。
まずはEFXを有効にします。Drive値を0にしているのに注目してください。これは、Driveのパラメータの値を基準に、コントローラの値で増減させる仕組みになっているからです。Driveを0にしておけば、Depthを100%にした場合、コントロールチェンジで設定した0〜127がそのままDrive値の0〜127に対応するというわけです。
NOTE K# ST GT VEL * Part 1 EFX ON Tr.Excl 8 0 1 ← [41 10 42 12 cs 40 41 22 ve ss F7] * Type Overdrive Tr.Excl 8 0 0 ← [41 10 42 12 cs 40 03 00 01 10 ss F7] * EFX Drive 0 Tr.Excl 8 0 0 ← [41 10 42 12 cs 40 04 04 ve ss F7]
それでは、Driveパラメータをコントロールナンバー16に割り当て、デプスを+100%にします。
NOTE K# ST GT VEL * EFX C.Src1 CC#16 Tr.Excl 8 0 16 ← [41 10 42 12 cs 40 03 1B ve ss F7] * EFX C.Depth1 100% Tr.Excl 8 0 127 ← [41 10 42 12 cs 40 03 1C ve ss F7]
これで設定は完了しました。あとは、実際に使って効果を確かめましょう。たとえばこんな感じにすると、発音中にDrive値がだんだん上がっていきます。
NOTE K# ST GT VEL CONTROL 6 16 15 C 3 48 6 96 100 CONTROL 6 16 20 CONTROL 6 16 25 CONTROL 6 16 30 CONTROL 6 16 35 CONTROL 6 16 40 CONTROL 6 16 45 CONTROL 6 16 50 CONTROL 6 16 55 CONTROL 6 16 60 CONTROL 36 16 65