荒野のサイクリスト写真集
第二次チベット旅行編 Part.2
西チベットカイラスルート 聖山カイラス巡礼〜マナサロワール湖〜プラン
Holy Mt.Kailash - Manasarowar Lake - Puran / 1995 December
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聖山カイラスをバックに
アジアでも最も聖なる地カイラス山は、仏教徒・ヒンズー教徒・ボン教徒にとって、幾千年のながきにわたって巡礼の最後の目的地であった。敬虔なるチベット人は、数千キロの道を数ヶ月もかけて、この山の巡礼にやってくる。それは交通機関が発達した現在でも同じ事だ。試練を乗り越えた旅人のみが巡礼を許される。ここはあまりに遠い遥かな世界であった。
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98507028 カイラス巡礼の道
アジアでもっとも神聖なこの山には、歩いて一周する巡礼路がある。その距離は五十四キロあり、早いものは一日で巡る。一周で一生の罪を拭い去り、百八周で涅槃の境地に達するという。しかし厳冬期のこの時期は、チベット人の巡礼者もほとんどいない。自転車を僧侶の家に預かってもらい、巡礼の旅路へと犬を御供にして出発した。
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98507034マナサロワール湖
この湖にもまたカイラスと同じように歩いて一周する厳しい巡礼の道があるという。チベット人たちはこの回るという運動を非常に大切に考えており、小さいと、中にお経の入っているマニ車を飽きることなく回し続けている。中くらいだとお寺の周りを幾度も回り、大きな運動だとカイラスやこの湖の巡礼路を巡る。さらに特大だと輪廻転生の人間界を幾度も巡りながら回転している。しかし回転し続ける輪廻の思想は決して同じ所ばかり回っているわけではない。回転という運動は中心を創る事であり、そして回転しながら道は螺旋状に登ってゆく。それはいつか涅槃の極致に達する果てしのない道であるという。冬の今、湖の周りの巡礼路は雪に埋もれており通行することは出来なかった。
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チョーゴンパ寺院より日没近いカイラス山
陽が沈む直前の刹那、辺りは不思議なオレンジ色に包まれる。それは一日で最も美しい瞬間であり、時というサイクルの中で今日という一日の意義を認識するに十分の存在感をぼくに与えてくれる。それはほんの一瞬の出来事だけど、ぼくの魂が存在する限り消えてなくなることはないだろう。
ここチューゴンパ僧院の村には温泉が湧き出ていた。お湯に浸かるため一ヶ月ぶりに靴下を脱いで見ると足の指先が凍傷で膿んでいて、なんだか腐ったいちじくみたいにぐにょぐにょした。
98507036 マニの聖典
チベットの人々にとって仏教は生活そのもの。マニ石は仏教の経文が彫り込まれた石であり、寺や道脇の塚に並べられている。その言葉はオンマニペミフーンと刻まれており、仏の教えがすべて凝縮された聖なる呪文であるという。その経文が朝日の中で黄金色に輝き出す時、それは道行く旅人に仏の心を伝えようと優しく呼びかけているかのようだ。
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98507038 ナムナニ峰(海抜7694m)
酸素の薄い中での登り坂、粘土状の泥の道や粒子状の砂の道、石の道、雪の道、氷の道、そんな時、自転車は降りて押してもままならなかったりする。おまけにいったん向かい風が吹き始めると小石が飛んでくるぐらいチベットの風は徹底的だ。およそサイクリングをする以上、考えうるありとあらゆる困難をもってしてチベットの道はぼくの前に立ちはだかる。その代わり景色はすばらしい。大雪原の向うにヒマーラヤの氷の宝石が広がっている。
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98507041 ラカスタール湖
カイラス山の辺に二つの大きな湖がある。すなわちマナサロワール湖とラカスタール湖である。その湖岸は雪に覆われ凍っていたが、その神聖さゆえにこれらの湖が完全に凍りきってしまうことはないという。そのヒマーラヤの聖水を集めた水はあまりにも蒼い。多くの鴨がその静かな湖水の辺で戯れていた。
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まだ旅は続きます。プラン〜マユムラ峠〜サガ〜カトンマンズ編へ
Hiro Andow
Last Up Date : 2002/03/23.