ALFA V6エンジンとは(4)
さて、やっとアルファV6が取った形式、60度バンクのV6エンジンです。60度バンクなので時計の11時と1時方向にシリンダーがあります。先ず、11時にセット。ここから120度(等間隔爆発実現のためです)クランクを回したところで、1時位置に印。この2つが対向するシリンダー用です。実際これをやってみると60度ずれますね。(90度バンクの場合は30度で済んでいたオフセットです)。さらにここから120度回して今度は再び11時位置。そして120度回して1時といっていきますと、結局1時・3時・5時・7時・9時11時・ときれいに60度間隔でクランクが伸びることになります。そのうち1時と3時、5時と7時、9時と11時が向かい合うシリンダー用です。(点火順序が123456なので)。

つまり60度オフセットということになります。因みにこの場合は、60度6スローという呼ばれるようです。(60度づつずれながら6方向に伸びているからですね。隣と60度のオフセットがついてるだけで一旦ベアリングまで戻らなくても1スローと数えるようです)。
さて、90度バンクのときに等間隔燃焼を実現するためには対向するピストン用のクランクには30度のズレ(オフセット)が必要でしたが、これはクランクピン部を単にずらしただけでも辛うじて30度ずれたクランクピン同士が重なりあう部分で繋がるので特にそれ以上問題はありませんでした(前述のように例外もあるようですが…NSX)。ところが60度ずらすとなると、お互いにずらされたクランクピン同士はもはや重なる部分がほとんどなく、そのまま重なる部分だけで繋げておくとねじ切れかねません。そこでずらしたクランクピンの間に板をはさみ、この板にクランクピンを付けるようにします。この板がウェブとよばれるものです。

等間隔爆発60度V6の場合、対向するシリンダー用のピストンのコンロッドをとりつけるクランクピンが60度もオフセットするため間にどうしてもウェブが必要になる分、同じ等間隔爆発を実現する120度バンクのとき(やウェブなしでもつながる30度オフセクランクを採用した90度バンク)の場合よりどうしても全長が長くなってしまうのですね。・・・て、あれ?ホンだのCXX系ではNSX用だけにウェブが入ってるって書いたような。てことは単にウェブ入れただけでは全長は伸びませんね〜。

ところで、V6エンジンという形式はバランス的にはまったく不利な配置になるそうです。例えばエンジンを上下に揺する力、エンジンを前からみたときの面で回転させる力(ローリング)・エンジンを上から見たときの面で回転させる力(ヨーイング)・エンジンを横から見たときの面で回転させる力(ピッチング)などです。それぞれエンジン1回転で1周期するものを1次、1回転で2周期するものを2次、1回転で3周期するものを3次・・・と呼ぶようです。

詳細は避けますが(正確には「詳細は説明できないのですが」です^^;)、例えば上下振動はエンジン1回転につき1周期するものしかないように思えます。しかし実はちがうのですね。コンロッドの付け根は、円運動するクランクピンにしたがって回るので、その上下に動く様子の時間的変化(=速さ)は、回転数一定ならsinカーブ…だからその加速度もsinカーブ…だからその加速度の変化(力の変化)もsinカーブ…であらわされるはずです。だから、ピストンが上下に動く様子もsinカーブで力の変化もsinカーブでエンジン1回転で1周期のsinカーブだろ!!…と思うのが早とちりで、コンロッドの長さは有限なので、シリンダ中心線に対し常に変化する角度を持った関係にあります。クランクピンが回って縦方向にYだけ動いても、ピストンはYだけ動くとは限らないのですね。これをゆっくり考えるてみると回転数一定ならピストンの速度変化は上死点側の方が下死点側より大きくなります(なりますか??なりますよね。ただのsinカーブに従うなら上下死点側でも速度変化の大きさは同じですよね?)この上下死点間での速度変化の違いは、エンジン1回転に2周期でまわるsinカーブ(=2次の振動)で表され、クランクピンの動きに従ったエンジン1回転につき1周期のsinカーブ(=1次の振動)に重ね合わされたものがピストンの力変化になる(いや…実はならない…4次があるようです)というようにエンジン1回転に多周期の力変化が存在します。

なんだかわかったような、かわからないのような説明ですが、「振動に1次や2次・3次…がありそうだ」というこにしておいてください。そして多気筒エンジンの場合、互いのシリンダとの関係で単気筒エンジンのそれらの振動が上手く打ち消し合って消えたり、あるいは逆に重なり合って大きくなったりするわけです。

そして6気筒の優等生は直列6気筒エンジンです。6気筒どころか全エンジン界の中でも優等生で、上下振動1・2・4次・ピッチングモーメント・ヨーイングモーメントの1・2・4・6次、ローリングモーメントの1・2次(ローリングの3次は発生)までバランスします。これに対しV6はアンバランスのオンパレードになります。

そこで、クランク腕に錘をつけてバランスさせます。そしてこのとき先ほど(いつだ〜)のクランクピンのオフセットのためにつけたウェブにも錘をつけてバランスに一役かってもらっています。そうすると60度V6の場合、上下振動の1次2次4次、ピッチング・ヨーイングの1次、ローリングの1次2次まで消すことができるそうです。だから60度V6の場合ウェブの幅を大きくしてまで錘をつけるのですね(因みにローリングは直6と同じところまで!ここが重要なようです)。しかし90度クランクピンオフセット等間隔爆発では、クランク軸まわりのモーメント(ローリング)が1次2次とも残ってしまうらしいのです。

アルファV6がとった60度6スロークランク等間隔爆発60度バンクV6エンジンとは…V6エンジンとしては全長が長くなる傾向にあるが、比較的高い次元までバランスするV型6気筒エンジンということになります。

これじゃ、ただの60度V6の一般論ですね。次はアルファがこの形式を基本にどのようなエンジンをつくろうとしたのかについて、勝手な考察をしたいと思います。