砂の霧 〜 3 〜
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どういう事なのかとクイナさんに聞いても曖昧な答えしか返って来ない。
どうしたって納得出来ない。
危険な状態だとも言えるのに、ゾロの態度まで曖昧なのはどうかしている。
その上、ABPはペアで動く事が鉄則だというのにあの二人!
「サンジさんの噂の手料理が食べてみたいわ」
クイナさんに、そうお願いされたら俺に逆らえるはずもなく、早速フロントで新鮮な食材が手に入る場所を確認し、めいいっぱい抱えられるだけ抱えて帰ってきた俺を待っていたのは素敵なクイナさんの笑顔ではなく、シンと鎮まり返った部屋とホテルに備え付けられた味気ないメモが一枚、ローテーブルの上に置かれているだけだった。
「サンジさん、ごめんなさい。今日中に戻ります。おいしいごはん作って待っててねv」
あいつら俺を置いて二人で消えやがった。
グっと拳を握り締め、ダンっと片足をテーブルの上に乗せる。
「くおらぁ、俺だけ置いてきぼりかぁっ!浮気しても知らねぇからな!このクソマリモ
!」
とりあえず、沸き上がる怒りをそんな言葉にして吐き出しでもしなければ収まりがつかない。
筋肉馬鹿だの方向音痴のクセにだのと一通り悪態をついて落ち着きを取り戻したところで、ふうと大きく息を吐き出した。
「しかたねぇ、クイナさんのリクエストだ。厨房借りて冷めても旨いものを作ってみせましょう。」
購入した食材の入った紙袋を抱え部屋を出ようと扉を開くと、目の前に壁ができたのかと思うほどの大きな影が立ちはだかった。
「おっと、すいません。」
大きくて屈強そうな男が立っていて、行くてを塞いでいたので、避けようと身体を横にずらしたものの、相手は全く道を空けようとしない。
動かない男の顔を見上げるように見つめると、相手も眉間にシワを寄せて俺を睨みつけていた。
「えーっと・・・うちに何か用でも?」
「ゾロとクイナは中か?」
「あー、お知り合いの方ですか?お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「いいから俺の質問に答えろ。二人は中か?」
あまりの態度にムッときて俺も笑顔で対応できなくなる。
「申し訳ありませんが、名前も名乗れないような方にお答えする義務はありません。出かけるのでそこをどいていただけませんか?」
「ふん、噂どおり気が強いな・・・・まぁ、合格ってところか・・・」
「は?」
「・・・スモーカーって言やぁわかるはずだ」
「スモーカーさんですか・・・・2人は今出かけていますので、戻りましたら連絡するように伝えますが、連絡先は?」
「いない?あいつら逃げやがったな。」
「逃げた?」
「この時間に来ることは、電話で知らせてあったんだ。それでいないとなりゃ、逃げたしかねぇだろーが。」
「?」
「まぁいい。お前、ゾロの連れだな?・・・この後、男が1人訪ねてくるはずだ。クイナの上司で研究室の教授だとかなんとか言って自己紹介するはずだ。その男をできるだけ足止めしておいてくれ。」
それだけ言うと、上着の内ポケットからタバコと写真を取り出し、タバコを口に挟み火をつけようとする。
「ホテル内の廊下は禁煙です。」
「ちっ」
注意すると嫌そうに目を眇めてから、両手が買い物袋でふさがっていて写真を受け取る事ができない俺の上着のポケットに「この写真の男だ。間違えるな。」とだけ言ってねじ込んでいってしまう。
「おい、ちょっと・・・あんた、いったい」
ちょうど来たエレベーターに乗ってしまう男に向かって叫ぶものの、「誰なんだ」と言う前に扉が閉まってしまい、正体を聞くことができなかった。
「誰なんだよ。いったいあいつは!しかも、俺もエレベーターに乗りたかったんだけど!」
なんの情報も無い自分には、大きな荷物を抱えたまま、目の前で閉められたエレベーターの扉を睨みつけて「あのクソマリモ、事情を説明してから消えやがれ!」と悪態をつくことしか出来なかった。 |
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