【第17回・学科一般 問3】北半球中緯度の総観規模の場において、700hPa等圧面と850hPa等圧面との間の高度差が、東西方向には西から東へ向かって大きくなり、南北方向には等しいと仮定する。このとき、700hPa等圧面に置ける地衡風から850hPa等圧面における地衡風を差し引いた風ベクトルは( )へ向いている。
(1) 東
(2) 西
(3) 南
(4) 北
(5) 南西
解説:
“ベクトル”と言われ、高校数学で習った内容を思い出して難しく考えないでください。単に“矢印”という意味ですから、問題文のベクトルという言葉をすべて矢印という言葉でとらえればいいんです。
地衡風とは、この問題で考えているように、コリオリ力と気圧傾度力のつりあいだけで表される上層(地表面での摩擦を考えない)での総観規模の風のことを言います。
風はどちらに吹くか
問題文の記述を図で表すと下のようになります。
東にいくほど高度差が大きいということから、東から西へと下がっていく等圧面の斜面を描けます。つまり同じ高度ならば西よりも東のほうが気圧が高い状態です。だから、もし単純に同じ高度での東西の気圧差だけを考えるならば、紫の矢印の方向に風が吹くことになります。
しかし、実際の風ではコリオリ力が働くために北半球で吹く風は右方向に曲げられて、それぞれ青・赤矢印の向きに吹きます。等圧面の高度差が大きくなるほど(= 斜面が急であるほど)、同じ高度での気圧差は下層よりも上層のほうが大きくなり、上層ほど強い風が吹くことになります。図で青矢印よりも赤矢印を長く書いているのはそのためです。
「東西方向には西から東へ向かって大きくなり、南北方向には等しい」という記述から、風の吹く方向は上・下層とも同じ方向です。
上・下層の風の差をとる
この問題では700hPa等圧面における風のベクトル(赤矢印)から850hPa等圧面における風のベクトル(青矢印)を差し引いた差のベクトルの方向を求めよと言っています。最初に書いたように、ベクトルといっても難しく考えないでください。“ベクトル = 矢印” と考え、単に2つの矢印の差をとり、それがどっちを向いているかを聞いているだけですから。
この2つの矢印の差をとる 700hPa、850hPa それぞれの風を示す矢印を並べて書くとこのようになります。赤い矢印から青い矢印の長さを引いて、それがどちらに向いているかを聞かれているだけです。簡単ですね。矢印の差もやはり2つの矢印と同じように“北”を向いています。
答:(4)
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