今年の終わり、これからのはじまり

今年の終わり、これからのはじまり



 確実に近づいている。
 ずっと好きだったアイツに。
 ただの友達の存在でしかないけれど。


 「てめぇ…南極旅行でもするつもりか?」

 しんしんと降り続く雪の中、駅の改札から出てきたサンジを見て
 ゾロは呆れたように言った。

 「うるせぇ…さみぃんだよ!」

 そう返したサンジは、モコモコのダウンコートにぐるぐる巻きにしたマフラー。
 手にはモコモコのミトンに、足元もこれもまたモコモコ。
 ミトンの手にはいったい何泊するつもりなのかと、疑いたくなるような大荷物が握られていた。

 「地元のヤツだってそんなに着込んでねぇぞ。それになんだよ、その荷物…」
 「いいから!さみぃから早く案内しろよ!」

 鼻の頭を赤くしたサンジの手から荷物を取ると、歩き出した。
 少し後ろをモコモコのサンジが続く。

 今日は大晦日。
 この辺は田舎のせいか、大晦日は家で家族と一緒に過ごすらしい。
 人通りの途絶えた道には、二人が踏む雪の音だけが聞こえる。


 ゾロとサンジは高校からの友達だ。
 友達というかお互い共通の友達が居たというだけで、なんとなく一緒につるむようになった。
 大学は学部こそ違ったけれど、つるんでいたのには変わりなかった。
 その大学も卒業して別々の会社に入社し、ゾロは地方へと転勤した。
 連絡なんてとることは無かったのに、夏ゾロが帰省した折に撮った写真を口実に電話をしたのはサンジだった。

 あの電話は忘れもしない。
 サンジは前を歩くゾロの背中を見ながら、そのときのことを思い出した。

 ひとしきり他愛も無い会話の後、年末の話になった。
 『ゾロ、お前年末も帰ってくんの?』
 『いや、2日から仕事だからな。こっちにいる。』
 『そっか・・・残念だったな。今年はオレのスペシャル年越しそばが食えねぇのか。』
 残念な気持ちが出てしまいそうになり、わざとおどけた。
 ゾロがそんなことを思うわけも無いと思った。
 『そうだな・・・残念だ。』
 『え?』
 『ここんとこてめぇのそば食ってたからな。年が明けたような気にならねぇかもな。』
 『じゃあさ・・・おまえのとこに行って作ってやろうか?』
 断ると思ったゾロが思いがけなくそれを承諾し、サンジは今雪深い中を歩いている。


 「お、雪やんだな。」

 ゾロの声に上を見上げれば、上空は風が強いのか雪雲はいつの間にかなくなり
 満天に近い星空が見えた。

 「ほんとだ。・・・あ・・・」
 「あ?」
 「流れ星・・・」

 サンジの言葉にゾロも見上げたとき、もう一つ星が流れた。

 「あー願い事唱えるの忘れた。」
 「願い事?そりゃ、無理だろ。」
 「なぁんで?」
 「ありゃ早いからな。あれで唱えるのが出来るのはナミくらいだ。」
 「でもなー、も一回流れねぇかなー。」
 「なに、願うんだよ。」
 「そりゃー・・・」

 いったん言葉を切ると、サンジはゾロを見つめた。

 (お前の事だよっつたら、コイツどーすんのかね)

 「内緒だよ。お前は?何願う?」
 「・・・あれだな。」
 「あれ?」
 「内緒だ。」
 「あーんだよ、教えろよ。」
 「てめぇだって内緒っつったろ。」
 「ちぇっ。」
 「おら、行くぞ。」

 ゾロはまた前を向いて歩き出してしまったので、サンジも仕方なくついて行く。

 「ぶっはっくしょん!」
 「は?」

 大音響にサンジは唖然と前をみると、ゾロは鼻をすすっていた。

 「・・・やっぱ、さみぃな。」
 「だろ?鈍いんだよ、お前は。」

 そう言いながらサンジはミトンを片方脱いだ。

 「おら。」
 「?」
 「やさしーオレ様が貸してやる。ありがたく使え。」

 差し出された片方のミトンを不思議そうに眺めていたが、ゾロは受け取った。
 サンジの好きな口の端だけを上げた笑い方で。

 「おー、ありがたく使うわ。」

 そう言って右手にはめると荷物を持ち直し、空いた左手でミトンのないサンジの右手を取った。
 そのまま手をつないで、ゾロは自分のジャンパーのポケットに二人分の手を突っ込んだ。

 「!なっ・・・」
 「こーすりゃ、両手寒くないだろ。お互いに。」

 そしてまた、ゾロは歩き出した。
 ポケットの中のゾロの手はとても熱くて。
 ぎゅっと握られ放すことなんて出来ない。

 「重てぇなぁ、何入ってんだよ・・・この荷物。」

 呆れたようなゾロの声に、サンジも呆れたように答えた。

 「何ってお前、蕎麦とお節に決まってんだろ。」
 「は?」
 「蕎麦食わせに来たんだろうが。それに明日は正月だぜ。正月にお節食わねぇでいつ食うんだよ。」
 「・・・正月か。」
 「ボケてんじゃねえのか?」
 「新しい年の始まりか。」

 独り言のように呟きながら、ゾロはサンジを見つめた。
 悪態をついていたサンジも、ゾロを見つめ返した。

 しんと静まり返った町で、お互い相手を見つめる。

 「雪・・・降ってきたな。行こう。」

 またちらちらと降り出した雪に気づき、ゾロが歩き出した。
 それに引っ張られサンジも歩き出す。

 「・・・ここ、静かでいいとこだな。」
 「・・・あぁ。」
 「また、来たいな・・・」

 サンジの呟きに、ゾロは前を向いたまま答えた。

 「来いよ。来年の冬も・・・春も夏も秋も。」


 もう、今年も終わろうとしている。
 でも、きっと、これからがはじまり。



はぁ〜癒される〜vvv
サンジ君が、モコモコのダウンコート着てモコモコのミトンの手袋してる姿を想像vvvv
う〜ん、なんか めっちゃ可愛い〜vv
しかも、ゾロ様さりげなく素敵vvv
特に 手をつないで自分のポケットに入れるとこなんか溜まらん〜vvv
(おいらの手も一緒に入れてくれ〜っ・爆)

はっ!すいません!
完全に自分の世界に浸ってましたっ

BBSになんとなく匂わせて書いていた きゅー様からのいただき物をアップさせていただきました。

きゅーさんの書かれるお話は、ホントに暖かくて癒されますよね。
大好きですvvv
本当はバレンタイン当日に更新しようと目論んでいたのですが
龍谷ったら旦那が寝るのを待てずに更新できませんでしたっ
すいませんっ


きゅーさん、本当に素敵な作品をありがとうございました!
これからも、私達の心を癒し続ける作品を沢山書いてくださいね。
楽しみにしております。


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