その2 プレゼント暴力







■後日談■


「うん…だから、予算は3万円以内でなんとかなるよ」
普賢は、細かい数字とクッキーの原材料名のびっしりと書かれたメモ帳を望の前に広げて、そう説明を始めた。
「……殷氏殿に申し訳ないのう…」
「そうだね。でも、背に腹はかえられないもの。」
あの日、護摩壇にプレゼントを積み上げながら望がぼんやりとしていた頃、ナタクを連れ帰った普賢は、殷氏にあることを願い出ていたのだった。
「それにしてもよく引き受けてくれたものだのう…」
「その代わり、日曜日はしばらくあのお店でお手伝いだよ」
交渉はあっという間に成立した。
ふたりを小さい頃から見守ってきた商店街の大人たちならではの察しの良さで、望と普賢がホワイトデーのお返しに頭を痛めていることなど先刻承知といった風な殷氏は、普賢ができるだけ低予算でこの店のクッキーを大量購入したいという申し出を快く引き受けるどころか、殆ど原材料の実費だけで、特別な一品を作るとまで請合ってくれたのだった。
「殷氏さんのお菓子だったら、どこでお返し買うより喜んでもらえるよ、きっと」
だから日曜日は潰れちゃうけど、一緒に頑張ろうね、と普賢が言う。

ある日の午後、教室での作戦会議。
あの日の騒ぎが嘘のように、静かなざわめきに満ちた教室で、ふたりの話を聞いているものは誰もいない。







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