【第17回・学科一般 問3】

 大気中の水蒸気について述べた次の文章の下線部(a)〜(c)の正誤の組み合わせについて、下記の(1)〜(5)の中から正しいものを一つ選べ。ただし、水の密度は1.0×103kgm-3、水蒸気の凝結の潜熱は2.5×106Jkg-1、乾燥空気の定圧比熱は1.0×103JK-1kg-1とする。

 底面積が1m2で地上(1000hPa)から500hPaまでの気柱を考える。この気柱に含まれる質量10kgの水蒸気がすべて凝結するとすれば、(a)10mm の降水量に相当する。このとき発生する(b)潜熱 がすべてこの気柱内の大気を温めるのに用いられたとすると、気柱の質量は5000kgであるので、気柱の平均的な温度の上昇は(c)5℃ となる。

   (a)  (b)  (c)
(1) 正  正  正
(2) 正  正  誤
(3) 誤  正  正
(4) 誤  誤  誤
(5) 誤  正  誤

 

解説:

 キーワードは、密度、比熱、潜熱です。 

 

 (a) 降水量

 10kgの水が面積1m2 の範囲に降ったときの降水量を考えろとは、底面積1m2 の箱の中にこの水を入れるとどれだけの高さ[mm]になるかということを考えることになります。

 密度とは、下の式で示すように、単位体積(1m3とか1cm3)でどれくらいの質量になるかを示すものです。

密度[kg/m3] = 質量[kg] / 体積[m3]

この式に問題文で与えられている密度と質量の値を代入すると、

1.0×103 [kgm-3 ] = 10[kg] / 体積

∴ 体積 = 1.0×10-2 [m-3 ]

底面積が 1m2 とわかっていますから、その高さは、  体積 = 底面積 × 高さ

1.0×10-2 [m ] = 1.0×10 [mm ] = 10 [mm]

 ∴ 問題文の記述は “正しい” ということになります。

 

 (b) 潜熱

 一般に、ある物質が 「気体フ液体フ固体」 というように相互にその状態変化をするときには外部から熱を吸収したり、あるいは逆に外部へ熱を放出したりします。このように、状態変化に伴って発生・吸収する熱を潜熱と言っているのです。要するに、蒸発熱、凝結熱、気化熱などのことです。

 ∴ 問題文の記述は “正しい” ということになります。

 問題文中の「水蒸気の凝結の潜熱は2.5×106Jkg-1」というのは、水蒸気から水へと状態変化(凝結)したときに、水蒸気1kgあたり、これだけの熱が発生することを示しています。この問題では10kg の水蒸気が凝結するのだから、発生する凝結の潜熱は、

 2.5×106 [Jkg-1] × 10 [kg] = 2.5×107 [J]

 

 (c) 温度上昇

 水蒸気の凝結により発生したこの熱量すべてが空気を温めるのに使われるとすると、気温は何℃上昇するかを問われています。

乾燥空気の定圧比熱は1.0×103JK-1kg-1 」というのは、「乾燥空気1kg を1K 温めるのに 1.0×103J の熱量が必要である」という意味です。ここで[J] というのは熱量の単位です。一般には[cal] のほうがなじみ深いですが、科学の世界では、ふつうは[cal] よりも[J] を用います。ちなみに、

1cal = 4.2 J

という関係があります。

 

 さて、熱量と温度変化や比熱との関係は次の式で表されます。

 

熱量 = 質量 × 比熱 × 温度変化

 Q = m × C × ΔT ← ΔT は変化した温度(Δは“変化分”という意味)

この式に与えられた値を入れると、

2.5×107 [J] = 5000 [kg] × 1.0×103 [JK-1kg-1 ] × ΔT

ΔT = 5 [℃]

∴ 問題文の記述は “正しい” ということになります。

 

結局、(a)〜(c)のすべてが正しい記述ですから、

 

 答:(1) 

 

 

【類題】 第1回-問4

 


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