ALFA V6エンジンとは(3)
「ALFA V6エンジンとは」からだんだんかけ離れてきてしまっているようですが、もう少しご辛抱ください。

では、前回の続きといたしまして、V型、特にV6エンジンでのバンク角とクランク角についてお絵描きを続けていきたいと思います。

先ず、バンク角120度のV6から考えていきたいと思います。(…って上手くいくことがわかっているからどちらかというとV6としては特殊な120度から始めるんですけど^^;)
前回と同様時計の文字盤を描きます。今度は120度Vですので、シリンダーは12時の方向ではなく、10時と2時の方向になります。では、向かって左側のバンク10時の方向のシリンダーで爆発を起こさせます。L6のときと同様この方向に伸びているクランクがあるはずですので、10時方向に印をつけます。6気筒の等間隔爆発を起こさせるため120度時計方向にクランク軸を回転させます。今度は向かって右側のバンクで爆発を起こさせましょう。2時の方向に印を…あれ?先ほど左のバンクでつけた印の位置に一致しますね!取りあえず2重で付けておきましょう。
さらに120度回転させこんどは再び右(10時)のバンクで爆発を発生させます。10時に印。さらに120度で左(2時)で爆発。また先ほどの位置に一致。(このとき最初と2回目の印が10時のシリンダに一致しますが気にしないでください)。
さらにもう2回行いますと、結局10時・2時・6時の位置に2つづつ印がつきます。

さてL6の場合は点火順序によって、同じ位置にくるクランクは一部を除いて隣り合わせににはなりませんでした。
ところが、嬉しいことにV6は両バンクで向かい合うシリンダーは、連続して爆発を起こして良い点火順序になります。(1右→1左→2右→2左→3右→3左=1→2→3→4→5→6)つまり、10時の位置の次に120度回転させますと次に爆発する2時のシリンダー位置に前の10時の位置が一致しますが、この2つは向かい合うシリンダーにしてしまってよいということですね。10時→2時の組み合わせのピストンはクランクピンを共有できることになります。こうすると何が嬉しいのかといいますと、向かい合うシリンダーのずれは同じクランクピンに並んだコネクティングロッド(サイドバイサイドと呼ぶそうです)分だけずらせばよいこととなり、結果クランク軸の全長が短くなる=エンジン全長が短くなるわけです。
雑誌の「「V6エンジンは、バンク角が120度であれば等間隔爆発云々…」というのはここからきているわけですね。う〜んちょっと言葉が足りないような…。やはり「サイドバイサイド(向かい合うシリンダーがクランクピンを共有する)ならば」という条件をつけたほうがよさそうですね。

では、アルファが採用した60度ともに多い90度V6の場合はどうなるでしょうか?(まず等間隔爆発は無視してみます。)また時計の文字盤を描かせてください。今度は90度バンクですので、52分30秒の位置と7分30秒の位置…では、話が面倒なので、12時の位置と3時の位置をシリンダーの方向にさせてください。これだとちょっと不自然さ感じるようでしたら、37分30秒の位置を真下にくるように全体を傾けてください(^^;)
では、先ほどの120度バンクのクランク…120度のサイドバイサイドのクランク軸をそのまま使って1→2→3→4→5→6の順で点火を行うとどうなるかについて考えていきます。先ず向かって右12時の位置で爆発させます。その後、3時位置のシリンダーの位置にくるまで時計まわりクランク軸を回転させます。今までは等間隔爆発を起こす120度回転させていましたが、今度はシリンダーの位置までということで結局バンク角分の回転となり30度手前の90度になります。この位置で向かって右側3時位置で爆発させます。これでサイドバイサイドに取り付けられたピストンのうち一組の爆発が左右バンクのシリンダーで行われました。
では、次の爆発を次の組で行わせます。今度は左(12時)の位置に次のクランクの位置がくるまでまわします。120度を30度越えた150度でやっと12時位置に合いますね。そしてその組のもう片方が右の3時位置にくるにはバンク角分=90度回転となります。
これをもう一組分行いますと…
#1→90度→#2→150度→#3→90度→#4→150度→#5→90度→#6→150度→#1
となり、不等間隔爆発になります。

「なんだやっぱりV6は120度じゃなきゃ不等間隔爆発か…」となりそうですが、ちょっとお待ちを。これは120度V6で等間隔爆発になる120度サイドバイサイドのクランク軸を用いたから起こったことで、クランク軸の選び方によってはこうはならないことも考えられます。
90度バンクに120度バンクのクランクなんか流用するか?となりそですが例はあります。初期のPRVユニットは90度V6の不等間隔爆発ですね。それからマセラティがシトロエンSMに提供(し自らのメラックに載せた)するために既存のV8を切って急ごしらえしたV6も90度V6不等間隔爆発です。SMのエンジン断面図を目にしたことがありますが、向かい合うシリンダ用のピストン(というか正確にはコンロッドですね)は仲良く並んで同じクランクピンに取り付けられています。

さてではどうすると90度V6を等間隔爆発にすることができるでしょう。ここでまた時計の文字盤です(え〜また〜もう飽きた)。90度ですので12時3時がシリンダ、自然な方向として37分30秒の位置を真下にしましょう。

さて先ほど同様に12時位置に第一のクランクを合わせます。そして今度は等間隔爆発を発生させるために、120度までクランク軸を回します。先ほど12時位置だったクランクは3時のシリンダ位置を通り越し更に30度いった位置で調度120度回ったことになりますね。ではこの状態の3時位置に印をつけましょう。先ほど12時位置で爆発したクランクはこのとき4時位置にあります。
ここから120度まわしたところで今度は12時位置での爆発をさせます。さらに120度回して…印。そして今度はまた120度回した3時位置。これを3組分行いますと…。
11時12時・3時・4時・7時8時の位置にきます。11時12時の組、3時4時の組、7時8時の組がそれぞれ向かい合わせのシリンダー用です。向かい合うシリンダー用のクランクが1時分=30度ずれているんですね。では仲良くクランクピンを共用していた不等間隔用クランクのピンを30度ずらすしてしまえば良いわけです。ということで30度ずらしましょう。クランクピンにも太さはありますので30度ぐらいずらしても二つのクランクピンはまんなかで繋がっているのでOKですね。ってことでちょこざいな、とばかりにずらしてしまったのが、PRVユニットです。ターボ化に合わせて30度オフセットクランクを採用しノンターボも30度オフセットクランク採用になっていった(はずです)。国産で有名なところでは、ホンダのC20・C25・C27系が90度V6 30度オフセットクランクですね。このあたりは、オフセットされたクランクピンの間にウェブ(後述)が入らないクランクのようです(クランクピンの重なり部分だけで繋がっています)。ただし、NSX用のC30Aを見るとオフセットされたクランクピンの間に薄いウェブが挟まっているようです。チタンコンロッドであることが関係あるのでしょうか?レジェンド用のC32系やC30Aに代わったNSX用のC32については不明です。

どこが、「ALFA V6エンジンとは」だ〜!!
いよいよ次から60度V6について考えて「ALFA V6エンジンとは」に近づきますのでお許しを。