14/09/2002 Ver.0.00e
20/01/2002 Ver.0.00d
22/06/2001 Ver.0.00c
01/06/2001 Ver.0.00b
07/05/2001 Ver.0.00a
01/05/2001 Ver.0.00
無断転載を禁ず


地球防衛軍

2.白色彗星戦争時

[技術的背景]
ガミラス戦役時、ヤマトが地球を飛び立った後の地球では、ガミラス型とイスカンダル型の波動エンジンの違いとその動作原理の解明、そしてタキオン波動物理そのものに関する研究が行われていた。冥王星基地とガミラス太陽系派遣艦隊がヤマトにより撃破され、ひとまずガミラスの直接の脅威は取り除かれた。ガミラスにしてみれば、他方面の戦線維持のための戦力維持で手一杯であり、移住予定先の地球の生命の根絶が1年後に確定している状況では太陽系方面への再度の大規模な艦隊戦力を投入する必要はなかったし、その余裕などもとよりなかったためガミラスが太陽系に新たな戦力を派遣することは無かった。しかし地球側にしてみればガミラスの目的と状況など知る由も無く、そのため、再び太陽系にガミラス艦隊が派遣されたときに備えて、ヤマトが帰還するまでの間、太陽系宙域防衛のための艦隊が必要であった。そのため、地球では、発電衛星を月軌道上に打ち上げてエネルギーを確保し、土星の衛星群から資源を採掘してひとまず地下生活を最低限のレベルで安定させ艦隊の再建に全力を注いだ。戦力の再配備に全てが優先されたため、一般市民への食料・エネルギーの供給は本当に生命活動に必要な最低限のものだった。生産施設の充実はもとより、技術面ではなによりも先ずタキオン波動物理の解明に重点が置かれた。ヤマトより送られた戦闘記録などの解析もあって、ヤマトの出発から半年ほどで、タキオン波動には右旋波と左旋波の二種類の旋波方向があり、前者が発散性を、後者が収束性を示すことが発見され、ヤマトの波動砲、衝撃波砲の強力な破壊力はこの左右両旋波成分の絶妙のバランスの産物であることが明らかになった。そして、この両旋波成分の混合に関する研究の結果、ヤマトの帰還の頃には拡散波動砲の基本原理は確立されていたのである。

拡散波動砲
拡散波動砲はタキオン波動に右旋波と左旋波があり、前者が発散性を後者が収束性を示すことからヒントを得て、開発された地球独自の究極兵器である。その原理は、薄い層状の左旋波タキオン粒子で右旋波タキオン粒子を包み込んだ2層構造のビームを形成することにより、タキオン波動ビームが一定距離を進行するうちに、左旋波成分と右旋波成分が相殺し、左旋波成分が右旋波成分の発散性許容臨界を越えた瞬間に、一気に発散性のエネルギーが開放され、タキオンビームは散弾のように飛び散ることになるのである。この二層構造のタキオン波動ビームを形成するために、拡散波動砲は同心円状の二重薬室とそれぞれの薬室に突入する同心円状の二重ストライカーボルトを装備していた。外側の薬室には、左旋波のタキオン粒子が注入され、内側の薬室には右旋波のタキオン粒子が充填され、それぞれ、ストライカーボルトによりタキオン進行波を誘起される様になっていた。
 拡散ビームがスプレー状の均一拡散を示さないのは、発散時に収束性の左旋波タキオン粒子が完全に相殺されてはおらず、残存左旋波タキオン粒子が右旋波のタキオン粒子をクラスター状にまとめる働きを示すためである。拡散点までの距離は右旋波タキオン粒子と左旋波タキオン粒子の混合比率により制御することが可能であるが、拡散点を遠方に設定した長射程での発射では、左旋波のタキオン粒子の比率が高くなり、右旋波タキオンとの相殺によるエネルギー損が大きいため、破壊力は低下してしまう。また、拡散波動砲では拡散後に目標へ到達する波動ビームは右旋波タキオンがほとんどを占めるためにタキオン波動は単純なものとなり、ヤマトの収束型波動砲にみられた強力な時空歪は発生しなかった。そのため、エネルギーが拡散していることと相まって、目標への打撃力はヤマトの収束型波動砲に較べて大きく劣るものとなった。しかし、それでも通常の艦艇に対する破壊力は十分であり、なおかつ拡散により広範囲の敵に大打撃を与えられることから、地球防衛軍では拡散波動砲を採用したのである。
 白色彗星への一斉射撃の際には、最大射程に近い状態で発射されたため、破壊力が不十分で中性子の高圧流を吹き飛ばすことが出来なかったのである。もしも、拡散点以前に彗星に命中するように発射されていれば、中性子流は消滅していたかもしれなかった。また、このビーム制御技術の延長として、右旋波のタキオン粒子のみを充填し発射した場合は、均一拡散のスプレー状の波動ビームを得ることが可能であるが、拡散が激しいために有効射程が極端に短くなり、スプレー状で使用されることはなかった。
 前述のように、この時代の拡散波動砲は薬室が二層構造になっており、右旋波と左旋波のタキオン粒子を混合して薬室に中注する機能は無く、あくまで、層状ビームの形成しか出来ず、ヤマト同様の収束型波動砲としての使用は不可能であった。また、左旋波タキオンはあくまで拡散点まで右旋波タキオンの発散を防ぐという役目しかなく、左旋波タキオン粒子充填用の薬室容量は単独発射には不足しており、強収束型(デスラー砲がこのタイプ)としての使用は不可能であった。さらに拡散波動砲用の同心円二重ストライカーボルトは内側の右旋波用は単独使用可能であったが、外側の左旋波用は単独での使用を想定されていなかったため、構造上も、強収束ビームの発射は不可能だったのである。
零式波動モーター(西暦2000年制式採用)
ヤマトがイスカンダルへの往復の旅路についていた1年の間に地球のタキオン波動工学は驚異的な進歩を遂げた。拡散波動砲は言うに及ばず、地球独自の技術として、左右両旋波成分を併用した小型の波動推進機関(零式波動モーター)が開発された。この波動モーターは簡単に言えばワープデバイスとタキオンジェネレータ、タキオンコンプレッサーといったタキオン粒子を捕集・生成し、波動エネルギーを生み出す部分を波動エンジンから取り除いたものといえる。波動エネルギーを自らの力で生成できないため、大型化されたタキオンエナジーコンデンサに圧縮蓄積されたタキオンを利用するようになっていた。タキオンの捕集・生成装置が無く、タキオンコンデンサバンクのタキオンエネルギーを使い切ったら新たにエネルギーの補充を受けなければならないが、ワープ用デバイスと並び波動エンジンにおいて容積・質量の大部分を占めるエネルギー生成機関を持たないことで、この波動モーターは構造が簡素で量産向きであり、また、軽量でコンパクトなものとなった。なにより、液体燃料による推進機関に比べて、高効率・高出力であったし出力の制御も容易であった。これは、左旋波と右旋波のそれぞれのタキオンコンデンサバンクを用意し、出力の急激な制御が必要なときは左旋波を使用し、エネルギー消費をできるだけ抑えたい巡航時には右旋波を利用するという技術が開発されたことによる。旋波の切り替えは容易ではなく、地球防衛軍の技術陣は数多くの失敗を経てようやく、両旋波成分が混在した場合、混合率の時間変化率に許容範囲があること、この許容範囲は混合率により変化すること、そして、左右両旋波が混在している状態からどちらかのみの旋波へと変化させるとタキオン波動が不安定になるため、旋波純度を99%以上には出来ないことが明らかになり、左右両旋波の混合率の細かな制御技術の開発を経て、波動モーターは実用に至った。前述のように小型で高出力・高効率の上、出力制御が容易であったことから、この推進機関は新開発の艦載機であるコスモタイガーIIおよび宇宙魚雷に採用された。
零式宇宙魚雷(西暦2000年制式採用)と零式宇宙魚雷速射管(西暦2000年制式採用)
波動モーターの実用化の目途がついたことを受けて、液体燃料を使用している通常ミサイルを波動モータへの置き換えが計画された。このミサイルは通常ミサイルと区別するため宇宙魚雷との名称が与えられた。波動モータの容積は液体燃料ロケットの3分の1と非常にコンパクトになり、しかも推力が大幅に増加し、ペイロードに余裕が生じ、宇宙魚雷はミサイルに比べて直径は1.25倍、全長は1.5倍と、大口径大型化された。その結果、敵のレーダーや赤外線による探知を避けるための電子欺瞞デバイスや冷却装置を搭載することが可能になり、宇宙魚雷はミサイルに比べてステルス性能が飛躍的に向上し、また、筐体の大型化により高精度の誘導装置の搭載も可能となり、命中精度も向上した。これらの装置を積載してもなお、炸薬量は通常ミサイルの約4倍を確保しており、破壊力は飛躍的に増大した。宇宙魚雷は発射直後から巡航に移るまでは加速のため左旋波タキオンを使用するが、巡航状態では右旋波を99%の比率で使用するようになっていた。左旋波タキオンは収束性を示すため、左旋波成分が30%以上含まれると、スラスターノズルから放出された左旋波タキオンは密集した状態で残存し、時空重力波レーダで捕捉出来る航跡を残してしまうが、右旋波のタキオンは発散性を示し、宇宙魚雷は巡航時には左旋波タキオンを1%しか使用しないため、スラスターノズルから放出されたタキオンは即座に拡散し、航跡はほとんど残らず、ミサイルと異なり、熱反応や時空重力波による零式宇宙魚雷の探知は事実上不可能であった。また、波動モータは高出力・高効率であるため、零式宇宙魚雷の巡航速度は通常ミサイルの2倍以上、航続距離は3倍以上となり、高いステルス性と相まって、零式宇宙魚雷を遠距離から大量に同時発射し、敵艦隊に打撃を与えるという戦術が確立され、この任務に水雷戦隊が充てられた。
  タキオン波動エネルギーは長期間の蓄積が不可能であるため、宇宙魚雷の発射には母艦から発射直前にエネルギーの注入が必要であった。このため、急速エネルギー充填能力を持つ速射型魚雷発射管が開発された。これにより、魚雷発射後、次弾を発射管に装填しエネルギーの注入が完了するまでの時間は約1分程度となり、短時間に大量の魚雷の投射が可能となり、水雷戦隊は高い戦場制圧能力を持つこととなった。

[艦艇]

ガミラス戦役時、日本に地球防衛軍司令部が置かれていた関係で、ガミラス戦役中からヤマトの帰還後も引き続き軍事技術の研究や宇宙艦艇の設計は日本において進められた。そのため、この当時の各クラスの一番艦(Name Ship)から1戦隊を構成するのに必要な最初の数隻は日本名がつけられる事となった。イスカンダルからもたらされた数々のテクノロジーはヤマトに用いられただけではなく、ヤマト出発後の地球防衛艦隊再建に生かされた。まず波動エンジンを搭載した護衛艦が建造され、ヤマト帰還までの地球防衛の中心を担った。護衛艦の成功を受けて、駆逐艦、パトロール艦、巡洋艦と順次関係を拡大し、最終的にはアンドロメダ級に至った。この時代の地球艦艇の特徴は拡散波動砲装備と脆弱な対空火力、強力に推し進められた自動化であるがそれらは必ずしも好結果をもたらしたとは言い切れないものであった。しかしながら、アンドロメダ級をはじめとして、この時代の地球防衛艦隊は後年の艦隊に比べて規模も大きく、計画のみに終わった航空母艦や防空駆逐艦も考慮に入れれば、戦力のバランスも取れており、打撃力、防御力ともに最強であったことは間違いない。

ヤマト
イスカンダルへの往復29万6千光年の旅を終えて地球に帰還したヤマトは、1年間の絶え間ない、度重なる戦闘のため、艦体のいたるところにダメージを受けていた。そのため、帰還後直ちに地下ドックで全面的な補修・整備が施された。この際に、波動砲を拡散波動砲に、主砲を今後の戦艦クラスの標準である40cm砲に換装し、コンピュータを高性能化することでアンドロメダ同様に全自動化し、アンドロメダ就役までの艦隊旗艦として使用することも検討されたが、このような大改修には、準備期間も含めて半年以上かかること予想された。アンドロメダ就役がヤマト帰還から1年後を予定されており、それまでの間ヤマトがリリーフ役として半年も働けないのであれば大改修は無意味であるとされ、ヤマトは必要最小限の整備・改修を施し、万が一の戦力不足時の予備戦力として動体保存し、平時は記念艦として一般公開することとされた。ただし、波動砲については、拡散波動砲の採用を見送った代わりに、タキオン波動工学の進歩の結果である旋波成分の制御による波動砲弾の収束性制御機能が付加されることとなった。改修計画の最終決定前に行われた精細な調査の結果、ヤマトのダメージは半端なものではなく、実に装甲板の90%、船体内部構造材の40%、そして波動エンジンの30%もの部分が「交換の必要あり」、と判定された。そのため、装甲板はすべて最新技術で製造されたより強度の高いものに換装され、船体構造材についても、約半分が新型でより軽くより強度の高いものに改められた。波動エンジンについても、完全にオーバーホールが施され、新エンジンを搭載したのと変わらない性能を発揮できるようになった。また、艦載機の搭載スペースも新型機のコスモタイガーIIにあわせて拡大・改修された。コンピュータについても中央演算部はより高速のものに積み替えられた。居住設備についても1年の航海の経験から、各部の不都合を改修し、より快適なものになるように改修が施された。これらの整備の結果、外観は全く変わっていないものの、居住性の向上や、装甲板の性能向上により、潜在的なヤマトの戦闘力は大きく向上した。
護衛艦(松級 代表的同型艦:松、樫、楓、椛、桃、梅、橘、桧、杉、楢 など )
プロトヤマト、ヤマトの成功を受け、ヤマト出発から約半年を経て、ヤマトの波動エンジンを小型化し、小型の波動砲を装備した3600tクラスの護衛艦が設計された。この実験艦とも言える護衛艦の一番艦は進水し儀装が終了すると直ちに各種試験が行われ、波動砲を除いて良好な性能が得られた。護衛艦はヤマトと同じ収束型の波動砲を装備していたが、機関出力の不足のために薬室内のエネルギー密度がタキオン進行波の励起臨界に達していなかった。そのため、護衛艦の波動砲エネルギー弾はストライカーボルトにより与えられた運動エネルギーにより前方へ進行するだけのものであり、波動砲というよりはむしろ大型衝撃波砲と言うべきものであった。
  このクラスの艦艇が実際の戦闘で波動砲を使用する頻度は低いと予想され、また、この大型衝撃波砲ですらヤマトの主砲クラスの衝撃波砲よりもはるかに強力な破壊力を有していたことから、艦首小型波動砲(大型衝撃波砲)は2番艦以降にも採用されることとなり、試験運用で明らかになった細かな改修を加えて護衛艦は量産されることとなった。波動エンジンの装備と、衝撃波主砲の採用により、この護衛艦ですら、以前のMシリーズ(M-2174やM-2188)に比べてはるかに高性能で、ガミラスのデストロイヤークラスであれば十分に太刀打ちできる能力を有していた。ヤマトの出発後、冥王星基地を制圧したとはいえ、いつまた新しいガミラス艦隊が配備されるかわからず、護衛艦群はヤマト帰還まで地球防衛の要であった。ヤマト帰還後、地球艦隊再建が軌道に乗ると、続々と就役する新鋭艦艇に較べて護衛艦は劣速で武装も貧弱であったため、新鋭艦と艦隊行動をともにすることは困難になった。そのため、白色彗星戦役時には既に護衛艦は主として太陽系内の資源運搬のための輸送船団の護衛に使用されていた。
駆逐艦(雪風級 代表的同型艦:雪風、吹雪、白雪、Devonshire、Sheffield、Glasgow、Coventryなど)
再建後の地球防衛軍の艦艇は衝撃波砲を主砲として装備していたが、時空衝撃波は逆位相の時空振動により破壊力が激減してしまうことが判明していた。逆位相の時空振動を装甲板表面に励起することは容易ではないために、対衝撃波装甲を装備した敵艦が出現する可能性は低いと考えられていたが、原理的には衝撃波砲弾対策が可能である以上、対衝撃波装甲に対抗できる兵器が必要とされ、実体弾兵器として零式宇宙魚雷が開発された。そして、敵艦に魚雷の大量投射を行うことを任務とした艦種、駆逐艦が設計された。駆逐艦は宇宙魚雷を主要兵装としており、波動砲は装備されていなかった。波動砲を装備しないことにより生じた艦内スペースは宇宙魚雷の積載スペースに当てられた。また、波動エンジンそのものにもより多くの空間を与えることが出来、大型で高出力な波動エンジンが積載された。これにより、地球防衛軍艦艇の中で最速の性能を有することとなった。前述のように波動モータを採用した零式宇宙魚雷は驚異的な性能を有しており、これを主要兵装とした駆逐艦は長距離からの隠密投射だけでなく、艦隊一の高速を生かして敵艦へ肉薄・魚雷投射という水雷戦隊本来の戦術も得意とした。しかしながら、対艦戦闘、特に魚雷戦に特化したため対空性能はそれほど高くなく、あくまで艦隊決戦型の駆逐艦であり、航空母艦や戦艦の防空直衛艦としては能力不足であった。この点が反省され、次世代の駆逐艦として対空性能を高めた防空型が生まれることになったが、それについては別項で説明する。
パトロール艦(阿賀野級 代表的同型艦:阿賀野、矢矧、夕凪、Atlanta)
零式魚雷速射管を装備した駆逐艦による水雷戦隊構想の実現には、強力な通信設備と情報処理能力による戦隊指揮能力を有した艦種が必要とされ、23500tのパトロール艦(軽巡洋艦)が設計・建造された。搭載主砲は60口径15cm砲が採用された。当初は60口径20cm砲を搭載する予定で設計が行われたが、高速機動の可能な駆逐艦と行動を共にする必要からエンジン出力の推力への分配率が高くなり、火器へ分配できるエネルギーが減少すると予測され、船体設計はそのままで、主砲のみが衝撃波の発生に必要なエネルギーが少なくて済む15cm砲に変更された。軌道砲撃にも使用できる20cm砲の搭載は軽巡洋艦の後に設計される予定の重巡洋艦に搭載することとされた。そのため、艦体は20cm砲を搭載している巡洋艦(重巡洋艦:足柄級)とそれほど変わらないものとなっている。初期に建造された艦のうち、第2グループの最上、三隈、鈴谷、熊野の4隻は20cm砲搭載時のデータ収集の意味もあって、実験的に当初の予定通りの20cm砲を搭載していた。そのため、この4隻は最上級や改阿賀野級(本来は、阿賀野級が改最上級なのだが)として阿賀野級と区別されたり、軽巡洋艦と分類されることもある。
  実際には発射速度の低下以外には20cm砲搭載で問題が生じることは無かったが、15cm砲の方が発射間隔が短く、駆逐艦など高機動の敵に対しては15cmの方が有効であると判断され、この艦種は15cm砲を搭載することとなった。阿賀野級は強力な探知能力、電子戦能力、そして通信設備を有していたため、艦隊決戦用の水雷戦隊の旗艦として用いられるよりも、駆逐艦と共に哨戒任務に就く事が多く、このクラスの艦種(25000t未満、15cm以下の主砲搭載)は当初の「軽巡洋艦」ではなく、「パトロール艦」という分類名(艦種名称)が使用されることとなった。これに伴い、巡洋艦を「重」「軽」に分ける必要が無くなり、重巡洋艦とされていた艦種(25000t以上40000t未満、20cm以上30cm未満の主砲搭載)は、単に巡洋艦と呼ばれることになった。
  なお、再建後の地球防衛軍日本艦隊の艦名の慣習では、「夕凪」は駆逐艦にあてられるべきものであり本来は「夕張」と命名される予定であった。しかしながら当時の地球防衛軍日本工廠の担当主計官がアメリカから研修のために派遣された日系人であったため、北海道の河川名である「夕張」を知らず、語感の似た「夕凪」と誤認してデータ入力したため、そのまま「夕凪」と命名されてしまったのである。2200年代には、20世紀の戦争時の日本軍艦艇の命名則を知る者は日本に生まれ育ったもののうちでもごくわずかであり、この誤りに気づくものはなく、進水式で「夕凪」の名を耳にして初めて数人が間違いに気づいたのみであったが、既に命名・進水した後では手遅れであり、そのまま「夕凪」とされた。夕凪は阿賀野級の三番艦であったが、進水は一番早く、軽巡洋艦クラスの最初の進水式であったことから、艦名は進水式において命名されるまで公表されなかったことも、訂正の機会を失った理由の一つであった。報道陣が殺到する中盛大に「ゆうなぎ」と命名してしまった以上、それを変更することは現実的ではなかった。そんな経緯もあって、「夕凪」はある種お荷物的存在となり、軍上層部の官僚的発想から白色彗星戦役時には地球から遠ざけておくために太陽系外周の哨戒という閑職に追いやられていたのである。
巡洋艦(足柄級 代表的同型艦:足柄、那智、妙高、羽黒、Sharnhorst、Gnaizenau)
敵艦隊との砲撃戦において、主要な打撃力となるのは戦艦クラスであるが、この戦艦に対して高速で肉薄しミサイル(もしくは魚雷)を浴びせる駆逐艦を排除し、また、敵主力艦に肉薄して砲雷撃を加え、敵惑星基地への軌道砲撃にも使用できる強力な砲撃力と雷撃力、そして駆逐艦の砲撃をものともしない防御力と駆逐艦に匹敵する高速力を備えた艦として、足柄級重巡洋艦が計画された。軽巡洋艦(パトロール艦)に比べて、レーダー・センサー類が必要最低限のものに減らされたことにより、これらのセンサーの情報処理コンピュータが不要になり、代わりに司令部施設が設置された。さらに、船体が一回り大型化したことにより、波動エンジン出力も向上し、20cm砲へのエネルギー供給問題も解決された。計画時には巡洋艦は、水雷戦隊旗艦としての軽巡洋艦(阿賀野級)と、水雷戦隊旗艦としての能力はもちろんのこと戦艦に代わって艦隊指揮の可能な司令部能力も有した重巡洋艦(足柄級)の2つに分類されていたが、軽巡洋艦は竣工後に偵察哨戒任務に最適であると認識され、分類名が「パトロール艦」に変更された。この変更後に足柄級の一番艦、足柄が竣工したので、本級は単に巡洋艦と称されることになった。本級は軌道砲撃時に十分な破壊力を発揮できる20cm衝撃波砲を主砲として25000tの艦体に搭載し戦艦よりも高速で拡散波動砲を装備した上に、零式宇宙魚雷速射管を装備するという非常に高性能でバランスのよい巡洋艦となった。ただひとつの欠点は、この時代の地球防衛軍艦艇に共通の対空砲火の貧弱さが挙げられるが、これも、防空駆逐艦、防空巡洋艦が艦隊に配備されていれば本来は問題とならないレベルであった。巡洋艦は、護衛艦、駆逐艦、パトロール艦と順に艦型を大型化させて蓄積したノウハウ、技術が一気に開花したものとなり、この時代の地球防衛軍艦艇の傑作といえる。劇中においては戦艦や空母の陰に隠れて目立たなかったが、防空戦闘や敵艦隊との砲雷撃戦などあらゆる任務に駆り出されており、万能ゆえに目立た無かったが、地球艦隊に無くてはならない存在であった。
主力戦艦(長門級 代表的同型艦:長門、陸奥、金剛、比叡、榛名、霧島、Misouri、Wisconsin、Bismark)
巡洋艦の大成功により、50000tクラスの大型主力艦が計画された。ガミラス戦役におけるヤマトの戦闘経験から、波動砲を高く評価した地球防衛軍は波動砲の一斉射撃による敵艦隊の殲滅を基本戦術とした。新開発の拡散波動砲はこの戦術に大いに貢献すると思われた。敵艦隊との砲撃戦および拡散波動砲のプラットフォームとしての役目を果たす艦として主力戦艦が建造された。拡散波動砲の一斉射撃という戦術を取るために、主力戦艦は細かな改良が加えられつつも全艦基本設計・基本性能は同じであった。これは他の艦種についても同様であった。またヤマトが搭載していた艦載機のCAPにより敵艦載機に対する防御力が格段に高かったことを踏まえて、主力戦艦にも艦載機の搭載能力が与えられたが、白色彗星戦争時はまだ艦載機搭乗員の養成中であり、艦隊旗艦のアンドロメダは別として、主力戦艦のほとんどが艦載機を搭載していなかった。ヤマトの主砲は45cm衝撃波砲を採用していたが(一説には46cmとも言われている)、45cm級の主砲は主砲弾の相互干渉が激しく、主砲の制御には砲撃手の経験による微調整が必要であった。主力戦艦では火器管制の自動化を大幅に進めたため、人間による微調整が必要な45cm砲の採用は見送られ、弾道計算の容易な40cm砲が採用された。
  ヤマトの対空火器は非常に強力であったが、白色彗星戦時の地球防衛艦隊の戦術では主力戦艦が若干の随伴艦と共に小規模艦隊で行動することは想定されておらず(それは巡洋艦の任務とされた)、単艦行動をとるヤマトのような重対空防御は主力戦艦には不要と判断され、艦隊における対空戦闘は駆逐艦の担当とされた。主砲がコンピュータの演算能力の制限から40cm級に制限されたのと同様に、対空火力の火器管制に振り分けが可能なコンピュータの演算能力には上限があった。そのため、主力戦艦の対空火器は非常に貧弱であり、駆逐艦による防御弾幕を抜けてきた艦載機に対しては非常に脆弱であった。実際、土星宙域での戦闘では敵艦載機の襲撃によりかなりの数の主力戦艦が撃沈されている。次世代の主力戦艦は対空兵装の強化が図られたが、高速で数の多い航空機を標的とした火器完成の自動化は容易ではなく、火器完成の完全自動化に固執していた地球の設計思想により、結局、歴代の主力戦艦は最後までヤマト並の対空兵装が装備されることはなかった。
超大型戦艦(アンドロメダ級 代表的同型艦:Andromeda, Magellan, Galaxy, Milkyway)
ヤマトの帰還後、地球防衛軍艦隊の旗艦として、ヤマトを超える能力を持つ超大型戦艦の設計が開始された。ガミラス戦役中に既に拡散波動砲の実用化の目途はついており、これを装備した超大型戦艦の基本設計はヤマトの帰還前に既に開始されていた。この超大型戦艦は護衛艦から主力戦艦まで順に艦型を大型化し蓄積されたノウハウの全てが注ぎ込まれた。50000tの主力戦艦の艦型をほぼ倍の排水量の98000tにまで大型化した船体に、艦隊最高出力の波動エンジンと艦隊で最高の演算能力を持つコンピュータが搭載され、主砲には三連装40cm衝撃波砲塔を4基、12門装備された。超大型戦艦は艦隊最高出力の波動エンジンを得たことで二連装の拡散波動砲に同時にエネルギーの充填が可能になり、また、主砲の発射間隔も短縮されて高繰り返しの一斉射が可能となり(主力戦艦は30秒間隔、ヤマトは20秒間隔、超大型戦艦は15秒間隔)、砲撃力は砲門数の増加以上に強化された。高繰り返しの主砲射撃には高速照準が必要となり、それを実現するためにはコンピュータの演算能力の向上が必須であった。また、本級は当初から艦隊旗艦として設計され、艦隊所属の全艦から送られたデータを解析し各艦に解析データと行動指令を送信する能力(データリンク能力)が与えられた。このデータリンクシステムにより場合によっては艦隊の他の艦艇の火器管制も受け持つことも可能であった。これらの莫大な量の演算は、船体の大型化によりコンピュータの演算能力が飛躍的に増大したことにより可能となった。逆に言えば、必要とされる艦隊旗艦能力と火力の増大に必要なコンピュータと波動エンジンの搭載スペースを確保した結果、98000tの船体が必要となったのである。本級ではヤマトと同じ45cm砲の搭載も可能であったが主砲弾の相互干渉が激しく自動照準に必要なコンピュータの演算能力が著しく増大し、射撃間隔が増大してしまうこと、そして、データリンク時に主力戦艦との主砲照準データの共有が出来ず、自動化の効率が低下してしまうことを嫌い、主力戦艦と同じ40cm砲が採用された。
  本級以前に設計された艦艇は建造した地域(地球連邦成立前の各国家)の海軍の艦艇命名の慣習に沿って命名されていた。しかし、本級は、目覚しい復興を遂げた地球のシンボルとして建造され、また、地球上の地域エゴを排除して、「地球のみならず宇宙の平和を維持する」という決意を示すことから、宇宙にちなんで命名することとされ、一番艦 "アンドロメダ"、二番艦 "マゼラン"、三番艦 "ギャラクシー"、四番艦 "ミルキーウェイ"、とされた。白色彗星戦争時には一番艦のアンドロメダのみが竣工しており、他は建造中であった。これら三隻は白色彗星戦役後に完全自動だけでなく、手動制御も可能なように設計変更された後に相次いで進水、竣工した。しかし、白色彗星戦役に加えて、その後の数度の戦役による人員の消耗が激しく、人的資源の再建が問題となった地球防衛艦隊にとっては有人大艦隊の編成は不可能であり、艦隊戦力の大部分を無人艦に負う事となった。無人艦隊中心の艦隊編成においてはアンドロメダ級は必要ではなく、有人大艦隊が再建できる時まで地下ドックで動態保存されることとなった。結局、ディンギル戦役でヤマトが没した後、5年余りを経てようやく艦隊再建が成り、これら三隻が艦隊に再編入されることとなった。そのため、暗黒星団帝国戦役、ガルマン-ボラー銀河戦争、ディンギル戦役のいずれにおいてもアンドロメダ級が
使用されることは無かった。ヤマトは別格として、アンドロメダ級が地球の建艦史上、最もバランスの取れた最強の戦艦であったにも関わらず、白色彗星戦役の後、劇中においてアンドロメダ級が登場しなかったのはこのためである。
  アンドロメダ級ではヤマトと同様にプロトタイプの試作艦が建造されている。このプロトアンドロメダは完全自動化と二連拡散波動砲のテストのために建造された。そのため艦隊司令部施設は有しておらず、船体はアンドロメダ級と同じであったが、艦橋は主力戦艦のものが流用された。二連拡散波動砲のテストは良好であったが、火器管制と戦闘航行の自動化プログラムには問題があることが明らかになった。しかしこの問題も、戦闘経験のデータベースが充実すれば解決できるとの結論が得られ、戦闘データの収集のため、地球防衛軍の各種艦艇との単艦同士の戦闘、集団戦闘等各種の演習が行われた。もちろんヤマトもその戦闘能力を買われて演習に参加したが、ここで地球防衛軍の首脳部は致命的なミスを犯してしまった。ヤマトにガミラス戦役時の乗組員を集めなかったのである。これは防衛軍の上層部の一部が地球の復興の方向性や防衛軍の再建方針に何かと否定的な旧ヤマト乗組員を一堂に集めることを嫌ったという、多分に政治的な理由ではあった。これにより、プロトアンドロメダとの模擬戦闘においてヤマトは本来の戦闘能力を発揮することは無く、アンドロメダクラスはヤマトの真の能力をデータベースに取り込むことが出来なかったのである。
  プロトアンドロメダとしての役目を終えた試作艦は、日本のドックが全て塞がっていたために、中国地区の新造ドックでアンドロメダ級5番艦(銀河)として全面改造されることとなり、白色彗星戦役の直前に起工された。しかしながら、前述のように白色彗星戦役後はアンドロメダ級は必要とされず、70%以上完成していた4番艦まではそのまま建造が継続されたが、5番艦銀河は建造途中で作業が中断してしまった。その後、ガルマン・ガミラス−ボラー戦役時に第2の地球の探査が各地区(21世紀の国家に対して、23世紀では小国家やヨーロッパ諸国が連合自治体を形成し、21世紀の大国は周辺国と地域共同体を成立させていた)で分担して行われることとなった。この際に、銀河は中国地区政府に貸与され、中国地区政府による改装をうけて "しゅんらん"として甦ったのである。
航空戦艦(伊勢級 代表的同型艦:伊勢、日向、Lexington)
ガミラス戦役時に、ドメル艦隊との交戦でヤマトは艦載機により甚大な被害をこうむった。この七色星団決戦の戦訓として、敵艦載機の攻撃に対する防御力として艦載戦闘機による制空能力と、艦載機による敵艦隊への空襲能力が地球防衛艦隊にも必要とされた。敵艦隊への空襲能力を持つには、多数の艦載機の運用を可能にする全通甲板を有した艦隊型空母が必要であった。一方、艦隊直衛の戦闘機の運用だけであれば、全通甲板の艦隊型空母でなくとも可能であることから、艦隊型空母の建造前に、艦載機運用の試験も兼ねて、主力戦艦をベースに航空戦艦が設計された。この航空戦艦は主力戦艦の後半部の武装を取り去って後方に船体を延長して確保したスペースを艦載機の格納庫とし、その上に飛行甲板を設けるという案が採用された。この設計が完了したのは白色彗星戦役の直前であったが、白色彗星艦隊に強力な航空戦力が存在することが確認されたために、航空戦艦建造計画は戦時艦隊整備計画の最優先課題とされたこと、そして、主力戦艦の設計を流用したことから既存の主力戦艦用の船体の前半ブロックや儀装品などがそのまま流用でき、この航空戦艦の建造は短期間で可能になった。計画では10隻の航空戦艦の建造が予定されていたが、土星会戦までに完成したのは伊勢、日向、Lexington の三隻のみであった。
  この航空戦艦は戦闘機のみの場合はコスモタイガーIIの単座型ないしは三座型を4飛行小隊(18x4=72機)、攻撃機を搭載する場合は1飛行小隊分の積載スペースに航空機用の弾薬を格納するために1飛行小隊分減じられて、3飛行小隊(54機)の搭載・運用能力を有していた。土星会戦時には、雷撃型が3飛行小隊ずつ搭載されていた。白色彗星戦役時の航空戦艦の運用実績は予想以上であり、本来なら本級の増産と、全通甲板を有する艦隊型空母の建造が開始されるべきであったが、白色彗星戦役における航空機戦力、とりわけ艦載機パイロットの喪失は激しく、空母と艦載機という ”モノ” をいくら作っても、箱に入るべき搭乗員の訓練は簡単ではなく、時間を要する事から、空母の建造は一時休止されたのである。結局、アンドロメダ級の再配備と同様に、航空戦艦の再配備はディンギル戦役後5年を待たなければならなかったのである。
超弩級戦艦(改アンドロメダ級 :アンドロメダIIのみ建造)
白色彗星戦役において明らかになったアンドロメダ級の火器管制と戦闘航行の完全自動化に起因する問題点、(1)直接艦を制御するのに必要な十分な数の乗員が配置されておらず、手動制御がきないために一度コンピュータに重大な障害や損傷が生じるとアンドロメダ級は簡単に戦闘力を失ってしまう点、(2)コンピュータのデータベースにある戦闘パターン以外の行動は取れないために、あらかじめ想定された以外の状況への対応が不可能である点、を改善するために、コンピュータによる完全自動化モードに加えて、コンピュータが人間を補助する半自動モード、そして、完全手動モードも有した改アンドロメダ級が計画、建造された。この改アンドロメダ級の主砲には50口径の長45cm砲が採用され45口径のヤマト主砲を超える破壊力を有していた。この主砲は砲塔内に砲手を配置せず自動化したために、砲塔のスペースに余裕が出来、4連装砲塔が採用された。改アンドロメダ級はアンドロメダ級が有していた艦隊司令部能力を与えず、これによりコンピュータが小型化され、4連装主砲塔を4基装備しながらも船体はアンドロメダ級よりも小さい78000tに抑えられた。45cm砲の弾道計算は容易ではなく、自動化に際して照準速度の低下が生じたが、搭載砲数を合計16門と増大させることにより、発射速度の低下を砲門数で補うという考えが採用された。しかしながら、45cm長身砲16門の一斉射撃の衝撃は設計時の予想よりもはるかに大きく、ヤマトよりは大型とはいえアンドロメダ級よりも小型化された船体でこの衝撃を吸収するのは困難であり、結局、一斉射時の船体の動揺が大きすぎるために8門ずつの斉射を強いられることとなり、照準速度の低下を砲門数の増加で補うことは出来なかった。結局、改アンドロメダ級は数値の上では地球史上最強であったが、実戦力としてははなはだ中途半端な艦となり、当初計画されていた2番艦以降の建造は中止されてしまった。結局、40cm砲でも十分な破壊力を有していることから、改アンドロメダ級以後、40cmを超える主砲を装備した地球の艦艇が建造されることは無かった。
  なお、本級はアンドロメダを超える攻撃力を持ち、アンドロメダが"ド"の字を名前に持っていることから、日本語では20世紀の用語である「超弩級戦艦」が本級の艦種名に用いられている。英語では単に "Super Heavy Battleship" と呼ばれているが、日本名にちなんだ、"Super D class" や "Super Andromeda class" と称される事もある。  
主力空母(翔鶴級 代表的同型艦:翔鶴、瑞鶴、エセックス、インドミタブル)
艦隊直衛の制空戦闘機の運用は航空戦艦で可能であったが、敵艦隊を攻撃できる航空戦力の運用には艦隊型の大型空母が必要であった。七色星団でのガミラス機動部隊との戦闘で艦載機による空襲が強力な打撃力を持つことは証明されていたので、地球防衛艦隊でも艦隊型の大型空母と航空戦力の整備が艦隊再建計画の一部として計画された。そのため、コスモタイガーIIは最初から基地機(陸上機)としての運用の可能な艦載機として開発された。艦隊再建計画において主力戦艦が次々と竣工する頃には既にコスモタイガーIIの単座型と複座型が量産を開始し、月面基地においてヤマトのブラックタイガー隊員を中心とした教導飛行隊が編成され、空母戦力を担う艦載機パイロットの養成が開始されていた。
  肝心の空母は巡洋艦の船体をベースにした小型空母とアンドロメダクラスの船体をベースにした大型空母の設計が開始された。大型空母はアンドロメダの船体をベースとしたことで船体そのものの耐久力は非常に高く、また船体が大型であるために7飛行隊(18x7=126機)と予備機7機の合計133機の搭載と運用が可能になり、非常に強力な打撃力を有することになった。地球防衛艦隊では、戦闘機、戦闘攻撃機、雷撃機それぞれ2飛行隊の計6飛行隊で1戦隊の航空戦力として運用することを想定していたので、大型空母は1戦隊の航空戦力と直衛用の1飛行隊を一隻でまかなうことが出来るという非常に強力なものであった。また航空機を大量に運用することから、万能自動工作機も装備され、損傷機の修理や喪失機の補充を自力で行えるようになっていた。搭乗員さえ失わなければ、資源補給艦から資材の補給を受ける限り、搭載機から弾薬、燃料に至るまで全ての消耗品が艦内で生産可能であり、無限に戦闘力を発揮できるという驚異的な空母であった。この万能自動工作機は、他には、長距離単独航行用の戦艦であったヤマトにのみ装備されていたものであり、大型空母は完成すればまさしく「移動基地」となる強力な能力を有していた。
  この艦隊型空母は、6隻の建造が予定されていたが、起工準備段階で白色彗星戦役が始まり、計画は中断された。白色彗星戦役後は地球艦隊を常に悩ませた慢性的な人材不足により艦載機搭乗員の確保が困難であることから、空母戦力が整備されることは無く、艦隊型空母は結局、計画のみの未成艦となってしまった。
小型空母(エンタープライズ級 代表的同型艦:エンタープライズ、ヨークタウン、蒼龍、飛龍、アークロイヤル)
艦隊型の大型空母が計画されたが、それだけでは航空戦力の運用に柔軟性を欠くことが予想されたため、小型空母の建造も計画された。小型空母は巡洋艦の船体をベースにし、4飛行隊(18x4=72機)と予備機8機の合計80機を搭載し、2隻で1飛行戦隊と直衛2飛行隊の運用が想定されていた。本級2隻と大型空母1隻で2飛行戦隊を運用し、1航空戦隊を構成する予定であった。本級は北米に整備された第2工廠で設計が進められ、大型空母と同様に白色彗星戦役の直前に起工準備が開始され、1,2番艦の EnterpriseとYorktownは北米で建造される予定であり、日本以外で初めて建造される1番艦となるはずであったが、白色彗星戦役のために計画は中断され、その後も計画が実現することは無かった。

[航空機]
小型で高出力の上、エネルギー効率の非常に高い波動モータが開発されたことを受けて、これを推進機関として使用した宇宙/大気圏両用航空機が開発された。液体燃料を使用していたブラックタイガーやコスモゼロですらガミラスの航空機に対して優勢であったのであるから、波動モータを使用した新型機が優秀でないはずが無く、実際、白色彗星戦役からディンギル戦役までの対異星文明戦争期をとおして、いかなる敵航空機よりも高性能であった。
  新型機は、先ず最初に単座の戦闘機型が、次に三座の戦闘攻撃型が、そして最後に雷撃型が開発された。また、コスモゼロも、試験的に推進機関を液体ロケットから波動モータに換装した改良型が試作され、そのうちの数機がヤマトに試験的に配備されていた。

コスモタイガーII 戦闘機(単座型)
艦載機に搭載可能な小型で高効率の推進機関、零式波動モータの開発により、地球防衛軍は艦載機の新規開発に着手した。液体燃料型の艦載機でも充分にガミラスの艦載機と戦えるだけの性能を持つものを開発できていたので、推進機の性能の飛躍的な向上により、新型機は卓越した性能を持つことが期待された。はたして、新しく開発された戦闘機、コスモタイガーIIは予想通りの高性能な機体に仕上がった。エンジン出力の向上により、ペイロードに大幅な余裕が出来、ブラックタイガーでは不可能だった対艦/対地攻撃用のミサイル、姿勢制御スラスター推進材用増槽の装備が可能になった。この新型機はコスモブラックタイガー(ブラックタイガーの正式名称)の後継機であることから、コスモタイガーIIと命名された。
コスモタイガーII 戦闘攻撃機(三座型)]
波動モータが驚異的な高性能を示し、航空機の推進機関として使用した場合には、十分なペイロードが期待できることから、コスモタイガーIIの計画段階で単座方の派生型として、三座型の攻撃機が設計された。単座型では索敵や対艦・対地攻撃時の照準作業が十分に行えないため、航法手兼爆撃手席が操縦席の後方に設けられた。この攻撃機タイプは対艦攻撃や地上攻撃を主任務とすることが想定されており、爆撃コースに入った後に無防備になることを防ぐために、機体後部に旋回銃座を設け、機銃手が配され、三座型として設計された。波動モータが十分な推進力を持っていたため、銃座の追加と搭載爆弾の増加による機体重量増加もそれほど問題にならなかった。また単座型の増槽マウントポイントを爆弾などの兵装も搭載できるように改修が施された。空戦性能は単座型には劣るものの、それでも十分な性能を有しており、制空戦闘機としても十分に使用できたため、艦隊航空戦力の中核を担う機体として期待されたが、実際には搭乗員不足の問題から実践配備はあまり進まず、白色彗星戦役時には、わずかに月面基地の教導航空隊に配備されていたのみであった。
コスモタイガーII 雷撃機
艦載機により敵艦隊を空襲するにあたって、コスモタイガーIIの単座型と複座型では小型の対艦ミサイルしか搭載できないため、大型艦艇に対する決定的な打撃力の不足が予測された。そのため、新しく開発された零式宇宙魚雷を艦載機用に改造・小型化し、これを搭載して敵艦に投射できる機体、雷撃機、が設計された。機体はコスモタイガーIIをベースにされたが、艦載機用に小型化されたとはいえ航空機用宇宙魚雷は航空機搭載用対艦ミサイルに比べて十分に大きく、そして重かったため、機体はこれに合わせて大規模な改修が必要となった。魚雷を搭載したままで高機動ができるように、機体各所には補強が施された。また、魚雷の照準投射時には敵艦の対空機銃の射撃を受ける可能性が非常に高いために、機体外板の厚みをコスモタイガーIIの倍として表面の対光学兵器用のコーティングもその厚みを3倍にして、耐弾性の向上が施された。また、機体下部は魚雷の搭載のために完全に新設計となった。雷撃機の機体が鈍い茶色に見えるのは、この従来よりも厚いコーティングによる。攻撃機と同じく雷撃機も操縦士、航法・雷撃手、機銃手の三座とされた。この雷撃機もベースが傑作機であるコスモタイガーIIであった事から、十分な空戦性能と驚異的な航続距離と残存性を発揮した。白色彗星戦役時には、戦役末期にようやく搭乗員の訓練が完了し、就役したばかりの航空戦艦に9飛行小隊(18x9=162機)が配備されたのみであった。白色彗星戦役後は搭乗員不足から、雷撃機よりも戦闘機の搭乗員の養成が最優先とされ、空母戦力の整備計画が無期限に延期された。そのため、白色彗星戦役後は地球防衛軍艦隊に雷撃機が配備されることはなかった。

[艦隊編成]
日本人中心の防衛軍組織 --- 地球防衛軍の日本艦隊はガミラス戦役における人的被害が他の地域の艦隊に比べて比較的軽微であったため(あくまで相対比較であり、損害自体が甚大だったことには変わりなかった)、各地域にあった宇宙戦士士官学校は日本に再建統合された。そのため、再建地球艦隊の中心は日本艦隊の人員が担っていた。宇宙戦士士官学校が日本に統合されたため、初期の入学生は日本出身者が多く、ガミラス戦役の生き残りも日本出身者が多かったことから、ガミラス戦役後しばらくの間は日本出身者が地球防衛軍艦隊の主要ポストにつくことになった。

波動砲神話と大艦巨砲主義 --- ガミラス戦役においてヤマトが波動砲により幾度も絶体絶命の危機を切り抜け、最後にはガミラス本星での決戦に勝利したことは地球防衛軍の上層部に「波動砲神話」を定着させてしまった。ガミラス戦役末期に開発の目途のたった拡散波動砲の威力はすさまじく、たとえ敵艦隊が数の上で圧倒的優勢に立っていても、拡散波動砲の一撃で、敵艦隊を殲滅できるという幻想を地球防衛軍首脳に抱かせるに十分であった。その一方で、七色星団会戦などの戦訓として艦載機戦力の打撃力の大きさと、艦隊直衛戦闘機の重要性も正しく認識されてはいた。しかしながら、搭乗員や整備員と言った大量の人員を必要とし、またその人材の育成に時間と手間のかかる航空戦力を艦隊の中心戦力に据えることはガミラス戦役によって人材が消耗した地球防衛軍には不可能であり、波動砲の一斉射撃による敵艦隊の殲滅という、人員を必要としない戦略を中心に据えるしか地球防衛軍債権艦隊の取りうる道は無かった。後年、この時期に芽生えた「対艦巨砲主義」が航空戦力の配備をおろそかにしたため、白色彗星戦役での艦隊の壊滅を招き、その後十数年にわたるさらなる人材不足を招いた、と批判する歴史家が多いが、白色彗星戦役前の状況を正しく検証すれば、波動砲による艦隊決戦思想は地球防衛軍艦隊の取りうべき唯一の選択であったことは明らかであり、そのような批判は的を射たものとはいえない。このような事情でガミラス戦役後の地球防衛軍艦隊はいわゆる宇宙時代の"大艦巨砲主義"の思想のもとに編成されることとなった。

航空戦力の整備 --- 大艦巨砲戦略を取ったとはいえ、航空戦力を軽視していたわけではなく、むしろ、その威力と重要性は正確に把握されていた。七色星団で使用された瞬間物質移送器によるドメル戦法の前には如何に波動砲と言えども射程外の敵を粉砕することは出来ず、波動砲を決戦兵器とした場合も、攻撃的航空戦力は配備できなくても、少なくとも艦隊直衛の戦闘機を配備する必要があることは十分理解されていた。その証拠に、船体に余裕のある戦艦クラスには直衛戦闘機の搭載スペースが確保され、次期制空戦闘機の開発計画も実行に移されていた。おりしも、艦載機に最適の高性能の動力源として波動モータが開発され、その出力に十分余裕があることから、地球防衛軍の設計局は次期制空戦闘機に敵航空機との空戦制空能力を持たせるだけではなく、ミサイルなどの搭載を可能にし、将来的には対艦、対地攻撃力を強化した派生型を開発できるように設計した。この計画は見事に巧を奏し、コスモタイガーI に始まる、稀代の傑作艦載機コスモタイガーシリーズを生むこととなった。
  宇宙用制空艦載機 コスモタイガーI の開発成功を受けて、10年計画による本格的航空兵力の配備も議会の承認を受け、白色彗星戦役直前には大型空母、小型空母の設計も開始され、艦載機運用実験のために航空戦艦が起工していた。月面基地には航空教育隊が配備され、艦載機搭乗員と整備員の訓練が開始された。これはコスモタイガーIが大気圏内飛行能力を有しておらず、地球での訓練・教育が出来なかったためである。
  コスモタイガーIの波動モーターをより高出力のものに換装し、大気圏内飛行能力を付与し、コスモゼロ、ブラックタイガーに代わる次世代の艦載機として全面的に再設計を施したコスモタイガーIIの開発が成功し、地球本土防衛と大気圏内行動能力の教習のための教導飛行隊が設立され、月面基地航空隊での無重力戦闘能力習得後、地球の教導飛行隊にて大気圏内戦闘訓練を行うという、艦載機搭乗員訓練システムも本格的に稼動することとなった。しかし、慢性的な人員不足のため、十分な数の搭乗員の育成は2215年頃までは不可能であると考えられ、それまでは、将来の教官となるエリート搭乗員を育成する、少数精鋭主義をとらざるを得なかった。そのため、艦載機搭乗員養成コースの適正試験は非常に厳しいものとなった。その結果、白色彗星戦役時の艦載機搭乗員は全員が非常に高度に訓練されたベテランばかりとなり、そのため白色彗星戦役における撃墜比(キルレシオ)は15:1という驚異的なものとなった。しかしながら、パイロットの消耗も激しく、結局、その後の暗黒星団戦役、ガルマン-ボラー戦役、ディンギル戦役を通して、艦載機搭乗員の不足に悩まされることとなった。
  地球防衛軍の艦隊再建は、波動砲のプラットフォームとして使用される主力艦とその護衛艦を整備する第一次艦隊整備計画、主力艦隊にアンドロメダ級、航空戦艦と直衛戦闘機を加えて主力艦隊の戦力を増強を図る第二次艦隊整備計画、空母とその艦載機を配備し、柔軟な戦力構造の完成に至る第三次艦隊整備計画、の三段階で艦隊再建を進める予定であった。しかしながら、第一次計画がほぼ完成し、第二次計画に着手した時点で白色彗星戦役となってしまったため、地球防衛軍が空母戦力を配備する機会は失われてしまった。


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