|
なんだか最近、誰かの視線を感じてならない。
最初は俺の気のせいかとも思ったのだが、どうもそうでもないらしいんだ。
理由?
そんなのありゃしないが、俺のカンは外れたことはないんだ。
レディに関すること以外は・・・
ま、それはおいといて
そう、レディではなく、この視線はヤローの視線だ。
だから、こんなにも絡みつくようで気持ち悪く不快な感じがするに決まっているんだ。
今日こそ、俺に不快感を与える不逞ヤローを見つけてやろうと罠を張ってみることにした。
流石にこの不快な視線を無視し続ける事が出来なくて、ヤツと まともに会えてないから 早く決着をつけてしまいたかったんだ。
俺がここでヤツと言っているのは、もちろん視線の不快ヤローのことではなく、俺の仕事でも私生活でも相棒である男の事だ。
ヤツには なんやかやと理由をつけて断りを入れているので この事には気づいていないはずなんだが、流石にこれ以上引き伸ばすと変な探りを入れられるに決まっているから、早く解決しなきゃいけない。
だってなぁ、これくらいの事、自分でなんとか出来なくてヤツの相棒だなんて恥ずかしくて言えないから。
それにアイツは俺の事になると我を忘れてしまう傾向があるから気をつけないといけない。
ノロケなんかじゃないぜ。本当に俺にベタぼれなあいつは加減ってものをしらないくらい独占欲が強いんだ。
ま、それを知ってるのは俺くらいだけど、それはそれでいいよな。
それに こんな事くらいで今の仕事に集中してるヤツの足なんか引っ張りたくないし。
コツコツと路地に響く靴音が近づいて来るのを物陰に隠れて待つ事数秒。
もう少しだ。
早すぎても駄目。
タイミングが大切なんだ。
真横に来るまで、3、2、1、今だ!
俺は犯人の背後に飛び出した はずだった。
だが、目の前には誰もおらず、焦って振り向いたそこには ニヤリと笑っているヤツが立っていた。
「な、なんでお前がここにいる?」
俺の焦りなんて気にならないというように、ヤツは俺の腰に腕を回すと、そのまま路地先にあったホテルに連れ込まれてしまった。
「だか・・・・ら・・・・・こんな事・・・してる場合じゃ・・・・なくて・・・あぁ・・・ゾ・・・ロ・・・はぁ・」
そう訴えたってこうなったら開放してくれる訳もなく、結局、朝までヤツの身体に翻弄されてしまった。
ああ、今度こそ解決しようと思っていたのに。
なのに、気持ちいいことに流されちゃって自己嫌悪・・・。
ゾロも気づいているのか、いないのか、態度だけでは全くわからないから。
気づかないフリをしてくれているのかもしれないが、何故俺があんな路地裏にいたのかを確認してくることも無かった。
そうこうしてるうちに、仕事が次々に入って忙しくなって、たかが「視線」を気にする時間も余裕もなくなってしまい、結果、後回しにせざるをえず、その事を後々後悔することになるのだが、それも、天の采配だったと思うしかない。
|
|
|
|
|
「やっと終る目途がついたな・・・」
完全に太陽が昇る前の、まだ薄暗い早朝。
少し肌寒いくらいの朝の空気が本来なら気持ちよいと感じるのだろうが、仕事も あと少しで終了するという日、忙しかった日々
からやっと解放される喜びと睡眠不足による疲れに、注意力が散漫になっていて、少しでも頭をスッキリさせようと大きく息を吸
い込んだ。
だが、その行為が反対に身体を刺激し欠伸を誘発させる。
ゾロと並んで歩きながら、何度目かの欠伸をかみ殺す。
「フワっ・・・とっと用事済ませて帰ろうぜ。」
今は、ただ、ゆっくり眠りたくて、ボスへの報告なんてどうでもいい気分だった。
そんなことを考えていたのがわかったのだろうか、俺の顔をチラリと横目で見て、ゾロは「同感だ」というように優しく微笑んだ
。
ゾロがこんな表情をするなんて知っているのは俺ぐらいなものだろう。
滅多に感情を表さないゾロの表情の変化は、いつも一緒に過ごしている者にしか発見することはできないほど一瞬の産物で、信頼
しているものでもなかなかお目にかかれるものではないものだから。
(俺の場合は、ベッドの中で、色々な表情に出会えるけど)
それでも、笑顔は滅多に見れない格別のものだ。
自然に俺も笑顔になって、さっきまでの肩を落とす程の疲労感が吹っ飛ぶほど気力がもどってくる。
チリンチリン
その時、後ろから自転車のベルの音が近づいて来た。
追い抜きやすいようにゾロの後ろに回り、道の端に避けるように移動した。
けれど
自転車が俺を追い抜いて行く時
キラリと光る物が見え、真っ赤な警告灯が脳裏に浮かぶ。
嫌な予感がする。
俺は自分の勘に従って、咄嗟に右足を自転車とゾロの間に振り上げていた。
「痛っ!」
熱い
まるで火傷をしてしまったような熱さがフクラハギのあたりから脳に直接伝わる。
何が起こったのか、すぐには理解できない
ゾロが自転車に乗っていた男におどりかかり、殴りつけ、締め技で失神させたのを見て、やっと自分の足に深深とナイフが突き刺
さっている事に気がついた。
ゾロが血相を変えて駆け寄って来る。
油断がなかったとは言えないが、俺だってプロだ。
大丈夫。
こんなのなんともない。
そう言ってゾロを安心させたいのに
痛みを堪えるのに精一杯で口を開く事すら出来ない。
ギシギシと音がするほど噛み締めた歯の隙間から、押さえ切れない呻き声が洩れてしまうほどの痛みが襲う。
「クッ・・・・・」
冷や汗が滴り、傷口からの出血の為に貧血を起こしているのか、グルグルと目がまわるようで吐き気が込み上げる。
こんな怪我なんて、俺達の仕事では日常茶飯事で
大したことにはならないはずだったのに
今回ばかりはやっちまったらしい
刺された場所がまずかった・・・
痛みを感じる神経をナイフが刺激し続けている
痛みに耐えられずナイフを抜けば出血がひどくなりヤバイ
だから、このまま刺しておくしかないのはわかっている。
頭じゃわかっているけどっ
(ヤベェ・・・・視界がボヤけてきやがった・・・)
神経が痛みの限界を訴えて
ゾロが俺の身体を支えて抱きしめた瞬間
目の前の景色はブラックアウト
俺は意識を失ってしまっていた。
|
|
|
|
|
「やっと終る目途がついたな・・・」
完全に太陽が昇る前の、まだ薄暗い早朝。
少し肌寒いくらいの朝の空気が本来なら気持ちよいと感じるのだろうが、仕事も あと少しで終了するという日、忙しかった日々
からやっと解放される喜びと睡眠不足による疲れに、注意力が散漫になっていて、少しでも頭をスッキリさせようと大きく息を吸
い込んだ。
だが、その行為が反対に身体を刺激し欠伸を誘発させる。
ゾロと並んで歩きながら、何度目かの欠伸をかみ殺す。
「フワっ・・・とっと用事済ませて帰ろうぜ。」
今は、ただ、ゆっくり眠りたくて、ボスへの報告なんてどうでもいい気分だった。
そんなことを考えていたのがわかったのだろうか、俺の顔をチラリと横目で見て、ゾロは「同感だ」というように優しく微笑んだ
。
ゾロがこんな表情をするなんて知っているのは俺ぐらいなものだろう。
滅多に感情を表さないゾロの表情の変化は、いつも一緒に過ごしている者にしか発見することはできないほど一瞬の産物で、信頼
しているものでもなかなかお目にかかれるものではないものだから。
(俺の場合は、ベッドの中で、色々な表情に出会えるけど)
それでも、笑顔は滅多に見れない格別のものだ。
自然に俺も笑顔になって、さっきまでの肩を落とす程の疲労感が吹っ飛ぶほど気力がもどってくる。
チリンチリン
その時、後ろから自転車のベルの音が近づいて来た。
追い抜きやすいようにゾロの後ろに回り、道の端に避けるように移動した。
けれど
自転車が俺を追い抜いて行く時
キラリと光る物が見え、真っ赤な警告灯が脳裏に浮かぶ。
嫌な予感がする。
俺は自分の勘に従って、咄嗟に右足を自転車とゾロの間に振り上げていた。
「痛っ!」
熱い
まるで火傷をしてしまったような熱さがフクラハギのあたりから脳に直接伝わる。
何が起こったのか、すぐには理解できない
ゾロが自転車に乗っていた男におどりかかり、殴りつけ、締め技で失神させたのを見て、やっと自分の足に深深とナイフが突き刺
さっている事に気がついた。
ゾロが血相を変えて駆け寄って来る。
油断がなかったとは言えないが、俺だってプロだ。
大丈夫。
こんなのなんともない。
そう言ってゾロを安心させたいのに
痛みを堪えるのに精一杯で口を開く事すら出来ない。
ギシギシと音がするほど噛み締めた歯の隙間から、押さえ切れない呻き声が洩れてしまうほどの痛みが襲う。
「クッ・・・・・」
冷や汗が滴り、傷口からの出血の為に貧血を起こしているのか、グルグルと目がまわるようで吐き気が込み上げる。
こんな怪我なんて、俺達の仕事では日常茶飯事で
大したことにはならないはずだったのに
今回ばかりはやっちまったらしい
刺された場所がまずかった・・・
痛みを感じる神経をナイフが刺激し続けている
痛みに耐えられずナイフを抜けば出血がひどくなりヤバイ
だから、このまま刺しておくしかないのはわかっている。
頭じゃわかっているけどっ
(ヤベェ・・・・視界がボヤけてきやがった・・・)
神経が痛みの限界を訴えて
ゾロが俺の身体を支えて抱きしめた瞬間
目の前の景色はブラックアウト
俺は意識を失ってしまっていた。
|
|
|
|
|
お互いがお互いの気持ちを見抜ければいいのにと、固唾をのむほど続いた睨みあいのような緊迫した時間は、サンジが先に扉を指差した腕を下ろした事で終わりを迎え、ゾロは視線をサンジの右足へと移動させるが、またすぐにサンジの瞳に戻す。
「お前は」
ゾロの静かな低音の声が病室に心地よく響く。
「俺の事を まだ 判ってない。」
そうなのかな・・・・そうかもしれない。
こいつに見られていると眼力って本当にあるんだなと思う。
じっと見つめられると、目の力だけで 圧倒されてしまって、無意識に後ずさりしそうになる。
俺は いつも並んで横にいたから、「睨まれてる相手さんは可哀相だなぁ」としか思わなかったけどこうやって自分に向けられてみると、逃げる事も 誤魔化す事も出来ない力を感じる。
ゾロからの強い想いを受け止めなることができなければ、押しつぶされてしまうかのように恐怖すら感じる。
真正面から灼熱の炎で熱せられた鉄球というゾロの想いを力いっぱい投げつけられ、その熱い想いに答えようと思うなら、俺は火傷するかもしれないなんて考えることなく、素手で受け止める覚悟が必要なんだ。
恐怖に打ち勝つようなゾロと同じくらいの強い想いがなければ、 こいつと一緒にいる資格はない。
そういう男を好きになって、自分の気持ちと向かいあった時、俺は同じだけの情熱でゾロと向かえ会える自信があった。
誰にも負けないくらいゾロを愛している自信があったし、ゾロの情熱を受け止める自信だってあったんだ。
確かに、まだまだ、ゾロのことを知らないことはたくさんあるだろう。
でも
それでも、ずっとこのまま一緒にいれば、知らないことなんてないぐらいになるはずだった・・・
だけど、
今の俺には、あの時と同じだけの情熱と自信があるのだろうか?
この強い男と並んで歩いていく自信が?
自分を少しでも疑ったら、もう前に進めなくなるぐらい弱い自分が顔を覗かせる。
こんな自分はゾロに相応しくないと思えてきて・・・・俺は、必死の想いでゾロから視線を引き剥がした。
「これでコンビは解消、仕事もデスクワークに変われるだとか思ってるかもしれないが、お前の想い通りにはしてやれない。片足が無くなろうがお前はお前で、俺の相棒に代わりはないし、俺は諦めが悪いんだ。お前を俺から解放してなんかやらない。お前がどんなに苦しくても、俺はさっさとリハビリして俺の横に戻って来いとしか言わないし認めない。」
こんな俺でも必要だと言ってくれるのは嬉しい。
そうやって発破かけてやる気を出させようとしてくれているんだろ。
っでも!
「いくら頑張ったとしても今までのようには行かないし、足でまといになんかなりたくない。」
そう、迷惑をかけるくらいなら、事務処理に専念した方がいいに決まってるんだ。
拳を握り、少しだけ声を荒げてしまう。
「足手まとい?だったらそうならないように努力しろ。身体だけが全てじゃない。お前なら充分頭でカバーできるだろうが。 自分にできる限りの事を精一杯する者を足手まといだと思う人間はうちの会社にはいない。それはお前が一番判ってることじゃないのか?」
「・・・・」
確かに、あの仲間達がそんな風に思うわけがない。
俺だって、仲間がそうだったら足手まといなんて思わないだろう。
それでも、命にかかわることが起きた時、もしこの足のせいでゾロに何かあったら、きっと俺は、自分が許せなくなってしまう。
それが恐い。
「それに」
ゾロはゆっくりイスから立ち上がるとサンジに覆いかぶさるような形で頭を挟むようにベットに横たわるサンジの左右に手をついて真っ直ぐに瞳を見つめた。
「俺は、お前が五体満足だから好きになったんじゃない。お前だから・・・・・・・どこがどう変わろうが、お前がお前である限り、この気持ちが変わる事はない。絶対にな。今度は覚えておけよ。」
ゾロの声と想いが、心臓に直接響く。
なんだか泣きそうだ。
こんなに気持ちが弱ってる時にこんなこと言われたら誰だってそうなるよな。
俺は、自分に自分で言い訳して涙を流すことを許してやった。
涙が流れれば流れるだけ、何かがスーっと胸の中から消えていくように重かった気持ちが軽くなっていく。
ゾロはサンジに顔を近づけると、綺麗な瞳から流れる涙をペロリと舐めとり、ボソリと呟く。
「やっぱり、しょっぱいな。」
この場面で言うことか?と思ったら可笑しくて泣き笑いのような変な表情になってしまう。
そんな俺に満足したように、ゾロは優しく微笑むとそのまま唇を重ね、まるで想いを注ぎ込もうとするように、深く深く俺の中を蹂躙して行った。
|
|
|
|
|
「へぇ、今は こんな技術があるんだなぁ。」
サンジの片足の膝から下には、義足がはめられており、その義足の足首は指などが起用に順番に曲がっていく。
本物の神経と接続することにより、計算上は脳からの指令で本物の手足のように動かすことが可能なのだが、まだ、実験段階ともいえるもので、簡単に取り付けて、すぐに歩けるということではなく、歩行練習を兼ねたリハビリテーションが必要だった。
術後の体力の回復から、現在の神経接続の関節を曲げる訓練が終るまでに、既に2ヶ月が経過している。
「お金さえあれば義足の技術は素晴らしい物があるんだ。上手く使いこなせれば、ぱっと見ただけじゃわからないぐらいまでになるらしい。幸い俺の場合は転移がなかったから膝を失わなくて済んだことで関節の問題も少ないし、ある意味ラッキーだったのかもな。」
そんな風に自分の切断して無くなってしまった足の話をしても、その瞳の中には もう悲しみの色はない。
完全にふっきれたようで、リハビリの手伝いのために来てくれたウソップと話すサンジの顔は、厳しいリハビリを耐えながらも表面上は穏やかに見える。
「しっかしよぉ、俺ってここにいるだけで何の手伝いにもなってないと思うけど、いいのかぁ?」
「あぁ、そこにいてくれるだけで すごく助かってる。話相手がいるだけで、やる気が違ってくるからな。」
そう答えたサンジの視線はウソップの後方にチラリと移動した。
そう、ウソップの後方にいて時々こちらの方をチラチラと伺っている白衣を着た男。
現在お世話になっている、この病院の医師である男と2人きりになりたくないために、なるべく、誰かに一緒にいてもらうようにしているのだ。
あの、爬虫類を思わせる粘っこい視線に鳥肌が出る。
視線だけではなく、なれなれしく肩にかけられる腕にも、耳元に囁きかけるように話す声も全てが気持ち悪い。
自分が自由に動ける身ならば一発ぶん殴って終わりなのだが、手術をして身動きの出来ない身ではどうすることもできず・・・
「クソっ」
「あ?」
「いや、・・・・なかなか上手くいかないと苛立つもんだな。」
「ああ。そうらしいな。あせらず、ゆっくり行こうぜ。」
なんとか笑顔をつくろって頷くものの、寒気を伴った不快感は消えることがない。
早くリハビリを終えて、こんなところ出て行きたいのに、この病院ほどに、義足の研究が進んでいるところはないからとゾロが探してきてくれた所から逃げ出すわけにもいかない。
だけど、このままここにいて、俺は我慢できる自信がない。
「大丈夫か?サンジ?顔色が悪いぞ?休んだ方がいいんじゃねぇのか?」
人間の身体ってのは、そう簡単に異物を受け入れるようには出来ていないってことが、嫌と言うほど思い知らされる。
片足を義足に慣らすだけのことなのに!
自然にできていた歩く走るって動作をすることがこんなに難しいことだとは思いもしなかった。
変なところに力が入りすぎるとバランスが取れず、力を抜かなければいけないことはわかっていても、実行することができない。
歩行練習用のバーに捕まるサンジの身体は疲労による汗が大量に流れ、着ているシャツがビッショリと濡れて身体にはりつき、その均整のとれた美しい身体のラインをさらけ出していた。
リハビリルームにいる人々の視線を集めていることにも気づかずにサンジは一心に義足を自分の身体の一部に取り込むために集中し始めた。
早く
早く
俺のものになれ
こんな胸糞悪い場所から抜け出すために
早く早く
そればかり念じながら
「今日は悪かったな、ゾロ来させられなくて。あいつじゃないとどうにもならない仕事ばっか依頼があんだよなぁ最近。ボスも謝っといてくれってさ。」
「ナミさんには感謝してるよ。忙しいのに、必ず一人回してくれて。申し訳ないけど、もうしばらく甘えさせてもらうって伝えといてくれ。」
「ああ、わかった。明日はゾロが来れるはずだから、楽しみに待ってろよ。じゃな。」
にこやかに手を振りながらウソップが病院を出て行く。
一緒に出て行きたい衝動にかられながら、自分の病室へと松葉杖をつきながら引き返した。
明日にはゾロに会える。
許されるのなら、今すぐ会いに行きたい。
だけど。
心の底から求めている相手なのに、会うのが恐い気持ちも同時に芽生えていた。
「あんなヤツのために、なんだってこんな想いしなきゃいけないんだクソっ!!」
俺は、いつもの俺でゾロに会えるだろうか?
部屋にもどっても、もう、病人では無いと思っているのでおとなしくベットで横になる気にはなれず、ベットに両足をかけて、腹筋、背筋、腕立て、と数々の筋力トレーニングに精を出す。
病気になる前より、上半身の筋肉には自信がついたかもしれない。
それでも、足の筋力だけは以前のようにもどることはなく、早く、ゾロの横に戻りたいのに、まだ、それが出来ないことがもどかしい。
シャワーを浴びてベットに横になると、昼間の運動の疲れですぐに深い眠りに引き込まれて行った。
|
|
|
|
|
スーっと静かに扉の開く音がする。
病院内はとっくに消灯され、ナースの見回りが終わってから暫く経っていることを考えると、多分、夜中の2時30分過ぎくらいだろう。
微かな物音でも普段なら目を覚ましてしまう俺は、病室へ侵入してくる人物の気配に集中した。
ゆっくりと音を殺しながら、ベッドに横になっている自分のうえに被いかぶさろうとする動きを察して、素早く転がってその身体を避け、その人物の背後に周り込み首を締めあげた。
「先生、何度も同じ事を言わせないでください。何度来られても、貴方とはおつきあいできません。睡眠薬を使っても同じ事。二度と貴方には自由にさせませんから。これ以上続けるようなら、もう俺も容赦しませんよ。」
抱えた首を更にグッと締めつけるように力を加えると、さすがに息が出来なくなったのか、焦ってギブアップとばかりにバシバシと俺の腕をたたいている。
本当は、こんな首を絞めて落とすくらいのことじゃ許せないほどの恨みもあるが、まだこの病院に世話にならなければいけないことを考え、これ以上やるのはまずいと理性が働いた。
あの時は、身体が自由に動くようになったら『絶対あんなやつ殺してやる』と思っていたけれど、そんな事を本当に実行したら自分が損をするのは明白で、こんなやつの為にそんな無駄なことはすてやるものかと気持ちを抑えて我慢しているのだ。
本当なら、こうやってこの男に触るのも嫌なのに、いったい、あとどれくらいこの男を視界の中に入れて我慢しなければならないのか・・・。
あの日のこと・・・あのゾッとする出来事は誰にも話したりなんかできない。
ましてや、ゾロになど絶対に知られたくない。
だけど、こいつは、そんな俺の気持ちに気づいて脅しまでかけようとしてきた。
「あの男にばらされたくなければ、言うことを聞け。これくらいどってことないだろう?」
そうニヤニヤ笑いながら言うこいつの顔が吐き気がするくらい気持ち悪くて、
こんなやつの言う事を聞くくらいなら、ゾロにバラされた方がマシだと思えた。
まあ、そんな脅しにもともと屈するはずもないのだが、ゾロにバラされるかもしれないとビクビクして過ごすなら、いっそ自分から話してしまったほうがいい。
ただし、そのことで、こいつがゾロにどんな目に合わされたとしても、俺は同情などできはしない。
そう思いながらも、なかなか告白する勇気が出なくて、そんな自分にも腹が立つ。
こうやって、この男の手から逃れ続けるしか出来ない歯がゆさにイライラが募るばかりだ。
ゾロ
お前を失うかもしれない可能性を考えると・・・・こんなにも俺は弱くなってしまうんだ。
|
|
|
|
|
スーっと静かに扉の開く音がする。
病院内はとっくに消灯され、ナースの見回りが終わってから暫く経っていることを考えると、多分、夜中の2時30分過ぎくらいだろう。
微かな物音でも普段なら目を覚ましてしまう俺は、病室へ侵入してくる人物の気配に集中した。
ゆっくりと音を殺しながら、ベッドに横になっている自分のうえに被いかぶさろうとする動きを察して、素早く転がってその身体を避け、その人物の背後に周り込み首を締めあげた。
「先生、何度も同じ事を言わせないでください。何度来られても、貴方とはおつきあいできません。睡眠薬を使っても同じ事。二度と貴方には自由にさせませんから。これ以上続けるようなら、もう俺も容赦しませんよ。」
抱えた首を更にグッと締めつけるように力を加えると、さすがに息が出来なくなったのか、焦ってギブアップとばかりにバシバシと俺の腕をたたいている。
本当は、こんな首を絞めて落とすくらいのことじゃ許せないほどの恨みもあるが、まだこの病院に世話にならなければいけないことを考え、これ以上やるのはまずいと理性が働いた。
あの時は、身体が自由に動くようになったら『絶対あんなやつ殺してやる』と思っていたけれど、そんな事を本当に実行したら自分が損をするのは明白で、こんなやつの為にそんな無駄なことはすてやるものかと気持ちを抑えて我慢しているのだ。
本当なら、こうやってこの男に触るのも嫌なのに、いったい、あとどれくらいこの男を視界の中に入れて我慢しなければならないのか・・・。
あの日のこと・・・あのゾッとする出来事は誰にも話したりなんかできない。
ましてや、ゾロになど絶対に知られたくない。
だけど、こいつは、そんな俺の気持ちに気づいて脅しまでかけようとしてきた。
「あの男にばらされたくなければ、言うことを聞け。これくらいどってことないだろう?」
そうニヤニヤ笑いながら言うこいつの顔が吐き気がするくらい気持ち悪くて、
こんなやつの言う事を聞くくらいなら、ゾロにバラされた方がマシだと思えた。
まあ、そんな脅しにもともと屈するはずもないのだが、ゾロにバラされるかもしれないとビクビクして過ごすなら、いっそ自分から話してしまったほうがいい。
ただし、そのことで、こいつがゾロにどんな目に合わされたとしても、俺は同情などできはしない。
そう思いながらも、なかなか告白する勇気が出なくて、そんな自分にも腹が立つ。
こうやって、この男の手から逃れ続けるしか出来ない歯がゆさにイライラが募るばかりだ。
ゾロ
お前を失うかもしれない可能性を考えると・・・・こんなにも俺は弱くなってしまうんだ。 |
|
|