【第9回・学科一般 問4】

 次の文章の空欄を埋める語句として適当なものを、次の(1)〜(5)の中から一つ選べ。

 微少な水滴が空気中を落下し、落下速度が一定となるとき、水滴に働く重力(mg)と逆向きに働く空気による抵抗力(6rπηV)がつりあって、次の公式が成り立つ。

mg = 6rπηV

 このとき半径が10μmの水滴と半径が5μmの水滴の落下速度の比は(  )である。
 ここでmは水滴の質量、rは水滴の半径、ηは空気の粘性係数、Vは落下速度、gは重力加速度を表す。

10μm

5μm

水滴

水滴

(1)

1

4

(2)

1

2

(3)

2

1

(4)

4

1

(5)

8

1

 

解説:

 

 “粘性係数” という言葉を見ても慌てないでください。与えられた公式を知らなくても、ただ機械的に文字式の変形をやっていけばよいのです。もっとも、理数が苦手な人はかえって数字を使った具体的な計算のほうがわかりやすいかもしれませんが。

 

最初にすること

mg = 6πηV

与えられた式の中で、注目しなければならないのは赤字で示した半径rと速さV との関係です。
ですからこの式を、“V = ”の形に変形してやりますと、

V = mg/(6πη)    ・・・ (A)

となります。
 この式の意味は、「落下速度 V は半径rが大きいほど小さくなり(反比例)、また質量 m が大きいほど大きくなる(比例)」ということです。それ以外の文字式 g、π、η は定数です。

 しかし、ここであわてて「答は(2)の1:2」と答えてはいけません。
 この式に含まれている質量 m は半径 r の値によって変わってしまう変数であるということに注意しなければいけません。常識的にも、半径が大きくなれば球の質量も大きくなりますよね。いま知りたいのは2つの変数 V とrだけの関係ですから、rと一緒に値が変わってしまう変数 m はじゃまなのです。では具体的にはどうすればよいのでしょうか。

 

じゃまな変数 m を消す

球に限らず、体積と質量とのあいだには、

質量 = 体積 × 密度  ・・・ (B)  ← 密度と体積、質量との関係式

という関係があります。この問題の場合、

質量は、 m
体積は、 4/3・πr
3  ← 球の体積を求める公式(暗記!)
密度は、 ・・・ 。 問題文にでていないので自分で勝手にμとおきます
                       
↑ これがなかなかできない

ですので、これらの文字式を(B)式に入れて(=代入して)やると、

m = 4/3・μπr3  ・・・ (C)

というふうに表せます。

 

この(C)式を(A)式の m の中に入れてやります。すると(A)式は、

    ・・・ (D)

となります。目が回りそうなほど複雑な形になってしまいましたが、落ち着いてよく見てください。
じゃまな変数 m が消えて、目的の V とr以外はすべて定数となりました。よく注意しながらこの式を、定数と変数の部分にまとめ直して(=変形して)ください。すると、

     y = ax の形

となります。

V とr以外はすべて定数ですので、この式は「球の落下速度 V は 球の半径 r の2乗に比例する」ということを意味しています。比例定数をまとめてaという一つ文字で表せば、V とrとの関係がよりわかりやすくなると思います。
この式の意味を具体的に言うと、「半径rが2倍、3倍、4倍、 ・・・ になると、落下速度 V は4倍、9倍、16倍 ・・・ となる」ということです。あるいは、「半径rが1/2倍、1/3倍、1/4倍、 ・・・ になると、落下速度 V は1/4倍、1/9倍、1/16倍 ・・・ 」と言っても同じことです。

ですからこの問題の場合、水滴の半径が10μm から 5μm へと1/2 になれば、落下速度は1/4 になってしまうのです。

 

 答:(4) 

 

※ この解説では、最初に “V = ”の形に変形してから、密度の式を用いて m を消去しましたが、先にm を消去してから “V = ”の形に変形しても同じです。要はどちらを先にするかというだけです。

 

 第16回試験の学科・一般知識の問5 もまったく同じ問題です。水滴の大きさがちがうため、問題文中で与えられている式がちがう形で表現されているだけです。この問について解説のご要望があれば同様に解説します。

【類題】 第13回-問5、第16回-問5 


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