【第3回・学科専門 問9】

 降水粒子の蒸発などによって冷気が生成されると、冷気の下ではメソスケールの高気圧が形成され、境界ではガストフロントが生じる。(a)〜(c)のような状況における冷気の下の気圧と周囲の気圧との差は(1)〜(5)のうちどれに近いか、(d)〜(e)を仮定して概算せよ。

(a) 冷気の上端の気圧は、周囲の同高度の気圧と同じで900hPa
(b) 周囲の地上気圧は1000hPa
(c) 冷気の気温Tc は、気圧によらず周囲の気温Tw より6℃低い

(d) 1000〜900hPaの間では空気の密度は気圧によらず一定としても誤差は小さい
(e) 周囲の空気の密度ρと冷気の密度ρ+δρの関係は、気温が約300Kであることから、
  δρ/ρ ≒ 6K/300K = 0.02

 (1) 0.5hPa  (2) 1hPa  (3) 2hPa  (4) 5hPa  (5) 10hPa

 

 

 

解説:

 何から手をつけていいのかわからないかもしれないという意味で、けっこう難しい問題だと思います。

 

静水圧平衡

鉛直方向では下の式で示されるような、重力と上下の気圧差によって生じる気圧傾度力とがつり合っているという静水圧平衡が成り立っています。

 g = -1/ρ・(Δp/Δz)
重力   気圧傾度力

問題文で与えられた条件を上の静水圧平衡の式に代入していきます(下の式中の赤字)。

周囲の空気:

g = -1/ρ・(100/Δz)  ・・・(1)   ← Δp = 1000 - 900 = 100hPa

冷気:

g = -1/(ρ+Δρ)・{(100+p)/Δz}  ・・・ (2)
                  
← Δp = (1000+Δp) - 900 = (100+Δp) hPa

(1)、(2)式を辺々割ると(= (1)÷(2)ということ)、

1 = ρ/(ρ+Δρ)・{(100+p)/100}

(ρ+Δρ)/ρ = (100+p)/100

1 + Δρ/ρ = 1+ p/100  ← 問題文より、Δρ/ρ = 0.02

1 + 0.02 = 1 + p/100

0.02 = p/100

∴ p = 0.02 ×100 = 2 hPa

 

 

 答:(3)   

 

  


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