
三角巾
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グランドラインを航海中のメリーさん。
いつも暢気な顔だが、この頃少し嬉しそうだ。
何故ならお供が出来たのだ。
薄いグリーンのレストランの船が、メリーさんの後ろを着いてくる。
オールブルーでサンジの料理を堪能していた船長は、また冒険がしたくなった。
出航するにあたってゾロとサンジも誘われたが、ここに来てくれる客のため断った。
甲板で遠ざかるメリー号を見送っていると、伸びて来た一本の腕。
海上レストランの手すりをがしっと掴んだその手を見て、ゾロとサンジは呆れてお互いの顔をみた。
苦笑するとどちらからとも無く頷き、錨を上げて船を出した。
あの船長にはかなわない。
こうして再び海賊に戻った。
「だぁぁ!鬱陶しい!」
レストランの厨房でサンジが大声を上げた。
伸ばしかけの髪が下を向くたび、さらさらと落ちてくる。
後ろで結ぶほど伸びてはいないので、毛先は重力に素直に従う。
「まったく…あのワガママまりも野郎のせいだ…」
ぶつぶつと言いながら、サンジは落ちてくる髪を耳に掛けた。
サンジが髪を切ってしまってから少し経った頃、特大ダブルベッドにごろりと横になり
サンジの髪を撫でていたゾロが不満そうに言い出した。
「てめぇ、髪伸ばせ。」
「はぁ?切れっつたのお前だろうが。」
「…いいから、また伸ばせ。」
「大体誰のせいで切る羽目になったと思ってんだよ!オレは切るつもりなかったのに。」
「誰のせいって、乱れまくったお前が悪いん…ぐほっ!」
ゾロの腹に思いきり足をめり込ませると、サンジはドカドカと部屋を出ていった。
暗い甲板でスパスパとタバコをふかす。
仕方が無いじゃないか。
あの時、我慢していたのはゾロだけじゃない。
自分だってゾロに触れたくて、でも一度触れてしまうと我慢できないような気がしたのだ。
だから。
誰もいない久々の二人だけの船の中、いつも以上に感じてしまったのだ。
「わかってるけどっ…」
ギリッとタバコを噛み締めると、手すりをガツンと蹴りつけた。
ゾロだけのせいではないと判っているのだが、改めて言われると
恥ずかしいような、悔しいような。
冷たい夜風にくしゅんとくしゃみが出たが、怒って出てきた手前部屋に戻ることを躊躇った。
今夜は店か厨房で寝ようかと考えていると、むんずと襟首を掴まれた。
「何してやがる。風邪ひくだろうが。」
「!ゾロッ。」
「いくぞ。」
そのまま部屋まで来ると、ゾロはベッドにごろりと横になった。
「ほら。」
タオルケットを開き、サンジに入れと言った。
サンジが立ったまま戸惑っていると、「早く」と少し怒ったように促す。
そろそろと横になると、くるりとタオルケットごとサンジを包んだ。
冷えた体がゾロの熱でどんどん温まる。
それと比例するかのように、気持ちも暖かくなってきた。
サンジの髪に顔を埋め、早々にゾロは眠りに落ちていた。
ぎゅっと抱きしめられ身動きも取れないが、それもサンジの心を解していった。
(また…伸ばすか…)
ゾロの寝息を耳にしながら、サンジは自分の髪を摘んだ。
しかし、伸び掛けの髪はやはり鬱陶しい。
決めたのは自分なのだが、サンジは心の中でゾロに蹴りをいれていた。
「サンジ君、髪伸びたわね〜。」
夜、女部屋に暖かいハーブティーを運んできたサンジに、ナミは声をかけた。
「なに?旦那のご要望なの?」
「いやっ。そうじゃないけど!」
「ふふ、ご希望なのね。」
ロビンまでが楽しそうに笑うので、サンジは益々赤くなった。
「でも、その長さじゃ大変ね。まとめるにはまだ短いでしょ。」
「はぁ、そうなんです…」
「ピン、貸してあげようか?」
「え!いいんですかv」
「うん、そのかわり…」
嬉しそうなナミの笑顔に、サンジは顔を引きつらせた。
「おせぇな…サンジ。」
ナミ達に飲み物を持っていっただけなのに、もう二時間が経っている。
ゾロはイライラしながら、酒のビンを煽った。
迎えに行くかと腰をあげかけた時、廊下から靴音が聞こえた。
「なにやって…って、お前その頭…」
入ってきたサンジに、振り返ったゾロは呆れた声を出した。
サンジの頭には、色とりどりのピンやらクリップで留められている。
「仕方ねぇだろ。せっかくナミさんとロビンちゃんがやってくれるって
言ってくれたんだから…」
「だからってなぁ…」
げっそりとなるまで付き合うことはないとゾロは思うのだが、
サンジが女の言い成りになるのは今に始まったことではない。
判ってはいるが、面白くない。
「いいようにされてんじゃねぇ。」
「仕方ねぇっつってんだろ!伸ばし掛けで鬱陶しいんだから!」
「鬱陶しいのか?」
「あぁ!料理中も落ちてくるんだからな!」
「…来い。」
「あぁ?」
「いいから。」
訝しがるサンジの腕を引くと、ベッドに座らせた。
「な、何しやがる!せっかくナミさん達がっ…」
喚くサンジを無視して、ゾロはサンジの頭のピンをポイポイと外していく。
「イテテ!もちっと優しくやれ!」
「うるせぇ、黙ってろ。」
「せっかくナミさん達が・・・」
がっくりと項垂れたサンジの頭に、何かが掛けられた。
ふわっとソロの匂い。
(?)
「鬱陶しいなら、これでもしとけ。」
頭に乗せられた物を手に取ると、それは黒のバンダナ。
「…これを三角巾の代わりにしろと?」
「髪、伸びたら返せよ。」
そう言うとゾロは背を向けて、横になってしまった。
良く見るとピアスのついた耳が赤い。
どうやらまたヤキモチを焼いたらしい。
クスクスと笑うと、タオルケットをすっぽり被ってしまった。
手元のバンダナに視線を落とすと、嬉しさがこみ上げてくる。
今までゾロが誰にも貸すことの無かった、黒のバンダナ。
ぎゅっと握り締めると、サンジはゾロの耳元に唇を寄せた。
「てめぇが必要になるまで、借りとくよ。」
これを巻かなければならない程、強い相手が現れるまで借りておこう。
でも、当分ゾロの手元に返ることはないだろう。
だってゾロは、
オレのゾロは世界一の大剣豪なのだから。 |
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きゅー様より、またまた続編をいただいてしまいましたvvv
うへへへへ。
ゾロのヤキモチ焼きっぷりがっ!
そして、サンジ君の甘やかしっぷりがっ!
もう、二人が甘甘でたまりません!!
そして、『サンジ君の長髪復活を望む会』?!会長の私の叫びを
お聞きいただき、ありがとうございました。
まだ伸びかけではありますが、これから長髪になってゆくということでvvv
そうです!!
次回作があります!!
御期待ください!!
龍谷裕樹

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