【第4回・学科一般 問8】

 積乱雲の下部では、しばしば強い下降流が観測され、それが地上に衝突して放射状に広がると、地上付近に強い風の鉛直シアーが生まれる。この現象をマイクロバーストと呼び、航空機の離発着を危険にするものとして恐れられている。このマイクロバーストを図のように模式化して水平風を見積もってみよう。
 半径1000mの円柱領域で20m/sの強い下降流があったとする。この下降流が地面に衝突し、地面から100mの厚さで一様に放射状に広がっているとき、下降流の中心から2000mの地点での風は秒速何mと推定されるか。次の(1)〜(5)のつち、正しいものを一つ選べ。
 ただし、定常状態を仮定し、密度変化と地表摩擦は考慮しないものとする。

 (1) 20m/s
 (2) 50m/s
 (3) 80m/s
 (4) 100m/s
 (5) 120m/s 

 

  

 

解説:

 

 密度変化をしないとは、上面から入った空気が押し縮められて体積が変化することのないことを表し、また摩擦を考えないとは、地面との摩擦によって風速が変わってしまうことのないということを言っています。つまり、へんに難しく考えなくてもいいですよということです。

 

 

上面から入る空気

図のように、上面から20m/s の速さで一定量の空気が入ってきます。空気は1秒間に20m 進んできますから、ちょうど20m の高さの円柱状の空気が入ってくることになります。この円柱の体積を計算すると次のようになります。

円柱の面積 = 底面積 × 高さ  ← 底面積 = 半径× 半径 × π

      = (1000m × 1000m × π)×20m

      = (1000m × 1000m × π)×20m  ・・・(1)

 

 

側面から出ていく空気

 上面から流入した空気は、地面にぶつかると向きを変えて周囲に円を描くように広がっていき、そっくりそのまま側面から出ていくということになります。

上面から入ってくる空気の体積 = 側面から出ていく空気の体積  ・・・ (A)

ということです。
 この平べったい円柱の側面(上図では緑色で示しています)が“空気の出口”というわけです。問題文では側面の高さを100m としています。

 地面にぶつかった空気がまだそれほど広がっていないうちは、この“空気の出口”は小さい(側面積が小さい)ので、上から入ってきた空気を急いで側面から追い出さなければ間に合いません。ですから風速は非常に大きなものになります。

 地面にぶつかった空気がある程度周囲に広がり、平べったい円柱の半径が大きくなるにつれて“空気の出口”である側面積も大きくなっていきます。入ってきた空気の出口が広がったので、最初ほど急いで空気を側面から追い出さなくてもよくなります。つまり、空気が広がっていくにつれて風速は小さくなっていくのです。

 

問題では2000m 離れたときの風速を聞いていますが、周囲2000m にある側面からどれだけの空気が出ていくのかを示したのが次の図です。

緑色の側面を取りまいている水色のドーナツ型の体積が出ていく空気の体積です。このままでは計算しにくいので、ドーナツを延ばして直方体として考えます。

 

この直方体の厚さは、空気が空気が1秒間に広がる速さ? m/s ですが、?では数式を立てられないので v とおきます。直方体の高さは100m、直方体の長さは緑色の側面の円周なので、

円周の長さ = 直径 × π

      = (2 × 2000m)× π  ← 直径 = 半径 × 2

となり、以上から直方体の体積は、

(2 × 2000m)× π ×100 × v  ・・・ (2)

となります。

 

 

風速を求める

出入りする空気の体積がわかったところで、さきの(A)式に従って両者が等しいという式をたてます。

(1000m × 1000m × π)×20m = (2 × 2000m)× π ×100 × v

 これを v について解いてやれば、

v = 50 m/s

 

 

 答:(2) 

 

【類題】 第14回-問5 


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