【第14回・学科一般 問1】

 周囲より4℃気温の低い空気塊が、0.6℃/100m の温度減率をもった大気中を、ある高度から周囲の気温と等しくなる高さまで断熱的に下降した。下降した距離として正しいものを、下記の(1)〜(5)の中から一つ選べ。
 ただし、空気塊は凝結した水分を含んでいないとする。

(1) 約1000m
(2) 約670m
(3) 約600m
(4) 約400m
(5) 約170m

 

解説:

 「周囲の空気」と「周囲より4℃低い空気塊」との2種類の空気があることに注意してください。

 温度減率

 どちらの空気も断熱的に下降することによって圧縮されて温度が上昇しますが、周囲の空気は 0.6℃/100m の温度減率で温度変化し、空気塊は 1.0℃/100m の温度減率で温度変化します。後者の 1.0℃/100m という数字は問題文中のどこにも書いてありませんが、乾燥空気の温度減率(=変化率)として覚えておかなければいけない数字です。同様に湿潤空気の温度減率は 0.5℃/100m です。実際の大気はこの両者のあいだの値をとり、標準的な大気の温度減率は 6.5℃/100m とされています。この問題では温度減率を 0.6℃/100m とせよとなっています。

 

凝結

 問題では「空気塊は凝結した水分を含んでいないとする」となっています。1.0℃/100m というのはあくまでも蒸発や凝結などの状態変化がおこらない乾燥空気の温度減率です。下降による断熱圧縮で発生した熱が、蒸発(水蒸気から水への状態変化)のために使われるために、空気塊の温度は乾燥しているときほど上昇しません。ですから凝結の起こった空気である湿潤空気の断熱減率は 0.5℃/100m になってしまうのです。

 

 計算

 下降するにしたがって、周囲の大気の温度は 0.6℃/100m 、空気塊の温度は 1.0℃/100m と一定の割合で上昇していきます。最初、空気塊の温度は周囲よりも4℃低かったのですが、温度の上昇率が周囲の大気よりも大きいために、やがて周囲の大気の温度に追いつく(= 等しくなる)ことになります。

 両者が等しくなったときの温度をT[℃]、下降した距離をh[km]という文字で表します。ここでは計算結果を理解しやすくするために、温度減率を100mあたりの値から1km(1000m)あたりの値(それぞれ 6℃/km、10℃/km と)に書き直して表しています。

T + 1.0h    ・・・ 空気塊の最初の温度
T - 0.6h - 4  ・・・ 周囲の空気の最初の温度から、
4℃だけ引いた温度

最初、周囲の空気の温度は空気塊よりも4℃だけ高いのですから、逆に4℃を引くことで両者は同じ温度となるわけです。この2つの式が等しいとおくと、

T + 4 + 10h = T + 6h

となり、

h = -1 [km] = -1000 [m]

 

 答: (1)

 

 

 


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