【第14回・学科一般 問5】対流雲における空気の流れには、雲底下からの上昇流や、エントレインメントと呼ばれる側面からの流れがあり、雲の中層における上昇流を決めている。今簡単なモデルとして底面の半径が r で、高さが h の円柱を考え、円柱の下端における下からの上昇流をWa 、側面から流入する流速の法線成分を V とし、円柱の上端における上昇流をWb とするとき、
関係式: Wb = Wa + ( )×V
が成り立つ。下記の(1)〜(5)の中から( )に当てはまる正しいものを一つ選べ。
(1) 2h/r
(2) h/(πr2)
(3) 2πrh
(4) h/r
(5) πh
解説:
ここでは流入する空気量と流出する空気量とが等しいという関係が成り立っています。そして流入出する空気量は、
(流入出する)面積 × 風速 × 時間
によって求めることができます。
流入量
空気が流入してくる部分は 1) 底面、2) 側面 の2個所です。
1) 底面からの流入量
底面積は、πr2 です。 ← 円の面積 = 半径×半径×π
流入時間は自分で適当においてください。ここでは計算を簡単にするために 1秒間 とします。すると、
底面からの流入量 = πr2 × Wa
となります。
2) 側面からの流入量
側面を展開すると、縦(=高さ)は h、幅は円周分、すなわち2πr の長方形となります。
← 円周 = 直径×π = 2 ×半径×πですから
側面からの流入量 = 2πr × h × V = 2πhrV
となります。
流出量
空気が流入してくる部分は上面だけです。1) 底面からの流入 と同様な計算をします。
流出量 = πr2 × Wb
となります。
流出量 = 流入量
「流出量 = 流入量」 という式をたて、これを整理します。
πr2 Wb = (πr2 Wa) + (2πhrV)
上面からの 側面からの 底面からの
流出 流出 流出与えられた関係式の形にするために、左辺と右辺の式全体を πr2 でわると、 ← これがなかなかできないかも
Wb = Wa + 2hV/r
となります。
これを関係式と見比べると( )の中には、2h/r が入ることがわかります。
答:(1)
この問題では流入する空気の風速を Wa、V とし、流出する空気の風速を Wb としていますが、問題文中には“風速”とか“速度”という言葉はないため、それらが何を表しているのかわからず混乱します。V については「側面から流入する流速の法線成分を ・・・ 」とあるので速度、すなわち風速を表しているのだとわかるので問題ありませんが、Wa やWb についてはただ単に「上昇流をWa ・・・ 」あるいは「上昇流をWb ・・・ 」とだけあり、いったい上昇流の何をさしているのかが書いてなく、上昇流速(風速)なのか上昇流量(空気の体積)なのかわかりません。問題文をよく読んだ受験者ほどそう思うはずです(僕がそうですが)。Wというのは、通常 z方向(鉛直方向)の風速を表すのに用いられるから、V と同様に風速のことを言っているのだろうと受験者が想像して問題を解かなければならず、余計な負担や混乱をもたらします。きちんと「上昇流の風速をWa ・・・ 」というように書くべきです。
【類題】 第4回-問8
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